【基本情報】
番号 |
2023-03 |
不正行為の種別 |
二重投稿、自己盗用 |
不正事案名 |
会津大学教授による研究活動上の不正行為(二重投稿・自己盗用)の認定について |
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不正事案の研究分野 |
コンピュータ理工学 |
調査委員会を設置した機関 |
会津大学 |
不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名 |
会津大学 コンピュータ理工学部 教授(理事長兼学長) |
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不正行為と認定された研究が行われた機関 |
会津大学 |
不正行為と認定された研究が行われた研究期間 |
平成18年~平成28年 |
告発受理日 |
令和4年3月4日 |
本調査の期間 |
令和4年5月16日~令和5年2月13日 |
不服申立てに対する再調査の期間 |
令和5年3月17日~令和5年4月26日 |
報告受理日 |
令和5年5月31日 |
不正行為が行われた経費名称 |
科学研究費助成事業、研究成果展開事業研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP) |
【不正事案の概要等】
◆不正事案の概要 |
1.告発内容及び調査結果の概要 会津大学理事長兼学長(論文投稿時:コンピュータ理工学部教授)より12編の論文に自己盗用の疑いがある旨の自己申告があった。予備調査を行った結果、本調査を行うこととし、調査委員会を設置した。本調査の結果、論文4編に二重投稿、論文4編に自己盗用が行われたと認定した。 2.本調査の体制、調査方法、調査結果等について (1)調査委員会による調査体制 7名(内部委員2名、外部委員5名) (2)調査の方法等 1)調査対象 ア)調査対象者:会津大学 コンピュータ理工学部 教授(理事長兼学長) イ)調査対象論文:論文54編(自己申告以外に同様の論文がないか調査するため、教授が会津大学着任以降発表した、①教授が筆頭著者となっている論文、②教授が責任著者となっていて指導学生が筆頭著者の論文、③他の研究者が筆頭著者であるが教授の研究テーマに密接に関連する論文の、計54編を調査対象とした。) 2)調査方法 ・告発内容の確認及び予備調査結果の整理 ・著者の役割分担の整理 ・調査対象論文及び先行論文の比較・精読による学術的成果の検証 ・調査対象者からのヒアリング調査 ・調査対象論文の各投稿規程に応じた検証 (3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論 (結論) 1)認定した不正行為の種別 二重投稿、自己盗用 2)「不正行為に関与した者」として認定した者 会津大学 コンピュータ理工学部 教授(理事長兼学長) (認定理由) 教授自身の先行論文からの引用に不備があり、かつ先行論文と比較して新規性が認められない論文4編を二重投稿と認定した。また、自身の先行論文の記述や図表が適切な引用が付されないまま使用されており、引用に不備がある論文4編を自己盗用と認定した。 (不服申立て手続、再調査結果) 教授に調査結果を通知したところ、不服申立てがあり、再調査を行った。再調査の結果、論文1編の認定内容を二重投稿から自己盗用に変更した。また、自己盗用の認定にかかる表現の修正要求を認めることを決定した。 3.認定した不正行為に直接関連する経費の支出について 不正行為を認定した論文のうち4編は科学研究費助成事業及び研究成果展開事業研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)による研究成果であるが、不正行為を認定した論文の作成過程において、直接関係する経費の支出は認められなかった。 |
◆研究機関が行った措置 |
1.論文の取下げ及び訂正 二重投稿を認定した論文の取下げ、自己盗用を認定した論文の訂正を勧告した。 2.被認定者に対する大学の対応(処分等) 本事案等を踏まえた理事長選考会議による審議の結果、辞職勧告を行った。 |
◆発生要因及び再発防止策 |
1.発生要因 教授は、システム開発論文について先行論文から共通しているシステム部分を説明する際に、同じ文章や図表を引用の記載がなく再利用しても自己盗用には当たらず、また、引用の記載がなくとも一定程度の差分を加えれば二重投稿にも当たらないとの認識をもっていた。これらは、次の要因によるものと思われる。 ①特許を取得してから論文を執筆するというスタイルを基本とし、出願した特許が認められれば公知の技術となることから、それを周知するため繰り返し発表すべきとの自らの考えの下、その手段として論文を活用していたこと。 ②論文の投稿規程、出版社のマニュアル・ポリシー等の確認を怠ったこと。 教授は研究不正に関する考え方の変遷に注意を払わず、それぞれの論文投稿時にその都度確認すべき投稿規程等の確認を怠り、二重投稿、自己盗用となる論文を投稿し、公知の技術は引用なしに再利用しても構わないといいながら、論文のどの部分が公知の技術かを明示せず、特許の存在にも触れずに、先行論文との比較なしではその論文の新規性が図れない論文の執筆は、故意性は認められないが、研究者としてわきまえるべき研究倫理の基本的な注意義務が欠如していたと言わざるを得ない。 2.再発防止策 令和3年度に会津大学が実施した調査(2021-07)により講じた再発防止策について、令和4年4月より順次実施しており、各対策の有効性を検証しつつ、必要に応じ見直しを行っていく。 ○不正防止規程の見直し 捏造・改ざん・盗用以外の自己盗用や二重投稿などを具体的に類型化して規定することや、研究倫理教育の実効性を担保するための規定を追加するなどの改正を行う。 ○研究倫理教育の充実 不正行為の具体的な内容について、研究者(学生も含む)が十分に理解できるような研究倫理教育を行う。また、論文投稿時の剽窃チェックツールの導入など、共著者間でより丁寧なチェックを行えるような仕組みを構築する。 ○最新の研究倫理に係る情報の学内共有 各出版社等の投稿規程等の動向、投稿時におけるトラブル事例、研究不正事例など、最新の研究倫理に係る情報を学内で共有できるような仕組みを構築する。 |
◆配分機関が行った措置 |
特定不正行為が認定されていないため、研究者に対する措置は講じない。 |
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