愛知学院大学元講師による研究活動上の不正行為(捏造)の認定について

【基本情報】

番号

2022-04
2017-082020-05追加調査)

不正行為の種別

捏造

不正事案名

愛知学院大学元講師による研究活動上の不正行為(捏造)の認定について

不正事案の研究分野

保存治療系歯学

調査委員会を設置した機関

愛知学院大学

不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名

愛知学院大学 歯学部元講師、薬学部講師、歯学部元教授

不正行為と認定された研究が行われた機関

愛知学院大学

不正行為と認定された研究が行われた研究期間

平成22年~平成26年

告発受理日

2017-08追加調査)

本調査の期間

令和3年8月3日~令和4年2月22日

不服申立てに対する再調査の期間

報告受理日

令和4年5月24日

不正行為が行われた経費名称

科学研究費助成事業

 

【不正事案の概要等】

◆不正事案の概要

1.告発内容及び調査結果の概要
  平成29年度に行われた学術論文における不正行為に関する調査(2017-08)の結果、当該調査において不正行為(捏造、改ざん、不適切なオーサーシップ)が行われたと認定された学術論文以外の関連論文についても調査が必要とされ、令和2年度に、論文20編を対象に追加調査(2020-05)を行い、不正行為(捏造、不適切なオーサーシップ)が行われたと認定した。この追加調査の過程で別途調査することにした海外の研究者が共著者に連なっている論文1編について、追加調査を行い、捏造(特定不正行為)を認定した。
 
2.本調査の体制、調査方法、調査結果等について
(1)調査委員会による調査体制
     5名(内部委員2名、外部委員3名)
 
(2)調査の方法等
    1)調査対象
      ア)調査対象者:愛知学院大学 歯学部元講師、薬学部講師、歯学部元教授、その他共著者6名
      イ)調査対象論文:1編(海外の学術誌:2014年)
    2)調査方法
  ・対象論文の内容、図表の精査
  ・調査対象者への書面調査、聞き取り調査
  ・対象研究費の調査
 
(3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論
 (結論)
     1)認定した不正行為の種別
   論文1編において、捏造(特定不正行為)が行われたと認定した。
     2)「不正行為に関与した者」として認定した者
   愛知学院大学 歯学部元講師
     3)「不正行為に関与していないものの、不正行為のあった研究に係る論文等の責任を負う著者」として認定した者
   愛知学院大学 薬学部講師、歯学部元教授
 
 (認定理由)
  歯学部元講師が筆頭著者となっている論文において、PCR画像の反転によって作成された可能性の高いウエスタンブロット画像、捏造されたデータの二重使用、実験結果を示す棒グラフで誤差を示すバーの多くが識別できないほど異常に短く実際の実験データを反映していない可能性が懸念されるものがあったが、研究成果を示す全ての図表について、それらの作成に必要とされるオリジナルデータ等の証拠が全く示されず、データの最終的な取り纏めを行った歯学部元講師によって図表が捏造されたという疑念を覆すことができなかったことから、歯学部元講師による捏造(特定不正行為)を認定した。
  薬学部講師は、捏造が認定された歯学部元講師に対して指導的立場にあったが、実験データ等を全く確認することなく、歯学部元講師の作成した図表を基に論文執筆を進めた。歯学部元教授は、捏造が認定された歯学部元講師の所属する講座の主任教授として指導的立場にあったが、論文の途中までの内容確認を行ったものの実験データ等の確認はしておらず、論文の公正性を確保するための管理責任が十分に果たされていたとは言えない。以上のことから、それぞれ「不正行為に関与していないものの、不正行為のあった研究に係る論文等の責任を負う著者」として認定した。
 
3.認定した不正行為に直接関連する経費の支出について
   科学研究費助成事業による研究成果であるが、不正行為を認定した論文の作成過程において、直接関係する経費の支出は認められなかった。

◆研究機関が行った措置

1.論文の取下げ
 今回不正行為が認定された論文は、既に著者によって取り下げ済。
 
2.被認定者に対する大学の対応(処分等)
   被認定者に対する処分は、前回までに調査した21編の関連論文における不正行為の悪質性を勘案し、既に学内の懲戒委員会で検討済。また、大学所属の被認定者については、大学の行動規範を改めて周知徹底するとともに、研究倫理教育プログラムに参加させ不正再発防止に対処した。

◆発生要因及び再発防止策

1.発生要因
  ・対象論文は9名の著者によって執筆されているが、実際には、この論文に係る実験の遂行や図表の作成の全てを歯学部元講師が行い、図表に基づいて歯学部元講師と薬学部講師が中心になって論文の執筆を進めた。この際、薬学部講師はオリジナルデータ・実験ノート等を確認することなく作業を進め、発表データの正確性を担保するための努力を怠った。
  ・歯学部元講師及び指導的立場にあった薬学部講師に研究倫理に関する認識が欠如しており、これら研究者の下で研究に従事していた若手研究者も研究倫理に関する認識が不十分であった。
  ・大学の規程等について大学・学部・研究室レベルでの周知徹底が不十分であった。
 
2.再発防止策
  〇研究室レベルでの再発防止策
  ・実験条件等を正確に記録した実験ノートを作成し、オリジナルデータ等と共に保管すると同時に、それらを研究者間で確認する。
  ・論文公表に当たって責任著者はもとより、全著者は公表するデータの基となるオリジナルデータ・実験ノート等を再度確認し、公表しようとする内容の正確性を担保し、学術研究成果の信頼性及び公正性を確保するよう努める。
  ・論文公表に当たっては、正しいオーサーシップ(全著者が論文内容を理解していること、役割分担を明らかにすること、論文の最終確認をすること等)を尊重し実践する。
  〇学部・大学における再発防止策
  ・今回の不正行為の概要を周知するとともに、大学の行動規範を改めて周知徹底する。
  ・オリジナルデータ・実験ノート等の保管、それらの研究者間での確認、正しいオーサーシップ等を含めた研究倫理の向上のための取り組みを推進する。
  ・研究者を不正行為に追い込むような環境を学部内に形成しないよう努める一方で、研究活動上の不正行為に対しては厳正に対応する。

 

◆配分機関が行った措置

 科学研究費助成事業について、捏造と直接的に因果関係が認められる経費の支出はなかったため、返還を求めるものではないが、捏造が認定された論文は科学研究費助成事業の成果として執筆された論文である。このため、資金配分機関である日本学術振興会において、資格制限の措置を講じた。
  ・歯学部元講師(平成30年度~令和9年度(10年間)):不正事案2017-8 および2020-5により制限措置を受けている。今回の認定を踏まえた措置期間の変更はない。
  ・薬学部講師(平成30年度~令和1年度(2年間)):不正事案2017-8 および2020-5により制限措置を受けている。今回の認定を踏まえた措置期間の変更はない。
  ・歯学部元教授(平成30年度~令和1年度(2年間)):不正事案2017-8 および2020-5により制限措置を受けている。今回の認定を踏まえた措置期間の変更はない。 

お問合せ先

科学技術・学術政策局研究環境課

研究公正推進室
電話番号:03-6734-3874
メールアドレス:jinken@mext.go.jp

(科学技術・学術政策局研究環境課研究公正推進室)