第2章 豊かなくらしに寄与する光 1 光エネルギーを利用する光触媒の現状

財団法人神奈川科学技術アカデミー理事長 藤嶋 昭

1-1 光触媒の実用された例

 すべての人の希望することは何かと言えば、健康で、快適に、天寿を全うすることではないかと思っている。このすべての人が希望することをかなえるようにする、これがわれわれ科学者あるいは技術者の任務ではないかと思う。何のために研究するのか、最終目的は何かというと、これに尽きるのではないか。
 では、われわれ科学技術者はどうすればよいのか。天寿を全うするための科学技術の一つとして、光触媒がその一つの例になるのではないかと思い研究してきた。ここでは光触媒についてまとめるが、筆者は、川崎市の教育委員としても勤めているので、去年、市民講座で連続5~6回、一般市民の方に話をしたことがある。それをまとめたものが図1に示す「天寿を全うするための科学技術-光触媒を例にして-」というタイトルの本である。

図1 最近出版した光触媒の本
図1 最近出版した光触媒の本

 光触媒を応用していただいている1つの例が横浜みなとみらいMMタワーズである。図2に示すが、このビルのすべてのタイル表面に光触媒がコーティングされていて、汚れないビルになっている。

図2 光触媒が応用されている横浜みなとみらいのMMタワーズ
図2 光触媒が応用されている横浜みなとみらいのMMタワーズ

 図3は、去年の2月、愛知万博の前にオープンした中部国際空港のガラスである。オープンする1週間前に招待していただいたが、ここにも光触媒が応用されている。このガラスの表面すべてに光触媒でコーティングされていて、汚れないガラス、曇らないガラスになっている。雨が降ったときに行ったことがあるが、普通のガラスとは全然違い、水滴が見えなかった。
 あとでも紹介するが、光触媒ミュージアムを2年前にKSPにつくった。溝ノ口からシャトルバスで5分であるので、簡単に来てもらうことができる場所にある。そこの中庭のフロアに展示してあるテント材料を見ると、光触媒はすごいなと評価していただける。東京ドームで使っているのと同じテント材料であるので、普通なら汚れてくるが、光触媒を使うと、全然汚れない。また、これをガラスを通して見ると、雨の日であれば、ガラスはふつう水滴がついて曇るところが、光触媒付ガラスであると全然曇らないということで、はっきりと見ることもできる。

図3 中部国際空港では光触媒ガラスが活躍
図3 中部国際空港では光触媒ガラスが活躍

 去年の8月にオープンしたつくばエキスプレスのつくば駅、あるいは、そのほかの駅にも光触媒付テント材料が使われるようになってきた。
 図4はついこの間、9月24日オープンした東横線の元住吉駅であるが、そのテント材料にも、すべて光触媒が使われている。

図4 元住吉駅での光触媒テント 図4 元住吉駅での光触媒テント 図4 元住吉駅での光触媒テント
図4 元住吉駅での光触媒テント

1-2 酸化チタン電極での水の分解

 さて、光触媒は何かということである。筆者は東大大学院のマスター1年生のときに、神戸の中住さんが酸化チタンの単結晶をつくっているということを聞き、ぜひ結晶を使わせてくださいということをお願いしたのが光触媒の発端である。
 この単結晶を使い、リード線を出して、電気分解の電極にした。そして、光を当てながら、水の電気分解の可能性を調べるという実験を行った。その当時、まだ誰もこの結晶を使っての実験はしていなかった。
 図5に、このときの電圧と電流の関係を示す。水の電気分解を考えると、水から酸素の発生する電圧はかなりプラス側である。ところが、酸化チタンに光を当てると、光の強さに比例して反応が起った。しかも、光のエネルギーを吸収することによって反応が非常に起こりやすくなり、マイナスの電圧でもおこるようになった。光エネルギーによって水から酸素がでる反応が加速されたわけである。

