5.新時代の産学官連携の構築に向けて

 本委員会のこれまでの議論を踏まえると、新しい時代における産学官連携を推進していくための観点を以下の六つに集約できる。

1)個人の能力が最大限に発揮できる環境の整備

 産学官の各セクターにおいて、独創的なコンセプトや技術シーズ創出の担い手となるべき「個人」の能力が最大限に発揮できる環境を整備することが基本である。例えば、大学等においては、幅広い分野における多様な研究の機会の確保と国際水準を上回る強力な研究支援、評価に基づく適切な研究費の配分、成果を反映する給与体系の導入、研究成果の社会還元に対する誘因の付与、ルール化された兼業の推進、任期付き任用・公募制と業績評価の活用、人材の流動化、国際的な人材活用、大学院生への奨学資金支援の強化、大学院生の適切な協力、研究支援体制の強化、教職員の意識改革など、意欲的な「個人」が柔軟に活動できる研究環境の整備等が必要である。

2)競争原理に基づく大学等における高度な教育・研究の実施

 評価に基づく競争原理の徹底により、「知」の源泉である大学等の教育・研究が世界的にも高い水準において実施され、優れた成果を生み出すような環境を整備することが必要である。そのためには、まず、大学等において第三者機関による公正な教育・研究評価の強化が必要である。同時に、研究者の自由な発想と研究意欲に基づく「基礎研究」と大学院教育など「教育」への十分な投資の確保が求められる。また、私立大学への多様な資金の導入を促進するための所要の条件整備等による大学間の公平な競争環境の整備が重要である。さらに、第2期科学技術基本計画に基づく競争的資金と間接経費の増加、最先端の研究施設の重点的整備、情報公開の徹底などが必要である。

3)組織体としての大学等における経営の充実

 上記1)及び2)の研究環境を実現するために、組織体としての大学等における経営の充実が必要である。各大学等の自主・自律性を高めた上で、組織・人事・会計の柔軟な設計・運用、学長のリーダーシップの強化と学部間の連携・流動の推進、研究支援・事務機能の強化、コーディネート機能の充実、利益相反等利害調整ルールの確立、研究情報公開の促進などを実現していくことが不可欠である。法人化後の国立大学における産学官連携組織(リエゾン、TLO等)の在り方、大学における知的所有権等の在り方等に関する検討も必要である。

4)産学官連携による国際競争力向上のための企業の協力

 中・長期的な戦略も視野に入れた産学官連携による国際競争力向上のために企業の積極的認識と協力を求めたい。日本の大学等と連携し、これを支援することは、大学等の研究水準の向上を通じて、また、それに伴い特に大学においては優れた学生が育てられることとなり、優れた研究成果のみならず人材育成の強化を通じて、企業が総体として二重の利益を受けることになろう。そのためにも、国内の大学等における教育研究情報の公開・評価の進展や産学官連携の制度改善への理解、ルールに基づく産学官連携活動への積極的参加が期待される。共有特許の取扱いなどにおける大学の特性に配慮した連携、大学等への寄附講座・建物、産学共同施設の整備等の財政的支援や、連携大学院の促進、大学等への経営人材、専門家等の派遣、教育プログラムの産学共同開発への協力、インターンシップの受入れ、地域産業関連団体等での産学官連携窓口の整備などが考えられる。

5)研究開発過程における産学官のルールの共有

 産学官の間では、互いの役割の相違を明確にしつつ、研究開発過程におけるルールを共有することが必要である。具体的には、契約に基づく連携の推進、成果を得るまでの研究期間の相互確認、知的所有権等の確保と活用のための取決めの整備、一定期間の守秘、利益相反問題に対する理解などを進めることが肝要である。

6)先端技術分野における新産業の創出

 産学官連携の具体的な成果として、先端技術分野における新産業創出を促進する必要がある。このためには、ベンチャー起業の支援、起業家の育成、経営専門家の育成・確保が重要であり、また、特に初期段階の企業や起業家への資金の提供や資金調達のための支援が不可欠である。さらに兼業や休職の活用、大学等の技術による新技術製品等を他の研究開発活動の中に取り込み活用するシステム、そしてリスクを許容し、再起を可能とする法制度や社会的風土、さらにアカデミア(学問の府)が起業にかかわることを受け入れる意識改革などの社会的な環境が醸成されなければならない。

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研究振興局研究環境・産業連携課

(研究振興局研究環境・産業連携課)

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