別紙3

BepiColombo(ベッピコロンボ)プロジェクトに関する宇宙開発委員会における過去の評価結果(抜粋)

●水星探査機計画の事前評価結果について(報告)

(平成15年6月24日 宇宙開発委員会 計画・評価部会 水星探査プロジェクト評価小委員会)

4.9 総合評価

「水星探査プロジェクト」に対する評価を次にまとめる。

 水星探査プロジェクトは、「宇宙科学研究の推進について」に挙げられている宇宙科学研究における3つの大目標のうち、太陽系探査科学に位置付けられる。水星探査は、高温・高放射線という厳しい環境下で行われることから、水星に辿り着いた探査機は1機のみであり、水星の固有磁場の成因、内部構造や表面地形の解明につながる科学的データが極めて乏しい。地球型惑星で固有磁場を有するのは水星と地球のみであるが、本プロジェクトでは、水星の磁場や磁気圏を高い精度で観測し、惑星の磁場・磁気圏の普遍性と特異性の解明に大きく貢献するとともに、内部・表層を観測することにより、太陽系形成における地球型惑星の起源と進化の解明を目指すものである。従って、太陽系探査科学において重要な科学的意義を持つと考える。本プロジェクトは科学的意義に重点がある。
 本プロジェクトの水星探査は、技術的意義として挙げられている耐熱技術、耐放射線技術、軽量化技術は厳しい環境で水星探査を可能とする技術的基盤であり、それぞれ技術的な見通しが得られている。また、将来の金星探査や木星探査の技術的基盤になる。
 これらの意義を受けて、科学的・技術的に具体的な目標が定められている。科学的目標として水星磁場の成因や水星磁気圏の解明等が挙げられているが、日本の得意とする分野であり適切である。また、技術的目標についても、これまでの経験を踏まえつつ、水星という非常に厳しい環境下で、観測が可能となるように設定されている。
 一方、社会的・経済的な意義という観点からも、トップレベルの宇宙科学研究を行うことにより、国民に夢と希望を与えるとともに、実践的教育機会を与えることにより、研究者・技術者の育成にも貢献すると考えられる。また、経済的意義の観点からみると、例えば、耐放射線半導体部品等の開発によって得られた技術の民間移転が期待されている。
 本プロジェクトは、ESA(イサ)との極めて強い連携で進められている国際共同プロジェクトとして、トップレベルの宇宙科学研究を行う大変よいモデルケースになっており、今後の国際共同プロジェクトにもつながる。また、日本がこれまでの科学的成果と技術力を生かし、リーダーシップを発揮して探査できるテーマでもあり、国際社会において、日本の宇宙科学研究への貢献を認知させることができる。システム選定においても、ESA(イサ)との役割分担により、得意分野を生かした観測が可能になっている。
 打上げ機や推進系はESA(イサ)が担当しているが、我が国担当分のリスクや費用は軽減されている。特に、費用については、期待される成果に比べて少なく設定されている。
 一方、本プロジェクトは、国際共同プロジェクトであるために、特に留意すべき点がある。まず、総合試験がESA(イサ)で行われることから、日本側での開発が1年程度早く終了させる必要があるなど大変厳しいスケジュールになっている。また、ESA(イサ)の作業の進捗状況により計画全体が左右されるため、ESA(イサ)の実施計画の遅れの可能性も考慮しつつ、プロジェクトを進めていく必要がある。プロジェクト全体のリスクはESA(イサ)担当分に比重が多くかかっており、我が国だけでは対処できないリスクを抱えている。
 プロジェクトの実施体制については、これまでの宇宙科学研究所の実施体制を踏まえており、現時点では妥当である。また、各階層の中での責任の所在も具体的に示されている。しかし、国際共同プロジェクトであることから、上記のようなリスクを抱えており、国内の研究体制を整えるとともに、ESA(イサ)との連携・調整を図ることが重要である。新機構発足後も、リスク管理等を考慮した実施体制を構築する必要がある。

 以上の評価に基づき、本評価小委員会は「水星探査プロジェクト」が「開発研究」段階に進むことが妥当であると判断した。

●推進部会 進捗状況確認結果

(平成16年8月17日 宇宙開発委員会 推進部会)

3.進捗状況の確認結果

(3)進捗状況確認結果

(概要・意義・目標等)

 本プロジェクトは、全体として2つの周回探査衛星と1つの着陸機から構成されており、JAXA(ジャクサ)は、1つの周回探査機(MMO)を担当することとなっていた。
 ESA(イサ)が担当するとされていた水星への着陸機(MSE)が断念されたことにより、熱流量/地震による水星内部構造の探査及び表面組成の直接計測が実施できなくなるが、これらは、ESA(イサ)が担当する周回探査機(MPO)とJAXA(ジャクサ)が担当するMMOの2つの周回探査機による観測によって適切に補完されることが可能であるとされている。
 従って、本プロジェクトの計画全体の目的は、このようなプロジェクトの一部変更が行われても、太陽系探査科学において重要な科学的意義を有しているものと考えられている。

(期待される成果の利用等)

 本プロジェクトにおいては、引き続き、本衛星の観測計画の策定と取得する科学データの利用計画の検討のため、国内外の科学・利用コミュニティとの適切な連携が図られている。

(開発計画等)

 本プロジェクトにおいては、平成22年度の打上げを目標に、平成16年度から開発研究に移行することを計画していたが、上記のようなESA(イサ)の計画変更に伴い、平成16年度は引き続き研究を継続し、打上げの目標年度を平成24年度に設定し直して本プロジェクトを進めることとしている。
 今後のスケジュールに関しては、ESA(イサ)と共同で実施する試験(母船熱構造試験、母船総合試験)の時期が明示されており、計画の変更以前に比して若干の余裕が生じるものであることから、JAXA(ジャクサ)としては、本プロジェクトの目的の達成に向けて特段の問題はなく、適切なものであると考えられる。
 一方、今回の本プロジェクトの計画変更が、ESA(イサ)の計画変更の影響を受けたものであることを踏まえ、JAXA(ジャクサ)は、このようなリスクも含め本プロジェクトの進行管理についてさらに配慮するとともに、今後のJAXA(ジャクサ)−ESA(イサ)間の本プロジェクトの推進に係る調整に引き続き十分配慮すべきである。

(実施体制)

 本プロジェクトについて、JAXA(ジャクサ)−ESA(イサ)間の役割分担等に変更はなく、実施体制は適切に維持されている。

(審議結果)

 これらの結果をまとめると、上記のようなESA(イサ)の計画変更に伴い、本プロジェクトの計画変更を行っても、本プロジェクトの意義は以前と変化することなく極めて重要であり、今後の計画が適切に設定されていることから、昨年度、宇宙開発委員会計画・評価部会において示された、本プロジェクトを開発研究段階に移行することが妥当との判断は引き続き有効であると判断される。