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一日中央教育審議会(高知)

とき:平成17年7月24日(日曜日)
ところ:高知新聞放送会館

文部科学省



【司会・板東審議官】 皆様、大変お待たせをいたしました。
 それではただ今より一日中央教育審議会・高知を開会させていただきます。本日はお忙しい所を多数ご参集いただきまして、ありがとうございます。
 私は、本日の進行役を努めさせていただきます、文部科学省の大臣官房審議官の板東と申します。宜しくお願いいたします。
 現在、ご承知のように中央教育審議会におきましては、義務教育の在り方について義務教育特別部会という特別の部会を設けまして、この秋の答申の取りまとめに向けて精力的な審議を行っている所でございます。
 義務教育は一人一人の子ども達がその可能性を最大限に伸ばし、有意義な人生を送るための基礎を作るという事とともに、国家・社会の担い手を育成するという事で、我が国のこれからの発展にとりましても極めて大きな役割を果たすものでございます。
 このような義務教育に関する審議は、我が国の将来を左右する重要な事柄でございますので、今回直接国民の皆様方と中教審の委員との意見交換を行わせていただきまして、今後の審議に活かさせていただきたいという風に考えている所でございます。
 この為、本日は木村副会長をはじめといたしまして、中央教育審議会の先ほど申しました義務教育特別部会の委員がここ高知にお伺いいたしまして、義務教育の在り方につきまして会場の皆様方と意見交換を行わせていただく事を考えております。また、文部科学省からは初等中等教育局の担当の審議官も参加させていただいております。
 本日の進め方でございますけれども、まず、木村副会長のほうから義務教育の在り方につきましてプレゼンテーションをいただく事にしております。これは中央教育審議会で現在検討されております検討の状況をご報告させていただくという事でございます。
 続きまして、義務教育の在り方について会場の皆様と壇上の中教審の委員の皆様との意見交換を行わせていただきます。出来るだけ多くの方々から幅広いテーマについてのご意見をいただきたいという風に考えております。
 それでは、まず最初に壇上の今日伺わせていただいております中央教育審議会の義務教育特別部会の関係の委員の皆様方をご紹介させていただきたいと存じます。
 最初に、木村孟中央教育審議会副会長、独立行政法人大学評価・学位授与機構長でございます。
 小川正人義務教育特別部会委員、東京大学教育学研究科教授でございます。
 渡久山長輝義務教育特別部会委員、財団法人全国退職教職員生きがい支援協会理事長でございます。
 山本恒夫義務教育特別部会委員、八洲学園大学教授、筑波大学名誉教授でございます。
 それから、文部科学省からの参加者をご紹介させていただきます。
 山中伸一大臣官房審議官(初等中等教育局担当)でございます。
 それではまず、木村副会長から義務教育の在り方に関する中央教育審議会の審議状況につきましてご説明をお願いしたいと存じます。木村副会長は先ほど申しました、義務教育特別部会の副部会長も兼ねておられまして、本日皆様のお手元に配付されております中教審の義務教育特別部会の審議経過報告のとりまとめに尽力いただいているところでございます。
 それでは、木村副会長、よろしくお願いいたします。

