第2編 第3節 フランス

1.教育基本計画の法的位置づけ、策定プロセス、計画期間

(1) 策定プロセス

 2005年にフランスの教育基本法およびこれに付随する基本計画を改定するにあたって、国民的議論が大々的に展開された。具体的には2003年9月に、「学校の未来に対する全国委員会」が設置された。2003年11月から2004年2月までに「学校の未来に対する国民討論」がフランス全国各地で15,000回にわたって開催され、さらに電子メールでの意見集約も行われた(注1)。この結果が2004年4月に『議論の鏡 Miroir du débat』という報告書にまとめられた。
 2004年10月よりフィヨン教育大臣が法案を準備し、2005年に閣僚評議会(le conseil des ministres)で提示し、議会に提出した。そして3月24日に、「学校の未来のための基本・計画法 Loi d'orientation pour l'avenir de l'école」(教育基本法)が制定された。教育相の名前から通称フィヨン法と呼ばれる。我が国の教育基本法と異なり、教育の原理原則に加え、教育の中長期的目標や学校教育制度に関する規定を含む法律である。過去には、「教育基本法」として、1975年(通称アビ法)と1989年(通称:ジョスパン法)が制定されている。

図表2-3-1 学校の未来に対する国民討論から法律制定までの流れ

(2) 法的位置づけ

 本計画は、「学校の未来のための基本・計画法」の附属報告書(Rapport annexé)である。ただし、この附属報告書は、憲法院の審査によって手続き上の不備から違憲とされ最終的に削除されたが、政府は報告書に盛り込んだ方針や施策は実施に移す意向を表明している(注1)。報告書の表紙には、題名の下に「この報告書は学校の未来のための基本計画法の一部をなすものではもはやないが、正規の法的措置によって実施されるときの参考であることに変わりはない(注2)」とある。

図表2-3-2 「学校の未来のための基本計画法」の附属報告書(Rapport annexé)

(3) 計画期間

 附属報告書末尾の数値目標は2010年を目標年度としている。
 その他、目標計画や予算などは2006年〜2008年、2006年〜2010年などとなっている。

2.教育基本計画の体系

(1) 計画の構成

 本計画は表紙を含め39ページの報告書である。
 内容の構成は以下のようになっている。(注:12ならびに1、2、3については本報告書内でそれぞれその通り表記されていたものであるが、以下については番号がついていなかったため、本報告において便宜上つけたものである。以下同)

1. 基本方針 1.Orientations

学校のための新たな希望 Une nouvelle ambition pour l'école

1.より公正な学校:信頼ある学校 1.Une école plus juste : l'école de la confiance
2.より効率的な学校:質の高い学校 2.Une école plus efficace : l'école de la qualité
3.より開かれた学校:国民の意見に注意を払う学校 3.Une école plus ouverte : l'école à l'écoute de la Nation

2.目標 2.Objectifs

(2)計画における就学前教育・初等教育・中等教育・高等教育・生涯学習の該当箇所

 上記の計画を、就学前教育・初等教育・中等教育・高等教育・生涯学習に割り当てると以下の項目が該当する。

図表2-3-3 各章と教育分野の対応

教育分野 計画の該当章
就学前教育 1.1 幼稚園
初等教育 1.2 必要不可欠な共通基礎知識技能の習得(小・中)、1.3 教育成功個別プログラム(小・中)
中等教育 1.2 必要不可欠な共通基礎知識技能の習得(小・中)、1.3 教育成功個別プログラム(小・中)、1.4 優等生奨学金(中・高)、1.6 進路指導(主に中学)、1.7 社会編入への支援(主に中学)、1.9 障害のある児童生徒の就学(中・高)、2.8 リセ(高校)、2.9 試験、2.10 情報通信技術(ICT) (中・高)
高等教育 (基本方針で、同一世代の50パーセントを高等教育修了に至らせることを目標に掲げているがそれ以外の項目では特になし)
生涯学習 2.11 生涯学習

3.教育基本計画における重点分野の有無

 計画を離れて、「学校の未来のための基本計画法」本体ではあるが、法律の条文のなかに、義務教育期間中に身につけるべき知識および能力が明記されている点が注目されており、計画にもその要素がちりばめられていると考えられる。同法9条は以下のように定めている。
 「義務教育は、各人が学校教育を首尾よく終え、引き続き教育を受け続け、個人的そして職業的将来を築き、社会生活での成功を収めるために必要不可欠な知識および能力の総体からなる共通の基礎を獲得するのに必要な諸手段を各人に保障しなくてはならない(注1)。」
 そして、習得すべき共通の基礎として以下の5点を挙げている。

 計画の中でも「1.2不可欠な能力や知識の習得(La maîtrise des connaissances et des compétences indispensables)」のなかで上記5項目が掲げられているほか、「2.目標」の中では7つの数値目標のうち2項目が外国語の習得に関する数値目標である。
 また、計画に焦点をあててみると、特に重点分野という項目が示されているわけではない。とは言うものの、計画の冒頭の「基本方針」部分は注目に値する。
 この中で、新教育基本法は過去15年におけるフランス社会及び学校の進展に対応することを目指しているとしている(注3)。
 このなかで、国家が保証すべき目標として

