持続可能な開発のための教育(ESD:Education for Sustainable Development)

1. ESD(Education for Sustainable Development)とは?

ESDはEducation for Sustainable Developmentの略で「持続可能な開発のための教育」と訳されています。
今、世界には気候変動、生物多様性の喪失、資源の枯渇、貧困の拡大等人類の開発活動に起因する様々な問題があります。ESDとは、これらの現代社会の問題を自らの問題として主体的に捉え、人類が将来の世代にわたり恵み豊かな生活を確保できるよう、身近なところから取り組む(think globally, act locally)ことで、問題の解決につながる新たな価値観や行動等の変容をもたらし、持続可能な社会を実現していくことを目指して行う学習・教育活動です。
つまり、ESDは持続可能な社会の創り手を育む教育です。

    ESDの概念図

2. ESDとSDGsの関係

ESDは、2002年の「持続可能な開発に関する世界首脳会議」で我が国が提唱した考え方であり、同年の第57回国連総会で採択された国際枠組み「国連持続可能な開発のための教育の10年」(2005-2014年)や2013年の第37回ユネスコ総会で採択された「持続可能な開発のための教育(ESD)に関するグローバル・アクション・プログラム(GAP)」(2015-2019年)に基づき、ユネスコを主導機関として国際的に取り組まれてきました。
2015年の国連サミットにおいては、先進国を含む国際社会全体の目標として、「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)が採択されましたが、SDGsは、「誰一人取り残さない」社会の実現を目指して、2030年を期限とする包括的な17の目標及び169のターゲットにより構成されています。ESDは、このうち、目標4「すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯教育の機会を促進する」のターゲット4.7に位置付けられました。
一方で、ESDは、ターゲットの1つとして位置付けられているだけでなく、SDGsの17全ての目標の実現に寄与するものであることが第74回国連総会において確認されています。持続可能な社会の創り手を育成するESDは、持続可能な開発目標を達成するために不可欠である質の高い教育の実現に貢献するものとされています。
これは、2019年の第40回ユネスコ総会で採択されたESDの新たな国際枠組み「持続可能な開発のための教育:SDGs実現に向けて(ESD for 2030)」(2020-2030年)においても明確となっています。ESD for 2030の詳細については、次項をご参照ください。

3. 持続可能な開発のための教育:SDGs実現に向けて(ESD for 2030)

「国連ESDの10年(DESD)」(2005年~2014年)及び「ESDに関するグローバル・アクション・プログラム(GAP)」(2015年~2019年)の後継として、2020年~2030年におけるESDの国際的な実施枠組みである「持続可能な開発のための教育:SDGs実現に向けて(ESD for 2030)」が、2019年11月の第40回ユネスコ総会で採択され、同年12月の第74回国連総会で承認されました。ESD for 2030は、ESDの強化とSDGsの17の全ての目標実現への貢献を通じて、より公正で持続可能な世界の構築を目指すものです。
ESD for 2030の採択を受けて、本枠組み下で取り組まれるべき具体的な行動を示すロードマップがユネスコにより公表されました。ロードマップでは、5つの優先行動分野(1.政策の推進、2.学習環境の変革、3.教育者の能力構築、4.ユースのエンパワーメントと動員、5.地域レベルでの活動の促進)及び6つの重点実施領域(1.国レベルでのESD for 2030の実施(Country Initiativeの設定)、2.パートナーシップとコラボレーション、3.行動を促すための普及活動、4.新たな課題や傾向の追跡(エビデンスベースでの進捗レビュー)、5.資源の活用、6.進捗モニタリング)が提示されるとともに、GAPからの主な変更点として、SDGsの17全ての目標実現に向けた教育の役割を強調、持続可能な開発に向けた大きな変革への重点化、ユネスコ加盟国によるリーダーシップへの重点化が謳われています。

4. 学校教育におけるESDの位置付け-新学習指導要領とESD

2016年12月に発表された中央教育審議会の答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について」には、「持続可能な開発のための教育(ESD)は次期学習指導要領改訂の全体において基盤となる理念である」とあります。答申に基づき策定され、 2017年3月に公示された幼稚園教育要領、小・中学校学習指導要領及び2018年3月に公示された高等学校学習指導要領においては、全体の内容に係る前文及び総則において、「持続可能な社会の創り手」の育成が掲げられております。詳細は以下をご確認ください。

5. ESDで目指すこと

(1)持続可能な社会づくりを構成する「6つの視点」を軸にして、教員・生徒が持続可能な社会づくりに関わる課題を見出します。
  持続可能な社会づくりの構成概念
  1. 多様性(いろいろある)
  2. 相互性(関わりあっている)
  3. 有限性(限りがある)
  4. 公平性(一人一人大切に)
  5. 連携性(力合わせて)
  6. 責任制(責任を持って)

(2)持続可能な社会づくりのための課題解決に必要な「7つの能力・態度」を身につけさせます。
  ESDの視点に立った学習指導で重視する能力・態度
  1. 批判的に考える力
  2. 未来像を予測して計画を立てる力
  3. 多面的・総合的に考える力
  4. コミュニケーションを行う力
  5. 他者と協力する力
  6. つながりを尊重する態度
  7. 進んで参加する態度

  ※出典:国立教育政策研究所「学校における持続可能な発展のための教育(ESD)に関する研究〔最終報告書〕」

6. ESDの実践にあたって

〇どのように学ぶのか
「主体的・対話的で深い学び」の視点から、不断の学習・指導方法を改善することが重要です。問題解決的な学習を適切に位置付けるなど、探究的な学習過程を重視し、学習者を中心とした主体的な学びの機会を充実し、体験や活動を取り入れるだけでなく、学習過程のどの部分にどのように位置付けたら効果的かを十分に吟味します。グループ活動を取り入れ、話し合い、協力して調査やまとめ、発表を行い、協同的な学びとします。

〇何ができるようになるのか
知識・理解に留まらず、学びを活かし、様々な問題を「自分の問題」として行動する「実践する力の育成」を目指します。また、「持続可能な社会の構築」という観点を意識することにより、児童・生徒の価値観の変容を引き出すことができます。

〇どのように取り組むのか
ESDを効果的に推進するためには、ESDの実施を学校経営方針に位置付け、校内組織を整備して学校全体として組織的に取り組むこと、ESDを適切に指導計画に位置付けること、地域や大学・企業との連携の視点を取り入れること、児童・生徒による発信と学習成果の振り返りを適切に行うことなどが重要です。


(参考)
「持続可能な開発のための教育(ESD)推進の手引」(令和3年5月改訂版) (PDF) PDF

〇ESD QUEST
ESDを分かりやすく説明するストーリーブックです。ぜひご活用ください。
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