別紙2
宇宙開発利用は、長期的視点から地球システムの持続的発展を目指すため、地球環境の現状と人類活動の及ぼす影響を全地球的規模で把握するために、もっとも有効な手段である。また、フロンティアとしての宇宙への挑戦を続けることは、国民に夢と希望を与えるとともに、国際社会における我が国の品格と地位を高めることにも大きく貢献する。
多くの人々に夢や希望を与えるべく、未知のフロンティアとしての宇宙に挑む。宇宙空間を探査し、利用することにより、宇宙の起源、地球の諸現象などに関する根源的な知識・知見を獲得する。さらに、地球の有限性が語られるようになった今日、宇宙からの視点を活用して、人類の活動と地球環境との共生を目ざすとともに、更なる飛躍を求めて、宇宙における人類活動の場を拡大する。
我が国の国際的地位、存立基盤を確保するため、諸外国における宇宙開発利用の状況を踏まえつつ、我が国は人工衛星と宇宙輸送システムを必要な時に、独自に宇宙空間に打ち上げる能力を将来にわたって維持することを、我が国の宇宙開発利用の基本方針とする。
そのため、技術の維持・開発においては、信頼性の確保を最重視する。また、重要技術の自律性を高めるため、適切な選択と重点化を行った上で、ソフト面も含めた基盤的技術を強化するとともに、技術開発能力を維持する。
なお、研究開発目標の設定や研究開発計画の策定に関しては、利用者の要求を十分に反映することが可能となる仕組みを構築する。
地球環境監視、国土保全、災害対策に資するもの、国際間で協力して推進すべき観測、開発リスクの高いセンサなどの開発については、原則として国が推進する。観測・センサ開発の進め方については、利用機関や関連コミュニティの要望を十分に踏まえつつ、適切な外部評価の下に透明性を持って決定するとともに、その成果の社会還元を明確にする。また、国が運用する衛星についても、そのデータの有償・無償の考え方について整理する必要がある。・・・(略)・・・
継続的で長期的なデータを取得するため、以下のような点に留意して、地球観測衛星の効率的な開発・運用を推進する。その際、2004年4月の地球観測サミットにおいて採択された10年実施計画の枠組文書にも留意する。
気候変動を監視しつつ、海水面、雪氷圏等への地球温暖化の直接的な影響を的確に把握する包括的な観測体制を整備し、人の健康、生態系に与える影響等の間接的な影響を含めた評価を行うことが必要である。また、地球温暖化に係る温室効果ガス及び関連物質の状態を包括的、継続的に観測し、地球温暖化のプロセスの理解を深め、気候変動の将来予測の不確実性を削減することが求められている。これらは、地球温暖化にかかわる現象解明・影響予測・抑制適応の知見の集積にとって不可欠であり、また広く地球環境の包括的な理解を深めるものである。
水・物質循環と流域圏研究領域においては、
が戦略重点科学技術である。健全な水・物質循環と持続的な水利用を実現するに当たって必要な自然と人間活動に関わる環境情報を獲得する課題、並びに、水資源、自然災害、生態系、食料生産、人の健康、都市問題や人間社会のあり方そのもの等、さまざまな社会問題と関わる重要な課題を選定した。
国際的には、「全球的な水資源管理の向上及び、水循環の理解」は我が国が執行委員国を務めるGEOSSの地球観測に関する政府間会合(GEO)において重点項目として認定され、水循環の全地球的な変動と流域・局所的な変動を統合した観測・研究・技術開発をGEOSS計画期間(2006〜2015年)に進めることが必要である。また、アジア、アフリカの途上国を中心として、水需要の増大に伴う水不足、水質汚濁と衛生問題、水災害の激化、自然生態系の破壊などがさらに深刻さを増しており、持続可能な開発のための世界サミット(2002年9月、ヨハネスブルグ)などでは、途上国を含む全世界で安全な水や適切な衛生施設へのアクセスを確保することが国連ミレニアム開発目標以来の課題となっている。一方で、我が国は世界に先駆けて急激な人口増加と経済発展を遂げ、今では人口の減少期に入っているが、流域圏・都市等の水環境、生態系環境においていまだ解決すべき多くの課題を抱えている。すなわち、世界的にも国内的にも、環境負荷が低くかつ災害に強い、自然と共生する流域圏を実現するための技術開発が喫緊の課題となっている。これらの研究開発は、我が国における水・物質循環と流域圏に関わる問題解決という社会・国民のニーズに応えるとともに、アジア途上国等に対して我が国のリーダーシップを確保する戦略の上で、水問題の解決は鍵となる技術である。