  1. 生徒全員が学校教育の終了時点で何らかの公認資格(修了証Diplôme または公認職業資格 qualification (professionnelle)reconnueのいずれか)を獲得すること
  2. 同一年齢層(注4)の80パーセントがバカロレア(高校卒業資格試験兼大学入学資格試験)水準に到達すること
  3. 同一年齢層の50パーセントを高等教育修了に導くこと

 の3点を掲げており、学校教育をきちんと修了させることを重視していることが窺われる。

4.主要施策の内容

 計画の中の施策内容は以下の通りである。

(1) より公正な学校:信頼ある学校

 公正な学校とは、生徒たちが人格及び職業に関わる成功を収めるために必要としている信頼感をもたらす学校である。公正な学校は、優秀な生徒にさらに前進するよう奨励する一方で、より不利な立場にある生徒たちを支援しなくてはならない。若者を何の修了資格も取らずに学校システムから脱落させてはならない。今後10年間に同一年齢層の半分が、高等教育で交付される免状を取得できるようにしなくてはならない。

1.1 幼稚園

 幼稚園(エコール・マテルネル)は義務教育に先行する(注1)。独自のアイデンティティを与えられた幼稚園は教育的な使命を負っているが、小学校とは区別される。教員の注意深い監督の下で受ける感情面での体験、行動、自律的な探求によって、子どもは基礎的な能力を獲得する。幼稚園は子どもの人格形成と、最初の言語の構造化を支援する。

1.2 必要不可欠な共通基礎知識技能の習得

 義務教育は小学校・中学校における6歳から16歳までの生徒についてであるが、一人ひとりの生徒にとって不可欠な知識および能力の共通の基礎を獲得することを保障するものである。すべての生徒に成果を約束し、一人ひとりが個人としてそして職業人としての目標に到達するための一人ひとりの才能を伸ばせるようにする。
 新たに作られた教育高等審議会は、義務教育で獲得しなくてはならない知識と能力について、政府に対して提言を行う。
 習得すべき知識と能力の共通の基礎には以下のものが含まれる。

 これらを習得させるために、小学校と中学校はそれぞれの課程の枠組みにおいて以下のような役割を担わなくてはならない。

 中学校では基礎的な学問分野を深化させるとともに、多様化させることも許容する。特に古典語(ラテン語やギリシャ語)の習得などである。
 義務教育の修了時点で必要不可欠な共通基礎知識技能が取得できていない生徒のために、学級委員会(le conseil de classe)は教育成功個別プログラムの枠組みの中で留年することを強く進めることができる。

1.3 教育成功個別プログラム

 義務教育では必要不可欠な共通基礎知識技能や特定の学問分野の習得が難航している生徒に対して絶えず特別な支援を提供する義務がある。教育成功個別プログラムは、障害児のための就学個別計画を代替するものではない。
 教育成功個別プログラムは生徒の親、学校の校長または理事長、担任の教員によって署名された文書に基づいて実施される。中学校では、上記に加えて生徒自身の署名も必要になる。
 小学校における教育成功個別プログラムは教員によって実施される。計画の実施に当たって、県の主に初等教育を担当する大学区視学官(l'inspecteur d'academie)が教育補助の追加的研修を受けた教員を配置したり、必要に応じて医師や教育心理士を配置する。この場合、学習障害児の特別支援ネットワーク(Le réseaux d'aides spécialisées aux élèves en difficulté, RASED)の枠組みを活用することができる。
 中学校の場合は、割り当てられる予算の中に教育成功個別プログラムの経費が含まれる。具体的には、学習障害児の人数に応じて算出される。この支援は週3時間の少人数グループの特別時間割のかたちで実施される。
 毎年の財政法により設ける予算の範囲において、かかる予算は下記を計画している。

図表2-3-4 予算額(100万ユーロ)Crédits(en millions d'euros)
  2006年 2007年 2008年
小学校での実施
Mise en oeuvre à l'école élémentaire
107 107 107
中学校での実施
Mise en oeuvre au college
132 132 132
農業教育機関(注1)における実施
Mise en oeuvre dans l'enseignement agricole
1.32 1.32 1.32

(資料)Rapport annexé p6

1.4 優等生奨学金

 真に平等な機会を保障するため、並外れた努力をしたことに対して奨学金を与える。中学校の卒業の際には前期中等教育修了国家免状(Diplôme National du Brevet)の試験で「優(très bien)」または「良(bien)」を獲得した生徒に受ける権利がある。これによってよりよい条件のもと、一般科・技術科・職業科の高等学校に進学することができる。
 高校についても、「優(très bien)」または「良(bien)」を得ることで、大学進学の際に奨学金(または推薦)を受けることができる。

