平成11年度科学技術振興調整費の具体的運用及び課題選定について

平成11年4月8日
科学技術庁

 本日開催された科学技術会議政策委員会(井村 裕夫委員長)において、「平成11年度科学技術振興調整費の具体的運用及び課題選定について」(別冊1 平成11年度科学技術振興調整費の具体的運用及び課題選定について)が決定され、平成11年度の科学技術振興調整費により実施する課題が決定された(平成11年度の新規制度等一部の課題を除く)。そのうち、新規課題は以下のとおり。
 なお、詳細については、「平成11年度科学技術振興調整費による新規課題の概要について」(別冊2 平成11年度科学技術振興調整費による新規課題の概要について)参照。

1.産学官連携プログラム

1.総合研究(11課題)<応募112課題>

材料の低環境負荷ライフサイクルデザイン実現のためのバリアフリープロセシング技術に関する研究

 (研究担当機関:金属材料技術研究所、名古屋工業技術研究所、東京大学、石川島播磨重工業株式会社等)
 材料のライフサイクル全体にわたっての環境負荷を削減するために材料プロセシングに要求される技術要素として、回生材料に対応したプロセシング技術、材料創製過程と成形過程を結合した、自由度の高いプロセシング技術等の確立を目指す。

エネルギー半減・環境負荷ミニマム新高炉製鉄法に関する研究

 (研究担当機関:北海道大学、金属材料技術研究所、社団法人日本鉄鋼協会 等)
 炭酸ガス排出量、エネルギー低減のための「低環境負荷型高炉製鉄システム」の実現に向けて、金属工学的、熱力学的、反応工学的な視点から新しいアプローチを試み、抜本的なエネルギー利用を可能とする新理論とシーズ技術の創出を目的とした基盤的・体系的な研究を実施する。

固相精密合成法によるケミカルライブラリーの構築を基盤とする超機能性材料の創製

 (研究担当機関:東京工業大学、大阪工業技術研究所、社団法人日本化学会等)
 コンビナトリアル化学の概念に基づく固相精密合成法を展開するための基盤技術の確立と種々のケミカルライブラリーの構築を通じた超機能性材料の構築を目指す。

3次元フォトニック結晶の作製、解析法、デバイス展開の総合研究

 (研究担当機関:東北大学、日本電気株式会社、理化学研究所、通信総合研究所 等)
 フォトニック結晶が持つ「分散」「異方性」「フォトニック・バンドギャップ」という特徴的な光の伝搬特性を引き出し、革新的な光デバイスを実現するための作製・評価技術およびデバイス応用の研究開発を行う。

顕微光電子分光法による材料・デバイスの高度分析評価技術に関する研究

 (研究担当機関:電子技術総合研究所、理化学研究所、NTTアドバンステクノロジ株式会社、千葉大学 等)
 材料・デバイス等の分野における分析評価技術の高度化に資するため、顕微光電子分光法の高度化・高分解能化を目指し、顕微光電子分光技術、マイクロビーム高度化技術、その応用評価技術に関する研究を行う。

改変遺伝子導入昆虫を利用した環境調和型害虫防除法に関する基礎研究

 (研究担当機関:農林水産省畜産試験場、株式会社三菱化学生命科学研究所、豊橋技術科学大学 等)
 現在もなお殺虫剤の使用の依存している、衛生昆虫・農業昆虫の駆除、防除を、薬剤に依存しない遺伝子工学的手法によって実現するための基礎技術の確立を目指す。

血管壁細胞の人為的機能制御技術の開発に関する研究

 (研究担当機関:国立循環器病センター研究所、理化学研究所、東京大学大学院、藤沢薬品工業株式会社 等)
 血管壁を構築する細胞の細胞死と再生およびそれに伴う機能維持の制御機構を明らかにするとともに、血管壁に薬剤や遺伝子を導入する方法を開発し、人為的に血管機能を制御するための基盤技術を開発する。