【木村副会長】 皆さんこんにちは。
 ただ今ご紹介していただきました木村でございます。座らせていただきます。
 本日はこの高知の地で、一日中央教育審議会を開催いたしましたところ、大変多くの皆様方にご参加いただきまして大変感謝を致しております。
 それでは時間もございませんので、さっそく本題に入らせていただきます。
 皆様方ご存知の通り、最近我が国の子ども達や教育を巡る状況につきまして様々な問題・課題が指摘されております。
 最近の国際比較調査によりますと、我が国の子ども達の学力は全体としては国際的に見て上位にありますものの、学ぶ意欲でありますとか、あるいは学習習慣等に非常に大きな問題があるという事が明らかとなっております。
 また、参考データにも出ておりますが、暴力行為やいじめ、不登校などの児童生徒の問題行動等、依然として憂慮すべき状況にあります。
 さらにニートやフリーターなどが急増いたしまして、若者の勤労観・職業観につきましても問題のある事が指摘されております。
 また、昨年の三位一体の改革の議論において義務教育費国庫負担制度の廃止、一般財源化について地方6団体から提案がなされ、昨年11月には三位一体の改革に関する政府与党の合意により、義務教育に関する教職員給与費の費用負担の在り方について、教育水準の維持向上を含む義務教育の在り方と併せて、本年秋までに中央教育審議会において結論を得るという要請がなされております。
 このような状況をふまえまして、中央教育審議会では本年2月に義務教育特別部会を新たに設けまして、義務教育の在り方について本年秋までに結論を得るべく、集中的に審議を行っている所でございます。
 この特別部会では、これまでに2回に分けて審議経過報告を行っております。その1が5月23日にまとめられました「審議経過報告その1」であり、子どもの学力の問題、教育内容、教師像、学校像、教育委員会の在り方、国と地方、都道府県と市町村の関係などについて部会で出された意見を整理しております。
 その後、義務教育に関する費用負担に在り方について審議を深め、その審議経過を「審議経過報告その2」として去る7月19日にとりまとめました。
 本日、この会を高知の地で持ちましたのは、この2つの審議経過を皆様にご説明し、これに対するご意見を伺い、今後の審議の参考にさせていただく為でございます。
 お手元に参考データの他、パンフレットと冊子を3種類お配りしてあるかと思いますが、本日は主として、この色刷りのパンフレットのほうを使いまして、これまでの審議の状況をご説明したいと思います。審議経過報告の本文は冊子の中に盛られておりますので、適宜ご参照賜ればと思います。
 それではまず、このパンフレットの表紙をご覧下さい。
 今回の中央教育審議会義務教育特別部会の審議は、これまでの中央教育審議会での審議を引き継ぎますと共に、昨年11月の政府与党合意を踏まえて行っているものでございます。ご案内の方も多いと思いますが、三位一体の改革の経緯について少しだけご説明させていただきます。
 昨年の三位一体の改革、即ち(1)国庫補助負担金(2)税源配分(3)地方交付税の在り方を一体的に見直す改革におきましては、3兆円の国庫補助負担金を廃止して、それを税源移譲する事が大きなテーマとなり、その中の1つの「国庫補助負担金」として公立の小中学校の先生方の給与費の2分の1を負担する義務教育費国庫負担金について、様々な議論がなされました。その結果、ここにあります政府与党合意が結ばれたものでございます。
 表紙の囲みの中、白い所です。ここに政府与党合意の抜粋を掲げてありますが、これを踏まえて義務教育特別部会では本年2月の設置以降、ほぼ週に1回のペースでこれまで23回の部会を開催し、総会を含めて約60時間の審議を重ねて参りました。
 表紙をめくっていただきますと、見開きの所に「新しい時代の義務教育を創造する」というタイトルが出てまいります。これが審議経過報告その1とその2を貫く、そして現在中教審が目指しているゴールであります。
 左の1ページでは、憲法26条に規定されております義務教育の理念を確認しております。部会では、義務教育の目的は、1つが一人一人の人格の形成であり、いま1つが国家社会の形成者の育成であり、これら2つの目的はいかに時代が変わろうとも変わらない普遍的なものであると考えております。
 部会ではこれらの2つの目的を実現するためには憲法に定められた機会均等、水準確保、無償制といった義務教育の根幹は国がその責務として担保する必要があると考えております。
 右の2ページをご覧下さい。
 今述べましたような義務教育の理念を実現する為には、義務教育の質の向上を計る事が必須であります。ここにはその際に考えおくべき視点を掲げております。即ち1つが、上のほうですが、質の向上を計る為の教育条件の十分な整備であり、もう1つが、その下の人材育成の基盤である義務教育の質の向上に向けての国家戦略としての取り組みであります。
 義務教育特別部会では義務教育の質の向上を計るための4つの戦略を打ち出しました。四葉のクローバーの4つに記載している通りであります。
 3ページを開いていただきたいと存じます。まず左側3ページの一番上が戦略1国際的に質の高い教育の実現をめざすという事であります。そしてその中心はそこにも書いてございますように、教育内容の改善であります。
 先ほど申し上げました義務教育の目的、即ち一人一人の人格形成と国家社会の形成者の育成を実現する為には確かな学力、豊かな心、健やかな体のバランスのとれた生きる力を育成する事が重要であります。
 現行の学習指導要領の学力観をめぐりましては様々な議論が提起されておりますが、特別部会では基礎的な知識技能を徹底して身につけさせそれを活用しながら、自ら学び自ら考える力などの確かな学力を育成し生きる力を育むという基本的な考え方は今後も維持していくべきであるとの共通理解を持っています。
 こうした課題を解決するための方策として、まず学習指導要領の見直しによる教育内容の改善が挙げられますが、これに関しましては最近行われた意識調査の結果、幾つか具体的な課題がある事が明らかになりました。意識調査の結果は緑色の冊子のうしろのほうに付いています。即ち、まず総合的な学習の時間につきましては思考力・表現力・知的好奇心や自分で考える力などを育成する上で、その役割は今後とも重要であるが、授業時数や具体的な在り方については再検討が必要であること、また、その学習が効果的に行われるよう、学校に対する支援策を充実すべきであること、全ての教科の基本となる国語力、科学技術の土台である理数教育については特段の充実を図るべきであるが、それらの授業時数の在り方については慎重に検討する必要があるという事などであります。また、その他、グローバル化に対応し小学校段階における外国語教育の充実も課題として浮かび上がってきております。
 これらの学習指導要領の見直しにつきましては、この義務教育特別部会における審議を踏まえまして、同じく中央教育審議会の教育課程部会において現在議論が行われているところでございます。また、審議経過では、丁度真ん中の2という所ですが、学習到達度、理解度の把握の為の全国的な学力調査の実施についても提言がなされています。申し上げるまでもなく客観的なデータを得る事によって指導方法の改善に向けた手がかりを得ることが可能となり、ひいてはそれが子ども達の学習に還元される事になります。なお、実施にあたりましては子ども達に学習意欲の向上に向けた動機付けを行うという観点も考慮しながら、学校間の序列化や過度な競争等に繋がらないような十分な配慮が必要であり、学力調査の具体的な実施の規模・方法・結果の扱い等についてはさらに検討をする必要があると考えております。
 3ページの真ん中、右の3番目です。
 こうした教育を実現する為の、教職員配置の改善もまた必要であります。まず、義務教育のナショナルスタンダードを達成する為の条件を整備するという観点から、国が学級編成や教職員配置基準を明確化すること、少人数教育の充実を図るための方策を検討する事が必要であります。その際、より弾力的な運用を実現するため、学校現場の裁量により柔軟な学級編成が可能となるような制度の検討も行う必要があります。具体的な教職員配置の在り方については現在、文部科学省が調査研究協力者会議を設けて検討を進めております。
 4ページへ参ります。戦略2、教師に対する揺るぎない信頼を確立するという点であります。教育は人なりと言われますように、国民が求める学校教育を実現する為には子ども達や保護者はもとより、広く社会から尊敬され、信頼される質の高い教師を養成・確保する事が不可欠であります。
 部会では優れた教師の要件として、強い情熱、確かな力量、総合的な人間力の3つを掲げております。このような要件を備えた教師の養成・確保の方策についても検討を行っているところであります。
 まず、教員養成の観点では、学校現場の様々な課題に即した実践的な教育を高度なレベルで行う教員養成の専門職大学院の設置について検討する事を提案しております。また、教員免許制については教師として必要な資質能力を確実に保証し、教師が絶えず緊張感を持って教育にあたる環境をつくりだすという観点から、教員免許更新制を導入する事について検討すべきであるとしています。
 また、免許の授与時に教師としての実際の指導力や適格性が十分に判断されるよう、授与の仕組みについても検討する必要がある事も提案しております。なお、これら専門職大学院の設置や免許更新制の導入につきましては、義務教育特別部会の審議をふまえまして、中央教育審議会の教員養成部会において現在具体的な検討が進められております。
 教員採用につきましては、人物評価の一層の重視、大学の成績や諸活動の実績の評価への取り組みなど、工夫・改善が必要であり、研修については初任者研修や10年経験者研修等について一層の改善・充実を図る事が必要であると考えております。
 学校教育や教師に対する信頼を確保する為には、教員評価の取り組みが必要であります。また、高い指導力のある優れた教師を位置付けるものとして、スーパーティーチャーなどのような職種を設け、他の教師への指導助言や研究にあたるようにするなど、教師のキャリアの複線化を図る事を検討する必要があります。
 次に、多様な人材の学校教育への登用についてでございます。優れた知識・技能と社会経験を持つ学校外の多様な人材を学校教育に積極的に登用していくという事は極めて有意義なことでございまして、企業等において種々の専門的な知識・技能を有する職業人など様々な人材に協力を得るという事も必要だと考えます。
 次が、その下の戦略の3です。
 現場の主体性と創意工夫で教育の質を高めるという点であります。まず、グリーンで書いてあります、学校自主性・自律性の確立についてです。
 学校が主体的に教育活動を行い保護者や地域住民に直接説明責任を果たしていく為には学校に権限を与え、自主的な学校運営を行えるようにする事が必要であります。具体的には、人事、学級編成、予算、教育内容等に関して学校や校長の裁量権限を拡大するという事であります。また、学校運営を支える機能の充実の為、現在の教頭や主任の他、管理職を補佐する権限を持つ主幹などの職を置くことが出来る仕組みについても検討する必要があろうかと思います。
 次に学校評価についてであります。
 学校教育の質の保証に対する保護者・国民の要求が非常に強く、学校評価システムの充実が必要であります。このため、自己評価の実施とその公表の義務化について検討すべきであり、公表された自己評価結果を外部者が評価する方法を基本として、外部評価の充実を図る事が重要であります。さらに、地域にひらかれ信頼される学校を作っていく為には、保護者や地域住民の意見や要望を的確に反映させ、それぞれの地域の創意・工夫を活かした特色ある学校作りを行う事が不可欠であり、学校評議員などの様々な活動によって保護者や地域住民の学校運営への参加を促進すべきであると考えます。
 次は教育委員会の制度の見直しについてであります。
 現在、教育委員会の現状につきましては、会議の形骸化、責任の所在の不明確化などの問題が指摘される一方で、政治的中立性や継続性、安定性の確保、首長への権限集中に対する危惧など、教育委員会の主張を認める意見も多く出されております。教育委員会制度の今後の在り方につきましては、現在の基本的な枠組みを維持しつつ、それぞれの自治体の実情にあわせた行政が執行できるような制度を、出来るだけ弾力化するとともに、首長と教育委員会の連携の強化や教育委員会の役割の明確化の為の改善を図ることが適当であるとの意見が多く出されております。
 次に、国と地方、都道府県と市町村の関係役割についてです。
 義務教育の実施にあたって、ナショナルスタンダードを設定し、それを達成する為の諸条件を担保するという観点から、国は学校制度の基本的な枠組みの制定や教育内容に関する全国的な基準の設定を行い、その上で、地方はそれぞれの地域の実情に応じ、主体的に地域の教育の質を高め、ローカルオプティマム、即ちそれぞれの地域において最適な状態の実現に努める事が重要であるとしております。その為には、国、都道府県、市町村それぞれが必要な財源措置を行っていく事が必要であります。
 次に、市町村への教職員人事権の移譲についてであります。
 現在、公立小中学校の教職員の給与負担と人事権は基本的に都道府県が持っております。これにつきましては、人事権は基本的に義務教育の実施主体である市町村が持つべきものであるなどの意見があり、教職員の人事権については市町村に移譲する方向で見直す事を検討すべきであるとしています。
 一方、現在の市町村の事務体制で人事関係事務を処理できるのか。離島や山村の市町村で人材が確保出来るのか。これらの点については十分に留意する必要があるという指摘がなされております。このため、教職員人事権は当面、全ての中核市に移譲し、その状況をふまえつつ、その他の市町村への移譲について検討する事が適当であるとされております。また、都市部と離島、山間部等を含め広域で一定水準の人材が確保されるような仕組みを新たに設けることが不可欠であるとの言及をしております。
 4番目です。確固とした教育条件を整備するという事であります。5ページになります。
 これまでの議論によって、部会では教育条件の整備に関して、ここに掲げてある2点、すなわち義務教育は国を通じての最重要事項であること、それから、義務教育に必要な財源を確実に確保する必要があること、この2点を前提条件として確認致しております。
 その上で2つ大きなテーマ、小中学校の教職員の給与に関する義務教育費国庫負担制度の在り方と、小中学校の施設整備に関する公立学校施設整備費負担金・補助金について議論をいたしました。
 まず、義務教育費国庫負担制度についてであります。この制度の背景にある基本的な考え方は、義務教育の根幹である機会均等、水準確保、無償制については国が責任をもって支えるというものです。具体的に申し上げますと、現在は公立義務教育小・中学校の教職員、いわゆる公立小中学校の先生方等の給与については、都道府県が負担する事とされていますが、国は都道府県が負担する経費の原則1/2を負担する義務を負うという、皆様ご承知の制度となっております。この義務教育費国庫負担制度につきましては、平成16年度に地方の裁量を拡大する総額裁量制が導入されており、これにより各都道府県の裁量幅が拡大し、外部人材の活用の活発化であるとか、あるいは少人数学級が42の道府県に広がるなどの好ましい状況の変化も起きております。
 次に、冒頭の政府与党合意で指摘された地方案についてご説明申し上げます。
 そこに細かい字で書いてございますが、これは地方6団体が平成16年8月にとりまとめました国庫補助負担金等に関する改革案であります。この中で、義務教育費国庫負担金は第二期改革、すなわち平成19年度から21年度までにその全額を廃止し、税源移譲の対象とする事とした上で、平成18年度までの第一期改革においては、中学校教職員の給与等にかかる負担金0.8兆円程度を移譲対象補助金とするという事になっております。つまり端的に申し上げれば、18年度までに中学校教職員に対する国庫負担を廃止し、その後、小学校も含めて全額を廃止しこれを税源として地方に移譲するという事であります。
 この地方案をふまえまして、義務教育特別部会ではこれからの義務教育費国庫負担制度の在り方について大きく3つの観点から審議を行ってきております。6ページのグリーンの所に書いてございます。即ち(1)教育の質の向上(2)財源確保の確実性・予見可能性(3)地方・現場の自由度の拡大の3点であります。このそれぞれの観点について地方6団体の委員の意見とその他の多くの委員の意見と対比したものが3の表であります。
 ピンクのほうが国庫負担制度の維持を主張する委員の主な意見。右側のやや濃い紫の所が一般財源化を主張する委員の主な意見です。
 まず、教育の質の向上の観点では、国庫負担制度の堅持を主張する委員からは、具体的な水準の維持・向上を図り、質・能力を備えた教職員を確保する為には、国庫負担制度は最も確実な財源保障制度であり、この制度により教育の質の向上が図られているなどの意見が多く出されております。一方、右側にありますが一般財源化を主張する委員からは、児童・生徒・保護者だけではなく、教職員の自覚が高まる、ひいては教師の質の向上に繋がるなどの意見が出ております。
 その次の財源確保の確実性・予見可能性の観点では、参考データというのが10ページにあるので後ほどご覧いただきたいと思います。ここにございますように文部科学省の試算によりますと義務教育費国庫負担制度を廃止し、相当額を個人住民税フラット税率により全額税源移譲したと仮定した場合、全国47都道府県のうち40道府県において税源不足が見込まれるという事になっております。
 この事から、国庫負担制度の堅持を主張する委員からは教職員人件費は国が進んで経費負担するものであり、法律に基づき国の責任で義務教育費が必ず措置されるので、確実性・予見可能性が高い。すでに一般化されている教材費等の例を見ると十分な予算が確保されていない状況にある事から、教員給与費が一般財源化されると教育費に使われる保証は無い。全体のやりくりの中で教育費の削減が生じかねない。地方交付税の総額が将来的に抑制される方向にあり、教職員人件費の増加が見込まれる中で教育費が確保されない恐れがあるなどの意見が多く出されております。
 一方、一般財源化を主張される委員からは、地方行政において最も優先されているのは教育である。法律に基づく指導や返還要求が可能である。更に、地域毎の不足額は地方交付税で適切に調整される、などの意見が出されております。
 3番目の地方現場の自由度の拡大についての観点では、国庫負担制度の堅持を主張する委員からは、教育財政で地方が拘束性を感じているのは国庫負担金とは関係のない他の法令の規定の問題ではないか、具体的にどのような法的規制に問題があるのか、その規制が国庫負担金と絡んだものなのかどうか整理するべきである。さらに、事務手続きの煩雑さという点では、一般財源化しても国庫負担の事務が地方交付税の事務に置き換わるだけであり、優先的に義務教育費国庫負担制度を廃止する理由にならないなどの意見が多く出されております。
 一方、一般財源化を主張する委員からは国庫負担金がある限り、文部科学省の統一的な基準に縛られる。これに対して、一般財源化されれば外部人材の活用等、地方の裁量が拡大するなどの意見が出されております。
 こうした、義務教育費国庫負担金の在り方の議論から発展して、義務教育費の財源保障の在り方に関しまして、部会では様々な意見が出されております。その中には、この一番下の所に4として掲げてありますが、(1)義務教育の経常的経費の全額を国庫負担、(2)教職員人件費の全額を国庫負担、(3)教職員人件費の1/2を国庫負担、(4)中学校に係る教職員人件費を一般財源化、(5)小・中学校に係る教職員人件費のすべてを一般財源化、(6)教育目的税の創設により地方の教育費を確保しつつ、地方の不足額を国庫負担、等の色々な案が出ております。これらの意見を含めて将来に向けて確実な財源確保に繋がる制度設計の在り方について、今後更に検討していく必要があろうかと思います。
 最後に、公立学校施設整備費負担金・補助金の在り方についてであります。
 この制度は、公立の小中学校などの義務教育諸学校の施設整備については、教育の機会均等担保と全国的な教育水準の維持向上を図る観点から、国は経費の一定割合を負担しなければならず、また必要な補助を行うというものであります。これにつきましても今後制度の維持の堅持を主張する委員からは国は公立学校施設の整備に目的を特定した財源を保証すべきである。現在公立小中学校の耐震化率が52パーセントに留まっている事から、耐震化は国の責任で進めるべきである、などの意見が多く出ております。
 一方、一般財源化を主張する委員からは、公立学校施設整備費負担金・補助金を廃止し、一般財源化すべきである。一般財源化によって計画的に耐震化が進むはずである、などの意見が出されております。

