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2.   「みどり2」の運用異常時等の状況
2− 1. テレメトリデータ等の解析結果
 テレメトリデータ等から確認された「みどり2」の運用異常時等の状況は、以下のとおりである。
1  平成15年10月25日1時12分25秒頃、太陽電池パドルからの発生電流(PCU入力電流とシャント電流)が低下し始めた。

2  1時13分40秒頃から、1系及び2系のシャント電流がほぼ同期するかたちで、1回路(約100ワット)の倍数で低下し、1時15分10秒頃に0A(ゼロ・アンペア)となった。また、シャント電流が0アンペアとなった以降は、バッテリの充電電流が低下し、1時16分00秒頃よりバッテリからの電力の供給を開始した。
 なお、メインバスの電圧は、シャントがオフされることにより規定の範囲に維持されたが、その後はバッテリ電圧に依存して低下している。

3  1時16分30秒頃までに、1系と2系の発生電流の和は108アンペアから19アンペアまで減少し、その後19アンペアで維持された。
 なお、108アンペアから19アンペアへの発生電流の低下は、発生電力に換算して、約6キロワットから約1キロワットの低下に相当している。
 発生電力低下時の電源系テレメトリデータは、図2−2−1に示すとおりである。

4  この発生電流の低下する前後では、太陽電池パドルの温度、ストロークモニタ、張力モニタ等のデータに途絶や異常は観測されておらず、太陽電池パドルの挙動及び太陽追尾状態についての異常は見られない。
 一方、シャント1及びシャント2の温度は、発生電流の低下に伴い、低下している。また、パドル駆動機構の温度は、発生電流の低下を境に低下している(図2−2−2)。

5  1時13分から17分にかけて、「みどり2」のロール・ピッチ・ヨーの3軸全ての姿勢角で、1回帰前の姿勢と比べてわずかながら変動が生じている。また、同時期に軌道高度もわずかに低下している。詳細な評価結果は、図2−2−3に示すとおりである。

6  その後もバッテリからの電力の供給状態が続き、7時18分頃に低電圧(バッテリ1セルあたり1.1ボルト)を検知したことから軽負荷モードに移行した(図2−2−4)。
 なお、軽負荷モードでは、その状態を維持するためには、衛星の状態にもよるが、約1.7キロワットの発生電力が必要であったと考えられる。

7  マスパロマス局におけるデータ受信中の8時55分15秒、衛星の電源電圧低下に伴う通信機器動作停止により、「みどり2」からの通信が途絶した。
 なお、1時12分頃に起きた発生電力低下後、約4時間半分の全てのテレメトリデータ及びミッションデータは正常に取得されており(その後は通信途絶まで断続的に取得)、それらのデータからは、太陽電池パドルの太陽追尾制御も含め、姿勢制御系に異常は認められず、GPS信号を用いた高精度姿勢制御状態を維持していた。

2− 2. 運用異常時の宇宙環境
 平成15年10月23日に大規模な太陽フレアが発生したことが確認されている。
 米国海洋大気庁の気象観測衛星17号(NOAA−17)のプラズマ観測データを解析した結果、「みどり2」が運用異常時直前に横切った極域オーロラ帯では、静穏時の前日の結果と比べて30ケブ以上の電子の流量が2桁程度増加していた。
 また、豪州の人工衛星(FedSat)のデータによると、「みどり2」が運用異常時の直前に極域のオーロラ帯を通過する際、通常の10倍程度の大きな磁場変動(2000ナノテスラ)を受けたと考えられる(図2−2−5)。
 なお、「みどり2」に搭載された宇宙環境計測装置では、高エネルギー電子(0.4〜4.7メブ)、陽子及びヘリウムの計測データに大きな変化は見られなかった。

2− 3. レーダ映像による評価
 FGANの協力を得て、逆合成開口レーダにより、「みどり2」の撮像を3回実施した。この結果、「みどり」の機能停止(平成9年6月)で観察されたような太陽電池パドルのブランケット部が完全に破断している状況は観測されなかった(図2−2−6)。

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