図表2-3-5 中等教育における優等生奨学制度
  2006年 2007年 2008年
受給者数の増加
Augmentation du nombre de beneficiaries
16,700人増 16,700人増 16,600人増
予算(百万ユーロ)
Crédits (en millions d'euros)
17 17 17

(資料)Rapport annexé p7-8

図表2-3-6 高等教育における優等生奨学制度
  2006年 2007年 2008年 2009年
受給者数の増加
Augmentation du nombre de beneficiaries
1,200人増 1,200人増 1,200人増 1,200人増
予算(百万ユーロ)
Crédits (en millions d'euros)
6 6 6 6

(資料)Rapport annexé p8

図表2-3-7 農業教育における優等生奨学制度
  2006年 2007年 2008年 2009年
中等教育における受給者数の増加
Augmentation du nombre de beneficiaries dans le second degree
1,500人増 1,500人増 1,500人増 該当なし
中等教育における予算(百万ユーロ)
Crédits (en millions d'euros)
6 6 6 6
高等教育における受給者数の増加
Augmentation du nombre de bénéficiaires dans l'enseignement supérieur
1,200人増 1,200人増 1,200人増 1,200人増
高等教育における予算(百万ユーロ)
Crédits (en millions d'euros)
6 6 6 6

(資料)Rapport annexé p8

1.5 教育優先地区(ZEP)と教育成功チーム

 教育優先地区(ZEP, zone d'éducation prioritaire)(注1)では教育学上のまた教育上の効率性を改善していく。一方で、社会連帯計画法(la loi de programation pour la cohésion sociale)の枠組みの中で教育成功チーム(les Equipes de Réussite Educative)がつくられ、例えば学校が半日で終わる水曜日の午後に活動するプログラムなどを支援している(注2)。

1.6 進路指導

 中学校では、将来どのような職業に就きたいのか、また、どの分野で学業を続けるのかについて進路指導を行う。中学の第4学年で、週3時間の自由選択科目である「職業体験(découvert professionnel)」を通じて、生徒はさまざまな職業を知り、その職業に就く方法を考えることができる。また職業リセ(高校)、農業教育機関、見習技能者養成センター(CFA)(注1)への見学なども行われる。
 進路指導において進路指導情報センター(Les centres d'information et d'orientation(C.I.O.)(注2))も重要な役割を果たす。職業と資格化の多様化によって、進路指導心理カウンセラー(Conseiller d'orientation psychologique)の採用と養成も重要になってきている。また学校と企業のパートナーシップによって職業体験・職業研修(スタージュ、stage)を提供することも必要である。

1.7 社会編入への支援

 中核的な目的であるすべての生徒の学業の成功を実現するために、成績不振児に学習指導活動を実施する必要がある。レベル5以上の資格(注1)を習得せずに教育制度から離脱しようとしている生徒、または離学後1年以内の16歳以上のすべての若者に対して、適した教育施策を提供しなくてはならない。

レベルNIVEAU 定義(DEFINITION)・例示・説明
5 職業教育修了証 le brevet d'études professionnelles (BEP)
職業適任証 le certificat d'aptitude professionnelle (CAP), le certificat de formation professionnelle des adultes (CFPA) du premier degré
4 le brevet professionnel (BP),技術者免状le brevet de technicien (BT)
le baccalauréat professionnel, le baccalauréat technologique.
3 バカロレアプラス2年
le diplôme des Instituts Universitaires de Technologie (DUT)
le brevet de technicien supérieur (BTS)
le fin de premier cycle de l'enseignement supérieur.
2 バカロレアプラス3年 la licence ou de la maîtrise.
1 バカロレアプラス4年 la maîtrise.

http://www.cncp.gouv.fr/contenus/supp/supp_rncp_niveaux.htm
(※CNCPホームページへリンク)

1.8 学校保健・社会福祉サービス

 学校保健(医療)は国家の使命である。生徒の健康状態の監視は医師・看護師によって行われる。各中等学校は看護師1名による業務の提供を受ける。中等教育の学校では看護師が栄養摂取などの生徒の健康上の質問に対応する。また健康上のリスクやタバコ・麻薬・アルコール中毒などに対する教育も実施する。小学校・中学校・高校での性教育も行う。
 学習障害児の支援のためのいくつかの使命のなかで、欠席や退学を防ぐためのソーシャルワークも特別の役割を果たす。
 毎年の財政法により設ける予算の範囲において、かかる予算は下記を計画している。

図表2-3-8 国民教育省における学校看護師数の増加
  2006年 2007年 2008年 2009年 2010年
学校看護師の人数(常勤換算)
Nombre d'infirmiers (ETP)
304人増 304人増 304人増 304人増 304人増
予算(百万ユーロ)
Crédits (en millions d'euros)
10 10 10 10 10

(資料)Rapport annexé p12

図表2-3-9 農業教育機関における看護師数の増加
  2006年 2007年 2008年 2009年 2010年
看護師の人数(常勤換算)
Nombre d'infirmiers (ETP)
12人増 12人増 12人増 12人増 12人増
予算(百万ユーロ)
Crédits (en millions d'euros)
0.6 0.6 0.6 0.6 0.6