 以上、駆け足で中央教育審議会義務教育特別部会における審議の状況をご説明申し上げましたが、本日は是非、お集まりの皆様方から多くのご意見を頂戴し、今後の中教審での審議の参考としたいと考えておりますので、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
 以上で私の冒頭のご説明を終わらせていただきます。ご静聴ありがとうございました。

【司会・板東審議官】 どうもありがとうございました。それでは、木村副会長のプレゼンテーションを受けまして、義務教育のあり方につきまして、これから会場の皆様からご意見ご質問等、お受けしたいと思います。先ほど申しましたように、できるだけたくさんの方々からご意見を頂きたいと思っておりますので、お一人の発言時間を3分程度という事にさせて頂きたいと思います。ご発言は簡潔にまとめて頂きたいと存じます。
 (発言方法説明、略)

【参加者A】 はい。徳島県の中学校の教員をしております。手を挙げたら1番最初に当たると思ってなかったので、ちょっと緊張をしておりますけども。私は中学校の教員であるとともに3人の子どもを持っております。親の立場としても、教師の立場としても同じなのですけども、やはり一人一人の子どもたちに丁寧な指導であるとか、きめ細やかな接し方をしてもらいたい。
 私も教師としてそうやりたいし、保護者としてもそうしてもらいたいという気持ちがあります。そうした意味で1クラスの学級の人数というのがより小さくなるという事が非常に大切だと思っております。日本の場合では、他の国に比べまして、非常に1クラスの人数が多い。その中にあって、学力的にはこれまで高水準を保ってきたという点があると思います。徳島県では35人以下学級というのを小学校1年生・2年生を対象にして、ここ2年間で取り組んで来ております。
 先程からのお話の中で、義務教育費国庫負担制度がなくなった場合に、そうした事がはたして徳島県独自で考えていく事ができるのかという点で非常に不安に思っております。義務教育費国庫負担制度がなくなっても、教育を最優先課題にしている市長が多いから心配ないというふうなお話がありましたけども、実際の所、徳島県においては、一般財源化された教材費の中で、全国的に見て、非常に措置率が低いと。非常に低いと言いますけど、実際の所は、徳島県は最下位な訳ですよね。そういう点を考えると、一般財源化されたものが全て教育に回ってくるのかという点においても、非常に私は不安な気持ちになります。
 行政の方にしても、教育に対する思いは同じだと思いますけど、この四国の場合にどの県を取ってみましても、非常に財政的に厳しい状況にあります。そうした点で、やはりこの国庫負担制度の中で保障されてきたという事は、特に四国4県のような所の場合には大きな意味を持っております。やはり、はじめに申し上げましたように、一人一人の子どもに平等にということは、教育の機会均等という点では絶対に守らなければいけないと思っております。現在、この中央教育審議会の中で熱心に議論されているようですけども、国の責務としてこの制度を絶対に守っていってもらいたい。それこそが、一人一人の子どもの未来を保障するという事に繋がっているというように考えております。以上です。

【参加者B】 はい。高知県の教職員です。私もですね、徳島の方が終わりの方で言われたように、義務教育費国庫負担制度のあり方について意見を述べたいと思います。私は、義務教育費国庫負担制度の堅持の立場です。
 なぜかと言いますと、今、木村さんも言われましたように、この義務教育の理念の所の最後の端に書かれてある義務教育の根幹に関わる事だという事で、堅持の立場です。私はこの問題が出て来たのが、教育論議から出て来たのではないという事を今木村さんから聞きました。つまり、三位一体の改革の問題からこの問題が出て来ているという点です。そして、三位一体の改革の問題は地方の財政を立て直すというよりも国の為の財政を立て直すという点にあるととらえています。その事をこう確信したのは、なぜこの義務教育費国庫負担金が削減される対象になったのかという所です。これはご存知のように、実は義務教育国庫負担金が補助金の中で一番高額だからです。ですから、三位一体の改革の時から真っ先にこの義務教育費国庫負担制度が削減の筆頭に挙げられておったという点です。それから、先程ですね、審議の報告を少し読ましてもらいましたが、一般財源化をした方がいいという人の中に、こういう文書がありました。「地方公共団体によっては国庫負担金に見合う税収が税源以上で確保しない所がある」と。そういう所に対しては、地方交付税によって補う事ができると、こういう発言をされています。
 しかし、それは本当でしょうか。私が思っているのは、三位一体の改革の中で政府の方がこういう発言をされています。これはもうはっきりしています。それはですね、不足財源を補うはずの地方交付税も、財源保障機能を縮小していく。こういう事を発言している訳ですよね。つまり、交付税の削減が政府の方では決定されているという事です。
 そして3点目ですが、一般財源化された場合、本当にこれは保障されるでしょうか。この点を私は二つの例で訴えたいと思います。一つの例は、よく言われるのですが、旅費とか教材費が1985年にそれまでの国庫負担金から一般財源化されました。その実態はどうなっているでしょうか。これははっきりします。それは86パーセントしか与えられていません。つまり、保障されていないという事です。そして、2点目の問題として、去年、公立保育園の運営費が一般財源化されました。そして、その結果どうです。やはり、報告されています。厚生労働省自身が調査をしてびっくりしています。それは保障されてない。こういう事がありました。そういう点からですね、私は義務教育国庫負担制度の堅持の立場、これを大いに主張したいと思います。どうもありがとうございました。

【参加者C】 高知県の高知市の小学校の教員をしています。発言します。まず、学校現場で勤務している中で、特に小学校1年生に入学してきた段階で子どもたちの学力の2極化がここ数年すごく顕著に出て来たと思います。子どもを担任していまして、保護者の家庭状況がこの数年の国のいろいろな三位一体の改革などいろんな取り組みによって、親の所得が子どもの就学前の家庭状況にかなりの部分の影響が来ているように思います。その部分で、ちょっと学校現場の教員として気にかかる部分としまして、文部科学大臣の発言、どうも競争とか、伸びる子を伸ばすという発言がすごく目につくような気がします。やはり、義務教育という小中学校の子どもたちを伸ばすという点で、厳しい子ども、家庭的いろんな部分の背景で十分出来ていない子どもの底上げをする事こそが、公教育としての責任を果たす事だと思いますので、そういう部分の議論もぜひ国の部分でして頂きたいと思います。
 もう一つは学校現場。いろいろな原因はありますが、本当にここ10年ぐらいで多忙化しています。正直にいいまして、その部分で総合的な学習の時間について教職員の意識が二つに割れているのじゃないかと、私自身は思っています。みんな、教職員、子どもと接していく中で、総合的な学習の時間を進める事によって、地域・保護者・いろんな方に密着して、今までの一律の教育ではない、各学校ごとの教育で子どもの目の輝く姿とかいろんなプラスの部分を先生それぞれが感じて来ている部分があると思いますが、その裏側の部分で、いろいろな話し合いをしたりとか、事前の打ち合わせをしたりとか、学年で相談したりとか、そういう別の部分での重荷が掛かって来ているように思います。やはり、新しい政策を打つにはやはり新しい人の配置をするとか、行政としての別の部分の支援もして頂かないと、各学校いろいろ多様な保護者とかいろいろな方の意見で結構、全部の意見を尊重しながら、より良きものをする為に工夫しています。そういう部分の議論もぜひお願いしたいと思います。それから、それに関係する部分ですが、どうも教職員という仕事に対しての夢が今薄らいでいるような気がします。マイナスの報道がされたり、なんかこの仕事がしんどいという部分がすごく出ていますので、やはり、子どもっていうのは日本の将来を作る大事な要素ですから、その子どもを教育する仕事に夢が持てるように教員に対しての政策をお願いしたいと思います。そういう部分でやはり国の一定のユニバーサルデザインはどうしても大事な部分です。義務教育費国庫負担金、高知県が一番影響を受けていますので、ぜひ、堅持の方でお願いします。どうもすいません。時間が経過しました。

【参加者D】 香美郡のPTAの者です。PTAとして、子どもたちの命の安全を守る為、公立学校の整備について国が財政支援を行うべきだと思います。公立学校施設の耐震化率はまだ50パーセント程度に過ぎない状況にあって、他の公共施設に比べてもなかなか耐震化が進んでおりません。親にとっても、社会にとっても未来を託す子どもたちの安全が確保されていない状況は大変心配であります。耐震化などにより、子どもたちの安全化を図る為には積極的な国の財政支援が必要です。仮に学校施設の整備という特定の目的の為に財源保障をしている負担金・補助金が廃止され、必要な経費を全て地方が賄うとなると、特に財政規模が小さな自治体において、経費が措置できなくなるなど、耐震化が一層進まなくなる恐れがあります。子どもたちの安全の確保のような基本的な条件の整備は何よりも全国等しい保障をされる事が必要です。PTAとしては地域間の耐震化の格差が生じる事のないよう、全国的立場より国が責任を持って公立学校の施設整備に必要な財政支援を行う事を強く要請します。以上です。ありがとうございました。