アクチンフィラメントの構造と動態の解析による筋収縮・調節機構の解明

 (研究担当機関:理化学研究所、大阪大学大学院、国立循環器病センター研究所等)
 筋収縮に関与するアクチンフィラメントを取り巻く蛋白質分子間の構造とその相互作用の全体像を解明し、筋収縮とそのカルシウム調節のメカニズムを解明することを目指す。

雲仙火山:科学掘削による噴火機構とマグマ活動解明のための国際共同研究

 (研究担当機関:地質調査所、気象庁、財団法人地震予知総合研究振興会、東京大学地震研究所等)
 噴火経緯・物理構造の詳細が研究されている新しい火山である雲仙火山において科学掘削等による実証的な調査研究を行うことにより、火山の成長・噴火のメカニズム、広域的な地殻物理構造、マグマの進化過程等の総合的な解明を目指す。

構造物の破壊過程解明に基づく生活基盤の地震防災性向上に関する研究

 (研究担当機関:防災科学技術研究所、早稲田大学、社団法人土木学会、鹿島建設株式会社技術研究所等)
 構造物の大規模破壊実験に必要な測定法や高度な加振手法、既存構造物の耐震性調査法などの基礎的な技術の開発を行うとともに、地盤・基礎系を含めた構造物の塑性領域での挙動と破壊過程の解析を行い、合理的な耐震設計法確立のための知見と情報を提供する。

陸域震源断層の深部すべり過程のモデル化に関する総合研究

 (研究担当機関:地質調査所、国土地理院、防災科学技術研究所、東北大学、株式会社地球科学総合研究所他)
 陸域の断層に関する観測、物質科学的分析及び室内実験を行い、その結果を組み合わせて断層の深部におけるすべり過程をモデル化することを目指す。

2.生活・社会基盤研究

(1)生活者ニーズ対応研究(4課題)〈応募50課題〉

疲労および疲労感の分子・神経メカニズムとその防御に関する研究

 (大阪バイオサイエンス研究所、大阪大学、京都大学、東京都神経科学総合研究所等)
 慢性疲労症候群の研究と、一般的な疲労及び疲労感の基礎的研究の2つの方向から、疲労による神経・免疫・内分泌調整の破綻等の分子メカニズムの解明、あるいはどのようにして疲労を感じているのかという「疲労感」の神経メカニズムの解明を行い、それらをもとに疲労及び疲労感をやわらげる科学的な方法の確立を目指す。

生活環境中電磁界による小児の健康リスク評価に関する研究

 (国立環境研究所、国立がんセンター研究所、鹿児島大学等)
 日常生活環境中の電磁界の小児への健康リスクについて、商用周波数及びこれまで考慮されていなかった高調波成分やトランジェント成分の影響も含め症例・対照研究を行い、日常生活環境中の電磁界の健康リスクについて科学的に評価する。

日常生活においてひふを守る総合研究

 (国立医薬品食品衛生研究所、東北大学、京都大学、芝浦工業大学、資生堂研究所、花王研究所、等)
 アトピー性皮膚炎を中心に、皮膚の防御機能、生活環境における増悪因子、皮膚の性状の非侵襲的計測による評価法、スキンケアによる発症予防などについて研究を行い、的確な診断に役立つ評価手法や健康な皮膚を維持する技術確立に資する。

高齢者の生活機能の維持・増進と社会参加を促進する地域システムに関する研究

 (筑波大学、東京大学、国立健康・栄養研究所、東京都老人総合研究所等)
 高齢者中の75%をしめる「自立者」を研究対象とし、身体機能及び実生活の側面から、QOL(生活の質)の検討とならんでproductivityの向上を目指した研究を行う。さらに、個人のみならず、行政と一体となった地域システムの構築を目指す。

(2) 地域先導研究(4課題)〈応募10課題〉

バイオマス有効利用のための高度な微生物制御技術に関する基礎研究(熊本県)

