「日本食品標準成分表2010」について第3章の8

8)きのこ類

 きのこ類の全般に通じる主な事項は、次のとおりである。

1) 「まつたけ」や「ほんしめじ」の菌根菌を除いてすべて栽培品を収載した。栽培方法はきのこの種類によって異なり、「しいたけ」は原木栽培又は菌床栽培によって生産され、「なめこ」、「まいたけ」、「えのきたけ」、「くろあわびたけ」、「はたけしめじ」、「ぶなしめじ」、「たもぎたけ」、「ぬめりすぎたけ」、「うすひらたけ」、「エリンギ」、「ひらたけ」及び「やなぎまつたけ」はいずれも菌床栽培によって生産されている。「マッシュルーム」はイネのわら等を使ったコンポスト(堆肥)によって栽培されている。 

2) 調理した食品は「ゆで」を収載し、調理する前の食品(生又は乾)と同一の試料を用いて調理し分析した。各食品の調理方法の概要を表14に示した。

 以下、各食品ごとに成分値に関する主な留意点について述べる。

えのきたけ<榎茸>

-08001 生

-08002 ゆで

-08003 味付け瓶詰

 「えのきたけ」は、エノキタケ属に属し、古くから食用にされてきたきのこである。ぬめりがあることから、なめたけとも呼ばれる。野外では、晩秋から春にかけて、エノキ、ナラ等の切株や倒木に発生し、傘は黄褐色から茶褐色で粘性があり、柄は黄褐色から暗褐色である。市販されているものは、傘が小さく柄が長い、もやし状のもので、おがこに米ぬか等を混ぜた培地で栽培される菌床栽培品である。傘、柄の色は白色系がほとんどであるが、一部野性種に近い褐色系も販売されている。

 成分値は、「生」は分析値、「ゆで」は分析値、四訂成分表成分値及び成分変化率に基づき決定した。「味付け瓶詰」の成分値は、市販品の分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

(きくらげ類)

-あらげきくらげ

 -08004 乾

 -08005 ゆで

-きくらげ

 -08006 乾

 -08007 ゆで

-しろきくらげ

 -08008 乾

 -08009 ゆで

 (きくらげ類)は、キクラゲ属に属する「あらげきくらげ」及び「きくらげ」と、シロキクラゲ属に属する「しろきくらげ」に大別される。温帯から熱帯に分布しており、我が国では、夏から秋にかけて各種広葉樹の倒木に群生する。市場に流通しているものの大半は、中国、台湾からの輸入品で、国産品はごくわずかに、主として九州で菌床栽培されている。

 「あらげきくらげ」は肉質が厚く、背面が毛ば立っているため、灰褐色に見える。「きくらげ」は肉質が薄く、乾燥品は黒い。両者は「しろきくらげ」に比べて黒いので、一般にくろきくらげとも呼ばれている。「しろきくらげ」は、中国では薬用きのことされてきた。

 「あらげきくらげ」の「乾」の成分値は、中国産及び台湾産試料の分析値に基づき決定した。「きくらげ」の「乾」の成分値は、中国産試料の分析値に基づき決定した。「しろきくらげ」の「乾」の成分値は、分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。「ゆで」の成分値は、それぞれ分析値及び成分変化率に基づき決定した。

くろあわびたけ<黒鮑茸>

-08010 生

 「くろあわびたけ」は、ヒラタケ属に属し、亜熱帯に分布する木材腐朽菌である。「ひらたけ」に比べて肉厚で硬い。傘はうすい黒褐色から灰褐色で、柄も灰褐色、肉は白色である。近縁種におおひらたけがある。成分値は、分析値に基づき決定した。