(資料)Rapport annexé p13

1.9 障害のある児童生徒の就学

 障害児に機会と権利の平等を保障し、自宅から最も近い学校への通学を可能にするために、学校は必要な改修工事や付き添いなどを行わなくてはならない。中等教育課程、特に中学校と職業科の高校で、現在から2010年までに1,000ヵ所の統合教育ユニット(UPI Les unités pédagogiques d'intégration)(注1)を新設する。
 毎年の財政法により設ける予算の範囲において、かかる予算は下記を計画している。

図表2-3-10 統合教育ユニットの増加
  2006年 2007年 2008年 2009年 2010年
統合教育ユニット数
Nombre d'UPI
プラス200 プラス200 プラス200 プラス200 プラス200
予算(百万ユーロ)
Crédits (en millions d'euros)
12 12 12 12 12

(資料)Rapport annexé p14

図表2-3-11 農業教育施設における統合教育ユニットの増加
  2006年 2007年 2008年
統合教育ユニット数
Nombre d'UPI
プラス10 プラス10 プラス10
予算(百万ユーロ)
Crédits (en millions d'euros)
0.6 0.6 0.6

(資料)Rapport annexé p14

1.10 男女平等の促進

 学校では男女の平等を推進する場所であり、他人を尊重し、他の性を尊重することを学ばせることは教育システムの使命の一つである。具体的な方策は以下の3点である。

 また例えば生徒会の代表選出の際などに(男女数が)同等であることを促進する。

(2) より効率的な学校:質の高い学校

2.1 教育高等審議会

 独立した諮問機関である教育高等審議会が創設され、義務教育の修了時点で生徒が習得しなくはならない不可欠な知識と能力の定義についての意見を取りまとめる。また評議会は毎年教育システムの成果を報告書にまとめ、国民教育省への提案や要求を提示する。
 教育高等審議会は、教育課程審議会(Conseil national des programmes)と学校評価高等審議会(le Haut conseil de l'évaluation de l'école)に代わるものである。

2.2 契約私立学校

 (国民教育省と)契約を結んでいる私立学校は、公共事業である教育の使命や質を担保するものである。

2.3 教員の使命

 国家は、子どもたちの未来にとって重要な一部分を教員に託している。
 教員の使命は、授業の枠組みの中で生徒を教えること、生徒の達成状況を評価すること、継続的な付き添い、選択にあった教育の提供と進路指導、生徒の親との関係の構築、チーム・集団での仕事、学校運営への参加などである。
 中学校と高校では、欠席した生徒に対しても必要な教育の連続性を確保するため、年間72時間以上の補習を教員に要請することはできない。

2.4 教員の採用・養成

 2007年から2011年までの間に150,000人の教員を新しく入れ替える。このために複数年次採用計画を実施し、2006年から2010年までの5年間に毎年平均30,000人の初等中等教育の教員、教育カウンセラー、心理・進路指導カウンセラーを採用する。
 初等教育と中等教育の教員を養成する教員教育大学センター(institut universitaire de formation de maitres, IUFM)(注1)は研究と現場の実践をつなぐことができる。
 教員の養成の内容は、教科に関する教養の深化、児童生徒の多様性(特に障害児・学習障害児を含む)に対応するための学習指導方法、教育にかかる公務員としての養成が含まれる。

2.5 教員の研修

 継続教育は教員の権利であり義務である。継続教育の目的は4点ある。

 このような点から継続教育を受ける教員の数を20パーセント増加させる。
 教員の継続教育の担い手は、大学(特にIUFM)や視学機関などである。すべての教員が個人研修計画を提出し、大学区総長の承諾を得て、年間20時間の継続教育を受けられるようにする。毎年の財政法により設ける予算の範囲において、かかる予算は下記を計画している。

図表2-3-12 教員が授業担当義務の時間外で研修をうけるための計画
  2006年 2007年 2008年 2009年
一般:予算(百万ユーロ)
Crédits (en millions d'euros)
16.8 16.8 16.8 16.8
農業教育機関:予算(百万ユーロ)
Crédits (en millions d'euros)
0.6 0.3 0.3 0.3

(資料)Rapport annexé p21-22

2.6 学校の運営

 教育チームのすべてのメンバー−運営・授業・教育・進路指導・経理の職員、技術者、医療職も、生徒の親も同様に、生徒を成功に導き公教育の使命を果たすために教育に参加する。また地方自治体も学校がよく機能するための役割を担う。