図5 酸化チタン単結晶電極での電流電圧曲線
図5 酸化チタン単結晶電極での電流電圧曲線

 酸化チタン以外にも光を感じるものはいろいろの半導体、例えばGe、SiあるいはZnOなどであるが、それらは全部水中で分解してしまう。酸化チタンは、化学的に安定で、それ自身分解せずに水を分解して酸素が出る。筆者は酸素が出ることに非常に感動した。なぜかというと、光を当てると水から酸素が出るということでは、植物がやっている葉の表面で起こっている光合成反応と同じなわけである。葉緑素の代りに酸化チタンが似た作用をしていると気がついたときが、一番うれしかった。
 植物がやっている光合成反応は、2種類の葉緑素が太陽エネルギーを受けて、炭酸ガスを還元しながら水を分解して酸素を葉の表面から出している。これと似たことを酸化チタンと白金を使ってできたわけで、炭酸ガスを還元することも大事なことであるが、水から水素を出すということも重要である。
 水素はクリーンエネルギーである。つまり、燃料電池などにも使われているが、燃やせばまた水に戻るだけのクリーンエネルギーである。図6に示すように、酸化チタン、そして白金電極を用い、抵抗をつなぐだけで、光を当てると酸素と水素が発生するという論文を『ネイチャー』に発表したのが1972年であった。

図6 光だけで水が分解して酸素と水素が発生
図6 光だけで水が分解して酸素と水素が発生

 それを発表したのが、ちょうど第1次オイルショックの前の年であたったので、世界中の人が「『ネイチャー』に日本人の出した論文があるではないか、石油がなくなっても大丈夫ではないか」と言ってくれていたようである。このことを朝日新聞の元旦の1面トップ記事として書いてもらったのが1974年で、今から32年前のことになる。
 その後、水素を発生させる実験を精力的に行ったが、高価な単結晶を使うわけにいかないので、安い材料で、しかも大量につくらなければ実際に使ってもらうことができないということになった。どうしたらいいか考え、チタンの金属をバーナーであぶる方法を使った。薄い金属チタンはかなり安いもので、チタンを買ってきてバーナーであぶって、表面に酸化チタン皮膜をつくった。これで単結晶以上の効率が出ることがわかった。図7に示すように、1メートル四方の大きなものをつくり、東大工学部の本郷キャンパスの屋上で太陽光の下で実際に水素をとる実験を続けた。夏であると、1日7リットルぐらいの水素をとることができた。酸化チタンは太陽光の3パーセントしか吸収できないので効率的にはかなり低くなった。この研究を発表したのが1975年であるから、もう三十数年前になってしまった。しかし、この研究は今度また見直していただいている。特にアメリカのブッシュ大統領が、最終的には太陽エネルギーを使って水から水素をとるのが理想的なエネルギー変換技術ではないか、ソーラーハイドロジェンプログラムというのが一番大事だ、ということを言い出した。去年ぐらいからアメリカを中心にして、筆者たちのこの研究が再度評価してもらえるようになってきた。

図7 太陽光下での水素発生実験 図7 太陽光下での水素発生実験
図7 太陽光下での水素発生実験

1-3 発想の転換で微量のものを相手に

 もちろん、エネルギー変換というのは難しいことである。水1モルというのは18グラムであるが、18グラムの水を使って水素をとるのに幾つの光の数が要るか考えてみる。1モルというのはアボガドロ数6×1023で、ほぼゼロが24桁もあるわけである。これが難しいもとである。
 酸化チタンが感じる太陽光は光の数にすると1秒間、1平方センチメートル当たり1015個である。1015でも多いが、水1モルは24乗であるから、9桁違う。これがエネルギー変換の難しい点である。そこで、どういうふうにしようかと考えた。すぐに使ってもらうことができるのは、微量のものを相手にする事ではないかと考えた。例えば、大腸菌が106個、つまり100万個ある。1平方センチ当たり100万個の大腸菌があって、それを光子1個に対して1個の大腸菌が殺せるとすれば、光の数として106個あればいいわけである。光は1015個あるから、この場合では十分すぎる、つまり9桁も多いわけである。
 そこで、エネルギー変換は少し待って、まず表面にある大腸菌を殺す研究を始めた。また、たばこのにおいなど、微量でも困っているものを相手にしようと考えた。微量なものを相手にして、これらを分解して快適空間をつくろうというテーマにした。これが光触媒としての取り組みの最初である。そこでまず実施したのが大腸菌などの殺菌である。タイルの上に酸化チタンを透明にコーティングした。そして大腸菌を置いた。MRSA、緑膿菌も使った。これらの菌が簡単に死んでしまった。これが私たちの最初の光触媒の成果であり、今から十五、六年前のことである。

