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JAXA(ジャクサ)と製造企業の間で役割・責任を応分かつ明確に分担するように見直し、JAXA(ジャクサ)は我が国における宇宙開発の中核機関として担うべき役割・業務に能力、資源を集中し、製造企業も能力に見合った役割と責任を負う体制に移行することが必要である。
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そのため、今後のロケット及び人工衛星の開発・製造の体制については、JAXA(ジャクサ)が主体となり製造企業と協力して、それぞれの実状に即したプライム制(製造企業が一元的に全体をとりまとめる体制)の導入を進めることが適当である。具体的には、
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プライム化の単位としては、サブシステムの単位と全体システムの単位が考えられるが、第1段階として、サブシステム単位でのプライム化を図るととともに、次の段階として、対象となるシステムの開発・製造過程の実状に応じ、全体システムについてプライム化するか、JAXA(ジャクサ)自らとりまとめを行うかを判断していく必要がある。
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プライム化におけるJAXA(ジャクサ)と製造企業の役割分担は、
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開発の初期段階で具体的な仕様を決定する段階である基本設計まではJAXA(ジャクサ)が責任を負う体制とする。 |
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基本設計に続く、製造に直結する開発段階である詳細設計(そのための試作品の製造を含む)と製造段階(飛行用機体・部品の製造)においては、製造企業がプライム制により責任を負う体制とし、JAXA(ジャクサ)は詳細設計により実現される機能等が基本設計で設定した仕様を満たしているかどうかの十分な確認を行うにとどめることとする。 |
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以上のJAXA(ジャクサ)と製造企業の責任分担は契約によって明確にする必要があるが、基本設計と詳細設計の各段階における現場の技術者の作業においては、両者間で設計思想を共有しながら、密接な協力によってこれを進めることが重要である。
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プライム制を導入することにより、
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開発段階において、製造に直結する詳細設計をプライム製造企業がとりまとめることにより、当事者としての責任意識が明確になるとともに、開発と製造の一体的な取組みが可能となり、一層の信頼性の向上が期待される。また、JAXA(ジャクサ)も限られた資源を主として基本設計までの開発段階に集中することができ、基本設計自体のシステム信頼性や技術水準の向上の実現が期待できる。 |
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製造段階では、製造に関する技術力、人材、及び経験が豊富な製造企業に責任を一元化することにより、部品、サブシステム、そしてシステム全体の製造の一層の信頼性の確保が期待できる。
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ここで示す対策は、上述のとおり、最終的には当事者間の契約において責任と権限が明確に定義される必要があり、そこに不明朗さを残さないように、関係者間での十分な調整を要請する。
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H-Aロケットについては、プライム制導入に向けた取組みを現在進めているところであり、今回の6号機の打上げ失敗を踏まえて、その取組みを強化する必要があるため、今後の対策について以下に詳細に提言することとする。
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なお、ここで示す対策を実施するに当たり、製造企業にとっては、製造企業が負う役割と責任が事業として継続的に成り立つことが不可欠であり、政府及びJAXA(ジャクサ)は、製造企業において必要な体制、人材、技術を維持するという観点からも、打上げ機会の確保等に十分配慮する必要がある。
ア. |
H-Aロケット
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H-Aロケットの開発体制
今後の開発については、従来のように能力を超えてJAXA(ジャクサ)に責任が集中する形態ではなく、JAXA(ジャクサ)の責任の範囲を絞るとともに、製造企業もその能力に相応しい責任を分担する形態で進めることが適当である。
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プライム化の実現>
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H-Aロケット能力向上型の開発については、開発段階においてもプライム制を導入し、JAXA(ジャクサ)は基本設計に責任を負い、製造に直結する詳細設計はプライム製造企業が責任を負う体制とすることが適当である。
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プライム化までの補完的措置>
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6号機の打上げ失敗を受けてJAXA(ジャクサ)が行うH-A再点検や設計見直しについては、三菱重工業(株)(以下「MHI」という)が事実上のプライム製造企業として、これまでの設計・製造経験を基に主体的に参画し、H-Aの設計(変更を含む)に関する信頼性を確認することが適当である。
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将来プライム製造企業として製造責任を一元的に負うMHIが設計の信頼性について確認を行うことから、再点検や設計見直し作業と製造との間を埋め、ロケット全体の信頼性の向上に寄与することが期待される。
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H-Aロケットの製造体制
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プライム化の実現>
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今後のロケットの製造については、RSCに代わって、MHIが製造責任を一元的に負うプライム制へ移行することが適当である。これにより、JAXA(ジャクサ)は、製造への関与は限定し、その能力及び資源を開発の役割に集中することが可能となるととともに、技術力、人材、経験が豊富なMHIが製造に一元的に責任を負い、ロケットの一層の信頼性の確保を図ることが期待される。
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プライム化を適切に進めるためには、JAXA(ジャクサ)とMHIの責任分担、MHIと各企業の間の情報開示ルール、関係者間の損害の負担等の重要な事項について整理し、契約に反映することが必要である。
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プライム化までの補完的措置>
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既にRSCにより製造が進められているロケットについても、現行のRSCによる信頼性確認に加え、今後の製造工程についてはMHIが信頼性を確認する体制を構築することが適当である。
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技術力、人材、経験が豊富なMHIが信頼性確認に加わることにより、一層の信頼性向上が図られることが期待できる。
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イ. |
H-Aロケット以外のロケット
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将来、H-Aロケットの後継となるロケットを開発する場合等、初期段階においてはサブシステム単位でリスクの高い開発が必要となると考えられる。その場合、JAXA(ジャクサ)と製造企業の責任分担についてはサブシステム単位でのプライム制の考え方のもとに進めることが適当である。
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さらに、サブシステム段階の開発を経て、ロケットの全体システムの開発を行う段階においては、全体システムでのプライム制に移行することが適当である。
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ウ. |
人工衛星
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人工衛星の場合、まず、搭載される観測センサや通信中継器等のミッション機器については、個々のミッションの要求に応じたものが必要であり、それに対応できる製造企業が担当することが必要となる。他方、ミッション機器を搭載するバスシステムについては、信頼性の高いものを開発し、継続して用いることが基本であるので、JAXA(ジャクサ)と製造企業の責任分担体制は、開発(設計を含む)段階から、ロケットと同様の考え方によることが基本と考える。
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この考え方を踏まえ、今後、JAXA(ジャクサ)の人工衛星開発に関し、ミッションの性格、人工衛星の規模に応じたJAXA(ジャクサ)/バスシステム担当製造企業/ミッション機器担当製造企業の役割についてさらに検討を行い、適切なプライム制とJAXA(ジャクサ)の関与の在り方について考え方を整理し、平成17年度以降に開発に着手する人工衛星に適用していくことが適当であると考える。 |
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