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資料2−1

国として戦略的に推進すべき基幹技術について
(これまでの議論の整理)

1. 検討の背景
(1) 我が国における科学技術政策推進の司令塔である総合科学技術会議は、「平成17年度の科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針」(平成16年5月26日総合科学技術会議決定。以下、「資源配分方針」という。)をとりまとめた。この資源配分方針では、国の持続的発展の基盤として必要であって、長期的な国家戦略の下、国として責任を持って取り組むべき重要な科学技術を精選し、平成18年度以降の本格的な推進に継承することを基本方針の一つとして掲げた。

(2) この決定を踏まえ、文部科学省では、平成16年6月、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会の下に「国として戦略的に推進すべき基幹技術に関する委員会」を設置した。同委員会では、我が国が有する技術力を国力の一つとして捉え、最先端の「知」を最大限に活用しながら、その強化を図るための研究開発を強力に推進していくことを目的として、確固たる国家戦略を念頭に置き、国際情勢や研究開発動向を踏まえ、基本的な考え方などを取りまとめることとした。

2. 検討の前提(前提となるビジョン)
(1) 我が国の科学技術政策は、真の科学技術創造立国を目指して平成7年に制定された科学技術基本法と、同法に基づいて策定された基本計画によって推進されている。これによって、今日までに我が国の研究開発水準は着実に改善され、政府による有望分野への重点投資が進展するとともに、優れた研究開発成果を生み出し、還元するための仕組み(科学技術システム)の改革も進められている。

(2) 他方、我が国を取り巻く状況は、現在の第2期科学技術基本計画が策定された当初から劇的に変化した。我が国において少子高齢化が現実の問題として直視されるようになり、労働力人口の減少、社会保障支出の増大などへの懸念から「日本の先行き」に不安を覚える人が急速に増えていること、韓国・中国の経済躍進など国際社会のパワーバランスが大きく変貌していること、地震・台風といった自然災害の頻発、新興感染症への対応などを契機として、国民が切実な思いで安全・安心な社会の実現を求めるようになっていることなどが、その例である。

(3) このような状況の変化に伴い、これからの科学技術政策に求められるものも大きく変化している。とりわけ、第1期・第2期の基本計画を経て、我が国の研究開発環境がよりよい方向に向かっていることなどを踏まえ、科学技術政策による「目に見える成果」を期待する声が高まっている。細分化され、複雑化した領域ごとに得られた「知」を、「我が国のあるべき姿」(以下、「ビジョン」という。)の実現に向け国家レベルで構造化することに取り組むなど、今後はこれまで以上に具体的かつ効果的な戦略が強く求められるようになるだろう。

(4) 委員会では、国としてとるべき具体的かつ効果的な戦略を明らかにするために、まず委員の間で議論の前提となるビジョンを共有することが不可欠であるとされた。なお、掲げるべきビジョンとしては、「尊敬」、「信頼」、「魅力」、「活力」、「たくましさ」、「品格」といったキーワードを含むものを検討してはどうかとの意見があった(別添1)。

(5) 他方、議論の前提となるビジョンを、現行基本計画に掲げられた1「知の創造と活用により世界に貢献する国」、2「国際競争力があり持続的発展ができる国」、3「安心・安全で質の高い生活のできる国」としてはどうかとの意見も出された。これらは第2期基本計画期間後もなお、その達成に向けて取り組むべきものと考えて差し支えないという意見が大勢であったことなどから、委員会としては、前述のキーワードも十分に意識しつつ、この3つを議論の前提として共有し、以後の議論を行うこととした。

(6) また、委員会ではビジョン実現に向けて考慮が不可欠な、我が国を取り巻く今日的な課題についても議論を行った。その結果、委員会では、特に以下の課題について考慮することが不可欠である旨を確認するとともに、これら今日的な諸課題の解決のために科学技術の役割は益々重要性を増しているとの認識を共有した。

産業の国際競争力の強化に関する取組みが奏功しつつある韓国、中国などの参入により世界的な競争が一層激化する中、世界に類を見ない少子高齢化社会への移行に直面する我が国が、国際社会における発言力や存在感をどのように維持し、向上させていくか。

著しい経済成長を遂げる国と、貧困にあえぐ国との格差が広がり、世界全体の平和の維持や持続的な発展のための有効な方策が求められている中で、我が国がどのように貢献を果たしていくことができるか。

地球的規模での人口の爆発的な増大が進展することに伴い、水や食料、資源・エネルギーの不足、地球温暖化などの地球環境問題といった人類の生存、国家の存続に係る問題に対して、我が国がどのように迅速かつ適切な対処をしていくことができるか。

