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一日中央教育審議会(水戸)

とき:平成17年7月23日(土曜日)
ところ:水戸市民会館

文部科学省



(司会・板東審議官)
 大変お待たせいたしました。それでは、ただいまより、一日中央教育審議会(水戸)を開会させていただきます。
 本日はお忙しいところ、多数皆様にお集まりいただきましてありがとうございます。私は本日の進行役を務めさせていただきます、文部科学省の大臣官房審議官の板東と申します。よろしくお願い申し上げます。
 現在、中央教育審議会では、義務教育の在り方につきまして、義務教育特別部会という特別部会を設けまして、この秋に答申の取りまとめを目指して精力的に審議を行っております。義務教育は、言うまでもなく人材育成の基礎であり、個々の子どもたちの可能性を最大限に伸ばして有意義な人生を築く上でも、また、国家社会の担い手の育成としての側面から我が国の発展の基盤を築く上でも、極めて重要であります。したがいまして、義務教育に関する審議は、我が国の将来を左右する重大な意義を持つと考えておりまして、今回、直接国民の皆様方と意見交換を行って、今後の審議に生かしてまいりたいと考えているところでございます。
 本日は、鳥居中教審会長をはじめといたしまして、中央教育審議会義務教育特別部会の5名の委員がここ水戸におうかがいをし、義務教育の在り方について会場の皆様と意見交換を行うこととしております。また、文部科学省からは義務教育の担当局長である初等中等教育局長も参加させていただいております。
 本日の進め方といたしましては、まず、鳥居 泰彦中央教育審議会会長から、義務教育の在り方についてプレゼンテーションをいただくこととしております。続きまして、義務教育の在り方について会場の皆様と壇上の中教審委員の皆様との意見交換を行いたいと思います。できるだけ多くの方々から、幅広いテーマにつきましてご発言をいただきたいと考えております。
 それでは、壇上の出席者につきましてご紹介をさせていただきます。
 まず、中央教育審議会義務教育特別部会の関係者の委員の皆様方をご紹介させていただきます。
 鳥居 泰彦中央教育審議会会長、慶応義塾学事顧問でございます。
 次に、井上 孝美義務教育特別部会委員、放送大学学園理事長でございます。
 梶田 叡一義務教育特別部会委員、兵庫教育大学長でございます。
 田村 哲夫義務教育特別部会委員、学校法人渋谷教育学園理事長、渋谷幕張中学・高等学校長でございます。
 角田 元良義務教育特別部会委員、聖徳大学人文学部教授、同大学附属小学校長でございます。
 次に、文部科学省からの参加者をご紹介いたします。
 銭谷 眞美文部科学省初等中等教育局長でございます。
 それでは、最初に鳥居会長から、義務教育の在り方に関する中教審の審議状況につきましてご説明をさせていただきます。鳥居会長は、先ほどご紹介をさせていただきましたように、中央教育審議会の会長として、また、総会の下に置かれました義務教育特別部会の部会長といたしまして、本日皆様のお手元に配布をしております中央教育審議会義務教育特別部会の審議経過報告の取りまとめに尽力いただいております。
 それでは、鳥居会長、お願いいたします。

