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Home > 政策・施策 > 審議会情報 > 科学技術・学術審議会 > 研究計画・評価分科会 > 国として戦略的に推進すべき基幹技術に関する委員会(第6回)配布資料 > 資料2−1

(別添1)委員会における主な意見

1. 我が国のあるべき姿(ビジョン)
第1期及び第2期の基本計画を踏まえて、あと何に取り組めば目標が達成されるのかということを考えるべき。
どこの先進国でも成り立つ目標ではなく、日本の過去あるいは現状とつながるような方向性があるべき。例えば、高い民度、少ない資源、海洋国家といった条件をどう反映するかということ。
「尊敬される国」、「信頼される国」は目標として掲げるべきものではなく、第三者の評価。「魅力のある国」、「活力のある国」を目指して、結果として尊敬、信頼が得られる。
国際社会の平和と発展への積極的な関与、地球規模の問題・国際社会の課題の解決を通じて世界からの尊敬・信頼を集める国であるとともに、食料・水・資源・エネルギーの安定確保を図るための経済力を持つことができる国際競争力を持ったたくましい国、安全・安心な国、憧れを持たれる国、あなどれない国を目指すべき。
ヨーロッパの国々が一つのモデルであるような「成熟した社会」というものも目標となり得る。どのようにこの「成熟した社会」を維持していくのか、という生き方もある。

(1) GDPの維持、少子高齢化社会への対応
少子高齢化によって絶対数が減っていく中で、技術をどうするのかは重要な問題。
我が国が存在感を示せるのはGDPの大きさによるところが大きい。したがって、GDPを維持するパワーがない限り、国際社会における日本の発言力の低下は免れ得ない。
今後日本が人口減少、社会インフラが省エネ化されることに伴い、物量で稼ぐGDPから、文化的価値を持ったGDPへの質的な転換が行われ得る。

(2) 他国との関係
米国も欧州も今後50年くらいは相当大きな勢力として存続。特に欧州は、統合の影響もあり、今後とも大きなパワーセンタであり続けるだろう。
国際関係の中で、特に一定のレベル以上の強い国は、長期的に地位を安定させるという観点から他国との共存共栄を基本条件としている。日本も、他国と共存する、他国に委ねる部分がなければ、強くて住み易い国でも嫉妬や恐怖の対象となることがある。

(3) 地球規模での持続的発展への寄与
人口問題、環境問題、南北格差の拡大が顕在化し、アジアが成長する中で、いかにして信頼される日本を目指すかという視点が重要。

(4) 国としての存立基盤の確立
一番の根幹は、食料、水、資源、エネルギーの確保。生存に必要なものは最低限確保できるようにするべき。
今後の安全保障戦略は国家からの脅威とともに、非国家主体からの脅威対応が不可欠。そのためには日本の周囲だけではなく、世界各地で脅威を予防することが必要となる。

2. 競争力の維持・強化
我が国では、科学技術によって富を持ち込んで、それをベースに豊かな社会を築いていくというサイクルが基本。その際、国際競争力を強化して豊かな社会を実現するために必要なことは何かを考えるべき。
日本が食料やエネルギーを確保するために輸出は重要だが、日本は大国であるとの意識の下で、自らの生活の向上を図っていかなければ今後輸出だけでは食べてはいけない。
日本としての特徴は技術と人との組み合わせ。人を含めたヒューマン・システムとして輸出できるようにすることが重要。
現下の財政状況の中では、個人的な興味・関心に基づくものより実際に役に立つものに資源を重点的に投資すべき。実際に役に立つものとは、競争力があるもの、税収や雇用の増につながるもの、他国を引き付ける魅力のあるもの。

3. 自立性・自律性の確保
エネルギー技術は、地政学的に難しい位置にある日本が独立国として存続していくためにどうしたらいいかという視点で重要。
地球規模の食料増産にどう寄与するか、地球規模での病気の克服にどう寄与するかということと、基幹技術との関係を整理すべき。
アジアをはじめとする防災分野における国際協力は、防衛技術的なものよりもソフトであり、国際社会にも受け入れられるもの。
防衛に力を割くことなく、モノづくりに突き進むことで、これまでに日本は「強い国」と「経済力のある国」、「信頼される国」、「技術立国」を実現。これからは、モノづくりを支援する技術も必要だが、「平和力で世界一を目指す国」としての基幹技術が必要。
センサ、GPSなどの例を見ると、国の安全・安心も国民の安全・安心も同じ。その意味から一般技術と防衛技術を区別すべきでない。