【板東審議官】 どうもありがとうございました。ただいま、4名の方からのご発言と致しまして、義務教育費の国庫負担制度に関するご意見とか、あるいは学力の2極化などのご意見、あるいは総合的な学習の問題・教員の仕事に対する問題、それから、公立学校の耐震化などに関する問題のご指摘がございました。これらにつきまして、委員の方からご意見を頂きたいと思います。それでは、まず、山本委員の方から順番にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【山本委員】 はい。今、一番最後に出てきました耐震化ですが、これはあまり実感が無い人も多いかと思いますので、ちょっと申し上げます。私は、平成に入ってからずっと学校の施設の関係の調査・研究をする所に関わってきまして、いろんな所に伺ったりしました。それで、今のお話はその通りだと思います。ただ、それを言ってもあまりピンと来ない。地震が来ると大変ですけども、まず念頭においておかなければならないのは、学校はいざ何かが起こった時に避難場所になるという事でございます。
 ですから、それを生活の中に位置づけて、生活に必要ないろんな物をそこにも備えておくという、そういう事と絡めて耐震化を進めた方がいいと思います。具体的に言いますと、新潟の中越地震がございました。その後、今申し上げました会議で長岡の市長さんをお呼びしてお話を伺いました。一番最初におっしゃった事は、「私の痛恨事は学校の体育館に情報関係の機器を入れておかなかった事」だそうです。つまり、皆さん、避難されてその後、連絡を取る。或いはテレビを見る。しかし、何も無い。これが市長として一番悔やんでも悔やみ切れない所だとおっしゃっていました。ですから、そういう事と結びつけて考えて進めて行くというのがいいのかな、と思います。

【渡久山委員】 そうですね、今多くの教職員のご意見がございましたが、私もかつて現場で教職員をしていたものです。そういう意味では今日お伺いしましたご意見はもっともだと私も思っている所です。ですから、中央教育審議会においてもですね、私は義務教育費国庫負担制度については堅持をすべきだとこういうふうに思っている訳です。
 教職員がもっとも子どもたちの教育活動に対して、安心してその職責を全うするという事は極めて大事な事でございますので、そういう意味では国が義務教育については財政的な保証をきちんとすべきだという意見を私も持っている訳です。それから、先程、どなたも言われたのですが、実際統計的に見ますと、実は各県の基準財政需要額というのがあります。これは国が各都道府県へ予算を交付税の配分をする時の基準ですね。これが各県におけるそれぞれの省庁からまとめて、総務省に行って、総務省から各県に行く予算なのですね。
 例えば、教材費というのがありますね。国からは文部科学省から一定程度、学校規模あるいは学級の数、児童・生徒数を含めて基準財政需要額がいくらだというのが各県に渡るのです。しかし、実際に学校には行っておりません。先程、徳島といわれたので徳島というのですけども、やっぱりそれがされていない。という事は、国からは各都道府県に来ているのですけども、流用されて学校には来ていないのですね。旅費もそうなのです。図書費もそういう事が起こっています。そういう事を考えてみますと、きちっとした国の財政が保障すること。もう一つは国が出した予算がきちっと学校現場に配分されて使われているという事ですね。これは非常に大事な事だというように思います。これは皆様から意見があった通りだと思います。それが一つです。
 もう一つは、発言の中にも非常にございましたけども、やはり、義務教育の教育費を本当にどう考えたらいいだろうか。先程、木村副会長からもございましたけども、私たちは憲法が保障する子どもたちの学習する権利、あるいは教育を受ける権利を、これは国あるいは都道府県あるいは市町村が、きちっとした、ようするに教育行政の中で保障していくという義務があると思います。そういう意味では非常に大事な事でございまして、しかし、その義務教育の内容を完全に保障するには教育条件をきちっと整備しなくてはいけません。この教育条件の整備のもっとも大きな要素というのはなんと言っても財政的なきちっとした保障でございます。そういう意味では、先程から意見が出た事に対して、私も賛成でありますし、やっぱり学校現場は教職員を中心にしていろいろな教育活動がなされていて、それがひいては日本の子どもたちの学力あるいや人格の完成に大きな影響をおよぼしている。こういうふうに考えています。

【小川委員】 また後でもいろんなお話しする機会があるかと思いますけども、今の4人の発言の中でちょっと感じた事を私からも発言させて下さい。4人の方のお話では全て負担金は堅持すべきだというふうなご意見でしたので、私の方から改めて、その負担金制度の必要性という事をこの場ではお話しする必要はないかと思うのですけども、実は今日こちらに来まして、今日の高知新聞を読んだのですけども、その28面に教育特集がありまして、この負担金制度の特集をやっておりました。で、その中で気になったのが、橋本知事さんが負担金制度について少し誤解されている発言をしていまして、負担金は国の考え方によって使い方が制約されているので、地方の判断である程度自由に活用できる一般財源にする、負担金を廃止して一般財源がいいのではないかという発言をされているという事が書いてありました。
 この場で、改めて負担金制度の堅持という話しを私の方からするつもりはなかったのですけども、橋本知事の発言もありますので、私の方からこれは違うという事だけ一つ最初に言わせて下さい。今の負担金制度の下で教員の配置とか学級規模を地方で自由に決めることは、実は全部出来ることなのですよね。確かに数年前に今の負担金制度では不自由な仕組みはあったのはあったのです。例えば、中央教育審議会の審議の場で片山知事さんがこういうふうな例を話されました。
 鳥取県は数年前に小学校1年生・2年生で県独自の予算を使って30人学級を導入したんですけども、その30人学級を実現する為の予算をどうやって捻出するかという事でいろいろ考えた時に教員の給与を一部カットして、そこで5億円のお金を捻出して、それを使って30人学級を実現したという話をされました。で、その時に教員給与の国からの1/2っていうのは実額1/2ですので、つまり鳥取県の方で教員給与の5億円を少人数学級に使う為にカットしたという事は、つまり5億円県の支出が減った分、国の方からの負担額も減るという事ですから、総額して10億円ぐらいのお金が給与分については削られた。そういった従来であれば、少人数学級を何とかしようという事で教員の給与を県の努力で減らした。その分がまた国の補助金として減らされてくると、これはやっぱり2重に問題だという事で、何とかならないかという話だったのですね。
 こういうふうな不都合な話があったという事で、文部科学省でも総額裁量制という仕組みを導入して、教員給与を減らしてその他の政策に活用しても、国の負担金が減らないように、実額きちっと1/2を保障する。で、その国から来たお金をですね、どう使うか。例えば、教員の給与を減らし、多くの人数の教員数を対応するとかいう、そういう使い方を自由にするという事、総額裁量制度でもって、可能となりました。どうも地方6団体、特に県知事さんの間ではそういうふうな今の制度の改善によって、地方の自由度がすごく拡大したという認識が無い方もおりまして、運用が数年も続いているにもかかわらず橋本さんのこのような発言があるっていう事はやはり、これは事実誤認だという事だけは少しここで指摘しておきます。今の負担金制度でも自由に地方ができるんだという意味で、負担金制度という、国の義務教育の根幹の所の財源保障をした上で地方の義務教育について様々な自由度を拡大している今の制度は、一般財源化と比べたら、遥かに義務教育を安定的に支える仕組みだと思います。

【木村副会長】 今の4人の方のご意見、ほとんど共感する事が出来るものばかりであります。昨日、私は参加しませんでしたが、水戸でも一日中央教育審議会が開催されまして、議論がただ今のような事に集中しまして、例えば、総合的な学習の時間とかそういう事についての議論が出来なかったようですので、3番目にご発言して頂いた小学校の先生が総合的な学習の時間の事にお触れになりましたので、これについて少しコメントさせていただきます。
 私は、中央教育審議会が、総合的な学習の時間を提案した時の委員でありました。総合的な学習の時間の考え方がよいという事をおっしゃった旗頭は、実は江崎先生です。私も、総合的な学習の時間の考え方そのものには非常に賛同をいたしました。多少外国の経験がある者からしますと、日本はややも、教科中心主義に陥っているのではないかという印象をもっています。それぞれの教科をバラバラに教えてしまう。私はかつて、研究者でしたが、外国の研究が自分の領域に捉われない実に柔軟な発想をすることに度々驚いた経験があります。そんなことから、総合的な学習の時間を私も推奨しました。総合的な学習の時間というのは教科にとらわれない、英語で恐縮ですが、インターディシプリンということだと思います。ディシプリンというのは教科で、インターというのはその混ぜたものですから、その教科をまたがるような勉強をしてもらおうという、こういう事なのですね。で、それだけに、先程のお話のように非常に先生方に労力がかかる。それは理解できます。
 本来、文部科学省は、こういう新しいプロジェクトをやります時には、必ず、実験的な段階を踏むのですね。で、ご承知だと思いますけども、例えば、6年制の中高一貫教育です。あれは宮崎県の五ヶ瀬で実験を始め、さらにいくつか実験をやって、踏み切ったのです。地域運営学校もそうですね。東京の五反野小学校、非常に意欲的にやっていました。こういうとこで実験的にやってもらって、それで本格的な制度を導入とこういう事だったのですが、総合的な学習の時間については、それをやらなかった。それが問題を起こした一つの原因になっています。総合的な学習の時間をやめてしまえという、中学校の先生の反応が非常に厳しいようですけども、やめてしまえという説には私自身は反対です。やっと、日本の中にそういう教科をまたがるような勉強が出来る仕組みが出来たのです。そういう教育を受けた子どもたちが育っていけば、外国でも研究者として、技術者として、あるいはその他の事務職として太刀打ち出来るような人材が出来てくるのではないかと非常に期待をしております。ここは、私は歯を食いしばってでも頑張っていくべきだと思っています。ただし、どうしても先程ご指摘がありましたように、人的支援、財政的な支援、さらには例えば全国でうまく行っているような事例、いわゆるグッドプラクティスを集めて、全国に広めていく。そのような事は必要だと思います。しかし、私はここで一気に後退してしまうという事に対しては非常に反対であります。

【板東審議官】 どうもありがとうございました。それでは会場の方からまた、ご意見を頂きたいと思います。いろんなテーマにつきまして幅広くご意見を頂ければと思います。ご発言ご希望の方、また手をお挙げ頂きたいと思います。よろしくお願い致します。