近年、地震・台風などの自然災害の頻発や、新興感染症などの問題が顕在化する中、国民の生命と財産を守るという政府の役割をどのように果たしていくのか。

3. 基幹技術についての概念整理
(1) ビジョンの実現を目指した取組みを効果的かつ効率的に進めるためには、科学技術政策をこれまで以上に戦略的に推進していく必要がある。とりわけ、次期基本計画期間における資源配分にあたっては、ビジョンの実現に対して、いかに効果的であるかという視点に重きを置いた「目的達成志向の研究開発」への重点化が不可欠である。

(2) このような認識を踏まえ、委員会では、資源配分方針に示された3つの概念との対応も考慮しつつ、まずビジョンを実現するために取り組むべき戦略目標(ターゲット)を設定することとした。具体的なターゲットの設定にあたっては、「どのような研究開発に取り組むべきか」ということを具体的にイメージすることができるように考慮することとした。委員会では、数名の委員に外部有識者を加えて検討を行い、以下の3つのカテゴリに属する6つのターゲットを設定した。

競争力の維持・強化】

 我が国の活力や国際社会における我が国の存在感の源泉は、「強み・良さ」を生かした産業の国際競争力にあると言っても過言ではない。「価値創造型のモノづくり」という我が国の強みを維持しつつ、さらにこれまで以上に伸ばしていくことは、質の高い国民生活の実現はもとより、創造される価値によって国際貢献を果たし、国際社会における我が国の存在感を示していく上で極めて重要である。このような観点から、我が国の競争力の維持・発展について以下のターゲットを設定する。

  1 高い競争優位性を有する領域の維持・発展
  2 波及効果の高い基盤的・根源的領域における先導性の追及

自立性・自律性の確保】

 我が国が持続的に発展していくためには、国家としての基本的な機能(セキュリティの確保、ナショナルミニマムの保障など)を確実に果たしていくことが大前提である。あらゆる分野で急速にグローバル化が進展する中で、他の国々との適度な共存を志向しながら、真に重要な部分で我が国の自立性・自律性を確保することは、国の存立基盤を確固たるものにするばかりか、産業の国際競争力の維持・発展、安心・安全な社会の実現にも大きく寄与する。このような観点から、我が国の自立性・自律性の確保について以下のターゲットを設定する。

  3 国民の生命・財産、我が国が有する社会インフラの保護
  4 資源、エネルギー、食料などの安定的な確保

存在感・魅力の発揮】

 今や「国の品格」は国力の一つと捉えられることが一般的である。特に、大きな変貌を遂げつつあるアジア地域において、我が国が有する高い技術力を最大限に活用して目に見える貢献を果たし、尊敬に値する活動を展開することは、我が国の品格を高めるだけでなく、同時にアジア地域全体、ひいては全地球的な規模の利益とともに、国民の科学技術に対する理解の促進にもつながるものと言える。このような観点から、存在感・魅力の発揮について以下のターゲットを設定する。

  5 地球的な規模の問題への適切な貢献
  6 先端技術の保持・活用によるリーダーシップの発揮

(3) また、委員会は、上述の6つのターゲットに対応して、必要な「知」や「技術」を統合して実施する大規模な研究開発計画(プロジェクト)の候補を挙げた。別添2(PDF:21KB)に挙げたプロジェクトは、「国として戦略的に推進すべき基幹技術」の候補としていずれも適切であると思われるが、今後、他の候補などについて更に検討を進めることが適当である。

(4) なお、各プロジェクト候補については、以下の4つの戦略性に係る視点から評価を加える。委員会は、このような手法で行った評価の結果で極めて戦略性が高いと認められるプロジェクトに対し、資源を重点配分し、早期に適切な成果・効用をもたらすことができるよう強力に推進すべきである旨提案したい。
期待される効果・効用(アウトカム)が大きいかどうか。また、革新的であるかどうか。
日本ならではの視点があるか、他国では成り立たない戦略かどうか、他国との差別化がなされているかどうか。
国が取り組むべきビジョン達成志向の取組みかどうか。
今着手しなければならない必然性があるかどうか。

(5) また、「知」や「技術」をプロジェクトに統合する「統合化技術」についても十分に考慮すべきである。

(6) 言うまでもなく、プロジェクトに対して資源を重点配分するだけでビジョンが実現するわけではない。国民の支持と理解を得て、研究開発の成果を実用化につなげたり、実社会の仕組みとして組み込んだりする努力などが相まってビジョンが初めて実現されることになる。今後、委員会では、この点についても引き続き議論を行うこととするが、広く関係者においても大所高所からの広範な議論を期待したい。

4. 今後の予定
 委員会では、今後、「国として戦略的に推進すべき基幹技術」の研究開発に係る具体的な推進方策などについて、さらに議論を深めることとしたい。

以上


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