2.7 学校における安全

 小学校・中学校・高校は生徒に対して勉強と成長をもたらす好条件や落ち着いた環境を提供しなくはならない。内部規則(校則)を課さなくてはならない。校則は周知され、理解され、遵守されなくてはならない。学校での安全は校長の重要な使命のひとつである。校長は警察と協力し、暴力的な活動は直ちに制裁されなくてはならない。
 すべての学校に健康・市民性教育委員会(le comité d'éducation à la santé et à la citoyenneté , CESC)(注1)を設置し、暴力の防止計画などを立てる。前期中等教育修了国家免状le brevetには、勉強熱心さ、校則の遵守、学校生活を踏まえた評定の1項目を含む。
 今後5年間に教育指導補助員として6,500人の雇用を新たに創出し、教育の補助だけでなく、監視、欠席者へのフォローアップ、市民性の習得や規則の遵守、教育現場における他の構成員との関係の構築などを支援する。
 不登校児などを支援する「復帰準備中継措置(dispositif relais)(注2)(注3)」を2010年までに5倍に増やす。

図表2-3-13 復帰準備中継措置の設置数の5倍増
  2006年 2007年 2008年 2009年 2010年
復帰準備中継措置の数
Nombre de dispositifs relais
200増 200増 200増 200増 200増
予算(百万ユーロ)
Crédits (en millions d'euros)
13 13 13 13 13

(資料)Rapport annexé p24

2.8 リセ(高校)

 今後10年間に同一年齢層の50パーセントに高等教育修了資格を取得させるために、3種類のリセ(高校)のすべてが、より多くの生徒にバカロレア資格を取得させる使命がある。

【職業科高校】

 資格レベル5または4を取得させる(注1)。

【技術科高校】

 リセ付設中級技術者養成課程(STS)、リセ付設グランゼコール準備級(GPGE)、大学付設技術短期大学部(IUT)へ進学する準備を支援したり、大学付設職業教育センター(IUP)などへの進学を支援する。
 工業化学技術系(STI)のうち直接職業につながるものは職業バカロレアに変えていく。経営科学技術系(STG)、実験科学技術系(STL)、医療社会福祉系(SMS)、ホテル業系、装飾美術系、音楽舞踏系についても同様である。

【一般科高校】

 すべての生徒にバカロレアを取得させる。

5 職業教育修了証 le brevet d'études professionnelles (BEP)
職業適任証 le certificat d'aptitude professionnelle (CAP), le certificat de formation professionnelle des adultes (CFPA) du premier degré
4 le brevet professionnel (BP),技術者免状le brevet de technicien (BT)
le baccalauréat professionnel, le baccalauréat technologique.

2.9 試験

 国家資格につながるすべての試験を近代化する。試験には、一定の科目数の最終試験を含むものとし、前期中等教育修了国家免状のための3科目、職業適任証CAP/職業教育修了証BEP(注1)取得のための5科目を含む。
 バカロレアについては重篤な病気の生徒については成績表を後の試験期間まで持ち越せるように規則を改定する。高校2年と3年(最終学年)では、バカロレアのための準備のために定期的な中間小テストを実施する。

2.10 情報通信技術(ICT)

 義務教育の間に、コンピューターや情報技術の使い方を学び、文書を書いたり、情報を収集したり、情報交換をすることに役立てる。

2.11 生涯教育

 2004年5月4日に定められた生涯学習・職業教育に関する法律(注1)に定められた生涯にわたる職業教育に関して教育施設が動員された。教育施設はそれぞれが提供できる教育・研修を、新たなニーズに対応するように適用させなくてはならない。

(3) より開かれた学校:国民の意見に注意を払う学校

3.1 父母との関係

 学校の働きかけと家庭の働きかけによって教育は成功する。親は教育コミュニティの構成員である。家族は最低でも年に2回、生徒の進路計画の作成に参加する。生徒の両親が離婚した場合は、成績表は両方の親に送付する。
 親が子どもの成績を把握するのが難しい場合は、国立識字率向上庁(L'Agence nationale de lutte contre l'illetrisme)が作成した「地域家庭プログラム(Programmes famiriaux locaux)」を利用することができる。また、親代表連合会が家庭の意見を代表する。

3.2 地方議会議員との連携

 国と地方自治体は教育の質の向上に責任を負っている。

3.3 非営利社団(注1)との連携

 非営利社団は国民教育が認めるパートナーであり、地域における教育契約におけるダイナミックなアクターである。非営利社団は若者の教育・文化・スポーツ・市民性において補足的な役割を果たしている。

3.4 経済界との関係

 教育システムは国家の経済的・社会的発展において企業が果たす基礎的な役割についてよりよく配慮しなくてはならない。経済界の代表者は職業免状を与える役割を果たす。
 若者は「開かれた学校」の仕組みの中で、職業を知ったり、そのために必要な訓練や進路について考える。また中学校の4年生ですべての生徒が1週間の職業観察を行う。

