2 食品成分に関するデータ整備のあり方等に関する検討会報告書

日本食品標準成分表改訂の進め方について

 平成18年3月14日
 食品成分に関するデータ整備のあり方等に関する検討会

1 日本食品標準成分表の今後の課題

  日本食品標準成分表(以下「成分表」という。)は、昭和25年に初めて公表されて以降、食品成分に関する基礎データを提供するという役割を果たしてきた。現行の五訂増補成分表は、従来の四訂成分表に比べて、収載食品数、収載成分項目ともに一層充実し(*1)、栄養管理・指導面はもとより、国民健康・栄養調査、食料需給表の作成等における基礎資料として広く活用される等、各方面に大いに貢献してきたところである。

*1

 

公表年

収載食品数

収載成分項目数

四訂成分表

昭和57年

1,621

19

五訂成分表

平成12年

1,882

36

五訂増補成分表

平成17年

1,878

43(+脂肪酸45)

 成分表の今後の課題としては、以下のようなものがある。

1) 厚生労働省における栄養指導行政等がより効果的に実施できるようにすること。例えば、「日本人の食事摂取基 準」(以下「食事摂取基準」という。)に定められていて成分表に未収載の成分の成分値を策定すること。

2) 国民の健康志向がますます高まる中で、収載すべき食品や成分についてもニーズを踏まえてより一層の充実を図るべきであること、また、食品の生産・流通・消費の実態に即して、見直しを行うべきであること。

3) 成分データの国際的整合性に配慮する必要があること。例えば、たんぱく質、脂肪(脂質)及び炭水化物の成分量を算出する方法について、関連する国際機関が推奨する算出方法を適用すること。 

2 五訂増補日本食品標準成分表の枠組みの中で早急に改訂すべき事項

(1)アミノ酸成分表の改訂(「五訂増補日本食品標準成分表アミノ酸成分表編」(仮称)の策定)

 五訂増補成分表の利便性向上の観点から、現行の「改訂アミノ酸組成表」(昭和61年公表)を五訂増補成分表と整合させた形式に改訂するべきである。

(注) 原則として新たな分析は行わず、食品の配列、名称等を五訂増補成分表に即して見直すとともに、成分値を五訂増補成分表のたんぱく質の成分値に準拠して再計算することを改訂作業の基本とする。

(2)ビオチン、ヨウ素、セレン、クロム及びモリブデン成分表の策定

 ビオチン、ヨウ素、セレン、クロム及びモリブデンについては、健康の維持・増進、生活習慣病の予防等を目的に食事摂取基準において推奨量等が定められていること、我が国における当該成分の摂取状況を把握する必要があると考えられること等から、その成分値を可及的速やかに収載すべきであり、遅くとも食事摂取基準の次期改定までにこれらの成分値を収載した成分表を策定すべきである。

 策定に当たっては、以下の諸点に留意すべきである。

1) 収載食品の範囲については、成分ごとに、摂取量の多い食品及び摂取量は少ないが当該成分の含有量が高いと考えられる食品を中心にして収載する必要がある。

2) 食事摂取基準に定める推奨量等に応じて、適切な性能特性を有する分析方法について検討する必要がある。 

3) 成分値の代表性を確保できるような適切なサンプリング方法について、事前に十分検討する必要がある。

3 六訂日本食品標準成分表の策定に向けての検討事項

 成分表の国際的な整合性にも配慮しながら、中長期的にそのより一層の充実を図る必要がある。このような観点から、2の五訂増補成分表の枠組みの中での改訂作業と並行して、現行の成分表を全面的に改訂し、六訂成分表を策定するための検討を開始するべきである。
 なお、六訂成分表策定のタイミングによるが、必要があれば、その策定前に、

1) 機能性成分を含む新たな健康の維持増進に関わる成分に関する成分表の策定

2) 基本調理食品、地域伝統食品、その他の新規食品等の収載食品の追加

 等を行うことも考えられる。

(注1)基本調理食品とは、きんぴら、肉じゃが等、病院や事業所給食等における基本的なメニューをいう(調理加工食品を除く)。
(注2)地域伝統食品とは、主に特定の地域において、生産され流通している食品をいう。

 六訂成分表の策定に当たっては、以下の諸点に留意すべきである。

(1)収載食品の見直し

1) 収載食品については、生産・流通・消費の変化に即し、消費者、食品産業界等利用者のニーズを踏まえて再点検し、必要な見直しを行う。

2) 調理加工食品については、今後とも需要が増大するものと考えられることから、収載すべきデータの範囲やそのあり方、関連業界団体との連携のあり方、データの収集方法等も含めて検討する。

