「新時代の産学官連携の構築に向けて ~大学発の連鎖的な新産業の創出を加速するために~」  はじめに

 新世紀において、「知」の創造とその活用を図ることが、知的存在感にあふれ、さらに国際競争力のある国を実現していくためには必要不可欠である。大学(大学共同利用機関及び高等専門学校を含む。以下同じ。)では、研究者個人の自由な発想と研究意欲に基づく基礎的・長期的な創造段階の研究が行なわれるとともに、社会的な諸課題の解決に短期的に適用できるような展開段階の研究がなされており、両者は、継続的な「知」の創造と活用における車の両輪のような存在となっている。前者の自由な発想に基づく創造的研究は、未来を切り拓く「知」を創造するとともに、画期的なコンセプト(法則・原理の発見、知識の体系化やシステム等の「概念」や「知見」)を生み出すというブレークスルー(飛躍や打開)を実現して、中・長期的な視野から社会の発展に貢献する極めて重要な活動である。他方で、後者の社会的な諸課題の解決に向けられ得る展開研究は、技術シーズに直結する実用的なコンセプトを生み出して新産業の創出に貢献し、短期的に国の国際競争力を高める力を持つ。いわゆる政府系試験研究機関(国及び地方公共団体の試験研究機関並びに試験研究に関する業務を行なう独立行政法人及び特殊法人等をいう。以下同じ。)もそれぞれの設置目的に沿って、こうした研究機能を果たしている。
 もとより、大学や政府系試験研究機関(以下「大学等」という。)は、社会の発展に資するブレークスルーを引き起こす創造力を有しつつ、個性的で優れた人材の育成に努力を払わなければならない。言い換えれば、大学等は、教育・研究活動を通じて、社会における技術やビジネスのイノベーション(革新)の基盤を形成する。新しい「知」の時代における企業、大学等の産・学・官の連携・協力(以下「産学官連携」という。)は、このような大学等の教育・研究の活性化や新産業の創出等による国家・社会の発展にとって極めて有効なシステムであり、産・学・官それぞれの役割を明確にしつつ、一層強化されることが必要である。
 国際競争力を持った産学官連携やそれに伴う新産業の創出・技術革新のためには、独創的なコンセプトや技術シーズ創造の担い手となる「個人」の能力が最大限発揮でき、組織間での「個人」の移動や「知」の移転が容易になるようなシステムや社会的環境の整備が必要である。また、これまでの産学官連携は、大学等においては、主として研究者の個人的活動にゆだねられてきたが、連携をより効果的に行なうために、今後は組織的な取組が必要となっている。さらに、産学官連携の前提として、大学の自主・自律性を飛躍的に高めるとともに、評価に基づく競争原理の導入を徹底することにより、我が国において「知」の源泉としての世界最高水準の大学群が発展することが不可欠であり、このための大学システム全体の改革が求められる。したがって、新しい「知」の時代における産学官連携の構築に向けては、特に以下のような観点が重要であると考える。

  1. 個人の能力が最大限に発揮できる環境の整備
  2. 競争原理に基づく大学等における高度な教育・研究の実施
  3. 組織体としての大学等における経営の充実
  4. 産学官連携による国際競争力向上のための企業の協力
  5. 研究開発過程における産学官のルールの共有
  6. 先端技術分野における新産業の創出

 こうした認識の下に、本委員会では、産学官連携に関する政府のこれまでの検討・提言、施策や連携の実情を顧みつつ、新しい時代における大学等の研究開発成果と産業界の企業化ニーズが相互に刺激しながら、連鎖的な技術革新やこれに伴う新産業の創出につながる産学官連携システムの在り方と必要な施策を検討し、ここにその中間的な取りまとめを行った。

 

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