日本測地学会

地震及び火山噴火予知研究計画の次期計画検討にかかるアンケート調査結果

実施機関名(氏名) 日本測地学会(大久保修平) 

【様式3】(なお、様式1については特段の意見はありません)

1. 若手研究者の確保も含めた人材養成への対応

 大学生や大学院修士課程学生が将来の生活設計について不安を感じ、大学院生の博士課程進学にかげりが見られる。入口(博士進学)が減少の一途をたどるのを防ぐには、出口(ポスドク)にきちんとした施策をすることが肝要である。具体的には高度研究支援職のようなパーマネントの職を公的機関が設けることなどが考えられる。

2. 観測研究の縮小が危惧される観測・監視体制の維持への対応

  •  従来からの坑道を利用した地殻変動連続観測については、GPS測地観測網が全国を覆っている現在、不要論も出ている。しかし、歪みを高いサンプリング周波数で高精度に直接観測しその結果を直ちに入手することはGPSでは無理である。伸縮計で代表されるデータでは、巨大地震発震機構の即時推定や、周期の長い微小な信号の解析から新たな現象の発見も期待される。そのため質の高いデータが得られる地殻変動連続観測点を精選し、維持していくことが必要だと考える。そのためには、各機関・大学の枠を超えた全国的な合意と協力のもとで、現資産の選択的な活用を軸に進めることが現実的な方策だと考える。
  •  総合科学技術会議が決定した『地球観測の推進戦略』では、次のような指摘がなされている。
    •  『国際研究プロジェクトとして研究開発機関・大学等で実施されている観測の多くは、個々の研究者あるいは比較的少人数の研究グループが対応しており、長期継続的な活動は必ずしも担保されていない。国際研究プロジェクトに係る観測活動に関しては、国としての対応の重要度を評価し、重要なものについて関係府省・機関の組織的な対応を強化して、長期継続的な運用が可能となるような体制を確保する必要がある。これは国際社会の信頼を得る上でも重要である。』
     ここで指摘されている内容は非常に重要な視点であり、新しく制定される地震及び火山噴火予知研究計画においても十分尊重されるべきである。地震及び火山噴火予知の観点では、とくに国際測地学協会(IAG)のもとで組織されているIGS(International GNSS Service)、IVS(International VLBI Service for Geodesy and Astrometry)、ILRS(International Laser Ranging Service)の国際研究プロジェクトが実施する長期継続的な活動がこれにあたり、これらの観測を実施している研究開発機関・大学等が長期的に安定して観測を実施するための施策を継続すべきである。

3. 国際共同研究の推進への取り組み

  •  研究計画の中で取り上げられている『3.新たな観測・実験技術の開発(3)宇宙技術等の利用の高度化』を実現するためには、国際共同研究を積極的に推進することが特に重要である。国際測地学地球物理学連合(IUGG)およびその傘下にある国際測地学協会(IAG)では、宇宙測地技術やリモートセンシング技術を統合的に連携し、より深い地球科学の理解に向けたGGOS(Global Geodetic Observation System)計画を提唱し、各国の研究機関に積極的な参加を呼びかけている。GGOSの概念を実現することは、地球基準座標系の高度化やさまざまな地球物理モデルの高精度化など、地震及び火山噴火予知計画を推進する上で極めて重要な役割を果たすことから、我が国の研究機関は連携してGGOS計画の推進において国際的リーダーシップを発揮するべきであり、政府はそのための予算措置に配慮すべきである。
  •  地震・火山噴火予知目的の研究に対しては、人工衛星搭載の合成開口レーダーのデータが原則無償で提供されるようになれば、研究フィールドは一気に海外に広がり、国際共同研究も大いに推進されていくと期待できる。そのためには、JAXA(ジャクサ)の参画も考慮に入れて、SARデータの提供体制を構築すべきと考える。

4. 研究成果の社会への還元(国民や防災担当者への理解増進を含む)

  •  学会講演会を地方で開催する場合、当学会ではアウトリーチ活動として、一般向け講演会を別途開催している。文科省後援名義を借りて、複数講演のうち、少なくともひとつは地震や火山噴火の話とするようなことも考えられる。

5. その他

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