3.5 ヨーロッパへの広がりと国際的な広がり

 初等教育・中等教育・高等教育においてヨーロッパへの広がりを推進する。ヨーロッパの成り立ちの歴史、政治・経済・社会・文化的変遷などについて学ぶ。
 目的は二つあり、ヨーロッパの国において高等教育に進学することを促進することと、フランスとヨーロッパの市場で職業に就くことを容易にすることである。
 具体的には、小学校3年生から外国語教育を開始し、将来的に小学校2年生に拡大する。外国語教育は中学校に継続する。中学2年生で第二外国語を開始する。義務教育の修了時点で、第一外国語についてはB1(注1)レベル、第二外国語についてはA2レベルを習得する。高校就労時点では、第一外国語がB2レベルで、第二外国語がB1プラスレベルとなる。
 フランスにおける多様な外国語学習を保障するため、まず近隣のヨーロッパ諸国の言語の学習を優先する。

図表2-3-14 現代外国語教育の推進
  2006年 2007年 2008年 2009年 2010年
教員数(常勤換算)
En nombre (ETP)
2,000人 2,000人 2,000人 2,000人 2,000人

(資料)Rapport annexé p34

図表2-3-15 農業教育機関2年・3年生における外国語学習グループの少人数化
  2006年 2007年 2008年 2009年 2010年
教員数(常勤換算)
En nombre(ETP)
50人 50人 50人 50人 50人

(資料)Rapport annexé p34



3.6 在外フランス人学校とのネットワーク

 在外フランス人学校のネットワークは外国におけるフランス語教育の重要な要素である。外国に暮らすフランス人の子どもにフランス語教育を行い、その地域で多数派である外国人を受け入れる。また在外フランス人学校でバカロレアを取得した人をフランス国内での高等教育に再統合する。

3.7 芸術教育・文化活動

 芸術および文化活動は初等・中等教育における重要な要素を成す。学校教育における芸術教育・文化活動には、文化と芸術の領域の多様化、文化芸術活動のパートナーシップの多様化、といった新しい動きがある。

3.8 体育スポーツ教育

 体育スポーツ教育はどの段階においても必須の教育である。体育は教育を健康と結びつける。体育はルールを守ることによって市民性の発達にも好影響を及ぼす。スポーツ関係のクラブ(非営利社団)に参加することは、課外活動の役に立つ。体育スポーツ教育は特に水泳の習得に役立つ。

3.9 メディア教育

 社会における情報の位置づけが重要になっているため、メディア情報を読み解き、批判的に分析するための教育が不可欠になっている。メディアを利用した学習は、様々な学習分野で活用できる。学校にジャーナリストを招いてその仕事を紹介してもらったり、生徒が学校新聞を作成するのを手伝ってもらったりすることは奨励される。
 高校3年生は日刊新聞を1ヵ月新聞を購読し、バカロレア受験の年に一般教養や知識を習得するとともに、市民としての責任感を身につけることもできる。

3.10 宗教に関する事実の教育

 宗教的事実の教育は、歴史・文学・造形美術・音楽など幅広い学習分野に表われる。言語教育や哲学の中にも宗教的事実は現れるが、はっきりと定義されているわけではない。
 信条の自由、政教分離と公共サービスの中立性の原則を尊重しながら、宗教的事実と宗教の歴史に関する知識を伝えていくべきである。

3.11 持続的発展のための環境教育

 持続的発展のための環境教育は市民性教育における新しい要素である。環境教育は、健康教育や連帯した発展へとつながる。生徒は、自分たちの環境に対する行動の結果を予測できるようになる。

5.数値目標

 計画の中で、数値目標が掲げられているのは、計画冒頭部分と、計画末尾の「2.目標」部分である。冒頭部分については「3.教育基本計画における重点分野の有無」の中に記載したため、ここでは、計画末尾の数値目標を取り上げる。なお、計画の中で、個別の数値目標・予算額(例:奨学金等の受給者数と予算額)などが掲げられているものについては「4.主要施策の内容」を参照いただきたい。計画末尾のセクション2の「目標」では7項目の数値目標が掲げられている。「セクション1の施策の実現を通じて、現在から2010年までの間に達成すべき目標」と記されている。目標の項目は以下の通りである。

1 下層階級のバカロレア取得率

 社会的に恵まれない階層の子ども(les enfants de familles appurtenant aux categories sociaprofessionnelles défavorisées)が一般バカロレア(注1)を取得する割合を20パーセント増加させる。

2 理科系の高等教育の学生の増加

 保健医療分野を除く理科系の高等教育に進む学生の割合を15パーセント増加させる。

3 理系女子高校生の増加

 一般バカロレアの理系ならびに技術バカロレアを取得する女子学生を20パーセント増加させる。

4 現代外国語の習得レベルの向上

 義務教育修了時点で、欧州評議会(Le conseil de l'Europe)が定めるレベルB1(注1)の水準の現代外国語を習得する。

5 ドイツ語学習者の増加

 ドイツ語を学習する生徒/学生20パーセント増加させる。

6 古典語学習者の増加

 高校において古典語(ラテン語・ギリシャ語)を学習する学生を10パーセント増加させる。

7 工業高校の学生増加

 職場での学習を通じて職業資格を取得させる見習訓練の制度において教育を担う公立又は契約私立の中等学校(Les formations en apprentissage dans les lycées)の見習訓練を行う者(apprentis(注1))を50パーセント増加させる。