(鳥居会長)
 中央教育審議会の会長の鳥居でございます。よろしくお願いいたします。
 本日は、この水戸で一日中央教育審議会を開催いたしましたところ、こんなにたくさんの方々にお集まりをいただきまして誠にありがとうございます。皆さんのお手元には空色の袋があると思います。袋の中に4種類のものが入っていますが、それを使いながらご説明しようと思います。
 一つは、きょうの壇上にいる人たちの紹介が出演者紹介という形で入っています。それから、緑色の、『ともに考え、ともに支える義務教育』というパンフレットがあります。これを主として使っていこうと思います。それから『審議経過報告』本体をお配りしてありますので、後ほどご覧いただければと思います。最後に『参考データ』が付いています。これも後で少し使おうと思っています。この緑色の、『義務教育』と大きく書いてあるパンフレットを開きながらお聞き取りいただきたいのですが、開いていただきますと、下にページ番号が打ってありまして、1ページ、2ページで見開き。左側に開くと3ページ、4ページ。右側に開くと5ページ、6ページという格好になっていますので、後ほどページを指定しながらお話ししようと思います。
 さて、我が国の子どもたちの状況を見ると、さまざまな困難な課題を抱えていると言えると思います。お手元には参考データというのもありますが、その中にたくさん資料が載せてありますが、最近の国際比較調査によると、我が国の子どもの学力が全体として国際的に見て上位にはあるのですが、読解力などは低下傾向にあることが明らかです。何よりも学ぶ意欲や学習習慣に課題があることが明らかになっています。
 それから、暴力行為とかいじめ、不登校などの児童生徒の問題行動についても依然として憂慮すべき状態にあります。参考データという白い綴じたものの中に、6ページをご覧いただきますと、学校内の暴力行為発生件数が急に増えていることがおわかりいただけると思います。
 5ページを見ていただくと、不登校児童生徒数とかいじめの発生件数は少し減っているのですが、それでも全国では不登校児童生徒が10万人以上いるという由々しき事態になっています。
 それから、近年、ニート、要するに、学校に行かない、働かない、訓練も受けないという人が約64万人、フリーター、要するに定職に就かないでいろいろなことをしてその日を暮らしているという人たちが約213万人いると言われています。若者の勤労観、職業観についても課題が残っています。
 また、昨年の三位一体の改革の検討、三位一体というわけのわからない言葉を今の総理大臣が思い付かれたわけですが、後ほどこの三位一体の改革については説明しますが、その中で義務教育費の国庫負担制度の廃止、それから一般財源化、一般財源化というのは、都道府県や市町村が自由に使えるようにという財源化について、地方六団体、つまり、知事会と市長会と町村会とそれぞれの議長会、それらの六団体から提言が行われまして、昨年の11月に三位一体の改革に関する政府・与党の合意によって、義務教育費に関する教職員給与の費用負担の在り方について、教育水準の維持向上を含む義務教育の在り方とあわせて本年秋までに中央教育審議会において結論を得ることが求められています。
 このような状況を踏まえて、中央教育審議会では、今年の2月に義務教育特別部会というものをつくりまして、義務教育の在り方について、今年の秋に向けて集中的に審議を行っています。この特別部会では、これまでに2回にわけて審議経過を報告しています。まず1回目は、5月にまとめた『審議経過報告その1』を、次に、7月に『審議経過報告その2』というのを出しました。今日はこの2つの審議の経過を皆様にご説明して、これに対する皆様のご意見を伺って、今後の審議の参考にさせていただきたいという趣旨でございます。
 それでは、『義務教育』というパンフレットを開きながらお話を聞いていただきたいと思います。今申し上げましたように、今回の中央教育審議会の義務教育特別部会の審議は、これまでの中央教育審議会の教育制度分科会、初等中等教育分科会の審議を引き継ぐと同時に、昨年11月に行われた政府・与党合意、これは小泉さんを中心とする政府と自民党、公明党から成る与党が意見が食い違っていたところはすり合わせをして与党合意になったわけですが、この合意を踏まえて行っているものでございます。
 ご案内の方も多いと思いますが、もう少し三位一体の改革の経緯を簡単にご紹介したいと思います。昨年の三位一体の改革は、三位一体というぐらいですから3つのことから成り立っています。第一に、国庫補助金や負担金を減らす。二番目には税源の配分を調節する。国から地方へ税源を移す。三番目には地方交付税の在り方を一体的に見直す。もう少しストレートに言いますと地方交付税が減らせるものは減らす。この3つから成り立っているので三位一体と言っているようでございます。
 この三位一体の改革におきましては、3兆円の国庫負担金を廃止して、それを税源移譲することが大きなテーマになっております。税源移譲というとわかりにくい言葉ですが、簡単に言うと、地方税、要するに県民税が中心ですが、県民税、市町村税を増やして、増やした分だけは国の所得税なり何なりを減らす、国税の方を減らす。減らす方と増やす方を同額でもっていくというのが税源移譲の考え方です。この税源移譲が大きなテーマになっていまして、その中の一つの国庫補助金あるいは負担金として公立の小中学校の先生方の給与費の2分の1を負担している義務教育費国庫負担金の取り扱いについてさまざまな議論が行われました。その結果、ここにあります政府・与党合意が結ばれたわけでございます。
 それが『義務教育』というパンフレットの表紙に書いてあります。表紙の囲みの中に、政府・与党合意の文書が抜粋して掲げてあります。ここに、「義務教育制度については、その根幹を維持し、国の責任を引き続き堅持する。その方針の下、費用負担についての地方案を活かす方策を検討し、また教育水準の維持向上を含む義務教育の在り方について幅広く検討する。こうした問題については、平成17年秋までに中央教育審議会において結論を得る。」と書いてあります。これをただ読むと、書いてあるとおりのことだということですが、よくみると、その根幹を維持し国の責任を堅持しろと言っている一方で、2行目に地方案を活かす方策を検討しろと言っている。この地方案というのは、全面的に国費負担をやめにして地方負担にしろ、県負担なり、あるいは市町村の負担にしろということを言っているわけです。真反対のことを言っているわけで、1行目に書いてあることと2行目に書いてあることと2つ一遍に満たすことは非常に難しい。その宿題を中央教育審議会に任せるという。総理大臣が自分で決めるのなら話はまた別ですが、中央教育審議会に任せて、しかも一番最後に書いてありますように、今年、平成17年の秋までに結論を得る。こう宿題が出たので、今、私たちは、どうしたものだろうということで毎週議論をしているわけでございます。
 表紙をめくっていただきますと、見開きで「新しい時代の義務教育を創造する」というタイトルが出てまいります。これが審議経過報告その1とその2を貫く、そして現在中教審が目指しているテーマ、「新しい時代の義務教育を創造する」でございます。
 左側がページ1ですが、1ページに書いてありますように、まず義務教育の理念でございますが、日本国憲法第26条と書いてあります。そこに、すべての国民に教育を受ける権利を保障し、また、その権利を実現するための義務教育の制度が設けられているということでございます。憲法26条がここに書いてあります。
 そして、義務教育の目的については、その下に書いてありますが、2つあります。一つは一人一人の子どもたちの人格形成で、もう一つが国家・社会の形成者の育成、この2つが義務教育の大きな目的です。この2つは、いかに時代が変わろうとも変わることはないものだ、普遍的なものだと思います。この義務教育の目的を実現するために、1ページの一番下の絵に書いてあるように、「国民が一定水準の教育をひとしく受けることができるよう、憲法に定められた機会均等、水準確保、無償制といった義務教育の根幹は、国がその責務としてちゃんとする必要がある」わけでございます。ですから、ここらぐらいまでであれば非常によく国が根幹を維持するということはよくわかるわけであります。
 それから、2ページにまいりますが、今述べたような義務教育の理念をよりよく実現するために何をしていくべきなのか。義務教育の質の向上が一番重要なことだということが書いてあります。その際に考えておくべき視点をここに掲げております。これからの学校は、保護者や地域住民の意向を十分反映すること。それから、信頼される学校でなければならないということ。教育を提供する側からの発想だけではなくて、教育を受ける側からの発想に基づいた検討が必要とされているということ。それから国民全体で共に考えて、共に子どもたちを育てていく視点が求められているということ。そして、これを支える教育条件が十分に確保される必要があるということが、クローバーのような形で書いてあります。戦略1、戦略2、戦略3と名付けてありますが、戦略1は国際的に質の高い教育の実現。戦略2は教師に対して揺るぎない信頼を確立すること。戦略の3は現場の主体性と創意工夫で教育の質を高めること。戦略の4は確固として教育条件を整備することでございます。
 それでは、恐縮ですが、左側のページを開いていただいて、3ページと4ページを開けていただきたいと思います。
 一番左端に書いてありますように、今申し上げた戦略1が3ページに書いてあります。細かいですから、少し飛ばして読みますが、国際的に質の高い教育の実現を目指す。そのためには何をしなければならないかということを書いています。まず義務教育の使命の明確化、確かな学力、豊かな心、健やかな体のバランスのとれた育成。昔の言葉で言うと、知・徳・体です。その知と徳と体、確かな学力、豊かな心、健やかな体のバランスのとれた育成が必要です。
 それから、子どもたちの学力の現状をそういう観点から見ていきます。お手元の参考データのほうにたくさん資料が載っておりますので、後で見ておいてくだされば結構です。国際的な学力調査によりまして、成績中位層、真ん中ぐらいの成績の子どもたちの層が減って、学力の低い層が増加しています。これが問題です。これを日本は正していかなければならない。
 それから、読解力、記述式の問題。こういったところに問題が残っています。むしろ低下傾向にあると言ってもいいと思います。それから、学習意欲、学習習慣、生活習慣についても課題が残っています。例えば、わかりやすく言うと、うちでテレビばかり見ている、テレビを見る時間数が国際平均値から見ると日本の子どもは異常に高いというようなことが参考データの方に載っています。
 さて、これらの課題の解決ですが、3ページの真ん中辺に黄色く塗った3つのブロックがあります。その左端が学習指導要領の見直しですが、まず学習指導要領の見直しによってこの課題の解決の一端を担う必要があります。その中でいくつか具体的な課題が提起されています。まず、総合的な学習の時間については、思考力、表現力、知的好奇心、自分で考える力などを育成する上で、その役割は今後とも重要であるとした上で、授業時間数や具体的な在り方については再検討が必要であると言っています。私たちは、この問題を中央教育審議会で改めて取り上げようと思っているわけです。
 それから、左側の黄色いブロックの上から5行目ぐらいのところに、国語力の育成、理数教育の充実と書いてありますが、すべての教科の基本となるのが国語力です。その充実を図ることが重要です。また、理数教育は科学技術の土台ですので、それらの授業時間数の在り方について検討する必要があります。また、グローバル化に対応して、小学校段階で外国語教育を充実する必要も避けて通れない問題として我々の目の前にあります。このほかに、学校図書館ですとか、あるいは読書活動の充実、習熟度別指導、それから少人数教育などの積極的な実施、豊かな心と健やかな体の育成といった問題、それから体験活動の推進、キャリア教育の推進、幼児教育と小学校教育の連携など、この左側のブロックに書かれてあります。
 これらの学習指導要領の見直しについては、中央教育審議会の中に教育課程部会というのがありまして、その教育課程部会で現在、具体的な検討が進められています。
 次に、真ん中のブロックにいきますが、学習到達度・理解度の把握のための全国的な学力調査の実施と書いてあります。要するにわかりやすく言うと、子どもたちにテストをすべきではないという意見と、テストをすべきであるという意見と分かれているわけです。狭い意味のテストではなくて、広い意味での学力調査を行おうという考え方がここではうたわれています。テストをして客観的なデータを得ることによって、指導方法の改善に向けた手がかりを得ることが可能になります。子どもたちの学習に還元できることになるわけです。このような観点から子どもたちの学習到達度についての全国的な調査を実施することが適当であると考えています。実際今、県の判断で行われていますが、県の判断だけではなくて、全国的に行ってはどうであろうという考えであります。なお、実施に当たっては、子どもたちに学習意欲の向上に向けた動機付けになると同時に、学校間の序列化あるいは過度の競争等が起こってはならない。そのようなことについての配慮も必要だということでございます。
 それから、右端の教職員配置の改善のところですが、こうした教育を実現するための教職員配置の改善が必要です。まず、義務教育のナショナルスタンダードが履行されるための条件を整理する観点から、国が学級編制や教職員配置基準を明確にすることが重要であります。少人数教育の充実を図るための方策を検討する必要もあります。その際、児童生徒数の増減で機械的に学級数を変えるのではなくて、例えば、仮に今、まだ決まっていませんが、30人学級という制度があった場合、30人が31人になった途端に2クラスに分けろという杓子定規的なやり方ではなくて、より弾力的な運用が望まれると思います。学校現場の裁量によって柔軟な学級編制が可能となる制度の検討が必要です。具体的な教職員配置の在り方については、現在、文部科学省の中に調査研究協力者会議を設けて検討を進めています。
 次に戦略2ですが、これは4ページに書いてあります。教師に対する揺るぎない信頼を確立する。「教育は人なり」と言われるように、国民が求める学校教育を実現するためには、子どもたちや保護者はもとより、広く社会から尊敬され、信頼される質の高い教師を養成する、そして確保することが必要であります。優れた教師の条件はさまざまな要素がありますが、この義務教育特別部会では大きく3つの要素が重要であると考えています。ピンク色と黄色と青で塗ってありますが、強い情熱、確かな力量、総合的な人間力、この3つです。
 実は、私は、戦争中に茨城県の小学校で育ちまして、さっきある方に伺ったら、私の卒業した小学校の今年の入学者はゼロだそうです。少子化が進んでいます。でも、思い出してみると、山の中の西郷村という村だったのですが、もうなくなってしまいましたが、その西郷村の小学校の先生にはやはり強い情熱、確かな力量、そして総合的な人間力があったと思います。そして、中学でも水戸の高等学校でも、同じように先生たちに強い情熱と確かな力量と総合的な人間力が確かにあったと思っています。
 教師の養成・確保の方策を検討することもまた、私たち中央教育審議会の大事な仕事になっておりまして、現在、教員養成の件では、後ほど、きょうの参加者の委員の方々からもご説明があると思いますが、学校現場のさまざまな課題に即した実践的な教育を高度なレベルで行う教員養成の専門職大学院をつくってはどうかということで検討が行われています。
