教職大学院の審査結果について

  1.  教職大学院については、本年3月に制度が創設され、7月に平成20年度開設予定の国私立の教職大学院21件の諮問等があった。(国立15件、私立6件)
     審査に当たっては、教職大学院の案件のみを審査する特別審査会及び専門委員会を設け、書面審査に加えて、全ての大学院に対して面接審査を実施し、必要に応じ実地審査や連携教育委員会からのヒアリングを行ったりして、慎重な審査を期した。
     その結果、19件については、認可を「可」とする判定を行い、各大学院が留意すべき事項の内容を「留意事項」として取りまとめた。その他は、申請が取り下げられたものが2件ということとなった。
  2.  教職大学院は、これまでの大学院段階における教員養成の在り方を見直し、高度専門職業人としての教員に求められる高度な実践力・応用力を育成するため、専門職大学院制度の中に特別に位置づけられ制度化されたものである。このことに鑑み、各案件の審査に際しては、設置の趣旨・目的が制度創設の趣旨に即しており明確か、教育課程が実践的な内容になっており体系的に編成されているか、学校等における実習が円滑に教育効果をあげるものになっているか、実務家教員と理論的な科目を担う教員とが適切に役割分担し協働する教員組織になっているか、養成した人材を受け入れる教育委員会等との強い連携関係が構築されているかといった観点から確認を行い、不明確な点については申請者に説明を求めた。
  3.  審査における論点の一つが、学校等における実習の取扱いであった。実践的な指導力の強化を図る観点から、10単位以上の実習を修了要件とするとともに、学生の教職経験を考慮して、全部又は一部の実習を免除できる制度とされている。実習の免除を計画する案件の中には、教職経験と免除する実習との相関性、免除の基準・方法等が不明確なものがかなり見られた。また、実習の全部を免除する計画については、実践力ある人材を育成する目的を達成できるかどうか疑問であるとする意見もあった。教職大学院における教育の質の担保に直接関わる事柄なので、各大学院において、実習を免除する場合の判定は厳正に行うとともに、実習の在り方を不断に検証していくことを望みたい。なお、現職教員学生が現勤務校で実習を行う計画の場合、日常の勤務に埋没しない工夫・配慮が適切になされることも望みたい。
  4.  その他、審査においては、1年コースを設定する場合の教育の質の担保、学生が1年間に登録できる履修科目の単位数などが論点となった。細部までの検討がなされておらず準備不足なものがある、教職大学院の設置により既設の学部や修士課程の教育も改革してほしい、今回は義務教育、特に小学校教員養成の案件が多かったが、例えば、高等学校等の教員養成のものも今後出てきてほしいといった意見があったことを付言しておきたい。
  5.  今回の審査に際し、教職大学院制度の趣旨・目的に照らして個別の案件の内容について議論したが、判断に苦しんだ局面があった。文部科学省に対しては、例えば以下のような事項について、基準の明確化など制度に関する共通理解を図る取組を期待したい。
    • 実習について、全部免除の要件、免除の基準・方法等に関する要件
    • 現職教員学生の現勤務校での実習を認める要件
    • 学生が1年間に履修科目として登録することができる単位数の上限
    • 教員組織中に修士など相応の学位保有者を相当程度含むこと
    • モデル・カリキュラムの作成の支援
  6.  平成20年度に開設する19の教職大学院に対しては、確実に設置計画及び留意事項の内容を履行し、質の高い実践的なリーダー教員養成を行うことを期待する。

平成19年11月27日

大学設置・学校法人審議会大学設置分科会長代理
(教職大学院特別審査会主査)北原 保雄

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