6.教育投資

 2007年度の政府全体の予算は以下の通りである。うち学校教育(Enseignement Scolaire)は59,560百万ユーロ(2006年度59,740百万ユーロ)、認められている雇用は常勤換算1,087,520人(2006年度1,123,519人)である。また高等教育・研究(Recherche et enseignement supérieur)は21,314百万ユーロ(2006年度20,557百万ユーロ)、雇用は150,913人(2006年度149,353人)である。2006年度と比較すると、学校教育の予算は減り、高等教育・研究の予算は増えている。
 学校教育予算の使途は、初等中等教育、学生生活、私立学校、国民教育政策、農業教育である。高等教育・研究予算の使途は、高等教育、学生生活、学際的な科学技術研究、宇宙研究、環境・資源研究、研究のモニタリング、公害研究、エネルギー研究、産業研究、輸送・機器・住居の研究、文化研究、農業高等教育・研究などである。

図表2-3-16 2007年度予算

  2007年度予算額
(百万ユーロ)
Crédits de paiement
  • 括弧内は対前年度比
2006年度予算額
(百万ユーロ)
Crédits de paiement
承認職員数
(常勤換算)
Autorisation d'emplois
対外関係
Action extérieure de l'État
2,264対前年度比95.9パーセント) 2,359 13,480
一般国土管理
Administration générale et territoriale de l'État
2,498対前年度比112.8パーセント) 2,213 35,113
農業・漁業・林業と農村関連事業
Agriculture, pêche, forêt, et affaires rurales
2,954対前年度比100.1パーセント) 2,951 12,400
政府開発援助(ODA)
Aide publique au développement
3,121対前年度比103.5パーセント) 3,014 2,983
退役軍人
Anciens combattants, mémoire et liens avec la Nation
3,750対前年度比96.2パーセント) 3,898 4,986
国家の管理と議会
Conseil et contrôle de l'État
468対前年度比105.1パーセント) 445 4,911
文化
Culture
2,694対前年度比96.1パーセント) 2,803 11,542
防衛
Défense
36,285対前年度比100.6パーセント) 36,061 329,907
経済活動の発展と規制
Développement et regulation économiques
3,943対前年度比99.6パーセント) 3,957 28,900
政府活動の管理
Direction de l'action du Gouvernement
532対前年度比99.4パーセント) 535 2,531
環境保護と持続可能な発展
Écologie et développement durable
673対前年度比109.2パーセント) 616 3,775
国家の財政支出行為
Engagements financiers de l'État
40,863対前年度比99.9パーセント) 40,890  
学校教育
Enseignement scolaire
59,560対前年度比99.7パーセント) 59,737 1087,520
公共財政の経営と管理
Gestion et contrôle des finances publiques
8,912対前年度比101.0パーセント) 8,816 134,276
司法
Justice
9,271対前年度比155.5パーセント) 5,959 72,023
メディア
Médias
504対前年度比146.0パーセント) 345  
海外領土
Outre-mer
1,963対前年度比103.4パーセント) 1,898 4,895
統治領政策
Politique des territoires
613対前年度比87.3パーセント) 702 728
公権力
Pouvoirs publics
919対前年度比105.3パーセント) 872  
引当金
Provisions
80対前年度比59.2パーセント) 135  
研究・高等教育
Recherche et enseignement supérieur
21,314対前年度比103.0パーセント) 20,688 150,913
年金制度
Régimes sociaux et de retraite
4,981対前年度比110.9パーセント) 4,491  
海外領土との関係
Relations avec les collectivités territoriales
3,070対前年度比105.9パーセント) 2,898 173
健康
Santé
431対前年度比108.0パーセント) 399  
安全保障
Sécurité
15,683対前年度比106.9パーセント) 14,668 252,066
市民安全
Sécurité civile
429対前年度比92.4パーセント) 464 2,598
衛生安全
Sécurité sanitaire
661対前年度比102.9パーセント) 642 5,136
連帯と統合
Solidarité et integration
12,204対前年度比99.8パーセント) 12,223 15,134
スポーツ・青少年・ボランティア活動
Sport, jeunesse et vie associative
780対前年度比105.5パーセント) 739 7,292
経済戦略と公共財政運営
Stratégie économique et pilotage des finances publiques
860対前年度比99.4パーセント) 865 7,801
輸送
Transports
8,809対前年度比93.3パーセント) 9,437 90,717
職業と雇用
Travail et emploi
12,637対前年度比95.9パーセント) 13,174 10,457
市街地と住宅
Ville et logement
7,158対前年度比99.5パーセント) 7,190 3,088
全体
Total
267,847対前年度比100.6パーセント) 266,084 2295,345

 2006年度の予算(Crédit de paiement)の詳細は以下の通りである(注1)。予算は人件費(Dépenses de personnels)、運営費(Dépenses de fonctionnement)、投資(Dépenses d'investissement)などに分かれている。