 それから、教員免許状の問題がありますが、教師として必要な資質能力を確実に保証するために、教員免許状の更新制度を導入するということが再三検討されています。現在も中央教育審議会でその検討を行っています。教員養成部会という部会の中で具体的な検討を進めています。
 それから、教員採用、初任者の方や現職にある方の研修について。採用の場合には人物評価を一層重視したり、あるいは大学の成績や諸活動の実績を評価するなど、具体的な工夫、改善が必要です。また、研修については初任者研修や、先生になって10年目に受ける10年経験者研修等について、既にそういう制度はありますが、なお一層の研修の改善・充実を図っていくことが必要です。
 それから、教員評価について。教員の方々は、評価ということを嫌いがちですが、やはり学校教育や教師に対する信頼を確保するためには、教員評価の取り組みが必要だと思います。高い指導力のある優れた教師を位置づけるものとして、スーパーティーチャーなどの職種を設けて、他の教師への指導助言や研修に当たるようにするなど、教師のキャリアの複線化というものを行ってはどうかということで、現在検討しています。
 なお、滅多にないことなのですが、一部の熱意不足、指導力不足、あるいは問題のある教師等に対して、毅然とした対処をする必要があります。なかなか難しい問題ですが、これはこれでやらなければならないと思います。
 それから、現在は、さっき実は石川県会議長ともお会いして、石川さんがつくった資料を拝見して、つくづく茨城県議会議長というのは偉い人だと思って感心しているのですが、学校の管理というのは校長がしっかりしていないといけない。校長の上にいるのは市町村の教育委員会で、市町村の教育委員会のところには県の教育委員会から指示がくる。県の教育委員会には文部科学省から必要に応じて指示が行くというステップになっているのですが、今、校長先生に全てがかかっているわけです。そのほかにそれを支えるものとして教頭があります。校長については外部の人、例えば、社会経験を持つ学校外の多様な人材を既に採用することが可能になっていますが、教頭についてはそういう制度はありませんので、教頭についても校長と同様に民間人などを登用することができるように、資格要件を緩和することについても検討する必要があるのではないでしょうか。
 それでは、戦略の3番目。4ページの下半分に行きますが、戦略の3番目として、現場の主体性と創意工夫で教育の質を高める。学校の自主性、自律性の確立。学校が主体的に教育活動を行って、保護者や地域住民に直接説明責任を果たしていくためには、学校に権限を与えて、自主的な学校運営を行えるようにすることが必要です。権限がない状態で責任を果たすことは困難であり、人事、学級編制、学校の予算、教育の内容等に関して、校長の裁量権限を拡大することが不可欠だと思います。
 教職員の人事については、例えば、校長が教員を公募することができるような仕組みなどを推進していくことが求められます。
 また、学校が個別に学級編制を行うなど、学校現場の判断が尊重されるように、現行の学級編制の仕組みを見直す必要があります。
 それから、予算面でも、学校の企画や提案に基づいた予算の配分や使い道を特定しない裁量的経費の措置ができるなど、学校裁量の拡大をさらに進めることも必要だと思います。
 それから、今、制度としてありませんが、校長、教頭、主任のほかに管理職を補佐する権限を持った何らかの職を置くことも検討する必要もあると考えています。
 それから、学校はみずからを評価する自己評価と外部評価、両方を必要としています。これらが公表された自己評価結果を外部者が評価する方法を基本として、学校評価の充実を図ることが必要であります。
 さらに、地域に開かれた信頼される学校を実現するためには、保護者や地域住民の意見や要望を的確に反映させ、それぞれの地域の創意工夫を生かした特色ある学校づくりを進めることが不可欠で、学校評議員というような制度、これがさまざまな活動と通じて保護者や地域住民の学校運営への参画を促進する必要があります。
 それから、もう一つが教育委員会制度です。教育委員会制度は、4ページの下のピンク色のちょっと上のところに書いておきましたが、現在の教育委員会の現状についてはいろいろな批判があります。会議が形骸化しているのではないか、合議制のために責任の所在が不明確になっていないか、そういった問題が指摘されています。
 一方、教育委員会制度というのは非常によく考えられた制度です。茨城県はいつの間にか村が9つしかなくなってしまって、村長というのは茨城県全体で9人しかいないのですが、町長が27人、市長が26人います。町村合併でどんどん変っていきますが、その村長さん、町長さん、市長さんの政治的な色合いとは独立した政治的な中立性、そして継続性、安定性が確保されています。そして市長、町長、村長等に権限が集中することへの危惧など、教育委員会の必要性を考えてみると、非常によくできた制度だと思います。
 教育委員会制度の今後の在り方については、現在の基本的な枠組みを維持しながらも、それぞれの自治体の実情に合わせた行政が執行できるよう、制度をできるだけ弾力化するとともに、市長、町長、村長と教育委員会の連携の強化、それから教育委員会の役割の明確化のためのいろいろな改善を図ることが必要だという意見が今、中教審にたくさん出ています。
 次に、国と地方、都道府県と市町村の関係、役割についてお話をします。それがピンク色のところです。義務教育の実施に当たっては、まずナショナル・スタンダードを設定して、それが確実に履行されるための諸条件を確保する観点から、国は学校制度の基本的な枠組みの制定、教育内容に関する全国的な基準、学習指導要領等がそれですが、これを定め、その上で地方はそれぞれの地域の実情に応じて主体的に教育の質を高め、そして、それぞれの地域において最適な状況、これをローカル・オプティマムと最近呼んでいますが、これを実現するとともに、国、都道府県、市町村それぞれが必要な財源措置を行っていくことが必要です。今後さらに国の定める教育内容、教職員の配置、学級編制などに関する基準はできるだけ大綱化し、弾力化し、最低基準という性格を明確にするなど、地方の裁量を拡大することが必要です。
 それから、次に教職員の人事権の問題があります。教職員は市町村公務員です。にもかかわらず人事権は県が持っています。それが日本の仕組みになってしまっています。この公立の、村立や町立や市立の学校の教職員の給与負担と人事権は基本的に都道府県にあるという状況、これについてどうすればいいのかという問題があります。義務教育の実施主体である市町村にあるべきものであるという意見が強く出ています。教職員の人事権については市町村に移譲すべきであるということで検討が進められていますが、一方、現在の市町村の事務体制で本当にそんな処理ができるのかという疑問もまた出ています。特に離島や山間の市町村を含め、県域で、県の中で人材が確保できるかということにも留意する必要があります。要するに、いい先生を集められるかということです。このために教職員の人事権は当面、すべての中核都市に移譲して、その状況を踏まえながらその他の市町村へ順次人事権を移譲していくということについて検討を行っているところです。
 また、都市部と離島や山間部等を含めて広域で一定水準の人材が確保されるような仕組みを新たに設けることが不可欠であるとここでは書いておきました。茨城県になぞらえて言えば、山村というのは結構あります。私が住んでいた西郷村も山村ですが、七会村などというのは、人は減る一方で、さっきもお話ししましたように、小学校に上がる子どもの数がゼロだというところまで来てしまっています。
 さて、次が5ページです。これで戦略は終わりにしますが、最後が戦略の4で、確固とした教育条件を整備すると書いてあります。義務教育の国庫負担制度の概要と書いてありまして、そこに書いてあるとおり、教育条件の一番基本的なものが義務教育費国庫負担制度です。義務教育費国庫負担制度については後ほどまたご説明しますが、この制度の基本的な役割は、義務教育の機会均等、水準確保、無償制を国が責任をもって支えるというものです。
 具体的には公立の義務教育の学校の教職員、いわゆる公立小学校、公立中学校の先生の給与については、現在都道府県が負担することとなっていますが、国は都道府県が負担する経費の原則2分の1を負担する義務を負うという制度になっています。義務教育費国庫負担法という法律がありまして、その法律に基づいて国が半分負担することになっています。
 この義務教育費国庫負担制度については、平成16年度、去年に、地方の裁量を拡大する総額裁量制が導入され、各都道府県の裁量が広がりました。外部人材の活用や少人数学級が何と47都道府県のうち42の道府県に広がるといった状況が見られています。
 次に、冒頭、政府・与党の合意という話もしましたが、そこで指摘された地方案というのは一体何なのかということです。ちょっと字が細かくて恐縮ですが、地方案はこのパンフレットの2番目のところに書いてあります。簡単に言いますと、2期に分かれていまして、第1期、平成18年度まで、つまり来年度までに、中学校教職員の給与については国が負担する法律をやめにして県が負担しろ。それから、次に第2期というのがありまして、平成19年から21年にかけて、今度は残りの小学校についても国が負担するのをやめて県が負担する。では、金はどこから出てくるのかということですが、お金は、皆さんが払っている県民税で、大体、多くの方が5パーセントの税率で払っているのです。それを10パーセントに上げるということです。一方、うんとお金持ちの人は13パーセント税金を払っています。それを3パーセントまけてあげて、うんとお金を稼いでいる人でも10パーセントにする。要するにみんな10パーセントにしてしまう。これをフラット税率と呼んでいますが、そうすることによって県民税の収入が増えるわけです。その分に見合うだけ、国税、国へ払っている税金の方は減らすということから、このお金が出てくるということです。
 そのような方法をとって、金額にしますと大体、中学校教職員の給与等に係る負担金は8,500億円ぐらいですが、これを移譲対象にすると言っています。
 この案を言っているのは地方六団体なわけです。地方六団体と言っても、例えば、茨城県の場合にはなかなか微妙ですが、そんなに橋本知事は強く主張しているというわけではなくて知事会の意見に従っている。それに対して石川県議会議長は反対だと言っておられる。議長さんと知事さんとが調整なさるのでしょうが、なかなか難しい問題が今あるわけです。地方案と今私が言っているのは、どちらかというと知事会を中心とした案なのですが、一応六団体の案ということになっています。
 それのことを地方案と言いますが、地方案を踏まえて中教審の義務教育費特別部会では、これからの義務教育費国庫負担制度の在り方について、大きく3つの観点から審議を行ってきております。3つの観点というのが6ページに書いてあります。真ん中のグリーンのところです。1番目は、教育の質の向上は確保できるのか。2番目は、財源確保の確実性はあるのか。3番目、地方・現場の自由度はどっちの方が拡大するのか。国が2分の1お金を出す方が拡大するのか、それとも、反対に全部県民税にしてしまった方が拡大できるのかということです。そのことを6ページに書いてあります。
 財源確保の確実性、予見可能性と、教育の質の向上については意見が真っ向から対立しています。質の向上の観点では、一般財源化を主張する委員――これは地方六団体の代表ですが――は全国的な水準の維持向上を図り、資質・能力を備えた教職員を確保するために、国庫負担制度は最も確実な財源保障制度であるとは言えないと述べられてる。この制度によって、教育の質の向上が図られていないという意見が出る一方、今、「言えない」というところを「言える」と言い換えると、多くの中央教育審議会の委員の意見になります。困ったことに、意見が真っ向から対立しています。皆さんはどうお考えでしょうか。児童生徒、保護者だけでなく、教職員の自覚が全部地方税にした方が高まるのかどうかです。
 それから、財源確保の確実性、予見可能性という観点でも、左と右、ピンク色の方と一般財源化を主張する地方、要するに知事会等の意見とが対立している状態が見られます。そこに書いてありますように、地方行政において最も優先されているのは教育だというふうに多くの知事さんたちが主張しているのに対して――これは、実は知事会の中でも、47人全部が知事会の意見に賛成しているわけではないのです。13人の反対意見と保留意見がありましたので、全部ではありませんが、右側が知事会の意見。こういうふうに書いてありますように、法律に基づく指導や返還要求が可能なはずだ。必要なら義務標準法という法律があって先生の数が決まるのですが、それをもっと厳しい基準法に改めるべきだとか、全額税源移譲され、地域ごとの不足額は地方交付税で適切に調整されるはずだ。それに対して、左側のピンク色の方を見ていただくと、地方交付税の総額は将来的に抑制する方向に向っているので、教職員人件費の増額が見込まれる中で教育費が確保されない恐れがあるというのが多くの意見だというふうに、左と右とで意見が違っています。
 さらに、地方現場の自由度の拡大の観点について申しますと、国庫負担制度の堅持を主張する委員からは、教育行政で地方が拘束性を感じているのは、国庫負担金とは関係ないほかの法令の規定の問題である。具体的にどのような法的な規制か、その規制が国庫負担金と絡んだものか整理して考えるべきだという意見。あるいは、一般財源化しても、国庫負担の事務が地方交付税の事務に置き換わるだけであって、優先的に義務教育費国庫負担制度を廃止する理由にはならないという意見が多く出されています。
 それに対して、知事会の代表をはじめとする地方六団体の意見は、国庫負担金がある限り、文部科学省の統一的な基準に縛られている。だから、何とかそこを自由化したい。一般財源化によって外部人材の活用等他の裁量が拡大するといったような意見もおっしゃっておられます。
 こうした義務教育費国庫負担金の在り方の議論から発展して、義務教育費の財源保証の在り方に関してこれまでさまざまな意見が出されています。その中には、6ページの一番下に書いてありますような6つの考え方が提示されています。1から6です。思い切って1のように義務教育の経常的経費、人件費だけでなくてその他の運営費も含めて全額を国庫負担にしたらどうだ。それから2番、教職員人件費の全額を国庫負担にしたらどうだという意見もあります。自由民主党の多くの議員の意見は12になっています。3、これが現状ですが、教職員の人件費の2分の1を国庫負担したらどうだ。4、中学校に係る教職員人件費を一般財源化したらどうか。これが知事会等の意見。5番、小・中学校に係る教職員の人件費をすべて一般財源化したらどうか。これも知事会等の意見です。それに対して6番、もっと極端なことを言う人がいまして、教育目的税を創設することによって、地方の教育費を確保しつつ、地方の不足額を国庫負担しよう。こういういろいろな意見が出ています。これらにつきまして、是非きょうは、一日中教審でありますので、皆さんからもご意見を出していただきたいと思うわけであります。
 以上、駆け足で中央教育審議会の義務教育特別部会における審議の状況をご説明申し上げましたが、よろしくお願いしたいと思います。どうもありがとうございました。