1-4 殺菌できるタイルとしての応用

 図8に示すように、光触媒付きタイルを病院の手術室の床と壁に実際に使った。床や壁には蛍光灯の光あるいは太陽光が当たるので、空気中の空中浮遊菌もなくなるという結果が得られ、これは使えそうだということがわかった。

図8 手術室の床と壁に光触媒タイルを使用
図8 手術室の床と壁に光触媒タイルを使用

 空気清浄機としての応用も行った。ハニカム型のセラミックフィルターの上に酸化チタンをコーティングして空気清浄機に使った。筆者は、1週間に1回行くだけであるが、JR東海の研究所長にもなっている。2007年の7月から「のぞみ」はN700系の車両になるが、客室内ではたばこを吸えなくなる。しかし、たばこをどうしても吸いたいという人のために、デッキのところに2人用、4人用の喫煙ルームをつくることになり、ここでも光触媒空気清浄機が使われる。
 さて、光触媒について簡単に説明したが、先ほどの手術室の床や壁に酸化チタンをコーティングしたケースでも、研究していると、そんなにすぐに実用化ができたわけではない。プラスアルファの技術が必要であった。酸化チタンだけを使うと効果が完全ではない。どうしても欠点がある。欠点を克服することを考えなければいけないわけである。光触媒というのは光が当たっているときにしか効果がないから、暗いときはどうするのか、夜はどうなるのかと言われる。
 それを保証しなければいけないということになる。その一つの例として、図9に示すように、酸化チタンをコーティングした後に、硝酸銀の水溶液の中に入れて光を当てて、酸化チタン上に銀をつける。ナノサイズであるから、見た目にはわからないが、表面に銀がついている。銀とか銅は殺菌力がある。10円玉や100円玉のコインメタルには殺菌力がある。銀や銅を酸化チタン表面につけたことによって、光が当たっているときは光触媒作用で非常に効果があり、かつ暗いところでも銀などの金属によって徐々に殺菌ができる。このような工夫をした。

図9 酸化チタンコーティングと、その上にAgをつけて殺菌効果を増す
図9 酸化チタンコーティングと、その上にAgをつけて殺菌効果を増す

1-5 照明機器のカバーガラスへの応用

 次に行ったのが、高速道路のトンネルの照明器具への応用である。日本道路公団の方が来られ、東名の大和トンネルのように交通量が多いところでは、照明器具の表面が油汚れしてしまうので困っていると言う話があった。ガラスの表面に酸化チタンを透明にコーティングしたら、油汚れがつかなくなった。今では、全国の高速道路のトンネルの照明器具に使われている。
 このときも最初からうまくいったわけではなくて、試行錯誤があった。なぜかというと、普通のガラスはソーダライムガラスで、ナトリウムイオンが入っている。酸化チタンを表面に透明にコーティングしてガラスの上につけるわけだが、常温では密着力がないから、300度ぐらいに熱する。そうするとガラスの中のナトリウムイオンが酸化チタンに拡散してきて化合し、チタン酸ナトリウムというものになる。これは光触媒特性を示さない。そういうものができてしまうため、幾ら実験しても光触媒効果がなかった。最初、理由が分からず悩んだが、ナトリウムイオンが拡散してくるということが分かった。ナトリウムイオンをブロックする層、いわゆる透明にできたシリカを下地層としてコーティングしてから、酸化チタンをコーティングし温めた。つまり、ナトリウムイオンに対するシリカによりブロック層を入れることによって初めて光触媒による油分の分解に成功することができた。この場合も光触媒プロセスにプラスアルファの技術が必要であるということがわかった。

