日本地震学会

(日本地震学会からの回答)

「地震及び火山噴火予知研究計画の次期計画検討にかかるアンケート調査」

 地震予知検討委員から、地震学会会員からの意見を以下のように集約したので報告する。

 科学技術・学術審議会測地学分科会地震部会/火山部会地震及び火山噴火予知観測研究に関する次期計画検討委員会主査(平田直地震研教授)から地震学会に、「地震及び火山噴火予知研究計画の次期計画検討にかかるアンケート調査」の依頼があり、9月12日の理事会で、まとめを地震予知検討委員会に委ねることが決定された。
 地震予知検討委員会で検討の上、9月25日、地震予知検討委員会からの意見募集を地震学会のHPに掲載し、代議員MLにも流した。
 締め切りの10月10日までに14通、締め切りを過ぎて2通の意見が寄せられた。ただし、学会の会員でないものが1通あった。添付ファイルは、それぞれの回答から氏名と挨拶の部分を削除したものである。
 なお、以下の点をお断りしておきたい。意見は多岐にわたるが、寄せられた意見は、現在の地震予知研究計画に加わっていない会員からの声が主なものであり、地震予知検討委員会は、それをとりまとめただけというべき性質のものである。地震予知検討委員会から2007年5月に出版した「地震予知の科学」(東大出版会)は、「地震及び火山噴火予知研究計画の次期計画」に対する本委員会の意見を多く含んでいるので、そちらも参照されることを希望する。

 以下では、寄せられた意見に共通する要素、及び重要だと思われた意見のみを特に列記しておく。それぞれの詳細については、各意見を参照されたい。

  1.  基礎研究は重要であるが、何らかの形で予測を志向した研究でなければ、科研費と別枠の事業費でやる意味はないのではないか。
  2.  地震及び火山噴火予知研究計画が目標としているような予知は非常に長い年月がかかる。そのことを国民に積極的に提示し、予知研究から得られた最新の地震観に基づき、被害を最小限に減らすことを国民と共に考えることに時間とエネルーギの相当部分を割くようにした方が良いのではないか。
  3.  「次期地震予知研究計画・火山噴火予知研究計画策定の基本的考え方」は、「現行の計画を途切れさせることのないよう着実に引き継ぐ」ことが重要だと謳っているが、研究の方向を守るための組織を作ることではなく、「研究をしっかりできる環境を作ることが重要」であろう。
  4.  地震学や測地学的方法では、前兆現象の把握が極めて困難であることを認めざるを得ない。地震学や測地学以外の観測研究方法を総動員するべきである。
  5.  地震学や測地学以外の方法として多くの人が挙げているのが、地球電磁気等の研究である。この点について、議論が分裂しているように思われるが、地震、測地、地球電磁気等の並行観測など、積極的な解決策が望まれる。
  6.  地震学、測地学、地球電磁気学など異種の観測の総合的な解析を推進すると共に、必要に応じて、新たな観測手法として、超長スパン・レーザー歪み計などの開発も行い、信頼できる予兆の観測体制を積極的に追求すべきでははないか。
  7.  研究予算などに大きな偏りがある。一転突破的な小規模なアイデアにも予算配分するなど、裾野を広げる努力が必要ではないか。
     特に人材の育成が問題。地震学周辺分野で、地震学に新たな知見をもたらす可能性のある研究分野のポスドクの就職が極めて困難な状況である。
  8.  大学は、地震発生後の「事後観測」作業から撤退し、観測コンサルタント会社などに業務委託し、研究に専念した方がよい。
  9.  海外の研究者によるHi-netのデータを使った論文が目立つ。それ自体は良いことだが、言い換えれば、面白いところは海外にとられている。観測網の管理の追われて、本来の研究に手が回らない研究者が増えているせいかと危惧する。
  10.  開発途上国からの観測要員を多数受け入れ、それを通して研究者群の国際展開を試みる。
  11.  東南・西南・中部-南太平洋に防災ネットを拡充する目的で、国として国際貢献をする筋の通った国際共同計画を立てる。

 内容についてではないが、「他分野の研究者には用語が難しい」という意見があったことを指摘しておきたい。

 以上。

地震予知検討委員会委員長
川崎一朗


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