(司会・板東審議官)
 どうもありがとうございました。それでは、今の鳥居会長のお話を受けまして、義務教育全般について、会場の皆様から幅広くご意見やご質問をいただきたいと思っております。

(発言方法説明、略)
 発言を希望される方につきましては、ご遠慮なく挙手をお願いしたいと思います。

(参加者A)
 福島県からまいりました、中学校の美術の教諭をしております。いくつか発言させていただきます。
 まず、私の学校の職員の勤務状況、子どもたちの様子などをお話ししたいと思います。私、現在、400人ほどの中学校におります。28コマの授業時数の中、23コマを受け持っていて、選択時数を入れますと、1週間に延べ450人の生徒と向き合っています。正直なところ、1日に1時間程度の空き時間で子どもたちの教材費の集金やら生徒指導やらに追われて、何よりも美術の授業なので子どもたちの提出した作品を採点をしたり、一言ずつコメントを入れたりということで、ほとんど毎日、4クラスの作品を持ち帰って採点をしたりコメントを付けたりしています。毎日、遅くとも朝7時半には出勤しまして、帰りはほとんど7時半を回っています。幸い福島県は4年ほど前から、小学校1、2年生と中学校1年生に30人以下学級、今年から33人程度の学級を全学年にということで、私の勤務しております市では、中学校の3年生も33人以下ということになりまして、幸いに1時間しかない美術の授業であっても、ほとんどの子どもの作品に目を通すことができています。美術の学力というように考えますと、表現力と鑑賞力と考えているわけですが、一人一人の子どもに目が届く少人数学級編制は非常に有意義であると考えています。
 しかし、私の学年には、講師を数年勤めた30代の男の方がいますが、毎年2月を過ぎ、3月になりますと憂鬱な雰囲気になってきます。これは、来年も自分が同じ学校にいられる保障がないこと、それから、4月になると社保カードがなかなか届かず、自分と家族が病院にかかるときに有料で全額負担をすることなどから、非常に不安定な雇用状態に置かれています。保護者からの絶対的な支持を得ている彼が毎年不安定な状況に置かれているのを見るのはしのびません。
 少人数学級編制を維持できるためにも、義務教育費の国庫負担は堅持しなければいけないと考えています。
 それから、学習指導要領のことですが、学校の総合的な学習の時間の担当をしております。総合的な学習の時間を有効に進めるためにも、職員を多数配置してほしいということから、いろいろな条件整備を図っていただきたいと考えています。

(参加者B)
 栃木県からまいりました、義務教育の小中学校に子どもが通います保護者の立場からお話をさせていただきたいと思います。
 先ほどから、義務教育の経費の在り方とかいろいろ検討されているのですが、どうも都市部に偏った議論ではないか、そんな気がしてなりません。栃木も、先ほど鳥居会長がおっしゃいましたように、茨城と大体状況は似ているかと思いますが、農村部とか山間部を抱えております。私の家なども小規模な学校に子どもが通っているわけですが、果たしてこういったことが地方に移譲されたときに、地方まで行き届くのかどうか、大変危惧をしているところです。こちらの資料を見ますと、確かに憲法に、どこにいても等しく教育を受ける権利が盛り込まれているわけで、都市部でしたら、私学とかいろいろな選択の余地があるかと思いますが、地方においては、やはり公立の学校が非常に重要な位置づけにあるのではないか。また、選択も非常に限られている。そういった意味において、確実に優秀な教職員の中での教育が受けられることを保障できる制度をぜひ中教審で検討していただきたいというのが一点、お願いです。
 むしろ、なぜ地方が「地方に移譲してほしい」と言うのか、そのことがどうも疑問でなりません。むしろ国が完全に保障してくれるのだったら、地方にとってはそれほどありがたいことはないのではないかと私自身は思ってしまいます。
 もう一点、保護者の立場として、質の高い教育を受けられることを望むところであります。そのためには当然ながら教師の資質の向上は欠かせないと思うのですが、それと共に、私もPTAの役員等を行った経緯もありますが、親の教育力も検討していかなければならない。子どもに大きな影響を及ぼすには学校だけでは難しいところがあって、家庭とか地域で育てていくという体制がもっと検討されるべきではないか。どうも学校、教師ばかりをどうするという視点だけで検討されているような気がしてならないものですから、もう少し社会全体で教育に取り組んでいくことをぜひお願いしたいと思っております。

(参加者C)
 指名いただきありがとうございます。群馬県から参加をいたしました。学校事務職員をしております。私は、学校で事務をしております立場から、学校予算の面などから、地方の学校の実情について少しお話をさせていただきたいと思います。
 私たちの仕事は、教職員の給与、旅費、教材費等々、学校の事務にかかわるもの全般ですが、私も学校事務職員になりましてから20数年勤務をしております。この間、義務教育に関する国庫負担につきましては、だんだん削られてきた現実があります。具体的には教材費、旅費から始まりまして、今はまさに人件費だけになってしまったというのが実情かと思います。
 群馬県にもいろいろなところがありますが、私が勤務しておりましたところはどちらかというと周辺部、決して大きな学校ではない。財政的にも市町村は非常に厳しいところが多いわけですが、こういったところでは、かつて国から教材費等が出ていたころと比べて、非常に厳しい状況がだんだん起こってきている。そういう実態があります。旅費などにつきましても、旅費の制度の見直し等もありますから、国庫負担が減ったがためにすべてということではないかもしれませんが、特に中学校については慢性的な不足が生じておりまして、修学旅行等の費用を払うと残りはあまりないという状況があります。また、施設の整備費等についても、市町村については非常に厳しい状況があります。特に修繕費等については、自治体の財政力によって大きな違いがある。こういった教育条件が地方の状況によって左右されるものだというのが、私が学校事務をしてきまして強く感じているところであります。
 最近では、準要保護等についても、国の制度とは別に地方の工夫でいろいろなものをつけているところもあるようですが、こういったものについても財源が厳しくなってきたことによって、地方独自で、市町村でつけているものが削られてしまう、そんな話も聞いています。
 ご存じのとおり、学校は非常に多忙な状況が続いています。いろいろな課題に応えなければならない。そういった中で、施設・設備面の教育条件の充実は、学校の先生方が仕事をしていく上でベースになるものだと思います。こういったものが保障されないといい教育はできないだろうというのが、学校事務職員としての私の考え方であります。
 地方の方々は、税源を地方に渡して一般財源化ということをおっしゃっているようですが、先ほどの方も言われていたように、これはどうも大きな自治体の方々の主張なのではないか。私のような地方の小さなところに勤務をし、そういう町で仕事をしている者から見ればそんなふうに感じるものであります。
 教育の土台としての義務教育に関する国庫負担制度、これはやはり国でカバーをしていただいて、その上に地方の工夫があってしかるべきかと思います。今の制度でも十分地方の工夫は生かされていると思いますので、ぜひこういったことが国のベースがつくられた上で措置をされていくように、私たちは希望をしていきたいと考えています。よろしくお願いいたします。

(参加者D)
 指名していただきましてありがとうございます。千葉県の佐倉市から来ました、小学校の教員をしております。よろしくお願いいたします。
 自分は小学校の教員になりまして今6年目です。学校現場が、どの学校の先生方に聞いても、多忙を極めているという話があります。自分も普段の一日の勤務を考えますと、6時半に出勤をして、7時から朝の部活を見て、8時から授業を始めて、給食の時間も子どもたちと、休み時間も一緒に遊んで、放課後になりますと会議、放課後の部活なども見て、実際に自分が子どもたちのために教材研究をしようと思う時間になると夕方の6時、7時を過ぎていて、家に持ち帰ったり、夜遅くまで学校に残っている現状があります。
 その中で自分が感じたものがあるのですが、学級の人数の部分です。私、初任でついたときに40人の学級を5年間もちました。その後の1年目、今年ですが、今、29人の子どもたちを見ています。そうなってみますと、子どもたち一人一人を見るときに、人数の差がすごく大きいと今感じています。例えばノートを一人一人見てあげたり、作品に講評、コメントを書いてあげたり、子どもたち一人一人の家庭に電話をしたりということを考えると、人数というものが少なければ少ないほど、学級のまとまりというのがありますので、人数は何人がいいかというのは自分も確実なものはないのですが、多いよりも少ない方がいい部分もすごく感じています。きょうの話の中にもありました、少人数、人数改善に向けて、ぜひ中教審で議論をしていただいて、学校現場が一人一人細やかに見てあげられるような状況をつくっていただけたらと思っています。
 そのためにも、先ほどから話があります義務教育費国庫負担制度に関しては、ぜひ堅持をしていただきたいと思います。今の時点でこれが堅持されないと、学級人数は各都道府県によって変わってくるという話も聞いておりますので、ぜひ、学級人数の改善に向けて義務教育費国庫負担制度の堅持をお願いしたいと思いまして発言をさせていただきました。よろしくお願いいたします。

(参加者E)
 私、群馬県からまいりました学校事務職員です。中学校に勤務しております。よろしくお願いします。指名をいただきありがとうございます。
 先日、全国知事会で補助金の削減リストを決定したというニュースを耳にしました。去年たしか随分な金額を削減して、その足りなかった金額の数字あわせの補助金リストをつくった、その数字あわせがいいのかどうか、その時点でだめかなという思いはあるのですが、その中でとても困ったことがあります。今、私が勤務する学校の隣の小学校で耐震工事をしているのですが、同じ時期に建てられたうちの学校はまだ全然計画がないのです。予定もないのです。たしかこの工事は国の補助金で進められるもので、できるだけ速やかにしろという話になっているはずです。特に新潟であんな大きな地震があった後で、すぐにやらなければいけないのではないかというところもあるわけですが、いつ、どんな地震があるかわからない、できるだけ早くしなければいけないというのにも関わらず、いつになるかまだわからないという状況です。多分、地方でもお金がないのだろうと思うのです。
 ところが、知事会が、補助金を削減して、地方の自由に使わせてくれという話だそうなので、もしこのままいったら、今までの義務教育費で削減をされた教材費や旅費と同じように、どこか違うところに使われてしまうのではないか。地震が起きて初めて、早くしておけばよかったとかという後悔の思いが、保護者だけでなく地域のかかわっている人たち全部に後悔として出ると思うのです。あのときにあんなことをしなければよかった、こうすればよかったというよりも先に、英断として、この制度をしっかり守って、国でやらなければいけないことはすぐにすること。多分、順番があるのだと思うのです。そんなところをぜひお伝えしたいと思ってやってまいりました。
 20年ほど前に、義務教育費国庫負担金から削減された旅費や教材費は一般財源化されたわけですが、各地方自治体では年々削減をされて、国の基準を大幅に下回っている。もし、地震対策費の補助金がなくなって、各地方自治体で費用が削減されてしまったら、一体どんなことになるのだろうという心配があります。
 私はこういう仕事についていますから、次々と異動していくわけで、既に耐震性のある建物もあり、すべての校舎が耐震化をしなければいけない校舎ではありませんから、ある意味で、不安はないと言ってもいいのかもしれません。ただ、地震が起きたときに、そこが住民の避難場所になっているのです。うちの学校ももちろんそうです。広い地域の避難場所なのです。耐震工事をしない校舎に避難をするなどということはまず不可能だと思うのです。そんなこともありますので、ぜひこの制度を守っていただいて、子どもたちが安心して、もちろん教職員もです。地域の住民や保護者もそうです。安心して住めるまちづくりにつながるような義務教育に関する国庫負担制度を守っていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

(板東審議官)
 ありがとうございました。それでは、この区切りで、今度は壇上の委員のほうからご意見がございましたらご発言をいただきたいと思います。角田委員から順番に、よろしくお願いいたします。

