4 未来の産業創造と社会変革に向けた取組

 このような大変革時代においては、次々に生み出される新しい知識やアイデアが、組織や国の競争力を大きく左右し、従来の競争環境を根本から一変させるいわゆるゲームチェンジが頻繁に起こることが想定される。ますますグローバル化する世界情勢の中、我が国が国際競争力を強化し持続的な発展を実現していくためには、新しいことに果敢に挑戦し、新たな価値を積極的に生み出していくことが一層重要となる。
 一方、このように先行きの見通しを立てにくい大変革時代にあっては、現時点で未来の産業や社会の将来像を明確に示すことは困難だが、ネットワーク化、サイバー空間の飛躍的発展、データ駆動型経済への移行により、情報ネットワークを介してあらゆるものが結び付くことから、人間生活や社会の様々な情報が共有され、新たな付加価値として社会に還元されることが可能となる。こうした中では、社会の様々なニーズにきめ細やかに、かつ、効率良く対応できる「超スマート社会」とも言うべき未来の産業・社会が到来するものと想定される。そのような新たな社会においては、個別の製品や要素技術のみならず、これらが有する個々の機能を組み合わせ、一つの統合体として機能させる「システム化」によって、新たな価値が生み出されると考えられる。
 このように時代が大きく変動していく中でも、我が国が国際競争力を持ち、目指すべき国の姿を実現していくためには、幅広いステークホルダーにより、未来の社会や産業について構想し以下の取組を進め、時代を先取りし果敢に挑戦していくことが必要である。

(1) 未来に果敢に挑戦する研究開発への投資と人材の強化

 我が国が時代を先取りし、果敢に挑戦することを可能にするため、未来の社会に向けた取組のアイデアを、様々なステークホルダー、特に次世代をリードしていく若手が提案し挑戦できるよう支援を行い、非連続なイノベーションを加速化し、未来の産業創造・社会変革の種となるチャレンジングな研究開発を推進する必要がある。
 その際、専門家以外のアイデアや構想の取込み、挑戦する人材や研究開発をマネジメントする人材の育成や確保、サイエンスのオープン化に対応した研究開発基盤の構築も含め、新たな社会の変化に対応する研究開発環境の整備がこのような取組を加速していく上で重要である。

(2) 新たな価値を生み出す「システム化」と統合

 我が国は個別の製品や要素技術で強みを持つものの、それらを組み合わせ、統合したシステムとしてデザインする力が十分ではなく、その強みを生かし切れていないとも指摘されている。将来に向けて、我が国が新たな価値を生み出していくためには、「壁」を超えて幅広いステークホルダーが集結し、我が国が強みを有する研究や技術を活かし、要素技術にとどまらず、サービスや事業連鎖の全体として価値を提供する「システム」を構想し、バリューネットワークを構築し、価値を創出するアプローチが重要となる。
 このため、統合的で効率的な「超スマート社会」システムの形成に向けて、個別の技術の高度化を進め、サービスや事業の「システム化」に取り組むとともに、それらを更に統合化する先導的なプロジェクトに産学官の連携により取り組む。これらの取組の成果は、絶えず未来の社会・産業の構想の進化にフィードバックさせ、研究開発等の高度化を図っていくことが重要である。これらを適切に実施していくため、「超スマート社会」の実現に向けた「システム化」の研究開発等に関して協議する場を構築する。
 加えて、我が国では欧米等と比較し、データ分析のスキルを有する人材や統計科学を専攻する人材が極めて少ないという危機的状況にあることから、このような「システム化」の取組を支える、ICT分野の人材や、システム構築の素養を有し、課題発見、解決する人材の育成・確保が不可欠である。また、「システム化」により創造される新たな価値・産業はグローバルな展開が前提となることから、国際的な場で各国と連携しつつ、国際標準、行動規範の策定等に関する主導性の発揮が必要である。

(3) 「超スマート社会」の実現に向けた共通基盤技術の強化

 「超スマート社会」の実現に向けて、センサー、ロボティクス、先端計測、光・量子技術、素材、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー等、我が国が技術面で強みを有し、幅広いビジネス創出の可能性を秘める基盤的な技術を更に強化するとともに、統合的なシステムを支えるIoT、ビッグデータ解析、数理科学、AI、サイバーセキュリティ等の基盤的な技術の強化を図る。

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研究振興局参事官(ナノテクノロジー・物質・材料担当)付

(研究振興局参事官(ナノテクノロジー・物質・材料担当)付)