11月答申の提出に当たって[大学設置・学校法人審議会会長コメント]

  1.  このたび、大学設置・学校法人審議会は、本年5月及び7月に諮問等のあった平成20年度開設予定の公私立の大学、大学院などについて答申等を行った。諮問等のなされたもののうち、今回認可の答申等に至った案件は94件であり、それぞれ円滑かつ確実に設置計画を履行し、特色ある充実した教育研究活動を展開されることを期待したい。
  2.  本年度の申請等の大きな特色の一つは、教職大学院関係が21件あったことである。このうち、今回の答申等で可となったのは19件、申請が取り下げられたものが2件である。全体的に、実践的な能力を培うための実習の重要性に関する理解が不十分であると思われる案件がかなり見られ、それらについては補正を求めることとなった。教職大学院は教職課程改善のモデルとして制度化されたことを十分踏まえ、質の高い実践的なリーダー教員養成を行う体制を整備・充実することを強く求めたい。(詳細については別紙の北原大学設置分科会長代理のコメントを参照。)
  3.  教職大学院以外の案件では、大学の新設、学部の設置、短期大学の学科の設置、大学の通信教育の開設、大学院の研究科の設置、専攻設置・課程変更の各区分で、申請の取り下げが7件あり、また、いくつかの案件については、当審議会においてさらに吟味を必要とするという判断から、現在の時点では保留という結果となっている。これらの案件は、総じて準備不足の傾向が顕著であり、設置の趣旨・教育上の目的、教育課程、施設・設備などの面で、大学の設置に関する基本的理解を欠いているのではないかとの懸念がもたれるような申請内容のものも見られた。
  4.  規制緩和の流れの中、大学新設の抑制方針の撤廃、審査基準の準則化、認可事項の縮減など「事前規制から事後チェックへの転換」の考え方に基づき、設置審査が行われてきているが、その前提となる大学自身の自覚と責任の徹底という点において、懸念せざるを得ない案件が少なくないことは、大いに危惧されるところである。本年1月には文部科学大臣が、株式会社が設置するある大学に対して学校教育法に基づく勧告を行う事態にも至っている。各申請者はじめ大学の設置・運営に関わる全ての方に対して、あらためて大学を設置する責任の重みを十分に自覚いただくよう強くお願いしたい。各申請者においては、当該専門分野の教員をコアとして構成・計画を練り、十分な準備を経た上で申請するよう重ねてお願いしたい。また、積極的に教育情報・財務情報を公開し社会に対する説明責任を果たすよう期待したい。
  5.  今回の審査に際しても、設置構想が多様化する中、判断に苦慮した局面が少なくなかった。文部科学省に対しては、基準を明確化し適正な審査を行う観点から、例えば、以下のような事項についての検討を期待したい。
    • 学位に付記する専攻名称に関する基準の明確化
    • 大学院大学のハード面など基準の明確化
    • 多様な形態を踏まえた通信教育設置基準の見直し
    • 教職大学院の基準の明確化(別紙参照)
    • 専門職大学院で養成する人材を受け入れる側のニーズ把握の徹底、専任教員の役割・責任の明確化

平成19年11月27日

大学設置・学校法人審議会会長 永田 眞三郎

お問合せ先

高等教育局大学振興課大学設置室

(高等教育局大学振興課大学設置室)