(角田委員)
 ご指名をいただきました角田でございます。私は現在、千葉県の聖徳大学附属小学校の校長をしております。大学のほうも兼務をしておりますが、実は、この3月まで、東京の公立の小学校の校長をしておりました。38年間の公立小学校の教職員生活を終えて、今この場にいるわけでございます。そういう意味では、現場の代表として中教審でぜひ発言をしていかなければいけない、そういうふうに思いながら、日々、中教審の会議に参加をしているところでございます。
 教育は、やはり未来を語っていかなければいけないことだと思っています。子どもたちをどう育てるかというのが教育の使命であろう。現在をきちんと踏まえ、過去の歴史のマイナスの轍を踏まずに、そして、将来に向けて夢のある、希望の持てる時代にしていかなければいけない。それが今の私たちの使命であろうと思っております。
 ただいま5人の方からお話を聞かせていただいて、大変、現場の先生方や事務の方、保護者の方たちが、今の中教審の審議の経過に期待を寄せる、あるいは危惧をされている、そういうことを感じております。先ほど言いましたように、私、現場の出身ですので、現場の感覚でものを少し申し上げたいと思っています。
 まず、少人数学級の問題でございます。現在ご承知のとおり、40人が学級の定員になっているわけでございまして、私も現場のときは、最初は50人学級を担当いたしました。教員を辞めるころには45人、40人となったわけですが、今、子どもの数が1学級20人、30人になってくると、先生方は丸つけをするにしても一息でできる。ところが40人、50人だと、途中で一息入れて、もう一回気力をふりしぼってやるということがあったわけです。そういう意味では、やはり少人数学級というのはとても大事だ、きめ細かに子どもたちの様子を見られるという点ではとてもいいことだと思っています。
 ところが、反面、例えば30人学級を定員にしたときに、31人になった。そうすると2学級に分けて16人と15人の学級になる。確かに採点とか事務量の点ではいいのだけれども、そうなったときに学級としての活気はどうなのだろうか。15、16人の学級で、例えば男の子と女の子という分け方が適切かどうかわかりませんが、それのバランスが崩れたときのゲームとか切磋琢磨といったことになるとちょっと心配な感じがする。ですから私は、少人数学級を進めることには賛成だけれども、しかし、少ないからいいというものではないだろう。そういう意味では、私は24人が一番いいと思っています。なぜかといったら、何の数字でも大体割れるからグループをつくるのに大変好都合だからです。そういうことからすると、上限だけを定めるのではなくて下限を定めることも必要なのではないかと思っています。下限を定めながら、そこにプラスアルファの先生が出てきたら、その先生は、例えば少人数指導をしてもいいし、あるいは総合的な学習の時間のコーディネーターの役割をしてもいいし、あるいは問題のある子どもがいたら、その子どもの指導に重点を当てる。そういうふうに、校長さんがその学校の実態に応じて、その学校に一番いいような方法で人をつける、そういうふうにしていったらもっとよりよくなるのではないかと思っています。
 そのためには、やはり義務教育費国庫負担の制度はきちんと堅持しながら、人事の権限なども学校にある程度委ねられるようなことが大事なのではないかと思っています。

(田村委員)
 続いて、私から発言をさせていただきます。私はお隣の千葉県にございます渋谷幕張という中高一貫校の校長をいたしております。先ほど佐倉の先生からのお話をお伺いして、近所ですので非常に身近に感じまして、大変身にしみてご意見をお伺いさせていただいたわけですが、我が国の教育というのは、おそらく世界と比較したときには、いろいろと問題が出てきているとは言われていても、総体的にいえばかなりいい学校教育がなされていると考えていいのだろうと思うのです。悪いところを指摘すればたくさんあるのでしょうが、しかし総体的にはいい。あえて言えば、高等教育は問題があるけれども、初等中等教育は問題がない、大変いい、こういうことがよく言われておりました。それが今回は、義務教育費国庫負担という、今までいいと言われる制度を支えていた大事な仕組みに手をつけようという話が出てきた。これはどう考えたらいいのだろうかというので、私も率直に言って悩みました。
 国際比較しますと、OECDの先進国との比較で、初等中等教育にGDPの3.6パーセントか3.7パーセント、平均で使っているのです。我が国は2.7パーセントですから、かなり少ないです。でも、初等中等教育がそういった国々と比較してもかなりいいと考えられるのは、かなりの役割を教員が背負っているからだ。教員が背負っているというのはどういう意味かというと、欧米の先進国と比べると、我が国は教員の地位が社会的に相当高く評価される。一言で言えば、かなりいい人が教員になってくれているということなのです。これを支えたのは間違いなく義務教育費国庫負担という仕組みだったと思います。
 それに手をつけるというのは一体どういうことを考えているのだろうかというふうに、私は非常に不思議に思ったのが最初の印象でした。これは皆さんも問題を共有したほうがいいと思うのですが、なぜそんなことが出てくるのだろうか。もしかすると、制度がよくできているので、それに安住していることがあったのだろうか。あるいは、どこか今の仕組みに反省してやり直しをしないと、新しい21世紀という時代に対応できないことが出てくるのだろうか。こういうことは考えたほうがいいと思いました。
 最初に私のスタンスを申し上げると、義務教育費国庫負担という部分に手をつけると、日本を支えていた初等中等教育のインフラ、基本的な部分がかなり揺らぐ。下手をするとガタガタになってしまう。どんな教育の仕組みをやっても、日本の教育は初等中等についてかなり成果を上げてきたのは、やはりいい先生がいたからだと思っているのですが、それに手をつけるというのは相当慎重にしなければいけないのですが、あえてそういう議論が出てきたことに対して、私たちは教員の世界にいる人間として、どこに問題があったのだろうかということを考えておく必要があるのかなと思います。
 一つは、教育委員会という仕組みは非常によく考えられたいい制度なのですが、本当に教育委員会が目指す仕組み、計画された目標を生かしているような機能を果たしていたのだろうか。国から地方へという言い方からこの話が出てきているわけですが、つまり、自分たちの問題は自分たちで解決する。何かしてもらうのではなくて、自分が何ができるかを考える、こういう社会に変えていかなければならないのは、21世紀の一つの大きな課題だと思っているわけです。そういう人間を育てるための仕組みとして今のままでいいのだろうかという受け止め方をしますと、随分問題点がはっきりしてくるのではないかという気がしています。ですから、義務教育費国庫負担を守っていくにしても、いろいろなところで今までやってきたことを反省して変えていくことをしないと世の中が納得しないのだなと感じているところでございます。その知恵をお互いに考えて出し合って、よりよい教育の仕組みを我が国でつくっていくことをこれからやっていく必要があるのだろうと思います。
 きょうはそういう意味で、いろいろな意見をお伺いさせていただいて、今私の現時点において考えていることを申し上げたわけですが、これからさらに、いろいろなご意見をぜひ賜りたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

(梶田委員)
 一般論としていいますと、やはり中央集権よりも地方分権がいいと思うのです。ただ、問題は、お金の問題を地方分権にするということと、教育の実際の運用、何人学級でどういう授業をつくっていくかということを地方分権でやっていくことと、話が違うわけです。そこをごちゃごちゃにして、地方分権はいいことだから何でもかんでも地方に任せてしまえという極めて乱暴な意見が今あるのではないかと思うのです。これは、先ほど鳥居会長のほうからもお話がありましたように、この数年、特に2001年からの新しい中教審の中では、現場にどれだけの主体的、自主的な権限を下ろしていくかということでずっと議論してきました。いろいろと仕組みが変わってきたのです。だから、例えば何々加配で来ている先生をほかに何に使ってもいいのです。名目は少人数加配でもTT加配でも、何でもいいのです。これを少人数学級に使っていいようになっているのです。あるいは、国から来る教員の人件費を必要があれば一部分を非常勤講師に振り向けて少し先生を多くするということもできるようになってきた。それはその町とか県の考え方ですから、いろいろと柔軟性が増えてきました。あるいは、1年半前に学習指導要領の一部改正の告示があって、発展的な学習ということで、今まで総合的な学習の時間はかなり自由なことができたのですが、普通の教科であってもそれぞれの先生が自由にいろいろな教材を持ち込んでいろいろなことをやれるようになってきているのです。こういう方向は絶対進めていかなければいけないと私は思います。以上は運用面の話です。
 だけれども、お金のほうで、例えば一般財源にするということはどういうことかというと、それを何に使うかは最後は首長さん、市町村長さんやら知事さんが決めるのです。今の国庫負担法だったら、これに使わなければいけないというひも付きのお金ですから使わなければいけないわけです。ところが、これもちょっと口が過ぎますが、国庫負担法については文部科学省が譲りすぎまして、教材費や旅費が全部一般財源になってしまってどういうことが起こっているか。先ほど何人かの方がご指摘になったように、教材費などは国から地方に来ているはずなのに現場に来ていないのです。これと同じことが、最後に残った教員の賃金についても起こらないとはどういうことで言えるのか。一般財源にするというのはそういうことなのです。だから、30人学級万歳、35人学級万歳、だけど先生はおらんということになったり、あるいは、県によっては、先生をそこにはりつけるためには一人一人の先生の給料を大幅にダウンしなければいけないということになったり、この辺は富裕だからいいかもしれませんが、そうでないところだってあるかもしれません。ということが起こらないように歯止めがなければいけない。
 ところが、そこに対して、知事会とか市長会は、地方を信用してくれというのです。信用の問題ではないです。心情ではいくら信用しても、無い袖は振れんという話になったらどうにもなりません。仕組みとして整備しなければいけないというのが私がずっと考えてきたことでして、きょうは5人の方がほぼ私と同じようなお考えだなと思って、安心して聞かせてもらいました。

(井上委員)
 今まで、5人の皆さんからお話を聞いて、実際に学校現場で教えておられる教員の方、あるいは事務職員の方、保護者の方、そういうお立場からのご意見は非常に私どもとしては重く受け止めさせていただきたいと思います。
 今回の義務教育費国庫負担金の削減を巡っての三位一体改革がなぜ起こったかということを考えれば、小泉内閣になってから、官から民へ、国から地方へ、そして規制緩和、こういうスローガンのもとにあらゆる改革を行う、その一環として義務教育費国庫負担制度がその対象とされてきていると考えられるわけです。我が国について考えてみると、資源のない我が国で何が一番の資源かというと、人材の育成、まさに人材というものが一番大きな資源ではないかと私どもは考えているわけです。それだけに、義務教育が北海道から沖縄まで全国一定の水準に確保されて、どこで教育を受けても同じ水準の教育を受けられるという、今までの義務教育というものがどうしても今後も続けられていく必要があると思います。そういう意味で、三位一体改革におきましても、義務教育制度についてはその根幹を維持するという、先ほども鳥居会長からご説明があったように、教育の機会均等の確保、教育水準の維持向上、無償制、この3つの根幹は維持するということですから、それを維持するためにはどうしたからいいのか。堅持するための方策は何なのかということを、義務教育特別部会では真摯な議論を展開しているところでございます。
 そういう意味で、先ほども地方の場合には非常に財政的に厳しいというお話がありました。まさにそのとおりでございまして、この参考資料の最後にもございますように、義務教育費国庫負担金を廃止し税源移譲した場合の試算というのがありまして、これによれば、40道府県で財源不足が生じるということが試算として出ております。ただ、地方団体のご意見としては、それは地方交付税で財源を調整するから、どこでも従来と同じ財源が確保されるとはおっしゃっているのですが、ご存じのとおり、国も地方も今非常に大きな負債を抱えておりまして、赤字体質になっているわけですから、地方交付税制度も総額が減少していることは間違いないし、今後も総額が削減されて縮小される方向にあることは事実でございます。そういう意味で、果たして義務教育について、確実に義務教育費が教職員の人件費として使われる保障がどうしたらできるのかというのが、今最大の議論でございまして、財政支出の確実性をいかに確保するかということについて真摯な議論を進めているところでございます。
 やはり教育は人にあり、と言われるように、いい先生方をいかに確保していくかということについて、教員養成から始まって、実際の教員の採用、研修、そしてその評価、それらの全体を通じて義務教育について良い先生を確保して全国的な教育水準の維持向上が図れる方策についてさらに議論したいと思っておりますので、今後とも、皆様方の忌憚のないご意見を頂戴したいと思っております。