1-6 超親水性効果の発見

 鏡が曇るという現象は一般的である。特にシャワーを浴びると鏡が曇る。これも、酸化チタンを透明にコーティングして光を当てたら曇らなくなった。曇るという現象は何かというと、小さい水滴がついて光が散乱される事で起こるので、その水滴の接触角度が大事である。この接触角が普通は70、80度、水滴の表面がまんまるになるときは150度ぐらいの角度になる。この角度が限りなくゼロになれば、全面を水が覆ってしまうことになる。これを親水性という。水になじみやすいということである。しかも、この角度が10度以下のときに「超」の字をつけて、「超」親水性と言うが、酸化チタンを鏡にコーティングして光を当てるとこの超親水性特性になるということがわかった。
 この現象、表面の油汚れがなくなったことでおこることだと最初は思っていたが、前に述べた強い酸化力によるのではないらしいと分かってきた。反応機構としては、まだはっきりしない面があるが、筆者の後継者の東大先端科学技術研究センターの所長をやっている橋本和仁さんは今でもこの反応機構について研究している。酸化チタンは、安定で表面が変化しないと思っていたが、表面第一層の酸素は脱離するらしい。そこに水がつきやすくなる。しかし、その状態は不安定で、また徐々に安定な状態に戻るらしい。このように、酸化チタンは水を分解したり、油汚れを分解できる。しかし、この強い酸化力に加えて、表面が水になじみやすくなるという超親水効果もあることが分かった。
 この現象は、例えば車のサイドミラーに使っていただくようになっている。トヨタの新車は、90パーセントぐらい使っているのではないかと思う。雨の日でも運転がしやすくなっている。だから、交通事故が減っているのではないかと、われわれも期待している。このときもプラスアルファの技術が必要であった。酸化チタンプラスシリカをガラスの上にコーティングしている。シリカが水を保ちやすいからである。

1-7 セルフクリーニング効果

 光触媒特性の中でも、今一番注目されているのが、図10に示すように、セルフクリーニング効果である。酸化チタンをタイルなどの外装建材に透明にコーティングして、太陽光が当たると、わずかの油汚れは分解して最終的にCO2になる、たくさんの油汚れがある場合は、水をかければいい。あるいは、雨が降れば、水が全面を覆ってしまい、油汚れが浮いてくる。自然に外装建材がきれいになってしまうという光触媒のセルフクリーニング効果である。

 1) 強い酸化力で油汚れを分解
1)強い酸化力で油汚れを分解
2) 多量の油汚れは超親水性効果で雨水などで洗い流す
2)多量の油汚れは超親水性効果で雨水などで洗い流す
図10 光触媒のセルフクリーニング効果

 最近、パナホームが、エコ&クリーンホームということで、太陽電池を使って電気をつくり、建物全体は光触媒タイルを用い、汚れなくしましたということで宣伝している。三郷にあるみさと公園パナタウンというのを発売したそうだが、図11に示すように、全部光触媒付タイルの家でできているということだ。


図11 パナタウン(埼玉県みさと公園)では光触媒タイルを使用
図11 パナタウン(埼玉県みさと公園)では光触媒タイルを使用

 光触媒は、これまで述べたように原理は非常に簡単である。キーワードはたった2つ、酸化チタンに光である。空気がきれいになる。しかし部屋の中の空気をきれいにするのは光源の問題があって難しい点がある。部屋の中のシックハウスの原因物質を分解するために光触媒系をどうやって使うかというのが一番難しいところになっている。光触媒の可視光問題として、NEDOのプロジェクトが3年間実施され最近終った。可視光光触媒を、壁紙や天井材に応用したり、さらに部屋の中の家具などに応用していこうと検討された。例えばホルムアルデヒドの分解や、たばこの臭いの除去である。部屋の外では、NOXの除去もできる。水もきれいにしたい。これは難しいテーマであるが、一生懸命研究されている。それから、殺菌ができる。特にウィルスを殺すことができる。鳥インフルエンザ問題、SARS(サーズ)問題のときには、本命は光触媒ではないかと言われ、今、アジア地区ではこのようなウィルス問題に対しても非常に効果があるということから、検討されている。