【高知市長】 高知市長の岡崎でございます。大変お世話になります。また、高知で開催させていただきありがとうございました。本日は、国庫負担金堅持一色の議論になるのではないかという事で、ここは私の地元でございますが、ほとんどサッカーでいうアウェーの試合をするつもりでここに来たのですが、市長会としてもまた地方6団体としても一般財源化を通しておりますので、少し意見を述べさせて頂きたいと思っております。
 一つは、先程も三位一体の改革での今回の国庫負担金をどうするかというお話が出ましたが、まず原点に少し帰りますと、三位一体の改革はですね、いろんな関係で、いわゆる補助金のお金をどうするかという、金目の話の所にどうも論点が行き過ぎていまして、一番大事なのは地方分権型社会を築くという、そこからがスタートでございますので、やはり地域で身近な仕事は県や市町村の地方自治体の判断で、継続的に、かつ、ある一定の活力があるような運用を目指す事が、本来の目的でございます。残念ながら、他の補助金も含めまして、三位一体の改革が残念ながら財源の移譲だけの話になりまして、本来の地方分権から少し外れた分で、論議がされているのが残念でございます。ただ、ここは我々地方自治体にしても、少し責任がある所でございまして、何故かと言いますとですね、3兆円税源移譲を我々としては要望しております。最終的には、第1期・第2期と合わせまして、8兆円をですね、地方に財源を移譲してもらいたいという事で要望してございますが、地方がこの8兆円の目指す税源移譲後、どういう分権社会、また教育におきましてもどういう分権的な教育の姿が描けるかというビジョンを、残念ながら地方自らまだ示しきれていないというのが我々としての反省点でございます。で、その為にどうしても国庫補助負担金を残すのか、一般財源化かという、少し大事な本論の部分から外れた部分でされているのが少し残念に思います。地方分権型社会を目指すという所が一番の柱でございますので、そこはご理解頂きたいという事でございます。それと、高知市の話を少しさせて頂きますと、昭和50年代にですね、従前の市内校、ほとんど木造校舎でございましたので、老朽校舎を一気に建て替えるという事で、これはやっぱり国の補助金では一挙に建て替えられないという事で、1年に3校以上建て替えて行きましたので、国に認めて頂いて学校建設公社という手法で全面的に単年度の内にずっと集中的に建て替えた時がございました。これはやはり今の制度の中ではできないことでございまして、やはり一般財源化を目指しながら、こういう地方の実情にあった形で、分権型に近いような形でいろんな施設整備や教育を目指してまいりたいという趣旨で主張しております。議論が一方的になってもいけませんので、少し反対の意見を述べさせて頂きました。ありがとうございました。

【参加者F】 あの、初めて女性の立場からも発言させて頂きます。徳島県の中学校で社会科教師をしていますものとして、今回の義務教育国庫負担金制度を堅持の立場から発言させて頂きます。まず、文部科学省の方は今、中学校の保護者が負担する教育費、月額どれくらいと思われているでしょうか。給食費を含めて、1万円を切る事はありません。ある時には、1万4・5千円の学校が多いです。そういう中で何故こういう事になったのか。これは徳島県に限ってはやはり3割自治という言葉が一時期ありましたように、地方財政が逼迫しておりまして、現在も約9千億円近くの地方債を抱えている県です。そういう中で本当に私たち教職員の現場におきましても、地方財政の逼迫という事がまず大前提と掲げられています。
 そういう状況の中、本当に先程、木村さんの方からありましたように、総合的な学習の時間の充実、これを進めて行く。この事について私は賛成の立場なのですけど、本当にこの総合的な学習の時間が出来てから様々な取組みが出来るようになりました。しかし、総合学習の一つの取組みであります、中学校でありますと修学旅行。この修学旅行は総合学習、例えば徳島県でありましたら、平和学習をメインにしました修学旅行の取組みをするのですけども、この修学旅行費が危機に瀕しています。それといいますのもやはり地方財政の逼迫、これが理由です。それで、就学援助制度を利用している家庭がどんどん増えている状況もあるのですけども、その背景にはやはりグローバル化による本当にこう両極化、そういう中で本当に離別とか、そういう家庭が成り立っていない。本当にお母さんだけが働いている家庭とか、そういう中でやはり就学援助が必要となっている家庭が多いのですけども、その上限を設定しています。そうすると今までは保護者が保護者と生徒によって決まっていた修学旅行先が本当に上限の設定によって限られてきます。そうすると、今まで旅行の中の費用でまかなわれていました昼食代も自己負担になってきます。特に学校現場でやんちゃな生徒がガラスを割りますが、そのガラス代金も故意ではないかと問いつめられて、結局自己負担になっています。そういうふうな中から本当にこう教育の機会均等を目指す事が実現出来るのだろうかというのが今の状況です。このことに危機感を持っています。そういう中で本当に徳島県で教育を受けるのとその他の県で教育を受けるのとで本当に格差が出たり、ここに義務教育の根幹であります機会均等・水準確保・無償制、これのどれ一つとして本当にこのままで確保出来るのかという事についてすごく危機感を持っています。ぜひとも、義務教育国庫負担を堅持して頂けたらと思っています。以上です。

【参加者G】 失礼します。先ず2点、お話をさせていただきたいという事で、1点目は、もう私も国庫負担堅持という事で申し上げたいと思っております。
 先ほどから徳島の状況をご承知置きいただいたと思いますが、人口が下から数えると3番目しかございません。しかしながら私ども徳島の人間がこうやって来られるのは、お隣であるという事で非常に高知に近い訳です。山を越えれば徳島なのですが、その山間部は非常に山が深くていわゆる山間僻地の学校がございます。財源の少ない徳島県に非常に多くの山間僻地で、例えば3人の子どもに対して4人05人の教員が関わって指導が出来ている。
 また、その学校だけではなくて小学校というのは地域のキーステーションといった役割を果たしているのは、こういった国の支援、国庫負担というものがあってこその我々の教育活動ではないかと思っております。
 また先ほどの木村先生のお話の中の最後の、義務教育費国庫負担制度について3つの視点から論議されていますという所で、新聞も拝見致しておりますがどうしても全国知事会のご意見というのが非常に挙げ足取りのような、ここを一つとってみても、税源移譲され、地域ごとの不足額は地方交付税で適切に調整されるとある。
 ただでさえ少ない税源移譲をされても、徳島の場合、それを補填するだけのものが果たしてあるのか。今の日本の状況で考えても絶対に無理であるというのは、私のような素人でも考えられる事でございます。ですので、非常に心配しております。
 以上でございます。
 もう1点は、時間の許す限り申し上げたいのですが、今この場所では挙がってはいなかったと思うのですが、特別支援教育というのが今後導入されると。障害児教育あるいは特殊教育から特別支援教育に変革されるという形で進んでいるとは思いますが、どうも進み具合が一筋縄ではいかないっていうのは色んな方面から、あるいは色々な事からそう言った訳なのですが、総合的な学習の時間が入った時にも現場は、これはマイナス面から申しますと混乱致しました。
 新しい指導計画とか、あるいは授業実数、そして週5日制も伴いました。しかしながら特別支援教育というのは本当に、私、小学校でございますが教育活動全般に関わるものなので、そういった大きなものが今後どういった風に変わっていくのだろうか、あるいは導入されていくのか大変心配しておりますので、そこの所をもしよろしかったらお話いただけたらと考えております。
 以上でございます。

【参加者H】 高知市PTAの者です。
 保護者の立場からしますと、義務教育が良くなってくれるような改革を今回望んでおります。良くなるものであれば担い手は国でも地方でもどちらでもイイのではないかと考えております。
 ただ、これだけのここまでの議論の中でよく分からないものとして、今回の議論が地方の提案を飲むか飲まないかになっている事、また子ども達を預ける身であるわたくし達から見ますと義務教育の在り方をそのような議論だけで決めて良いものか、疑問に思っています。
 また、地方の提案はどのように義務教育が良くなるか示されていません。地方の自由になれば良くなるというので、ただ地方に任せろと言われても本当にそうなのかまだ分からない所があります。
 逆にこれまで地方に任されてきました図書費や教材費がきちんと使われていない事に非常に衝撃を覚えています。
 国から地方に移りましたら地方の自由だと言って使われなくなったのは非常に問題です。義務教育のような重大な問題をとにかく地方分権が重要だからと言って決める事だけは反対をしたいと思います。義務教育改革は良くなるかもしれないという思いや考えだけではダメだと思います。確実に財源が教育に使われる仕組みにしてほしいというのが率直な感想です。
 以上です。

【板東審議官】 どうもありがとうございました。今の4人の方のご意見でも義務教育費をめぐる賛否、両方の立場からのご意見が出ておりますし、重要なポイントについても幾つかご指摘をいただいております。また、特別支援教育のお話についてのご質問などもございました。こういう事を含めまして、また委員の先生のほうからご意見をいただければと思っております。
 じゃあ、今度は順番を変えまして小川委員のほうから宜しくお願いいたします

