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第1章 今後の改革に向けた基本的考え方


 宇宙開発は「はじめに」で述べたように極めて厳しい技術的条件を満足することが求められることから、そのプログラムの実施には相当のリスクが内在している。宇宙開発は困難な技術的課題への挑戦の連続であり、失敗が成功への最大の糧であるとも言える。しかしながら、我が国の宇宙開発が既に「開発」から「利用・実用」の時代へ入り始めている現在、信頼性の向上は従来にも増して重要な課題となっており、技術的な課題だけでなく、失敗の背後にある体制・システムの問題にも対処し、総合的に信頼性を向上していくことが強く求められている。

 このため、本特別会合においては、宇宙開発委員会宇宙開発基本問題懇談会報告書(平成11年5月)及び宇宙開発委員会特別会合報告書(平成12年5月)の2つの報告書における提言についてのフォローアップを行うとともに、H-2Aロケット6号機の打上げ失敗の原因である固体ロケットブースタの開発過程を事例として、事故・トラブルの背景的な要因分析を行い、次のとおり判断した。

提言には重要な事項がよく網羅されているが、抽象的な指摘もかなり含まれている。これらについては、JAXA(ジャクサ)が独立行政法人化された現在においては、提言の精神を踏まえてJAXA(ジャクサ)が自らの裁量で実施していくことが期待できるもの、あるいは、産業界等において必要な措置を図っていくことが期待されるものが含まれている。

提言の実施状況については、以下の例に見られるように、着実に実施に移されてきたもの、十分実施されていないものなど、程度の差があるとともに、現在の状況に鑑みれば、さらに充実すべき点があると考える。

プライム契約化による製造企業責任の明確化について、H-2Aロケット標準型の民間移管が決定され、その準備が着実に進められている等、提言を受けた取組みがなされていると考えるが、H-2Aロケット6号機の打上げ失敗をも踏まえれば、第2章1.で述べるように、JAXA(ジャクサ)と製造企業との責任体制について、信頼性の一層の向上に向けた最適な体制の構築のためさらに改革を進める必要がある。

研究開発活動の強化として、統合前の宇宙3機関が連携したエンジン中核研究開発体制の整備、H-2Aロケット開発における体制や試験等の充実、独立評価体制の強化が図られてきた。しかしながら、H-IIAロケット6号機の打上げ失敗の原因である固体ロケットブースタの開発過程を事例として、事故・トラブルの背景的な要因分析を行ってみると、第2章2.で述べるように、JAXA(ジャクサ)における取組みには十分でない側面があった。

 こうした状況を踏まえ、本特別会合としては、信頼性向上のために速やかに実施すべき改革事項として、製造企業も含めた責任体制の潜在的弱さの克服のための方策、JAXA(ジャクサ)の体制強化の方向性を示すことが急務との認識に立ち、特に重要と考えられる事項として、できる限り具体的な対策を提言することとした。

 さらに、本特別会合で出された指摘のうち、国民から信頼される宇宙開発の実現に向けて、今後、JAXA(ジャクサ)及び関係機関に着実な取組みを求めるべき事項を助言として記述した。

 本特別会合としては、提言の確実な実施を確認するため、その実施状況をフォローアップすることとし、本年秋頃を目途に会議を開催して、実施状況について関係者から報告を受けることとする。


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