地震及び火山噴火予知のための観測研究計画の実施状況等のレビューについて(報告)【概要】

(科学技術・学術審議会 測地学分科会)

●レビューの背景

○ 現在の我が国の地震及び火山噴火予知を目指した観測研究は、平成20年7月の科学技術・学術審議会の建議により策定した「地震及び火山噴火予知のための観測研究計画」(以下、「現行計画」)により推進。

○ 現行計画の実施期間は、平成21~25年度であることから、次期計画策定に向けて現行計画の実施状況、成果及び今後の課題についてレビューを実施。

○ 平成23年東北地方太平洋沖地震は、単純なアスペリティモデルでは説明できないことから、現行計画において不足している点を明確にし、別途章を設けてレビューを実施。

●おもな成果

○ 西南日本のプレート境界では、短・長期的ゆっくり滑り、深部低周波微動、浅部超低周波地震のような深度に応じた多様な滑り現象とそれらの相互作用を発見。

○ プレート境界で繰り返し発生するM5前後の地震のアスペリティの中に、幾つかの小さなアスペリティが存在する階層構造を発見。

○ 地下構造解析から、内陸地震の震源断層下において地殻流体を含むせん断帯の存在を見出し、内陸地震の発生モデルを構築。

○ 爆発的噴火が頻発する火山において、噴火直前の山体の膨張様式(膨張速度の時間変化)と噴火様式との相関関係を発見。爆発的噴火の発生時期と規模の直前予測の可能性を示唆。

○ 伊豆半島東方沖では、地殻変動から推定されるマグマの貫入量の時間変化と群発地震の活動度がほぼ比例することを明示。火山活動が地震活動に及ぼす影響についての理解が進展。地震活動情報の発表に応用。

○ 日本列島域の地震波速度や電気比抵抗構造の高分解能化により、プレートの沈み込みに伴う水の供給、マグマの発生・上昇経路の理解の進展。

○ 宇宙技術や海底観測などのモニタリング技術の高度化により、データベースの充実、地震発生サイクル理解の深化、シミュレーション技術の高度化、噴火シナリオの精緻化を推進。

○ 陸域の高密度な地震及びGPS観測網に加え、震源域直上の海底地震計や海底地殻変動の観測網の展開により、平成23年東北地方太平洋沖地震の詳細な滑り分布や、本震発生に至る過程を精度良く把握。

○ 東北地方太平洋沖地震発生前後の地震の発震機構解の解析により、プレート境界の固着の強さを推定。

●今後の課題

○ 東北地方太平洋沖地震発生後はM7クラスを含む活発な余震活動が見られ、震源域近傍では余効滑りが継続し、内陸地域や火山周辺の多くの地域で地震活動が活発化。M9クラスの超巨大地震の発生機構や地震後の地殻の状態を詳細に理解する観測研究の推進が必須。

○ プレート境界の滑り遅れの蓄積領域を把握するため、海域観測技術の高度化に基づいたモニタリングや、地形・地質学的手法による地震発生履歴研究の強化。

○ 東北地方太平洋沖地震発生後に見られたような地震活動が火山活動に及ぼす影響についての研究の推進。

○ 火山噴火シナリオの高度化のため、組織的な地質調査による噴火履歴情報の質と量の向上と、比較研究による噴火の多様性の理解の深化。

○ 超巨大地震や巨大噴火のような低頻度大規模現象の理解のための観測研究も強力に推進。予測の基礎となる地震発生や火山噴火に至る過程を新しくモデル化することが必要。

○ 観測データの即時処理に基づく津波予測の高精度化などの災害誘因(ハザード)の評価や防災情報の高度化を目指した研究にも一層努力することが必要。

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研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)