1-8 JIS化やISO化

 酸化チタンというのは特別な材料ではなくて、一般的な材料である。チタンはクラーク数が十位である。だから、資源的な問題は全然ない。しかも、酸化チタンは、日本人は1人1年間で2キロ使っている一般材料である。白いペンキの元は全部酸化チタンである。衣服にも使っているし、紙にも使っている。そのような一般材料であるが、それをうまく工夫して使うと、光触媒として有効利用ができるということである。
 ところが、簡単そうに見えるものであるから、市場には、これも光触媒製品、あれも光触媒製品と出てきている。ひどい例が造花である。光触媒付きと書いてあるのが、ほとんど効果がないものが多い。われわれがチェックしたら全然効果がなかった。そういう紛い物はやめてくださいとお願いしたこともある。光触媒関連のJISがようやく確定してきた。筆者はこのJIS委員会の委員長をさせていただき、空気をきれいにする、水をきれいにする、表面が汚れない、殺菌ができるというJISを制定しつつある。今、その最終段階になっている。
 次が光触媒をISOにもっていこうということである。今、光触媒のISOに対しても国際委員会で検討されている。この光触媒のISO化であるが、日本がリードして動いている。しかし、日本がリードすると、今度はどうしても、韓国が一部を分担したいと言い出すし、ヨーロッパのドイツなども自分たちも担当したいということで、その辺は今折衝しているところである。

1-9 可視光効果

 もう1つ大事なことは何かというと、酸化チタンは透明であるから、太陽光の3パーセントしか使うことができない。では、先ほど述べた部屋の中のシックハウスのもとのホルムアルデヒドなどをのぞくために壁紙にどうやって光触媒を応用するのかということになる。可視光も感じる光触媒をつくらないといけないということになり、これが今一番大きな話題である。
 どうしたらいいかというと、酸化チタンを工夫して、TiO2のOのところに窒素で少しだけ入れかえる。そして感じる光をもう少しエネルギーの小さい領域にする。窒素をドーピングすることによってエネルギーの小さな、つまり可視光領域の光を使うことができるようにする。これが今一番の話題であり、もちろん日本が中心であるが、外国でも研究されている。白い粉だった酸化チタンが少し黄色になる、これが可視光効果である。450あるいは500ナノメトールぐらいまで利用することができるような光触媒が研究されている。

1-10 光触媒ミュージアム

 光触媒ミュージアムをつくらせていただいて、2年少しになる。図12に示すように、筆者が最初に実施した水の分解実験装置もある。光を酸化チタン電極表面に当てると水が酸素と水素になるというのを体験してもらえる。

図12 光触媒ミュージアム
図12 光触媒ミュージアム

 いろいろなものを展示しているが、本当に光触媒効果があるかをチェックしてから展示している。紛い物は展示しない。
 筆者にとって一番うれしいのは、オープンして1年後に来館者が1万人になり、2年がたった今、あともう少しで2万人になることである。今年も、夏休み光触媒コースを実施した。二、三百人の小学生・中学生が来てくれた。
 図13に示すように、このミュージアムの中庭にも展示材料を置いている。テント材料も最初は同じ白色だったのが、光触媒の有無でどんどん差が出てきた。太陽光と雨だけの作用で、一方は真っ白で、最初と全く同じである。もう一方の光触媒なしのものは真っ黒になっていて、その差を見ていただくだけで、これは使えそうだなということを感じていただける。

図13 左部分に光触媒を使ったテント
図13 左部分に光触媒を使ったテント

1-11 終わりに

 酸化チタン光触媒が各方面から注目していただき、上述のように色々の製品も上市されている。イノベーションの目玉とも言っていただくことがあるし、ナノテクの応用例であると言っていただくこともある。さらに広く利用していただくことができれば、この分野に長く関わってきたものの一人として研究者冥利に尽きる。

光触媒に関連する本

われわれがまとめました本を以下にいくつか紹介しておく。

  1. 光触媒のしくみ 日本実業出版社(2000年)藤嶋 昭、橋本 和仁、渡部 俊也
  2. 光触媒のすべて 工業調査会(2003年)橋本 和仁、藤嶋 昭
  3. 天寿を全うするための科学技術 かわさき市民アカデミー出版(2006年)藤嶋 昭
  4. 光機能化学 昭晃堂(2005年)藤嶋 昭、瀬川 浩司

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