【小川委員】 では今の発言と、後、前の1番目か4番目の発言で何人かから少人数の話とか特別支援教育の話がいくつか出ていますので、それに関係して少し教職員定数の改善とか少人数学級の話も含めて少し、2点ぐらい私のほうから簡単に意見を述べさせていただきたいと思います。
 1つは、また負担金の話で恐縮なのですけども、先ほど前の委員のほうから一般財源化の立場で三位一体改革の議論が負担金を廃止するか廃止しないかとか、税源移譲する為の財源をどう確保するのかというようなお金の話に収斂されてて、議論が三位一体改革の核心になかなか触れられていないという話を少しされたのですけど。
 私達、中教審の場で負担金制度を堅持する多くの委員の方も、三位一体改革の必要とか地方分権の必要という事は皆さん共通に認識されていると理解をしています。
 私も地方分権の強い改革派だというように自負しています。しかし、今の三位一体改革とか分権改革で議論する際にやはり重要なのは、地方における自由度を拡大するという事と、その自由度を拡大する事で生ずるであろう地方間の格差というのをどう是正していくかという課題を同時に考えることが必要であると思っています。
 自由度を拡大する事と、自由度を各地方が最低限平等に権限を活用して地域独自の義務教育を作り出していく、そういう風なものをどう両立して保障していくかというような事だと思うのです。
 負担金堅持派というのは、分権というものを推進しながら、分権というのは必ず地方間の格差というものを大きくしていきますので、最低限の全国共通のミニマムを全国どこでもキチッと確保しましょう、その仕組みはやはり負担金制度だと考えています。私達は、分権と全国どこでも共通のナショナルミニマムを維持するというその両立を図る制度デザインとしては、負担金制度のほうがより良いものだと評価しています。
 残念ながら地方交付税とか一般財源化という主張をされている地方6団体の方は、そのへんの所の主張が私達にはよく分からない主張を展開されていまして、とにかく一般財源か交付税、今の交付税が継続すれば地方間の格差といのは必ず是正されるんだという、交付税が今のまま今後とも継続するというのは信じてくれと、総務省も言っているんだから信じなさいというのが、地方6団体側の主張のように私には受取れます。
 そのへんの説得性という点では、地方6団体の方の主張はどうも不足しているのかなと感じています。
 2つ目は、少人数と特別支援等々の話ですけれども、中教審の場で少人数学級とか少人数指導という事が子どもの丁寧な学習保障をするという事とか、総合的な学習の時間で目指されている一斉授業から子ども主体の学習への転換というふうな、学習観の転換などを図っていく為には、やはり少人数指導とか少人数学級という事を拡充強化するのが必要だという事で、中教審で議論されまして、それの具体的な施策を来年度から第8次改善計画としてスタートさせたいということで、その具体的な中身を別の組織である協力者会議でもって今検討しております。
 私は今、そのメンバーの1人ですし、また渡久山委員もメンバーとなっております。そういう中で今、少人数学級とか少人数指導の来年度から実施の色んな計画を議論していますけども、その中で、例えば、今度は特別支援の教育の話もありますし、総合的な学習の時間を進めていくためにはそれをサポートするようなコーディネートの先生が必要ですし、図書館の様々な活用というものをもっと積極的に学校でやらなければならないと。
 で、こういうふうな様々な活動を支えていく為のサポートの先生、ないしは特別支援教育などをきちっと中心的に担っていくような先生方も、新しい定数の中に組み入れ込んで学校が全体として教職員の連携のもとで運営できるような仕組み作りというのが必要ではないかという事は、教員定数改善の協力者会議の中でも話されています。まだ審議の途中ですので、どのような教職員配置が考えられているかという事は、ここでは具体的には話出来ませんけれども、今言ったような様々なサポートの仕組みというものを、出来れば次期の改善計画の中では具体的にやっていければという事で、今審議を進めています。

【渡久山委員】 教材費が流用されているのは徳島だけではないのです。四国各県は全部悪いのですよ。これは非常に残念な事なのですが、徳島・香川・愛媛・高知という順序に良くなっている。しかし、それでいても高知も6割を割っているのです。ですから、それだけ地方財政が非常に逼迫しているものですから、流用できるのはもう出来るだけ流用しなくてはという、非常に苦しい立場にある訳です。そういう事は理解できるけれども、何故教育費かとこうなるのです。
 先ほど徳島の女性の方が言われましたが、例えば修学旅行費の問題。確かに子ども達出来ない。あるいは給食費の問題などもそうですね。学級の中で給食費を払えない子ども達です。ただ私達も実際そうですが何回か教員が立て替える事が出来るんです。しかし、いつか払ってくれるだろうと期待するけれども払えない。そうなると子どもにもう給食を食べるなと言わざるをえない。例えば修学旅行だって行かさないように欠席させざるを得ない。そういう事も実際学校現場ではあるんです。ここには教職員の皆様がいらっしゃるから体験された事はありますね。
 ただ、例えば学力問題でよくフィンランドは良いし、日本は悪いとか言われますがフィンランドの場合は保護者負担というものが全くございません。国と地方で全額、教材費・教育費は負担されているのです。ですから非常に財政の困難な所はそれだけ国が多く負担していますし、また豊かな所では国が半分以下だというようにしているんですけども、保護者負担が無いのです。そこまで徹底してやっているのです。
 それから、ご存知、韓国やフランスなどの場合は教員の給料は全部国庫負担です。国が給料を出しているのです。そういうような事を考えますと、日本の場合は二つ問題があると思います。
 ひとつは、使い勝手の問題があります。これは地方の財政の問題等もあります。例えば公立設備整備費負担金・補助金です。私は中教審では、もしも使い勝手が悪いのだったらもう少し使い勝手が良くなるように公立学校施設の整備に目的を特化して総額裁量制みたいな形にしてやればどうだろうというような主張もしているのですが、果たしてどうなのか。
 こういう事についても考えていかなくてはいけない部分はあると思います。
 もうひとつは、先ほどもありましたけれども県による格差というのは先ほどのように実際使われているとか使われてないとかいう、あるいは流用されているされていないというのもありますが、もう1つは今日出ている資料の中の10ページにもありますように、例えば税源が移譲され、住民税をフラット税制でやっても、たった7県ぐらいがプラスになって後は全部、実際の財政的には苦しくなるんです。
 ですからそういうように、税源が移譲されるというのはどういう税源がどのように移譲されるのかという事の内容によっても、各自治体というのは非常に困ってくる訳です。
 実際これを移譲した場合に東京都を含めて7つの都道府県しかプラスにならないのです。そういう格差が歴然として出てくる。ですから先ほどの言葉のように、教育の機会均等をどう守るのか。
 それからもう1つは、無償制という義務教育の考え方がどれくらい日本で実現するだろうか。今授業料が無償なのですけども、これをもっと多くの教育に関わる費用を無償にしていくという事が、日本の国を支える子ども達、あるいはこの一人ひとりの子ども達の人格を非常に豊かに形成していくという意味で、国がその事についてきちんと補償してくれると。他の国では段々そういう事が増えているのです。例えばイギリスでも国の負担というものが段々増えてきているのが現状なのです。アメリカでもそうです。
 ですから、どの国でも多くの国が義務教育については国の責任で財政負担をしていこうという方向性にあるのです。ですから、私は日本もそう考えるべきではないかという立場にいるわけですけども、どうでしょうか。

【山本委員】 それでは3つ程。
 まず1点ですが、先ほど市長さんが分権型の社会を作る、理解をして欲しいとおっしゃいました。私も小川委員もそれは十分に理解しているつもりなのですが、ただ、市長さんのほうでおっしゃって下さった正にその点なのですが、教育のビジョンが示しきれていないと非常に感じるところでございます。
 私は山本です。中教審の座席では、となりが山本市町村会会長さんです。こっちが、もう1人おいて増田さんです。一所懸命私、市長の話を聞いているのです。もちろん、岡山の知事さんの話も聞いております。やはり一番欲しいのは、教育論から組立てて「だからこうだ」というのが欲しいのです。今、教員の給与は50対50ですよね。これをどうして地方へ移していかなくてはいけないのですか。
 教育のこういう事があるからこうしてほしいというのなら分かるんです。そうではなくて、お話で一般財源化からくるだけですと、我々は具体的な現場の事を思い浮かべてしまう訳です。
 私はかつて、まだ今のように福祉がブームになる前に福祉の大学が日本で2つしか無い時に第3番目にできた大学に最初から入っていた事があります。教員をやっていたのです。その時の私のゼミの連中が今、養護学校で校長になったり色々な所で活躍しています。養護学校で小学部も中学部も一緒に努力していますよね。そこに中学校の分だけ財源移譲で地方へ行って、小学校のは50対50だと、先生方のお気持ちはどうなります?私はそういう話を聞く訳ですよ。
 小学校の先生達は「自分達は半分、国のほうから貰っているから国の事も聞かなくてはいけない」。中学校のほうになったら「もう国のほうから来てないのだから、それじゃ地方のほうだけやればよいんじゃないか」という事から始まって、お互いに気まずい気持ちになったり、人間ですから色んな事が出てきますよね。
 その本音のところから議論していただけるなら、私達もよく分かるんです。それ無しにという事だと、ちょっと分からないなというのが1つ。
 それから学校施設関係ですけど、先ほど申し上げましたが、やはり全国的に格差が大きいです。新聞でもその事が発表になっています。
 これは首長さんのご理解がある所はよいのです。教育委員会のほうは必死になって耐震化とかあるいは建築の事を言います。だが、ご理解がないと後回しなのですね。耐震化の診断があるのですけども、それを実施して仮に耐震性が無いと診断されるとすぐに改修なり改築をしなくてはいけませんから、それさえも出来ない。こういう話も結構あるわけでございます。
 ですから、それは国のほうで全国を見て、格差是正というような事でやっていかないといけないだろうとお思います。手続きその他、面倒だというご意見もあります。それはどうにでもなる事です。
 3番目ですが、教材費などの一般財源化の事が出ましたけど、私が一番問題にしているのはIT関連です。私は、高知女子大に数年に渡って非常勤で伺っていたのです。そちらのほうの先生・学部長さんと色々お話したんですけども、こういう所ですからIT化が必要です。でも、今学校でe-Japan計画で学校の中で自由にインターネットで使えるようになったという所は、まだ4割いってないのです。先生方で教えるときにパソコンを使えるというのは6割です。無いものを使う必要がないですよね。自分でワープロ的にやるのは別です。
 一般財源化されてしまった為にそうなっている。これに対して地方6団体からのご回答はありませんでした。私は半分でもよいですから国庫負担のほうに戻したらどうですかと、これから将来を考えた時に、日本はそこの所をやっていかなければ、おそらく世界の競争に負けてしまうと思うのです。そこの所があまり問題になっていないので敢えて部会でも申し上げたのですけど。
 そういう事を考えますと、やはり一般財源化というのはよほど気を付けなければいけないなと思っております。
 以上です。

【木村副会長】 最初の市長のご発言について、特にそれに賛成するとか反対するとかいう事ではなくて、私の今思っている事を申し上げたいと思います。
 義務教育の国庫負担については現在の制度維持という立場ですが、地方分権には賛成だという話をされました。私も全く同じでして、私、生まれたのは東京ですが生活した事はほとんどなくて、大学に入るまでずっと九州と四国で生活をしておりましたので、私は、いかに地域格差を無くすかということばかり考えております。地域格差を無くさないと日本はうまくいかないという信念を持っております。
 そういう事で、皆さん覚えておられますかどうか。地域運営学校という案を中教審で出しました。あれのまとめをやったのは私です。相当の抵抗があったのですが、私の信念を貫いて、相当思い切って案を打ち出しました。で、衆議院の文部科学委員会の参考人として呼ばれまして4時間話をしたのですが、その時に非常にがっかりしたのは、ほとんどの国会議員の先生方がこういうマズい事があるからこんな事は出来ないのではないかというネガティブな話ばかりされたことでした。仕方がないので最後にこれは単に地域運営学校を作るという事ではなくて、地方に教育に対する自主性を持っていただくという事ですと、私が国会議員の先生に向かって申し上げざるを得なかったのです。国政の場においてもまだそうなのですね。
 ですから、そういう事から言いますともちろん地方6団体のご意見も理解しますけども、意識がそこまで本当に行っているのかというのが私の正直な感想です。
 私、合計4年間住んでおりましたので、比較してみますと、やはり地方の活性化と言いますか、地方と中央の関係みたいな議論は日本ではまだまだ、もの凄く未成熟だという事を感じております。特に、地方分権に賛成するとか反対するとかいう事ではなく、現状、私はそういう風に感じているという事であります。