4. 存在感・魅力の発揮
日本は、地理上、中国、韓国から大きな文化的な影響を受けてきたが、信頼の再構築を図ることが最も重要。21世紀にアジアの信頼を再構築できない日本は米国にもEUにも信頼されない。
国力の一つとして国の品格があるのではないか。国際貢献を通じて格が上がると国民も誇りが持てる。
ヒートアイランド対策、高齢化社会への対応など、日本が直面する問題を自らどう解決できるかが課題。これらの問題は、日本に遅れて中国でも将来的に直面するが、我が国が自ら解決できるか否かが自らの安心・安全はもとより、他国からの尊敬にもつながる。
大型放射光施設「SPring−8」や地球深部掘削船「ちきゅう」など世界最先端を走っているプロジェクトについては今後も積極的に推進すべき。
「科学・文化」の分野については含めるべきではない。技術は文明・国力作り。一方、学術は文化を作るものであるので、ここに含めてしまうと論旨がずれてしまう。米国にとってのアポロ計画のようなものが、ここに入るべき。
「知の創造」という高邁な思想から、技術を抽出する形でプロジェクトが導かれることが望ましい。

5. 「戦略的に推進すべき基幹技術」とは何か。
科学とは自然現象の原則・法則性を発見して知識として体系化すること。技術は、それぞれの知識を人や社会の役に立つ形に新たに体系化し直したもの。この議論では、科学と技術のどこに力を入れるかということが課題の一つ。

(1) 米国の国家戦略と科学技術
米国には、科学技術こそ社会を支え、発展させていく原動力とのコンセンサスがある。
米国は、連邦政府として重点投資すべき研究開発課題として、国家安全保障に非常に高い優先度を付与。そのほか、エネルギーの自立といった長期的な国家目標の達成、連邦政府諸機関の任務遂行のための共同利用施設整備、国民の健康増進、教育の強化、競争力強化・雇用創出などに重点。

(2) 欧州の(国家)戦略と科学技術
欧州では、科学技術によって付加価値の最大化という認識の下、産業競争力の強化を(国家)戦略の中核に位置付けている。
特徴的なことは「自立性の確保」という考え方。これは米国との競争・対抗という意識より、米国に振り回されないとの意味。
財政的な観点からの要請である効率性と自立性とのバランスを考慮して、どの技術を自ら保有し、どの技術を外国に依存してもよいかを判断。

(3) 中国の国家戦略と科学技術
「科学技術は第一の生産力」とのとう小平のスローガンの下、経済発展のために産業化を志向した科学技術に重点。
全体としてはキャッチアップ型だが、90年代後半以降、基礎分野の強化も意識。ソフトウェア、ゲノム、新材料など、海外のネットワーク、帰国した留学生などを原動力として急速な成長を遂げている分野も散見。

(4) 我が国としてとるべき戦略
単純に考えると、技術開発における国家戦略では、現在、ナンバーワンの技術を徹底的に追求してナンバーワンを維持することが第1。第2に、国としてどうしてもやるべきことを確実にやること。第3は、日本の特徴を活かせるものを確固たるものにすること。
日本には、アジアの一員としての政策が必要。
この委員会の目的は、国としてのビジョンに照らして国家予算の配分のプライオリティを見直すことにある。

(5) 「国として戦略的に推進すべき基幹技術」の要件
Back to science‘は重要であっても、ここで議論すべき基幹技術はサイエンスを第一義としてはいけない。
基幹技術は、自由な発想に基づく基礎研究の外側にあって、国として放置できないと考えられる科学を含む技術で、重点的に支援すべきもの。自由な研究が個々のテーマに対応した政策的な位置付けがなされないのに対して、基幹技術に関する研究開発は、設定されたテーマごとに政策的な支援の対象となり得るもの。これらは互いに表裏一体の関係。
基幹技術の中に「統合化」の技術が加えられるべき。
統合化研究とは、ある目的に則して科学(知識)を体系化して技術を作り出していく過程。基幹技術の議論では、国の政策として、その目的・問題設定をしっかりやること。
単にハードウェアに資源を投じるというのではなく、産業・社会の変化を加味した戦略を念頭に置いた根源的な技術を対象とすべき。
資源・エネルギー・環境、安心・安全という極めて重要な二つの分野で、国が主体的に役割を果たすビッグプロジェクトを取り上げるべき。あるべき国の姿を実現するために何をなすべきかを具体的に明らかにすべき。その上で、プロジェクトを設定して、科学と技術を同じベクトルで進化させていくことが必要。
委員会では、官民を含めたビジョンや方向性を共有し、その上で政府として支援すべき基幹技術とは何かを明らかにすることが必要。資源に制約があることから、取捨選択を行う際の基準は、そのビジョン・方向性、国家戦略と合致するかどうか。また、官民の役割分担がどうかということも判断基準の一つ。
発展性があり、かつ国際的に優位になりうる分野、あるいは社会に共通的に裨益する分野の技術であり、採算性、規模や期間、リスク、あるいは技術の先端性とそれに伴う人材、設備などの面から民間のみによる自主的な研究開発が期待しがたい技術であるべき。特に、国・国民の(広い意味での)存続に関わる技術、根幹的な(基本的、普遍的で波及効果の大きな)あるいは基盤的な(多くの分野に共通的に適用可能な)技術を優先すべき。
ハードとソフトという観点からは、大半はソフトの話であり、ターゲット、プロジェクトについても、ソフトの比重が非常に高いものになる。
最終的には、国際発信できる形でまとめるべき。

以上


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