しいたけ<椎茸>

-生しいたけ

 -08011 生

 -08012 ゆで

-乾しいたけ

 -08013 乾

 -08014 ゆで

 「しいたけ」は、シイタケ属に属し、天然では春及び秋の2回、ナラ、クヌギ等の広葉樹の倒木や切株に発生する木材腐朽菌である。市販されている国内産「生しいたけ」は、ほだ木で発生させる原木栽培品と、おがこにふすま等を混合した培地で栽培された菌床栽培品があり、近年はほとんどが菌床栽培品である。国内産「乾しいたけ」はほぼすべてが原木栽培品であり、屋外で栽培し、春及び秋・冬に発生したしいたけを乾燥させたものである。中国から輸入される「生及び乾しいたけ」は、ほとんどが菌床栽培品であるが、一部原木栽培品もある。なお、「乾しいたけ」は、その形状により、どんこ(冬菇:傘があまり開かないうち採取したもの)と、こうしん(香信:傘がかなり開いてから採取したもの)に大別される。

 「生」の成分値は、分析値に基づき決定した。「乾」の分析値は、どんこ、こうしんの両者に大きな差異が認められなかったので、一括した成分値を示した。「乾」の成分値は、分析値に基づき決定した。「ゆで」の成分値は、それぞれ分析値及び成分変化率に基づき決定した。

 なお、「しいたけ」については柄全体を除いた傘のみを対象にした。

(しめじ類)

-はたけしめじ<畑占地>

 -08015 生

 「はたけしめじ」は、シメジ属に属し、土に埋もれた木片や木材等を分解する腐生菌で、地表に株状に発生する。傘は灰色でひだは白く、柄の上部も灰褐色になる。市販品は菌床で栽培されたものである。成分値は分析値に基づき決定した。

-ぶなしめじ<ぶな占地>

 -08016 生

 -08017 ゆで

 「ぶなしめじ」は、シメジ属に属し、木材腐朽菌である。市販品は菌床栽培されているものである。形と色が、「ほんしめじ」に似ているので、○○ほんしめじの商品名で販売されていた。また古くはシロタモギタケと混同されていたが、現在は「ぶなしめじ」に統一されている。成分値は、「生」は分析値に基づき、「ゆで」は分析値及び成分変化率に基づき決定した。

-ほんしめじ<本占地>

 -08018 生

 「ほんしめじ」は、シメジ属に属し、「はたけしめじ」の近縁種であるが、菌根性のきのこである。「香りまつたけ、味しめじ」のしめじは「ほんしめじ」を指している。人工栽培が可能になり、人工栽培品が出回りつつある。きのこの発生する秋には、天然ものも市販される。成分値は、天然ものの分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

たもぎたけ<たも木茸>

-08019 生

 「たもぎたけ」は、ヒラタケ属に属し、木材腐朽菌である。温帯北部に分布し、広葉樹のヤチダモやニレなどの倒木や切株に株状に発生する。傘は黄色で、柄は細長い。主に北海道で菌床栽培されている。成分値は、分析値に基づき決定した。

なめこ<滑子>

-08020 生

-08021 ゆで

-08022 水煮缶詰

 「なめこ」は、スギタケ属に属し、木材腐朽菌である。秋から春にブナなど広葉樹の倒木や切株に発生するぬめりのあるきのこである。市販品は、多くが菌床栽培されたものであるが、一部原木栽培されたものもある。秋には、天然なめこが出回ることがある。

 成分値は、「生」は分析値に基づき、「ゆで」は分析値、四訂成分表成分値及び成分変化率に基づき決定した。「水煮缶詰」の成分値は、市販品の分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

ぬめりすぎたけ<滑杉茸>

-08023 生

 「ぬめりすぎたけ」は、スギタケ属に属し、広葉樹の切株から発生する木材腐朽菌である。傘と柄の一部が褐色でぬめりが強く、柄は繊維質で裂けやすい。市販品は菌床栽培されたものである。成分値は、分析値に基づき決定した。

(ひらたけ類)