【板東審議官】 それでは、まだ少し時間がございますので最後に何人かの方にご意見をいただきたいと思います。

【参加者I】 私、社団法人日本PTA協議会の者です。
 徳島県の議論が沢山多かったので、高知としては義務教育の国庫負担金の件については是非PTAとしてはやっていきたいと思っています。
 地方で義務教育の競争をしたほうがいいという意見があるみたいですけれども、やはり義務教育が地域ごとに違ったら親としては素晴らしい学校、良い学校に通わせたい。その為に引越をしたら良いという事を言われた知事さんがいたそうですけども、それは家を持って生活する私達日本人にとりましては非現実な机の上での空論だという風に思っています。そもそも義務教育というものは全ての子どもが受けるものでありまして、全国どこに住んでいても同じ内容で絶対に受けるべきだと思っております。それから、全国どこでも同じ内容や条件を保つにはどこがやるのかというと、絶対に国しか出来ないと私は信じております。
 その点からしても全国で教えられる内容を国が決めて、どこでも義務教育が出来るようにお金を出すのは国とするのが非常に自然な考え方であると思います。その為に、現在の義務教育国庫負担金制度というものはきちんと守っていただきたいと本当に切に望みます。
 どうか宜しくお願いいたします。

【参加者J】 愛媛県の者です。義務教育国庫負担金のほうについては、知事が知事会で孤軍奮闘をしているようです。皆様方のご協力を是非お願いを致します。
 1点だけ。本来は教員養成部会で出されるべきかと思いますが、信頼される教師という事で、指導力不足教員、教員は全て退職するまで指導力不足教員であろうかと思います。ただ現在問題になっておりますのは、ほとんどが教職不適格者と受け止められるむきがあります。
 そうすると採用の段階で云々と色々な方法がございますけれども、やはり期限付任用期間の厳格な適用とかあるいは延長とかそういうような具体的な問題で対応できるのではないかと。
 やはり、長年教員をしているそれぞれ家族のある先生方、本当に大事な生活ですので早い段階での職の転換というものが必要であろうかと思います。
 こういう点につきまして、もしご返事が頂ければ。この部会では無理だという事であれば結構でございます。
 以上でございます。

【参加者K】 失礼します。当ってよかったです。高知県の中学校教員です。
 すみません、時間も無いので手短かにいかせていただきたいと思いますが、私は負担制度堅持のほうの立場にあります。先ほどから皆さんのほうが色々なお話の中でされていますので、ちょっとダブるかもしれませんけども私のほうから今日は折角、岡崎高知市長がおられますので、普段岡崎市長に話をする事もないので、普段は雲の上の存在の人ですから、一言だけちょっとお伺いしたい事があります。
 一般財源化に地方6団体が賛成だという事で、岡崎市長もその中に入ると思うんですけども、この中に保護者も子どもも含めて、それから一般財源化されれば教員の質の向上に繋がるという事で明記されてありますけども、これはいかがなものかなと。
 はっきり言って、私の理解力が悪いのかちょっと理解できないというか、どういう事を言われているのか、もしよければ聞かせていただきたいと思います。

【司会・板東審議官】 それでは一通り、今の手をお挙げいただいた方にお話をいただいた後で、先ほどから色々市長さんへのご質問その他が出ておりますので、もう1回恐らく市長がお話の機会をいただきたいというお話だろうと思いますので、また振らせていただきたいと思います。一通りご意見、後2名の方、よろしくお願いいたします。

【参加者L】 中学校の教員です。2点、ちょっと時間も無いようですので。
 1点目が定数改善で、ちょうど教職員配置等の在り方に関する調査研究協力者会議の方もおられるという事で、30人以下学級の実現、少人数学級です。少人数指導ではなくて学級の規模を小さくする30人少人数学級を前進させていただきたいと。
 新聞によると、8次ではなく9次の方向で少人数学級の方向が…と言われていたのですけど、是非とも30人以下学級は8次へ入れていただきたいという事です。
 それと、高知県は非常に過疎化が進んで少子化の問題もあって複式の定数の改善をしていただきたいと思います。特に小学校1年と2年の9人以上で単式になるけども、それを高知県は独自にやっていた土佐の教育改革で8人ぐらいの3学級しか出来ていないので、ぜひとも国の方向で、高知県の場合は高知県教員も努力してくれ、小学校1年と2年、中学校1年の一部、30人学級の研究をしていますけども、地方では非常に限界があります。税源移譲も含めてとなると、義務教育費国庫負担金が外れると高知県が全国で最下位という状況で、今日は一日中教審をやっていただいたかなという事を思って、意見を聞いていただいているかと思います。
 そういう意味で30人以下学級の実現と複式改善。一年生を含む場合と、17人以上の複式の改善を特に入れていただきたいという事です。
 都会だけではなくて、やはり過疎県等に目を向けていただきたいというのが1点。
 もう1点目ですけども、学力問題でPISAの報告とTIMSSの報告のデータがありました。PISAの場合に総合的にフィンランドが一位だと、TIMSSの場合はシンガポールが一位だと。ご存知の通りフィンランドとシンガポールは言葉の中にありましたけども、全然違う方向で取り組みをしているという事で、シンガポールの場合は新自由主義だと私は解していますけども、非常に競争社会の中で競争が激しくてイジメや不登校もかなり多いと聞いています。この点、フィンランドのほうは福祉・教育にお金を入れて、先ほど発言もあったようにかなり国が義務教育負担というか、手厚い補償をしているという状況がある。
 で、日本がこれからどっちの方向に行くのかと。フィンランドのように福祉と教育に力を入れていくのか、シンガポールのように新自由主義の方向で行くのか、中教審が行く方向としてはどうなのかと。学力問題はちょっと解釈の仕方がどうなのかという事です。その点で非常に気になります。リテラシーをどう読み取るかという問題で、日本のリテラシーという読み方が違うのではないかと。だから我々がすぐ全国学力テストに行くけどそうじゃないと、もう少し精査しながら全国学力テストじゃない取り組みをしなければならないんじゃないかという事を思います。
 長くなりました。

【参加者M】 失礼します。高知で小学校の教員をやっています。
 今日は中教審の方々がどういう意見を持っておられたかというのを、身近に私達が聞く事が出来て、本当に正直良かったなと思っています。それぞれどんな事を考えておられるのかが、身近に分かったような気がして、何か中教審とは遠い存在であります。特に私は学校現場で色々財政から発せられる色んなことから、どうもおかしいんじゃないだろうかという事はずっと考えていましたけど、私達教育現場で子ども達が今の中でどういう状態にあるのか、子どもの実態とかあるいはそこにいる保護者の方々が、今どんな状況なのかというところの実態から出発して、現場で一所懸命それぞれ、少人数化や色々な総合的な学習の時間の中で子ども達ひとりひとりを何とか学力を保障していこうとか、あるいは総合的な学習の時間の中で本当に豊かさを、生きる力を付けていこうか、どういう風にしていくのかという事を日々頑張ってやっているという中で、子ども達が今どんな状態なのか。
 子ども達が自分に自己肯定を持てない、本当にひとりひとりに自信を持てないという状況の中で、そしてそれを支える家庭も大変な状況であるといった所から、教員はそこを見ながらひとりひとり子ども達の側に付いて、何とか力を付けさせていきたい、この子どもに何とか輝きをという事でひとりひとりが頑張っているという中身を、審議会など教育行政の方々に知っていただきたいなという思いがもの凄くあった。今日、岡崎市長、橋本知事が一般財源化の中でもという事があったのですが、土佐の教育改革の中で厳しい財政の中でも今の所、様々な工夫をされておられる、いわゆる教育の理解のある首長さんだからこそ、そういった事を言っておられるのかもしれませんけど。
 やはり一般財源化の中で不安というのは払拭できません。そこの中で理解ある首長さんがそこまで言い切るのは、一般財源化の中でも教育に後退をしないという理念があるだろうし教育のビジョン、一般財源化の中でもこんな風な土佐の教育や子ども達を輝かせる策を絶対に後退させないという事のビジョン等を私達も見ていきたいと思うし、そういった中身が出てくれば私達も現場からその事に対して現場からの意見も聞いていただきたいと思っています。
 そういった毎日の中で子どもと接している現場に主体性や創意工夫とか様々に発揮できるような施策を是非、お願いしたいと思っております。
 今日はありがとうございました。

【板東審議官】 それでは、再度で申し訳ございませんけれども、最後に市長のほうからも何か一言コメントを頂ければありがたいです

【高知市長】 高知市の話も沢山出ました。少しだけ、長くならないようにしますが。
 今日は中教審の色んな意見の中で、私はアウェーの中で試合をするような思いで来たのですが、我々にとりましても非常に重要な課題・問題点が沢山出まして、私自身も教育を考える良いきっかけになりました。大変ありがとうございました。
 特に、小川先生が言われました分権型教育を築く中で、国庫負担金という形で財源補償をしっかりしていくのか、それとも地方団体が主張するように交付税というもので交付税制度の中でしっかり出来るのだという所が、大きな論点の違い、見解の違いがあるのではないかと思っております。
 ここは様々な考え方があると思いますし、我々は交付税の仕組みの中でも出来るという主張をしておりますが、先ほどすごく大事なご意見も出ましたように、その為には我々地方公共団体自らが分権型の税源移譲されたらこういう形で新しい展開が出来るんだよという所を、もう少し住民の皆様方や学校現場の皆様方に分かり易く、もう少しビジョンをもって説明する事が非常に重要ではないかと思っております。
 その事を今日、非常に痛感した訳でございまして、先ほど一般財源の中で良い人材が確保できるという事はどういう事かというお話も出ましたが、学校現場で先生方は真摯に子ども達の為の事を考えていただきながら、子ども達を将来育てていく為にどうかという事で努力をしていただいているという認識におります。
 私ども高知市は、今、不登校に全力をあげております。とにかく不登校の子ども達を出来るだけ学校に戻してあげたいという意味で、そこに全力をあげておりまして、色んな意味で分権型の教育を築く上で我々もどういう姿が一番望ましいかという事を、これからも考えていきたいという風に思っております。
 今日はそういう意味で、大変貴重な場になりました。私自身が大変勉強になりましたので、ありがとうございました。
 これで答えにさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

