(3)我が国の海洋研究船が持つべき機能
我が国の海洋研究は、現在、世界を牽引する水準にある。特に、以下の研究においては世界の中核となり、世界・社会・国民へ貢献してきている。
- 気候変動等の地球環境問題の解明
- 大気・海洋・固体地球の相互作用
- 地震・津波等の自然災害の発生機構の解明
- 海洋生態系及び地球生命史の解明
- 持続的な海洋生物資源・海底資源の利用・探査
これらの研究において今後とも世界最高水準の研究を振興するとともに、新たな課題についても我が国がリーダシップをとりながら発展させていくためには、海洋研究船の整備が不可欠である。
限られた財源の中、最大限の研究成果を挙げるためには、我が国が整備する海洋研究船は、先端的な観測施設・設備に加え、個々の海洋研究船が持つ固有のミッションを加味した施設・設備を整備することにより、我が国独自の体制を整備することが望まれる。
国土の周辺に浅海、海溝などが近接する我が国の自然条件を勘案するとともに、我が国が世界の海洋科学技術を牽引して行くことを目標に、我が国の海洋研究船は、以下の規模ごとに整備する必要がある。
- 沿岸型:全長50メートル以下、総トン数1,000トン以下
- 近海型:全長60〜90メートル程度、総トン数1,000〜3,000トン程度
- 外洋型:全長100メートル程度、総トン数4,000〜5,000トン程度
- 遠洋型:全長120メートル以上、総トン数8,000トン以上
以上の海洋研究船を整備することにより、我が国の海洋調査能力が、我が国周辺を中心とした全域に及ぶことが可能となる。
また、海洋研究船に以下に掲げる機能を整備し、観測・研究を行うことにより、我が国の海洋科学技術の水準を引き続き向上させていくことが肝要である。
- 汎用観測研究機能
浅海から深海にいたる海域で多目的な海洋観測・研究を行う。沿岸型、近海型、外洋型及び遠洋型の海域ごとに整備されることが望ましい。固定施設・設備は基本的機器とする一方、研究航海の内容に応じて船上施設・設備を変更することが望ましい。
- 特殊観測研究機能
- 潜水船支援母船機能
海底面の詳細な観測等に有効な潜水船・潜水機の母船機能を果たす。
- 深海高解像研究機能
深海や海底下の地質を高機能音波探知機及びシステム化されたハイドロフォンアレイケーブル等により詳細に探査する。
- 生物海洋・海洋生物研究機能
各種海洋生物の調査を行う。スリップウェイが整備され、大型トロール、自動開閉ネット、採泥器、採水器等を用いた生物採捕等を行う。