科学技術と社会という視点に立った人材養成を目指して おわりに

(新たな改革方策)

今回の提言においては、第一次、第二次提言の内容も改めて振り返りつつ、科学技術と社会という視点に立って、人材養成の観点から必要な改革方策を取りまとめたが、そのうち今回新たに提言した主な改革方策は以下のとおりである。
<大学院博士課程段階>
○大学院博士課程における教育機能の強化
――大学院博士課程を核とした高度な人材養成機能をもつ研究教育拠点の形成支援――
<大学院修士課程段階>
○産学連携による実践的な能力向上に向けた人材養成システムの構築
――個別大学と企業群の契約に基づく、質の高い長期インターンシップの取組支援――
○産業界との連携による、大学を拠点とした集約的な高度専門教育の提供
――産学共同による教育プログラム開発や優秀な学生への教育提供に係る取組支援――
<大学学部段階>
○課題探求能力を育むため、専門分野に関する基礎教育に加え、幅広い教養を身につける大学学部における教育の質の充実
――国公私立大学を通じた「特色ある大学教育改革の支援」に係る取組の充実――
<初等中等教育段階>
○理数が好き・得意な生徒を伸ばし、創造性や独創性を育む取組への支援
――スーパーサイエンスハイスクールの発展・充実――
○将来の地域社会の担い手となるスペシャリストの養成
――地域の産業界等との連携による専門高校における専門教育の活性化推進――
<多様な人材の活躍促進>
○若手研究者の自立性向上
――優れた研究能力を有する若手研究者に対する顕彰制度の推進――
○技術者が継続的に能力開発を行うことができる環境の整備
――大学や学協会等のポテンシャルを活用した継続的能力開発システムの構築支援――
○新産業創出に貢献する人材の養成
――大学学部や専門職大学院等における起業家養成コースの創設支援――
○理数担当教員の意欲、意識を含めた資質の向上
――高い専門性に裏打ちされた魅力ある授業展開に向けた修士号以上の取得促進――

上記は、各段階に着目して整理したものであるが、こうした取組が連続性をもって展開されることが重要であることは言うまでもない。
また、今回の提言において示された各改革方策が着実に実施され、その実効性を上げていくためには、大学等の教育機関のみならず、産業界からの積極的な対応が期待されるとともに、文部科学省においては、関連するデータの収集に努めつつ、各方策の実施状況や効果を検証していくことが重要である。

(留意事項)

今回提言した改革方策の中には、主として自然科学系の人材を想定したものもあるが、第二次提言において指摘しているように、人間社会と地球環境との調和のとれた発展を図っていくためには、自然科学と人文・社会科学を総合した人類の英知が求められていることは言うまでもない。
さらに、科学技術と社会との間の双方向のコミュニケーションのための条件を整えるに当たっては、自然科学系のみならず、人文・社会科学系の人材が、科学技術と社会との関係について研究を行い発言するとともに、企業や地域など社会の側にある意見や要望を科学技術の側に的確に伝えるという点で重要な役割を担うことが期待される。
科学技術創造立国の実現に向けて必要な人材養成については、人文・社会科学固有の問題を含め、学問分野ごとの特性を踏まえた検討も必要である。こうした点については、科学技術・学術審議会関係分科会等における検討状況を踏まえ、本委員会としても必要な検討を行う必要がある。その際、高等教育の将来構想(グランドデザイン)など、中央教育審議会大学分科会における検討状況にも留意する必要がある。

(第三期科学技術基本計画の策定に向けて)

今回の第三次提言においては、科学技術と社会という視点に立って、喫緊の課題となっている人材養成の質的な面の方策を提言した。しかし、我が国社会の急速に進展している少子高齢化は、今後の科学技術・学術活動の基盤となる人材の養成・確保に関して極めて大きな影響を及ぼすと考えられることから、この問題についての検討を深める必要がある。
政府においては、今後、平成18年度から実施予定の第三期科学技術基本計画に向けた検討が本格化するものと考えられる。本委員会としても、こうした検討動向に留意しつつ、引き続き必要な検討を行っていく予定である。
今回提言した方策が実効性あるものになるよう、人材養成に直接的に関わる者のみならず、産業界を含め、広く国民一般の幅広い理解と協力が得られることを期待したい。

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科学技術・学術政策局基盤政策課

(科学技術・学術政策局基盤政策課)