(板東審議官)
 それでは、鳥居会長、いかがでございましょうか。

(鳥居会長)
 今説明がありました参考データの最後のページのグラフについて、私も説明をしておきたいと思います。要するに今度の改革と称しているものは税源移譲なのです。税源移譲というのは国税が地方税にかわるという意味だそうですが、具体的には何をするかというと、2行目に書いてあるように、個人住民税をフラット税率にする。先ほど申し上げたように、今まで5パーセント払っていたものを10パーセントにする。たまには13パーセントが10パーセントにされる人もいて、結局みんなで10パーセントになる。その結果、それだけで今まで国が負担していた義務教育費を負担できるのか。教員の給与の半分を負担できるのかを試算してみたところ、ご覧のとおりで、関東地方の4県、埼玉、千葉、東京、神奈川、それから静岡と愛知、それから大阪、それだけがプラスになる。それ以外のところは40県がマイナスになってしまう。お金が足りなくなってしまう。だから、税源移譲といいながら移譲にならないのではないかということを心配しているわけです。
 これを一人一人の問題にしてみると、今まで所得税で取られていたものが安くしてもらえるのだろうか。それと同額だけ県民税で取ってもらえるのだろうかということを考えたとき、それは保障されていないと思います。一人一人にしてみれば話は違うと思います。この点でも、両方の意味で、この表は我々に大事なことを教えていると思います。ぜひご検討いただいて、フラット税率で本当にいいのか、国民はみんな幸せなのかという点でも、この提案を検討していただきたいと思います。

(板東審議官)
 それでは、また会場のほうからご意見をいただきたいと思います。今、費用負担の問題がかなり出ておりますが、それ以外の教育内容とか教員の資質向上の問題、あるいは学校の在り方、教育委員会の在り方等々を含めまして、幅広くご意見をいただければありがたいと思っておりますが、いかがでございましょうか。

(参加者F)
 私は、学校栄養職員でございます。おかげさまで定数法がありますので、小さい村でも、私、学校栄養職員が1名配置されております。とてもありがたい制度だと思っております。学校栄養職員は、子どもたちが将来にわたって健康に生活していけるように、小中学校で食に関する指導、それから学校給食の管理ということを、一本化して行う業務ということで、今年度から栄養教諭がスタートいたしました。これは、私たちが長い間待ちに待っていた制度です。それがようやくスタートしたところで、とても心配なことが起こってまいりました。それは、義務教育費国庫負担法の維持がなされないのではないかということです。しかも、栄養教諭の任用につきましては、都道府県によっては温度差があるように聞いております。栄養教諭の質の向上、それから研修制度につきましても、やはり義務教育費国庫負担法の中で文部科学省の指導のもとに実施していただければ大変ありがたいことだと思っております。

(参加者G)
 小学校のPTA会長をやっております。私、職業は臨床工学技師といいますが、私自身、大変やりがいのある仕事をやっておりまして、プライベートな時間がほとんどないような状態でPTA会長を引き受けました。
 先ほど来いろいろ聞いておりますと、中教審の問題は教職員の人件費問題が一番中心的な課題みたいな感じを受けるわけですが、一番忘れてはいけないのは、子どもの立場、教師がどれだけやりがいがある仕事であるか、将来の財産である子どもに対して責任感がどれだけあるか。やりがいという言葉がこの資料に全然書いてないのです。教師というのは一番やりがいのある仕事です。それを根底に置いた話をしない限りは、いい教育はできないと思っています。
 それから、少人数学級と言っていますが、これから後、平成30年には少子高齢化です。平成30年には子どもたちは半減するわけです。少人数学級の議論をしていても何の意味もないと思うのです。これから子どもを集めることの議論をしなければいけないのです。将来に見合った議論をしないで、現状の苦しい立場の議論だけ、それはいいのですが、将来の議論をしなかったら、あと10年後、20年後になったらまたやり直しをしなければいけないわけですから、もっと未来を見た議論をすべきだと思っております。
 地域を入れるということで、私もいろいろな医療の学会に出ているのですが、神戸の震災のときに、一体何が大事かといったら、自助、互助、公助という言葉があるのですが、自分たちのことは自分たちが助ける、これは当然です。それができないのは互助です、お互いが助ける。地域を入れるというのは互助のことを言っているのだと思います。問題なのは義務教育、これは公助です。もうちょっと公助だということを議論していただきたい。

(参加者H)
 大学教員の者です。義務教育の費用負担問題について、学部学生や院生たちと話をしたことについて若干お話をさせていただきます。
 当初、学生たちに義務教育の国庫負担金を存続させるか、あるいは税源移譲かという話をしたとき、きょうの会場と同じように、国庫負担金制度を存続したほうがいいという意見でした。理由は、義務教育を支えるためには責任を明確にするべきだ、あるいは、税源移譲した場合、懸念されるように、地方が教育費を保障するかどうか不安であるということが理由だったと思います。しかし、いろいろ検証し、議論していくと、その意見が全く逆転してしまったのです。いくつかポイントがありまして、一つは、義務教育費国庫負担金が義務教育を支える根幹的な制度ではないということであります。地方財政法では義務教育は都道府県と市町村の責任負担になっている。しかし、2分の1は義務教育費国庫負担法に基づいて国庫が負担することになっていますが、この背景には、地方財政の不安定性があったわけです。地方財政の不安定性、戦後、実員、実額制から定員、定額制に変わる。この場合、財政当局の強い意思が働いているわけです。これは裁量のきかない予算がどんどんふえていくことに対して財政当局は不安である。これは、現在もそういった懸念はあるわけです。実際に義務教育費国庫負担法の改正に基づいて減額されてきているということがあります。さらに財政赤字が厳しくなる中で、一般歳出のシーリングの対象である国庫負担金というのは、当然削減の対象となっていかざるを得ないというわけです。ですから、その中で子どもの数が減っていくにもかかわらず教育費が減らないという声が聞かれている中で、当然、義務教育費国庫負担も減額の対象となっていく中で、これは必ず保障される限りではない。現行の水準を維持しようと思うと国庫負担金が減らされて、税源移譲されないまま地方の負担が大きくなっていく。独立行政法人となった大学の運営交付金が年々削減され、あるいは、その中で授業料が上がっていくという実情の中で、学生たちの懸念はそんなに非現実的ではないと思います。
 さらに、地方の格差問題が出たのですが、国庫負担金が廃止されたとき、昭和28年の文部省の資料によると、この間、一生懸命地方は教育費をふやしている。文部省の資料によると、地方間の格差、生徒一人当たりの教育費は若干であるが縮小した。地方は頑張ったのです。しかし、税源移譲されない、財源も特定化されない中で地方財政が破綻してしまうことがあった。
 最後に申し上げたいのは、税源移譲されたから義務教育問題が解決されるという保障はないです。しかし、今までの国庫負担金制度の中でいろいろな問題を抱えてしまっている。これは国庫負担金を存続すれば義務教育の問題は解決されるという保障にも当然ないわけであります。その中で、さまざまな地方分権することによっていろいろな失敗例、成功例を見ながら、義務教育をどうやって改善していくかという新しい道を模索することが望ましいのではないかという意見が大半でありました。

(参加者I)
 ご指名ありがとうございます。青年会議所の者です。よろしくお願いいたします。
 まず、教育について、1点目として、もうちょっと道徳教育を重要視するような形にしたらどうかと思っております。一番重要なものがあって、その後に制度があり、その後に国庫負担金その他がついてくるのではないか。議論する順番が逆ではないかという印象を受けました。道徳教育で古来の徳、礼儀作法、日本人としての精神を、偏った考えではなく、もう少し教育現場の中に取り入れていただくような、ゆとりではなく、日本人としての誇りを確立できるような教育をしていただけるとありがたいなという印象を持っております。
 そして、地方自治体の義務教育に要する経常経費というものを、全体の2分の1、これはあくまでも給与だけの2分の1というふうに聞いております。全体経費の実は7割以上が一般財源から賄われているという現状を考えたときに、果たしてこれが本当に義務教育を支える根幹になっているのか。そうであれば、もうちょっと決定権を地方の住民、市民が持てるような方向を出し、そして、地方の責任において教育というものがもっと形を具体化するような、今までの経済優先とかそういうものではなく、個人の個性を豊かにするような教育とか、それぞれの地域性を考慮しながら進められるようなものを求めてまいりたいと考えております。
 それは、言い換えれば、例えば全体の20何パーセントのものにこだわるのではなく、例えば地方に税源を全部移譲してしまったときに、果たして本当に教育というものは変わってしまうのか。そういう議論をしたときに、私は決して、今の先生方のすばらしい資質を考えたときに、あり得ないと思っております。ぜひ、この義務教育、すばらしい日本の教育をさらに発展させるためにも、マイナスではなく、変えたときにはどうかというシミュレーションを現実的にその地方ごとで行っていくことが重要ではないかと考えております。
 それから、このようなすばらしい機会、文部科学省に対して発言ができる、これはありがたいものであります。ただ、権限というものが地方に移譲されたならば、直接、その地方の決定権を持った方に住民が意見を言うことができるのではないか。そういう一面もあるということを発言させていただきたいと思います。

