ここからサイトの主なメニューです

(別添1)テロリズムへの対策に資する重要科学技術について

1.研究開発の背景

 平成13年9月11日の米国における同時多発テロ以来、世界中で各種テロ事案が発生しており、テロ対策が世界共通の課題となってきている。日本においても、平成6年に松本サリン事件及び平成7年に東京地下鉄サリン事件と化学剤が用いられた事件が発生し、平成5年に生物剤である炭疽菌散布事件が起こる等、世界的に注目を集めた事案がある。
 テロには様々な物質が用いられているが、大きな被害を与えるものとして対象となる物質を総合して表現するためNBC(核、生物、化学)あるいはCBRNE(化学、生物、放射性、核、爆薬)という言葉が使われている。

表1 テロに用いられる物質の類別
  テロの種類 物質の種類 人的被害までの時間
C 化学テロ 化学剤・生物毒素 サリン、VX、マスタードガス、リシン等 数分から数時間
B 生物テロ 生物剤・生物毒素 炭疽菌、天然痘等 数日から数週間
R 放射性物質テロ 放射性化合物 コバルト60等 発生から長期
N 核テロ 核物質 核爆弾等 瞬時
E 爆弾テロ 爆薬 プラスチック爆薬等 瞬時

 テロは一度実行されると多大な被害となるため、テロ対策上、まず未然防止、ついで被害拡大の防止が最も重要である。そのため、テロに用いられる物質やテロを実行する人の面からの監視するシステムの構築が重要となる。
 これらのテロの未然防止、抑止のために、物の面からは、テロ関連物質を対象とした非開披・迅速かつ確実な現場探知・識別・除染の装備資材に資する科学技術基盤の強化および各種の新しい科学技術の応用が模索されている。また、人の面からは、迅速かつ正確な出入国管理システム、効果的な人の監視システムが必要となる。

2.現在用いられている技術及び今後の取組の方向性

 テロ関連物質探知に関しては、ほとんどが外国製品を利用している現状にある。これらは軍用に開発されたものも多く、小規模なテロ事件などに対応するための現場における正確な判定には不向きである。現在諸外国で市販されている各種携帯型や据え置き型の探知機材等の評価を行った結果によると、機能において、実用上、さらなる感度面、選択性の向上が必要と認められた。しかしながら、これら機材の技術に関しては、公開されていない部分も多く、我が国独自の技術開発の必要性に迫られているところである。
 一方、入国管理システムや効果的な人の監視システムに関しては、旅券のIC化による出入国管理、監視カメラの設置等が検討されている。
 テロ対策に関しては、「有害危険物現場検知技術」が、第3期基本計画中に予算を重点配分する研究開発課題である「戦略重点科学技術」に含まれる技術として選定されている。さらに、重要な研究開発課題としては、次のものがあげられている。

○有害危険物質の探知・処理技術
・国際テロで使用される爆薬の探知および安全な処理法、バイオテロに対応するための生物剤の検知及び鑑定法、化学剤・生物毒素の検知法の開発
・交通機関におけるテロ対策強化のための次世代検査技術
・コンテナ内部の全数高速検査、港湾出入国管理システムの自動化・共通化
○不法侵入を防ぐ探知技術開発
・沿岸に存在する重要施設に対するテロ行為や海中空間での犯罪を防止するための監視技術開発
○被害軽減のための脆弱性把握及び予測技術
・大規模テロ発生時の被害予測システムの開発
・船舶のテロ等に対する脆弱性の評価技術

3.技術的課題

 生物剤、化学剤、爆薬といった危険物質等について我が国独自の探知方法の開発が必要である。現在、一部については研究に着手されているものもあるが、1つの方法のみですべての危険物資等をカバーすることは困難である。そこで、探知装置の複合化、小型化の技術が必要となってくる。それに加えて、テロ関連物質の種類は科学の進歩とともに増加するため、新しい化学物質の出現も懸念される。そのため、未知物質を同定する手法やユニバーサルな一斉分析法の開発が必要となる。
 さらに、被害拡大防止のための除染等の事後処理については、古典的な除染方法等が現在も使われているが、近年様々な新しい科学技術が発達してきていることから、これらの技術の中から、生物化学テロで使用される物質の除染に使える技術の抽出が必要である。

4.重要な研究課題の例

 物の面からは、事前の探知、テロ行為後の探知、事後処理など各ステージ毎の研究課題や基盤となる科学技術として、次の事項が考えられる。

表2 テロ対策の基盤となる科学技術
テロの種類 テロ行為の未然防止 テロ行為の認知のための探知 事件直後の処理(被害拡大防止) 事後処理 その他
生物剤検知 モニタリング 抗原抗体反応遺伝子(DNA、RNA)分析、光ファイバーアレイ技術、量子ドット、SPR 除染技術不活性化技術 除染技術抗生物質、抗ウイルス薬 ワクチン等感染・発症予防・治療薬
化学剤検知 モニタリング 質量分析IMS化学センサー呈色反応 除染技術(分子認識技術、光分解技術など) 除染技術 解毒剤治療薬
爆薬探知 テラヘルツ波技術中性子・X線技術(バルク)IMS、質量分析(表面微量付着物)   爆発物処理技術(不爆の場合)   爆薬の特定
放射性物質 放射線の検出 放射線の検出 遮蔽    

 これらの基盤となる科学技術を既存の技術と組み合わせることにより、より迅速で正確なテロ関連物質の非開披探知技術の開発等を継続的に行う必要がある。
・非開披探知技術
 現在行われている生物剤、化学剤の探知方法は、開封あるいは散布された後に検査する方法であり、安全性の面からは、非開披で迅速に結果を出す検査(探知)方法が必要である。
・遠隔探知技術
 探知の際の危険回避の面から危険の及ばない距離からの探知が有効である。
・ハイブリッド探知機材
 より選択性を高めるために、2種類以上の原理の異なる機材を組み合わせる。
・安全な除染技術
 人的被害をより少なくするためには、迅速かつマイルドな除染方法が有効であり、新規技術を応用した除染方法の開発が必要である。
 また、人の面からもテロの未然防止を図る科学技術の開発を進め、研究開発を継続的に行う必要がある。
・監視システム、出入国システムの高度化
・監視システム設置にあたっての国民のコンセンサスを得る方法

 なお、これらの技術は別添2に示す各種犯罪に対処するための技術に共通するものとして捉えることができるものが多い。

お問合せ先

科学技術・学術政策局計画官付

(科学技術・学術政策局計画官付)

-- 登録:平成21年以前 --