3) 基本調理食品については、成分の調理損失等を考慮した成分値を収載することが、利用者の便宜に資するものと考えられることから、基本的な材料及び配合割合等の調査を含めて、収載すべき食品について検討する必要がある。

4) 地域伝統食品については、地域における成分表策定の取組事例も見られるところであり、その収載の必要性、地方公共団体や関係省庁との連携のあり方、データの収集方法も含めて検討する。

(2)収載成分の見直し

 未収載の新たな食品成分については、機能性成分を中心に成分表の策定に対する要望は多いものの、経済、社会、栄養行政上のニーズを踏まえて、収載すべき成分と分析方法について、具体的に検討する必要がある。

(注)有害成分を成分表の対象とすることについては、常在成分でないこと等から不適当である。ただし、成分表のデータベースにおいて、有害成分に関するデータベースとのリンクを張る等、利用者の利便性の向上を図るべきである。

(3)データの収集方法

 分析・サンプリング方法については、成分値の統計的代表性を確保しうるサンプリング方法と、適切な性能特性を有する分析方法について、事前に十分に検討する必要がある。

 また、新たなデータ収集の手法として、以下の事項について検討する。

1) 地域の食品分析機関等各種分析機関に標準的な分析方法等をあらかじめ提示しておき、これに該当する分析結果の提供を受けてデータを集積する。

2) 社団法人日本栄養・食糧学会、日本栄養改善学会、社団法人日本食品科学工学会、社団法人日本分析化学会等の学術団体に、それらの出版物に食品成分分析値を積極的に掲載することを依頼し、それら分析値の活用を図る。

(4)たんぱく質、脂肪(脂質)及び炭水化物の成分量の算出方法の見直し

 国連食糧農業機関(FAO)は、たんぱく質、脂肪(脂質)及び炭水化物の成分量の算出に当たって、たんぱく質量はアミノ酸組成から、脂肪(脂質)量は脂肪酸組成からそれぞれ求め、また、炭水化物量は単糖、二糖、オリゴ糖、多糖をそれぞれ定量の上、単糖当量として求めることを推奨している。各国がこの方法を採択するか否かについては明らかでないが、我が国の成分表も、基本的にはこのような国際的な動きとの整合性に配慮して見直しを行うことが望ましいと考えられる。

(注)炭水化物量については、従来の「差し引き法」による総量算出方法からの変更となること、また糖組成の分析に関する問題があることに留意する必要がある。

(5)エネルギー値の算出方法の見直し

 FAOは食品のエネルギー値について、現行の「熱産生と体重増加に利用される食品のエネルギー」を示すという考え方を廃して、「ATPを必要とする身体機能に利用可能な食品エネルギー」という考え方に立った「代謝性エネルギー」として表示する方法を提唱しており、その採用の是非について慎重に検討する必要がある。
 なお、成分量及びエネルギー値の算出方法を見直した場合、食品のエネルギー値は大幅に変化するものと予測される。このような変化は、栄養管理・指導や食料需給表のデータ等様々な分野に大きな影響を及ぼしかねないことから、成分量及びエネルギー値の算出方法の見直しについては、慎重に検討する必要がある。

(6)その他

 食品の分類、食品番号については、欧米で使用されている食品用語集LanguaLにおける分類等も考慮して、ますます増加する各種調理加工食品の分類等も含めて、見直しを検討すべきである。

4 その他

 以上のような成分表の改訂作業を円滑に実施し、利用者からの様々な要望に適切に対応し、さらには国際的な協力関係の強化を図るという観点を踏まえると、成分表を所管する常設の専門組織を設置することが必要である。また、農林水産省及び厚生労働省との一層の連携の強化等、成分表に係る体制について再検討する必要がある。 

食品成分に関するデータ整備のあり方等に関する検討会 構成員名簿 <五十音順>

(平成17年7月~平成18年3月31日)

 

熊谷 昌士

財団法人日本水産油脂協会理事長

 

竹内 昌昭

東京農業大学客員教授

 

西牟田 守

独立行政法人国立健康・栄養研究所
栄養所要量研究部微量栄養成分代謝研究室長 

 

萩原 清和

独立行政法人国立健康・栄養研究所
食品表示分析・規格研究部食品分析研究室長 

 

安井 明美

独立行政法人食品総合研究所分析科学部長

座長

安本 教傳

椙山女学園大学生活科学部常勤客員教授

 

渡邊 智子

千葉県立衛生短期大学栄養学科教授

 

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科学技術・学術政策局政策課資源室

(科学技術・学術政策局政策課資源室)