(1) 国民教育

1 就学前・初等公教育 Enseignement scolaire public du premier degré

 就学前・初等教育の2006年度予算額は約158億ユーロ、うち約74億ユーロを小学校、訳39億ユーロを幼稚園に割り当てている。小学校・幼稚園の予算の大部分が人件費である。

2 中等公教育 Enseignement scolaire public du degré

 中等教育予算は約278億ユーロで、うち約99億ユーロが中学校、約60億ユーロが高校(リセ)である。

3 学生生活 Vie de l'élève

 学生生活には、生徒の受け入れ・学校保健などが含まれ、予算額は約59億ユーロである。

4 私立学校における初等・中等教育 Enseignement privé du premier et du degrees

 私立学校(幼稚園〜高校)への予算は約70億4,570万ユーロである。

5 学校政策の基盤 Soutien de la politique de l'éducation nationale

 人材、コンピューターシステムなどの基盤整備が含まれ、約19億6,794万ユーロである。

6 農業教育 Enseignement technique agricole

 公立・私立の農業教育機関の運営費などが約12億5,947万ユーロ計上されている。

(2) 高等教育・研究

1 高等教育・大学における研究 Formations supérieures et recherche universitaire

 バカロレア習得から学士(リサンス、バカロレア習得後3年間の高等教育)習得までの教育、修士課程の教育、博士課程の教育、図書、研究(生物学、保健、数学、理工、社会科学など)、設備、美術館・博物館などが含まれ、約101億2,524万ユーロが計上されている。

2 学校生活 Vie étudiante

 高等教育における学生生活として、学生への直接・間接の支援、保健や課外活動(スポーツや文化活動など)の支援などに約17億3,839万ユーロが計上されている。

3 学際的科学・工学研究 Recherches scientifiques et technologiques pluridisciplinaires

 生物学・バイオテクノロジー・医学、数学・情報科学・ナノテクノロジー、物理学、核物理学、社会科学、学際研究などについて約36億ユーロが計上されている。

4 環境・資源研究 Recherche dans le domaine de la gestion des milieux et des ressources

 自然環境や生物多様性、発生や変異、環境に関連する社会科学、食品の安全性などに関する研究に約11億3,679万ユーロが計上されている。

5 宇宙研究 Recherche spatiale

 宇宙研究・開発に約12億4,819万ユーロが計上されている。

6 Orientation et pilotage de la recherche

 研究の方向決定やモニタリングに約3億6,909万ユーロが計上されている。

7 公害とリスク研究 Recherche dans le domaine des risques et des pollutions

 公害や工学的なリスクの予防と評価、環境や保健面でのリスクの予防と評価、エコロジーや持続的開発のための研究などに約2億8,024万ユーロが計上されている。

8 エネルギー分野の研究 Recherche dans le domaine de l'énergie

 核エネルギーの競争力・安全性・開発を中心として約6億5,816万ユーロが計上されている。

9 Recherche industrielle

 産業研究やイノベーションのために約5億2,757万ユーロが計上されている。

10 Recherche dans le domaine des transports, de l'équipement et de l'habitat

 輸送・設備・住居の分野の研究として、約3億9,304万ユーロが計上されている。

11 民間と軍事のデュアル研究 Recherche duale (civile et militaire)

 民間と軍事のデュアル研究として2億ユーロが計上されている。

12 文化・科学文化研究 Recherche culturelle et culture scientifique

 遺産のための研究、創造のための研究、科学文化の運用などに約1億4,779万ユーロが計上されている。

14 農業の高等教育・研究 Enseignement supérieur et recherche agricoles

 農業の高等教育と研究のために約2億6,228万ユーロが計上されている。

7.教育基本計画の実施体制

 教育を管轄するのは国民教育省(Ministère de l'éducation nationale, enseignement supérieur, et de la recherché)であるが、教育施策は複数省庁にまたがる(interministerielle)。
 なお、国民教育省には国民教育大臣と高等教育・研究特命大臣がいる。国民教育大臣の下には、実際の学校教育を行う部署と、独立した組織(高等教育審議会や評価機関など)、視学官がおかれている。

8.教育基本計画の評価

 省庁横断戦略と2001年8月1日の予算組織法によって、学校教育の運営における新しい役割と、予算と人的資源の最良の活用が求められるようになった。
 中央省庁は国民統合と教育政策の大目標を設定し、予算と人的資源を配分し、それらの活用を確認し評価する。教育施設は、大学区視学官と連携した大学区長の下で、運営経費を組み立てる。
 この仕組みのモニタリング(pilotage)は、あらかじめ設定した目標が妥当であるか、実施のための計画が適切であるか、得られた成果が何かということを評価できる評価システムを想定している。この観点から、大学区視学官は重要な役割を果たす。教育高等審議会は生徒が習得すべき知識と能力の基盤の目標に関する報告書のために、学校システムの成果の評価に特に注意を払うこととなる。成果報告書が毎年発行され、公的機関のあらゆるレベルに報告される。

【参考文献】

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