(参加者J)
 私は茨城県内の小学校の教員をしております。このような機会を与えていただきまして本当にありがとうございます。小学校の教員をしておりますので、総合的な学習の時間のことでお話をしたいと思います。もう3年になりますが、この総合的な学習の時間が学力低下の引き金になったというような報道が大分マスコミから流されまして、現場の教員としては非常にショックでした。なぜかといいますと、まず、総合的な学習の時間を子どもたちに投げかけた場合に、準備時間はたくさんかかりますが、子どもたちが真剣に追究してくる瞳の輝きとか、時間が長くかかってもあきることなく追究する気持ち、そういったものが座学でやっている教科とは全然違った手応えを私自身が感じたからです。また、このことについては、保護者の方々にも協力を得なければ成り立たない学習です。特に小学校の場合には地域の学習が中心となりますので、地域のどういう方々にこの学習に参加してもらって組み立てるか、これが一つの工夫のしどころでした。そういうわけで、地域の方々に声をかけたところ、保護者の方も、見学のときには安全にも配慮して一緒に行きましょうとか、ここに立っていて見てあげましょうとか、また、例えば福祉の方々も、今年はこの授業はないのですかとか、非常に興味を持って、子どもたちとの関わりを待っていてくださいました。そういう部分では、この総合的な学習の時間は地道な地域と学校のつながりで確実に成果を上げつつあったと思っておりました。そこにきて、学力テストの結果のことでそういうお話があったときに、それは本当だろうかというのが私の率直な感想でした。
 教員の立場とすれば、いろいろと工夫をしてやりたいのですが、とにかく予算があまりない。お金がなくても工夫をしていろいろやっているのですが、3年目ともなりますと、考えられることは大体すべてやっている。しかし、もっともっと子どもたちの願いを広げていくとすれば、さまざまなアプローチが必要だとなれば、財源的なことについて保障していただきたいと思ったわけですが、それは市町村の設置者の責任ということで、財力も小さいところでは少ししかなく、大きい町では何十万円もお金がおりる、そういうばらつきが今も既にあるわけです。そういうことから考えても、やはり財力の違う地方分権ということで、お金に関して慎重にやっていただかないと、今現在でもそういった状況があるということで、慎重にしていただきたい。そして、少なくともお金の問題については慎重に先生方にご協議いただいて、政府の方にもきちんとお話ししていただきたいと思います。こういったことで地域が支えていますので、総合的な学習の時間について、学校の自由度が増すような部分もお願いしてお話を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

(参加者K)
 県西地区からやってきました、小学生を通わせている者です。ちょっと的外れになるかもしれませんが、どちらかというとお願いという形で話したいと思います。
 一つは、学校の先生というのも一つの職業です。私の身内にも関係者がいますが、あるときに、私が娘を通わせているのは小さな小学校ですが、そこから町の中心にある大きな学校に校長先生がかわったときに、ご栄転おめでとうございますとおっしゃった方がいるのです。私とすれば、小さな学校であっても大きな学校であってもかわりはないはずで、なんでご栄転になるのか。会社と同じですから、その中で出世という部分もありますから、わからないではないのですが、そういう観点があるということを踏まえて、今度、専門の大学院を設ける場合に、その機関自体がある意味での出世とかの箔づけにならないような形のものにしていただきたいというのが一点です。
 もう一つ、先生の採用に関して権限移譲して、それをどのラインに置くのかという部分で、もし市町村になったときに、恥ずかしい話ですが、市町村の職員採用という部分になると、コネで入ったとか、町長の懐に入ったものがあるとかというような形での噂話が常につきまとってきますので、人の採用になったときにそういうことがないような制度を考えていただきたいと思います。
 要するに義務教育というのは、6歳で入って15歳で出るまでの間、集団として、ばらつきはあるでしょうけれども、ある理想の姿、あるべき姿でもってその9年を終わって、次に出ていってもらいたいというのが親の願いだと思います。それをどうやって効率よく進める方法がいいかを考えるのが根底なのかなと思います。そのときに、今、小学校に通わせていますが、小学校の現状というのは、私の目から見ると、それぞれの担任の先生が個人商店の寄り集まりで、自分が1年終わったらそれで完了で、あとは次の商店にお任せという感じがします。そこが振り返ると、小学校も全員が朝から晩まで一人の先生にお願いする担任制度でいいのかどうか。果たしてそれが、15歳で終わるときまで進められる方法としていいのかという部分を感じます。そういうことがあるので、新学期になると、いい先生に当たったとかはずれたとかとなってしまいますので、そういう部分も考えてやっていただけたらと思います。ありがとうございました。

(板東審議官)
 ありがとうございました。それでは、委員のほうから意見を順次述べさせていただきます。まず、井上委員から言っていただいて、最後に会長に締めていただくようにさせていただきたいと思います。

(井上委員)
 ただいま、皆さん方から貴重なご意見をいただきましてありがとうございました。その中で、二点ほど申し上げたいと思います。
 一点は、義務教育の今後の在り方ということで、費用負担の問題もさることながら、一番の前提は、今後における義務教育の水準を維持向上するためにはどうしたらいいのか、そこが中心の議題で、2月以降、義務教育特別部会では議論を続けてきたわけでございまして、そういう中にあって、3年ほどたちました学習指導要領についての基本的な考え方である「生きる力」を中心とした学習指導要領の理念については正しい。その実施状況については、総合的な学習の時間についても、いわゆる基礎基本を徹底して身につけさせるという習得型の学習とともに、それをみずから学び、考え、判断して行動するという探究型の習得方法として総合的な学習の時間というものが必要であるということで取り入れられているわけで、そういう意味では、先生方の非常な努力でこの3年間、大きな成果を上げてきている学校もありますし、まだ十分ではない学校もあるということで、学校によって温度差があるということは否定できない事実だと思います。ただ、多くの学校では、3年あまりの経験を踏まえて、さらに総合的な学習の時間によって探究型の学習を子どもたちに身につけさせるという努力が行われていることは事実でございますので、そういう点で、さらに総合的な学習の時間の支援をどうしたらいいのか。先ほどお話があったような財政的な支援を含めて、情報提供とか相互の情報交換とか、あるいはそれについての研修も必要ではないかとか、いろいろな意見交換が現在、教育課程部会で行われているところでございます。
 それから、もう一点は費用負担のところでございますが、これは、義務教育を支えているものは何かというと、やはり標準法によって学級編制とか教職員の配置の標準を定める、あるいは学習指導要領によって教育課程の基準を定める、そういう基本的な義務教育の在り方を支えている法令があるわけでございますが、それとともに、実質的にそれを担保するのが義務教育費国庫負担金制度ということになると思うわけでございます。したがって、教育は何といっても、よい先生を確保して、よい先生方に児童生徒に対する教育を実施していただくというのが基本でございますから、そういう意味で、確実にその財源を確保できるものは何かというのが、先ほども申し上げましたように、最大の課題になっているわけでございます。国の予算編成を見れば明らかですが、最初に義務教育費国庫負担金などがまず必要な経費として確保されますので、そういう意味では、削減の対象になったことは現在までございません。
 それとともに、政策的な経費が予算編成に組み込まれていくわけでございまして、全体の国の予算が編成されるのと相まって、地方財政計画が国の財政の状況を踏まえて策定されていくわけでございますから、そういう意味で、基準財政需要額による積算が一般的には今までの議論でも必ずしも明確ではない。バーチャルの部分があるので、若干そこのところが総額などが流動的になっているという実態が指摘されているところでございますから、そういう意味で、義務教育の人件費を確実に特定財源として充てられるものは何かと考えた場合には、やはり今の義務教育費国庫負担制度であるというのが、多くの委員の意見になっているということも、あわせてご紹介しておきたいと思います。

(梶田委員)
 大きく二点、お話しいたします。
 一つは、今何人かご発言いただきましたように、中教審でなんでお金の問題を大きく議論しなければいけないのか。私も本当に悲しいことだと思います。もっと教育で議論しなければいけないことがいっぱいあるわけです。これは私見ですが、残念なことに、確かに国の借金は700兆円もあるのだけれども、どう切り詰めるかという中で、中央官庁の人減らしはやらないで、後回しにして、あるいは公共事業の削減もしないで、なんで福祉や教育のところから金を削ることを提案しないといけないのか、私は非常に悲しいことだと思います。これは私個人の意見です。今の日本の政治が間違っていると思います。私は義務教育については国が金を保障すべきだ。ただし、口は出さない。こういうやり方が、どこまでやるかは技術的には考えなければいけないけれども、原則としては、国はお金を保障して、できるだけ口を出さないようにしてやっていくという方向をもっと追求しないといけないのではないか。したがって、国庫負担法も、今は削り過ぎているのです。人件費だけです。もっと教材費から旅費から何から国庫負担で面倒をみるべきだ。あるいは施設、設備の整備も、耐震の問題だけではないはずだと思っています。これが第一点。
 二点目は、実は中教審もこれだけをやっているわけではないです。いろいろな部会や分科会がありまして、例えば教育課程部会では指導要領の次の改定に向けて議論しております。今、井上先生が総合的な学習の時間のことをおっしゃいましたので繰り返しませんが、これも大事にしていこうと教育課程部会の委員は思っております。それから、教員養成部会では、教員のやる気をどうやってもっと出してもらうか、力が向上するか、情熱を持ってもらうかということを議論しております。その一環として専門職大学院の問題も出てきておりますので、これは単なる出世街道のためのものではありません。教師がここでもう一度勉強しなおして力をつける。こういうことのチャンスはいっぱい準備しなければいけない。これも都道府県の財政が不如意になっています。私どもの兵庫教育大学は毎年100人ちょっとの現職の先生に来てもらっています。2年間ですから、毎年200人の現職の先生にやってもらっているのですが、これがどんどん削られるということがあります。この中で、教員の方だったらぜひ兵庫教育大学に来てください。こういうことも含めて、いい教師をどういうふうにより一層よくなってもらうか、それをサポートしていくかということを教員養成部会で随分議論しております。今日はほとんどその話はできませんでしたが、どうかアンテナを張っていただきまして、また、文部科学省のホームページなどでも教員養成とか教育課程とかそういうことの議論を紹介しておりますので、ぜひそれを見ていただきたいと思います。

(田村委員)
 時間がありませんので、簡単に私の考えを申し上げさせていただきます。大変いいご意見をたくさんいただきました。基本的には、今の時代、確かに中央から地方へ、地方分権が基本的な流れであることは間違いないわけであります。ただ、現在、これから先は私の意見ですが、国際情勢を見ていますとテロが頻発して、これから先どうなるかというのは見通しがつかないような状況が起きはじめているわけです。これは解決するのは大変難しい。私たちの世界でも、今の若者を見ていますと、先行きの希望とか夢を語る場があまりにも少なくなりすぎている。どんどんそれが縮小していく。基本的に日本の教育の場の中でも、先生方の努力にもかかわらず、なかなか成果になって現れてこない。意欲が出ないというのはそういうことが一つの原因ではないかと見ております。
 そこで私は思い出すのですが、私の世代ですと第二次世界大戦を経験しております。小学生でした。戦争が終わった後、国連という組織があって、それが平和をつくる。具体的な運動としてユネスコという組織ができた。日本も参加ができる。その当時、ユネスコのスタートで、アトリーという当時のイギリスの首相が、人々の心の中に平和の砦を築くことから始まるという言葉を残しました。これはユネスコの有名な標語になっているのですが、これを聞いたときにはものすごく新鮮に感じました。戦争で嫌な思いをしていたために、平和の夢というのは非常に明るく、ものすごく強烈な印象として伝わって、今でもそれは心の中に残っています。今の子どもたちは、考えてみるとそういうものが体験としてないのです。ですから、国という組織が世界を考えるときには無視できない存在。しかも、国連のいろいろな機関が20いくつもあって、それがいろいろな活動をして世界で活躍していることを紹介していくとなると、どうしても国ということを無視できない。ですから、国という要素と地方分権という要素をよほどうまく噛み合わせていかないと、日本のこれからの将来、非常に心配なことが出てくるのではないかというふうに個人的には思っております。先ほど、道徳教育のお話をお伺いして、根っこは同じことを心配しておられるのだなと思いましたが、その部分は非常に大事なことだと思います。地方分権は大事です。これからますます進めていかなければいけませんが、国というものをどう位置づけるかということも非常に大切だということを確認していただきたいと思います。
 私は、義務教育費国庫負担というのは、基本的には教育のインフラを支える仕組みの大事な部分だと思っておりますので、それをなくすのだったらよほど慎重にいろいろなことを考えてやらないといけないと感じていまして、その点の心配はぜひ皆さんも共有していただきたいと感じて、一言だけ申し上げさせていただきました。ありがとうございます。

