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3.  「みどり2」の運用異常の原因究明
3− 1. 故障の木解析(FTA)
 テレメトリデータ等の解析を基に、発生電力が、約3分間に1系及び2系がほぼ同様に、約100ワットの倍数で、約6キロワットから約1キロワットに低下したことを頂上事象とする故障の木解析(FTA)を行った結果は、図2−3−1及び表2−3−1に示すとおりである。
 発生電力が、約3分間に約6キロワットから約1キロワットに低下した要因として、次の3つの異常事象が考えられる。
  a)  電力発生機能の低下
  b)  電力伝送機能の異常
  c)  電力制御機能の異常

  (1) 電力発生機能の低下の可能性についての検討
 電力発生機能の低下としては、太陽電池パドルの指向方向の異常、太陽電池セルの機能劣化が考えられる。
 「みどり2」の電力異常時には、テレメトリデータより、太陽電池パドルの発生電力の低下につながるような姿勢異常、及び太陽電池パドルの太陽追尾に異常がなかったことが確認されている。
 また、2−2で示したとおり、運用異常時に宇宙環境の変化が観測されているが、太陽電池セルを突然劣化させるような大量の放射線、大きな磁場変動ではなく、または大量のデブリ等は観測されていないため、発生電力を約6分の1にするような太陽電池セルの機能劣化の可能性はないと考える。
 さらに、太陽電池パドルについて、機械的な破断が発生した可能性を検討するため、太陽電池パドルの挙動を示す各テレメトリデータにより、太陽電池パドルの主要振動モード毎の固有振動数と強度について評価し、電力低下発生後に変化がないことを確認した。この結果より、太陽電池パドルの機械的な破断の可能性はないと考える。なお、この点については、2−3で示したとおり、FGANのレーダ映像より、「みどり」で観測されたような太陽電池パドルのブランケット部が破断しているような状況は観測されていない。
 以上のことから、電力発生機能の低下による電力低下の可能性はないと考える。

  (2) 電力伝送機能の異常の可能性についての検討
 電力伝送機能の異常が発生する部位としては、太陽電池パドル電力ライン、太陽電池パドルハーネス、パドル駆動機構電力ライン、パドル駆動機構接続ハーネス、電源系サブシステムでの異常が考えられる。

  (3) 電力制御機能の異常の可能性についての検討
 電力制御機能の異常としては、電源系の機器の故障による制御の異常が考えられる。
 「みどり2」の電力異常時には、発生電流の低下とともにシャント回路は順次オフされ、メインバスの電圧は正常に制御されている。また、シャント電流が0アンペアとなった後も、バッテリの充電電流制御によりメインバスの電圧を正常に制御しており、電力制御機能は設計どおり動作している。
 このことから、電力制御機能の異常による電力低下の可能性はないと考える。

  (4) まとめ
 以上の結果から推定すると、発生電力が、約3分間に1系及び2系がほぼ同様に、約100ワットの倍数で、約6キロワットから約1キロワットに低下した要因は、電力伝送機能の異常によるものである。

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