-うすひらたけ<薄平茸>

 -08024 生

 「うすひらたけ」は、ヒラタケ属に属し、日本のほかアジア、北アメリカ、ヨーロッパなど世界に広く分布する木材腐朽菌である。傘は淡紫色から淡褐色、ひだは淡灰色、肉質は薄く、柄は明瞭である。ヒマラヤヒラタケは「うすひらたけ」とは別種である。成分値は、分析値に基づき決定した。

-エリンギ

 -08025 生

 「エリンギ」は、ヒラタケ属に属し、ヨーロッパから中央アジアに分布する腐生菌である。我が国へは外国から導入された。市販品は菌床栽培されているものである。傘は平坦で、淡褐色、ひだは白色、柄は太い。成分値は、分析値に基づき決定した。

-ひらたけ<平茸>

 -08026 生

 -08027 ゆで

 「ひらたけ」は、ヒラタケ属に属し、広葉樹の切株や倒木から大量に発生する木材腐朽菌である。市販品は、菌床栽培されたものである。通常、未成熟の傘が小さい状態で売られているが、最近、成熟した傘の大きいものも出回っている。○○しめじ等の商品名で販売されていた。

 成分値は、「生」は分析値及び四訂成分表成分値に基づき、「ゆで」は分析値、四訂成分表成分値及び成分変化率に基づき決定した。

まいたけ<舞茸>

-08028 生

-08029 ゆで

-08030 乾

 「まいたけ」は、マイタケ属に属し、ブナ、ミズナラ等の広葉樹の切株から発生する木材腐朽菌である。市販品のほとんどは、菌床栽培されたものであるが、秋に、原木栽培されたものが出回ることもある。

 成分値は、「生」及び「乾」は分析値及び四訂成分表成分値に基づき、「ゆで」は分析値、四訂成分表成分値及び成分変化率に基づき決定した。

マッシュルーム

-08031 生

-08032 ゆで

-08033 水煮缶詰

 「マッシュルーム」はハラタケ属に属し、和名はつくりたけで、腐生菌である。「マッシュルーム」は、稲藁(わら)に鶏糞、綿実かす、尿素、石灰等を混ぜて堆肥を作り、菌を接種する方法で栽培されている。色沢によりホワイト種、クリーム種、ブラウン種に大別される。「生」は主として国産、「水煮缶詰」の多くは東南アジアで栽培されたものが用いられている。

 成分値は、「生」は分析値に基づき、「ゆで」は分析値、四訂成分表成分値及び成分変化率に基づき決定した。「水煮缶詰」は、市販品の分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

まつたけ<松茸>

-08034 生

-08035 水煮缶詰

 「まつたけ」は、マツタケ属に属し、秋に、我が国では主としてアカマツ成木林の地上に発生する菌根菌である。未だ人工栽培は確立されていない。「まつたけ」とその近縁種は世界各地から輸入されているが、日本産「まつたけ」と同種のものが朝鮮半島、中国、ブータン等から、別種の欧州まつたけがモロッコから、アメリカまつたけが米国やカナダから、それぞれ輸入されている。香り、味等は産地によって微妙に異なる。「水煮缶詰」や佃煮の原材料となる塩蔵された「まつたけ」は、主として中国東北部や朝鮮半島から輸入されている。

 「生」の成分値は、国産、中国産及び北朝鮮産(「まつたけ」のみで近縁種は除く。)試料の分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。「水煮缶詰」の成分値は、韓国産輸入原料を用いた製品の分析値、四訂成分表成分値及び文献値1)に基づき決定した。

やなぎまつたけ<柳松茸>

-08036 生

 「やなぎまつたけ」は、フミヅキタケ属に属し、ヤナギなど広葉樹の枯れ木や切株に発生する木材腐朽菌である。傘は褐色で周辺は薄く、柄も褐色を帯びて長い。主に柄が食用となる。市販品は、菌床栽培されたものである。成分値は、分析値に基づき決定した。

文献

 1)  西牟田 守・児玉直子:まつたけ水煮缶詰の無機質(未発表)

お問合せ先

科学技術・学術政策局政策課資源室

(科学技術・学術政策局政策課資源室)