(角田委員)
 大分時間が押しておりますが、手短にいくつかお話をさせていただこうと思います。前の河村文部科学大臣が就任をされたときに、食に関する指導をするようにということが小泉総理大臣からあり、河村文部科学大臣は、これは大変重要なことだということで力を尽くされたわけですが、そこから栄養教諭がスタートをすることになって、これは大変大事なことだと思います。しかし、今現在、栄養教諭は法的には2分の1しかつかないのです。ですから、栄養教諭がいるところは充実するけれども、いないところはそうでない。非常勤の職員がついている場合がありますが、こういったことについて、国で行えるのか、あるいは地方に分権したときにそういうことが行えるのかということを考えていくことが、現場としては大事だろうというふうに思います。
 2番目は、マスコミ報道での総合的な学習の時間、私もあれを見たときに大変ショックでした。しかし、中教審では、総合的な学習の時間をなくそうとか削ろうとかいう意見は全く出ていない。これは、なぜ総合的な学習の時間が出てきたのかという背景を考えると、日本人は与えられた問題を解決することは得意だけれども、自分から問題を発見して、それを自分で解決をし、それを人に伝えていく力が劣っているのではないか。そういうところを補うために、新しい領域である総合的な学習の時間が出てきたわけです。そして、スタートしてまだ試行を含めて5年か6年といったところ、正規に始まってから4年です。そういうことを考えると、今の段階でもう、なしにしようというのはあまりにも拙速すぎると思っていますので、これは今度ともぜひ地域が協力していただける、あるいは企業にも協力してもらえる、学校教育にいろいろな方たちが参画できるという意味で、この総合的な学習の時間はさらに充実をして必要があるだろうということで、強く主張していきたいと思っています。
 道徳教育の話が出ましたが、私は、道徳教育について、今、こころのノートが出て、随分授業が変わってきた。家庭と学校とが少しずつ距離が近づいてきているのではないか。地区によっては、道徳授業の公開講座のようなものをどんどん開いていて、地域ぐるみ、家庭と学校と地域とが一体となって道徳教育を進めていこうという動きが非常に強くなってきている。このことがとても大事で、学校教育なのだから学校だけでやっていればいいという時代ではない。今までも家庭、地域との連携と言われているけれども、本当にここで一回きちんと見直して、地域との連携を考えていく必要があるのではないかと思います。
 最後に、先ほど最後の方が、小学校の現状は個人商店にお任せのような感じだとおっしゃられた。このことについて、私は非常に申しわけないと思っています。今、小学校教育は、ご承知のように学級担任制度をとっています。12学級の場合には教員の配置が15人しかいません。音楽と図工と養護教諭がプラスアルファでつくだけです。もちろん少人数加配で1人つくような場合があるかもしれませんが、基本的には12学級で15人です。これが18人、もうあと3人加わると、もう少し自由度が増してくる。教科担任制ができる。高学年で教科担任制をする、あるいは低・中学年でTTであったり少人数指導をすることができる。ですから、こういう教職員定数を改善していくことも非常に重要なことなのだと思います。この教職員定数を改善するためには、その裏付けが必要なわけです。今、第7次の定数改善が今年度で終わって、来年度から第8次、新しい定数改善になるわけですが、そこのところで何を出していくのかというときに、小学校では定数改善を視野に入れていかなければ、今までどおりのような形になってしまうと同時に、これは、校長が本当にリーダーシップを発揮して、学校が組織として動いていけるような形をつくっていかなければ、小学校の改善はなかなか難しいだろうと私は思います。しかし、既に始まってきて、少しずつ良くなってきているという兆候が現れていると思っております。今後とも、皆さん方と力を合わせながら、小学校教育、あるいは日本の義務教育の将来に向けて改善を図ってまいりたいと思っています。ありがとうございました。

(板東審議官)
 最後に会長にお話をいただきます前に、本日、文部科学省から担当局長であります銭谷が参加をさせていただいておりますので、銭谷初等中教育局長からも一言申し上げたいと存じます。

(銭谷初等中等教育局長)
 初等中等教育局長の銭谷でございます。きょうは、たくさんの方々からいろいろとご意見をお聞かせをいただきまして、ありがとうございました。中教審は、今年の2月から、義務教育特別部会を設置して、これまで50時間に及ぶご議論をいただいております。そのうち審議経過報告のその1に書いてございます部分が約20時間、それから、その2に書いてある部分について約30時間、本当に30人の特別部会の委員の先生にはご熱心にご議論いただいておりまして、きょうとあしたの一日中央教育審議会も踏まえて、今年の秋の結論を出すために、またこれから真剣なご議論をいただくことになろうかと思っております。
 文部科学省としても、中教審の議論の役に立てようということで、今年に入りましてから、全国の学校を大臣以下がお伺いをするスクールミーティングを実施してまいりました。私もつい先日、宮崎県に大臣と一緒に行ってきたわけですが、そこで学校の先生やPTAの方、そして小中学生、子どもたちからも、今の教育についていろいろ感じていることについてお話を伺うといったようなことを重ねてまいりまして、1学期が終わりましたので、近くその状況をきちんと整理をして、皆様方にご報告したいと思っております。
 それから、この審議経過報告の後ろのほうに意識調査が載っております。82ページからでございますが、文部科学省で広く各界各層、知事とか市長、教育長、先生、保護者の方、小中学生のご意見を聞こうということで意識調査をして、できるだけ今の状況を的確につかもうということをやってまいりました。先ほど来お話が出ております総合的な学習の時間についても、89ページ以下に、小学生はどう感じているのだろうか、中学生はどう感じているのだろうか、先生方はどうだろうかといった結果を載せてございます。91ページには、その状況をそれぞれのお立場でどう思っているかというデータが載っております。これを見ますと、子どもたち、親御さんには大変いい評価をいただいているのですが、中学校の先生には評価があまりよくないというのが91ページのところに出ております。大臣がいろいろご発言しているわけですが、大臣ご自身、総合的な学習の時間を要らないと言っているわけでは決してありませんで、総合的な学習の時間を充実したものにするために、むしろ、文部科学省でもっと積極的な審議をすべきではないかというのが、今の中山大臣の考え方でございます。
 それから、私から二点だけ申し上げさせていただきたいと思っております。
 一点は、義務教育費国庫負担の問題でございますが、やはり現在の義務教育費国庫負担制度は、先ほど井上委員からもお話がございましたように、日本がいかに学校の先生を大事にしているかということのあらわれとして、3つの柱の施策が非常に重要なものだと私どもは思っております。1つは、先生の給与について、他の公務員の方に比べて優遇措置をする人材確保法でございます。2つ目が、先生の配置について、義務教育の標準法という法律をつくりまして、学級編制あるいは教職員配置についてきちんと国として標準を定める、その上で、標準法をより改善するために定数改善を逐次行ってきていること。そして、3つ目が、こういう先生方について、その経費を、本来市町村が負担すべきものを県にご負担をしていただいて、さらに国が2分の1負担するという義務教育費国庫負担制度の存在。この3点が相まって、大変に日本というのはこれまで先生を大事にしてきた国だと思っております。義務教育費国庫負担金では、法が国がすすんで負担すべき経費ということになっておりますので、対象経費の移り変わりはございますが、負担すべきとされた教職員給与については予算的には最優先でつくということで、減額ということはありません。2分の1、国が負担をした場合、その残りの2分の1は地方財政計画できちんと措置をすることになっておりまして、いわば100パーセント国の責任において教員給与の措置をする制度でございますので、この在り方については、今年の秋の結論まで、しっかりご議論していただきたいと思っております。
 それから、二つ目が施設の問題でございますが、先ほどちょっと出ておりましたが、やはり日本の学校はまだ耐震化に大変課題があると思っております。小中学校で耐震化が済んでいる校舎の割合はまだ51.8パーセントでございまして、今後、耐震化率をいかに高めていくかということは、私ども大きな課題だと思っております。このことを含めた学校施設の国庫負担の在り方も今年の秋までに結論を出すということになっております。
 私自身、個人的なことを申し上げますと、教育行政官になろうと思ったのが、小学校、中学校、高等学校を通じまして本当にいい先生に教わったからで、ああいう先生方が日本中に満ちあふれたら日本の子どもたちは幸せになれるだろうと思って、教職を魅力ある職にしたいと思ってこの仕事に就きました。私の弟も中学生のときに国語の先生が大変いい先生で、作文指導を的確にやっていただいて、何とか一人前になりまして、今、水戸の近くの大学で教えております。本当に先生のおかげだと兄弟でよく話をしております。先生方が生きがいのある仕事、働きやすい職場になるように、文部科学省としてはしっかり取り組んでいきたいと思っております。今日はありがとうございました。

(板東審議官)
 それでは、最後に、鳥居会長からよろしくお願いいたします。

(鳥居会長)
 時間がありませんから、問題点を一言だけ申し上げます。中央教育審議会は、預けられた宿題、つまり義務教育制度についてはその根幹を維持し、国の責任を引き続き堅持するという話と、一方で、費用負担については地方案を生かす方策を検討するという、全く真反対の話を預けられて、今困っています。一方、平成17年秋までに中央教育審議会において結論を得ると、政府と与党は言っています。実際に秋までに私たちが結論を出したとき、それを守ってくれるのかどうか。それを国民の皆さんが見ていてくださることが一番大事だと思います。もし、それを守ってくれないのだったら、私たちは政治を信用することができないということになると思います。以上です。

(板東審議官)
 ありがとうございました。私の司会の不手際で大変時間が超過してしまいまして申しわけございません。時間が超過したにもかかわらず、手を上げていただいた方全員をご指名することができなかったことをお詫びを申し上げたいと存じます。
 いただきましたご意見につきましては、中央教育審議会での今後の審議に生かさせていただきたいと思っております。
 以上をもちまして、一日中央教育審議会(水戸)を閉会させていただきます。本日はどうもありがとうございました。


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