 (研究担当機関:熊本工業大学、株式会社みなまた環境テクノセンター、農水省畜産試験場等)
 「バイオマスを有機物質に変換し、分離・回収することのできる通電透析発酵法」「生理活性物質による微生物制御技術」「バイオマスに含まれる重金属等の有害物を微生物によって除去する技術」の融合による、新しいバイオマス有効利用システム開発のための基礎研究を行う。

海洋生物由来DNAの新機能材料化に関する研究(北海道)

 (研究担当機関:千歳科学技術大学、北海道大学電子科学研究所、東京工業大学 等)
 海洋生物由来DNAを出発物質として、薄膜化(フィルム化)が容易な特性を有する光学材料の開発を行い、非線形光学素子・光電変換素子・発光素子(EL)を開発することを目的とする。

地域産業の発展に寄与する電磁波技術に関する研究(石川県)

 (研究担当機関:石川県工業試験場、金沢大学、石川工業高等専門学校等)
 地域に発生している電磁波に関する環境問題を総合的に解明し、その技術(シールド・計測技術等)の高度化を行うことで、地域の繊維・電子機器・機械産業の発展に寄与することを目指す。

新規微生物酵素による希少糖類生産システムの開発とこれを用いたもみがら等の地域未利用資源の有効活用に関する基盤研究(香川県)

 (研究担当機関:香川大学、株式会社四国総合研究所、農水省四国農業試験場等)
 地域生物産業の廃棄物を地域未利用資源としてとらえ、化学反応を補助手段とする微生物によるバイオ技術で分解し、最終生成物としての単糖類を希少糖類へ導く未利用資源活用システムを開発し、食品・医療品など付加価値の高い利用方法を試験研究する。

2.制度先導プログラム

1.知的基盤整備推進制度(2課題)〈応募30課題〉

創薬及び生物研究情報基盤としての生体内ペプチドの多角的データベース化に関する研究

 (研究担当機関:国立循環器病センター研究所、大阪大学、財団法人蛋白質研究奨励会等)
 生体内に存在するペプチドをありのままの形で取り出し、分子量、電荷、疎水性等の物性に基づき分離、構造決定する普遍的な方法を開発し、これらをインデックスとしてファクトデータベースを構築する。さらに、前駆体、プロセシング、生物活性、受容体、立体構造、質量分析スペクトルなどの情報を収録するシステムへと発展させ、創薬をはじめ医学、生物学系の研究者が幅広く利用可能なデータベースを創出する。

機能性分子による熱流体センシング技術の研究開発

 (研究担当機関:航空宇宙技術研究所、東京工業大学、浜松ホトニクス株式会社等)
 極限環境(超高速流、超低温流、超希薄流など)における熱流体現象を解明するため、光機能性分子を利用した圧力、温度、気体組成などの流体変数を光学的に計測する熱流体センシングの技術および機能性分子の薄膜をセンサプローブとして用い空間的・時間的に変動する流れ場を光学画像としてとらえる可視化技術を開発する。

2.目標達成型脳科学研究推進制度(3課題)〈応募22課題〉

哺乳類時計遺伝子の発現機構の解析に関する研究

 (研究担当機関、早稲田大学、神戸大学、山口大学等)
 時計遺伝子によって誘導される蛋白質の全スクリーニングを行い、時計遺伝子プロモーターの解明によって遺伝子発現制御機構の全貌や、時計情報の新規細胞内伝達機構から出力機構に至るまでの機構の解明を目指す。

幹細胞の制御、遺伝子導入及び増殖・分化誘導因子の応用による脳細胞移植法の確 立と障害脳機能の再建のための研究

 (名古屋市立大学、理化学研究所等)
 遺伝子導入した細胞及び神経幹細胞を用い、その増殖・分化の制御と活性化を行い、必要なドナー細胞を開発し、そのドナー細胞を用いて、新しい脳細胞移植法を開発することによって、障害脳機能の再建を計る確固たる方法として確立することを目指す。

