別添2

知的基盤整備プログラムの追跡評価結果(個表)

課題名 5.X線極限解析装置の研究開発(平成9年〜平成13年)
代表者 大森 整:独立行政法人 理化学研究所
課題概要  本開発研究では、X線解析装置の研究開発とその手法の確立のために、まず高機能X線光学素子と高感度X線検出素子の開発から着手し、まずその性能を追及する.高機能X線光学素子は、回折格子が作り込まれた非球面ミラーで、X線の集光能力を最大限に高めるものである。高感度X線検出器は、超伝導体を利用して達成される優れたエネルギー分解能によって、目的のX線信号を極めて高感度で捕らえるものである。達成された素子性能を詳細に検討した上で、実用レベルに達したと判断された順に、最適な具体的応用装置を設計し、実現する。
事後評価の概要  X線光学素子の加工技術及び検出素子の両面において、世界的にも高いレベルで要素技術の確立がなされており、産業の基盤技術及び先端科学技術として広い分野に波及効果が期待できる大変優れた研究成果であると評価できる。また、X線光学素子と検出素子を統合したX線解析システムを構築し、一定のデータが得られていることからも、各々のテーマにおいても概ね目標が達成されていると評価できる。しかしながら、X線極限解析装置というシステム全体として見たときには、ユニークな応用データが得られているとは言えず、知的基盤としての実用レベルまでは達していない。今後、本研究で得られた先端技術を円滑に産業に繋げ、かつ国際競争力を確保する新たな仕組みが工夫されることが望まれる。
<総合評価:a>
追跡評価の結果概要

 本課題は、超精密加工のための必要不可欠な知的基盤技術として順調に発展してきており、その応用も広い分野でなされている。また、素子開発技術は、当初のX線極限解析装置から展開し、テラヘルツ光学、中性子光学のための装置として天文分野を始め様々な応用分野で必要不可欠な知的基盤となりつつあり、世界初の成果を生み出している。このように、本課題は知的基盤技術として高い研究成果を生み出し、さらにそれが期待以上に発展、新規分野の開拓に成功している。

  • (1)実施期間終了後の知的基盤の発展状況
     本課題により得られた優れた成果が、ナノ表面を必要とする超精密光学部品や金型、電子部品、工具や超精密機構部品などの基盤的工法として、その後の技術展開と普及、実用化に大きな貢献を果たしている。さらに、開発された技術が天体・宇宙観測用望遠鏡や自動車エンジンなどへ新たに展開されている。また、本課題により得られた素子開発技術に関する成果は、テラヘルツ光学、中性子光学のための装置として天文分野を始め様々な応用分野で必要不可欠な知的基盤となりつつある。
     本課題により得られた成果は、加工技術として必要不可欠な技術に発展しており、開発された超精密門形加工機が、液晶導光板金型加工機、導光板加工機として発展している。これらは国際的にも高い評価を得ている。また、素子開発技術に関する成果の要素技術のテラヘルツ光、中性子光学などへの新たな展開は、中性子光学のための装置として天文分野を始め様々な応用分野で必要不可欠な知的基盤となりつつある。これら、新たな分野への展開とその成功は、当初予想できなかったものであり、その意味で極めて大きな汎用的な知的基盤としての成功である。
  • (2)知的基盤に対する国内外の評価
     本課題の成果である多自由度・超精密非球面加工機は世界一といえるものであり、精密加工産業に対して大きなインパクトを与えた。また、市村賞、文部大臣賞など特筆すべき受賞もあり、内外の研究分野で高い評価を受けている。テラヘルツ波検出器では、国内外の多数の招待講演や国内の賞を受けているほか、海外の一般誌の記事でも取り上げられるなど、国内外で高い評価を受けている。
  • (3)知的基盤の活用状況やそれによって生み出された成果
     本課題で具体的な製品として開発された超精密非球面加工機は、世界一のマーケットシェアと最高の性能、品質を維持している。また、開発した技術を発展させて、超高帯域の基板吸収型テラヘルツ波検出器が世界で初めて開発され、テラヘルツ波アレイ検出器の開発でも世界で唯一の高品質アレイの作成に成功している。
  • (4)過去の評価の妥当性
     加工技術や超伝導接合素子技術の成果に比べて、複合システムの開発は相対的に低い評価であったが、その後の展開から見ても妥当な結果であるといえる。すなわち、前者では、その後も研究面、実用化面で高い成果と評価を獲得している。一方、後者ではX線極限解析装置としての展開よりも、テラヘルツ波検出装置、天体・宇宙観測用機器、中性子光学などへの新たな応用分野を開拓し成功しており、事後評価が適切、かつ有効であったと言える。