視覚系におけるニューロインフォマティクスに関する研究

 (豊橋技術科学大学、理化学研究所等)
 脳神経系に関する細胞レベル・回路レベル・システムレベルの機構・実体を解析し、理解するために、脳科学の多様な知見を共通の情報として統合し、その数理モデルを構築することによって、脳神経系に関する知見の蓄積・統合・共有を学際的、国際的に進める研究基盤を確立し、脳神経科学と情報科学技術を融合した「ニューロインフォマティクス」を我が国に創出することを目指す。

3.ゲノムフロンティア開拓研究推進制度(4課題)〈応募17課題〉

日本人ゲノムの多型情報の集積と多遺伝子性疾患の疾患感受性遺伝子の同定に関する研究

 (厚生省国立循環器病センター研究所、徳島大学ゲノム機能研究センター等)
 「日本人ゲノムの多型解析」と「動物モデルの解析」の二つの方法を用いて、糖尿病など「ありふれた病気」の疾患感受性遺伝子を同定し、ゲノム多様性に関する研究基盤を確立する。

次世代DNAマイクロアレイシステムの開発

 (理化学研究所、早稲田大学、日本レーザー電子株式会社等)
 新しいセンシング法の原理の確立とそれによるマイクロアレイシステムの実証と、これに並行して新センシングシステムにも対応できるアレイヤーとスキャナーから構成される大容量高速マイクロアレイシステムを試作開発する。

細胞内でネットワークを構成しているタンパク質の相互作用を試験管内で解析する ための新しいツールの開発

 (株式会社三菱化学生命科学研究所、早稲田大学等)
 ネットワークを構成している遺伝子群を同定するために、cDNAライブラリーからタンパク質-タンパク質相互作用やタンパク質-拡散相互作用を指標にして、大規模、迅速にin vitroでスクリーニングする新しい操作法を開発する。

抗体を用いた遺伝子発現プロフィールの解析及びタンパク質の新しい分子機能解析 技術の開発

 (株式会社医学生物学研究所、藤田保健衛生大学総合医科学研究所、国立遺伝学研究 所等)
 抗体ライブラリーを利用して多数のcDNAの産物に対する抗体を調整し、線虫を例に遺伝子発現プロフィールを体系的に解析する。更に抗体を利用したタンパク質の新しい分子機能解析技術を解析する。

3.国研活性化プログラム

1.開放的融合研究推進制度(4課題(うち、FS研究1課題))〈応募11課題〉

分子・ハーモニック構造の構築と電磁場制御デバイスの開発

 (融合研究機関:金属材料技術研究所、通信総合研究所)
 既存の電子デバイスの限界を突破する新しい動作原理の開発を目指し、両研究所が有する有機分子合成技術と単一分子スケールでの評価・操作技術を融合し、分子から放出される単一光子状態を明らかにする。

水素・水和構造を含めた新しい構造生物学の開拓

 (融合研究機関:農業生物資源研究所、日本原子力研究所)
 従来のX線解析法、NMR法に加えて、中性子解析法により水素・水和構造を含む立体構造を決定し、タンパク質、核酸、ウィルスなどの構造構築原理、反応機構などを解明する。

話し言葉の言語的・パラ言語的構造の解明に基づく「話し言葉工学」の構築

 (融合研究機関:国語研究所、通信総合研究所)
 音声データの有効利用や福祉技術への応用を目的として、話し言葉を文字化すると欠落する情報も含めた話し言葉の構造を解明し、その特徴を利用した情報処理技術「話し言葉工学」を構築する。

2.重点基礎研究

 281テーマ

4.その他

1.調査・分析

  • (1)科学技術政策立案のための基礎調査
    • 効果的な研究開発推進方策の検討に必要な基礎的データの収集・分析
    • 重要研究分野における研究開発の推進方向等の探索
  • (2) 総合研究の課題設定のための調査:7課題

お問合せ先

科学技術政策局調整課

山下
電話番号:(内線:321)

-- 登録:平成21年以前 --