【司会・板東審議官】 どうもありがとうございました。それでは委員のほうから最後のコメントを兼ねましてそれぞれご意見をいただきまして、それから文部科学省からも今日は参加させていただいております山中審議官のほうからも一言話をさせていただきまして、そして最後に木村副会長に締めていただきたいと思います。それでは山本委員のほうから順番にお願いしたいと思います。

【山本委員】 第三ラウンドのお話もありがとうございました。
 本当に、先生方あるいはPTAその他色々な方々、教育委員会の方々の率直なご意見を聞かせていただいたので、明日もすぐ中教審特別部会があってヒアリングでございますけども、そういう所に活かしていけると思います。活かしていきたいと思います。
 最後、簡単に一言申しますと、やはり大きな流れで見た時に明治維新から今まで教育というのはどうであったか。激動の時代、ほんとにただ一言で言えば激動ですが、大変な時代を経てきている訳でそういう中でどうやって教育を守ってきたかという事を振り返ってみる必要があると思うのです。我々は残念ながら経験が遺伝子に蓄積されないのですぐ忘れるのです。しかし、歴史というものがありますからそれを紐解いてみると色々な事がわかります。
 私はある教員養成学部にいた事があります。転々として色々な所にいたのですけども、そこで教育学部の百年史を作るという事になりまして、私は大正時代を担当して教員の給与や何かを調べたのです。そしたらば、町村がどれだけ苦労して先生方の給料の為の費用を捻出したかっていうのがよく分かりました。何故かというと給料が安いと良い先生が来てくれないのです。本当にこれは血を絞るような話ばかりでございました。
 そういう事を考えた時に、繰り返し言うまでもないことですが、やはり日本の場合には国として教育をというのは一番大事な事ですから、やはり国のほうで何らかの形で手を打っていかなければならないのではないかということを改めて感じております。
 以上でございます。

【渡久山委員】 先ほど愛媛の方から発言ございましたが、愛媛知事の発言は新聞紙上等で存じ上げておりまして、非常に心強く思っています。
 指導力不足教員の問題がございまして、今実は教員養成部会で私も部会のメンバーの1人になっている訳ですが、実は平成14年に教員の免許制度の更新制について出たのですが、その時の答申は「慎重であるべきだ」というような事が出ておりました。ですからそれも1つの答申の中教審の考え方なのですが、その後の色々な情勢変化の中で大臣から諮問されたのは、教員の免許の更新制の導入について再度具体的な形で諮問されている訳です。それと同時に、専門職大学院についても出ている訳です。
 それを今、ワーキンググループ等をして色々議論している訳ですけども、まだ結論は出ていませんが、1つは平成14年の答申との関係も含めてどうあるべきかというような事なのですが、今世界ではアメリカなどにおいて更新制を取っているのです。
 しかしアメリカの免許の更新制は最初に免許を与える時から、日本とはシステムが違っています。ですからそのまま参考にして導入するという訳にはいきません。ですから、もしも導入するとしても日本でそれなりの理由、あるいはそれなりの考え方、あるいはそれなりの制度改善の中でどういうメリットがあるのかという事は真剣に考えながら議論していかなくてはいけないと思います。
 特に先ほど言われましたように、1つは今、指導力不足教員について、一定程度、分限処分の対象となる教員も出ておりますし、また10年経験者研修の義務…。
 現職教員が苦労しながら子ども達に今の教育を守っていただいているという事もよく知っていますし、また、その事についても、日本の教育を真剣に支えているのは誰だろうか、何だろうかと。バッシングという言葉は悪いのですが、そうしなくちゃいけないような状況にあるのか、どうなのかということも真剣に考えながら今、審議をしている所であります。
 それからもう1つ気になるのは、日本の教育費、負担の在り方もありますけれども、教育費がGDP比でOECD平均が3.5になっています。しかし日本の場合は2.7なのです。ですから非常に少ないのです。国としてもっと教育に金をかけるという必要も多いにあるんじゃないかなという気がいたしておりまして、そういう事も中教審の中では議論をさせていただいているというような事でございます。
 以上です。

【小川委員】 じゃあ、最後に。
 最後に市長さんのご発言に私自身も非常に励まされました。というのは、やはり今まで中教審では負担金堅持か廃止かというような話だけで、負担の問題だけに収斂していまして、実は中教審の今回の課題というのはその問題を含めながら、地方からの教育改革をどう国が支援するか、またそのもとで地方の教育改革が展開できるような教育行政のしくみをどう作っていくか、というのが今回の中教審の本当のテーマだったと思うのです。
 今までもそうした議論もしてきたのですけれども、負担金の問題だけにマスコミ等々の注目も集まって、そうした地方からの教育改革の色んな動きをやはり進展させていくような仕組み作りの議論というのは、なかなかこれまで集中して議論できてこなかったのかなという風な事もあります。
 是非、今後は中教審に参加されている地方6団体の代表委員からも、そうした教育改革論議、負担金だけではない教育改革をどう進めていくかという教育ビジョンを発言していただきたいし、私達も中教審の今回の中心テーマのもう1つの柱である、地方の教育改革をどう促していくか、ないしそれをサポートしていく様な仕組み作りを中教審としては、どう具体的に制度デザイン出来るかという、そういうような議論を是非やっていきたいなと思っています。
 もう1つは、渡久山委員のほうからもご発言がありましたけれども、お金の話を最後にちょっとさせて下さい。というのは、先ほど何人かの方から少人数学級の話で30人とか35人学級のお話が出ていたのですけれども、これも協力者会議でも論議している事なのですが、例えば、30人学級を今小学校・中学校全学年で実現しようとしますと後11万人の教職員が必要なのです。そして、予算とすると7,800億円が追加予算が必要だと言われています。で、35人学級を小学校から中学校全学年に実現しようとしても、それでも4万7千人の教職員が必要で、予算にすると3,300億円が必要になると試算されています。
 今、国と地方が1,000兆円ぐらいの負債を抱えていますので、すぐに30学級とか35学級を実現できる教職員の拡充というのが図れるかどうかというのは、やはり非常に難しいですね。また、国庫負担金の廃止の議論をやっている時に来年度から第8次の改善計画を実施させるのはどうか、という疑問の声も財務省のほうからも上がっているようですけども、しかし新しい予算の拡充が不可能であれば、今後児童生徒数が減る事によって本来首を切られるはずの教職員を首を切らないで確保するというそういう自然減による教職員の確保の数というのが今後5年間で約9,000人と言われています。出来れば、この約9,000人をギリギリ確保して、最大限に活用できる施策というのをどう考えるか。ある意味ではこれは非常に厳しい計画作りになるかもしれませんけども。
 ですから先ほど渡久山委員からも指摘ありました通り、30人学級とか35人学級を実現していく為には、OECDの加盟国の中で義務教育費、GDPに占める割合が最低という状況にある日本の義務教育費の拡充を国の政治の課題として真剣に取り組んでいってほしいという声を、是非多くの国民から出していただければという感じがします。

【司会・板東審議官】 それでは文部科学省のほうから出席させていただいております、山中官房審議官のほうから最後に一言、申し上げさせていただきたいと思います

【山中審議官】 今日は、こういう形で文部科学省からも出席させていただきました。現場の「これだけは言いたい」という皆さんの熱心なご意見をいただきまして、本当に有り難いと思っております。
 文部科学省では、義務教育改革、あるいは教育改革ということで、ここ数年取り組んでおりますけれども、1つ大きな反省点といたしまして、色んな調査をやって国民の皆さん、あるいは保護者のみなさん、先生方の皆さんの、何をどういう風に考えているのかという事を伺ってきた訳ですけども、調査というのは1つの数字になってしまうという面がございます。中山大臣は、今回の義務教育改革は現場主義だという事を言われまして、小中学校は3万数千校ありますから、少なくとも1パーセントの300校に大臣を先頭に文部科学省の職員もドンドン現場の小中学校に行って、そこで現実の教育に取り組んでおられる先生方あるいは子ども、あるいは保護者の方、そこの実際の声を聞いて来いという事でまわりまして、私も数十校まわったところでございます。
 そういう形で、現実にどういう問題を抱えておられるのか、どういう点が本当に問題だと思っておられるのか、そういう所をお聞きしながら今回の義務教育改革を進めていきたいということで取り組んでいるということを先ず申し上げたいと思います。
 また、今日も色々現場のご意見をいただきました。最終的には結局、教育というのはそれぞれの小中学校、学校の教育でございます。結局、先生と生徒の関係。ここが良い教育が出来るかどうか、ここが全てだと思っております。その為に、充実した教育が出来るためにいったいどういう支援が出来るか、どういう仕組みが出来るのか、これが国の役割だと思っております。
 例えば、総合的な学習の時間というものにつきましても理念はありましたけれども、実際どうなっているのか。どういう所が問題なのか、それを今伺っているところでございまして、より充実した総合的な学習の時間が出来るようにする為にいったい何をしなければならないのか、人の問題なのか、教えるべき内容をもっとはっきり示すそういう点なのか、そういう所を今検討しているところでございます。
 これからも、色んな形で、財源の問題を含めた義務教育改革の問題、あるいは学習指導要領の改訂といった方向につきましても秋に向けて議論を煮詰めていこうという事を考えております。
 今日頂きました地方の皆さんのそれぞれの実態、こういうものも中央教育審議会の議論のほうに反映させていただくように努力しながら、しっかりとした議論で日本の義務教育というものがより良いものになるように努力して参りたいと思います。今日は本当にありがとうございました。

【板東審議官】 それでは、最後に木村副会長のほうからご発言をいただきたいと思います。

【木村副会長】 本日はこの高知で一日中教審を開催させていただきましたが、大変多くの皆様方にお運びいただき、また非常に活発なご意見を賜りましてありがとうございました。心から感謝申し上げます。ただ今、山中審議官のほうからお話がございましたけども、頂きましたご意見を、今後是非、義務教育特別部会だけではなく様々な部会の審議に活かしていきたいと思います。
 最後に一言だけ、会場からコメントございましたので、申し上げたいと思います。TIMSSとPISAの学力調査の話であります。
 確かにご指摘の通り、シンガポールとフィンランドは非常に目立ちます。コメントされた方は、フィンランドはどちらかというと福祉社会を目指していて、シンガポールは経済優先社会だとおっしゃいました。確かにそういう面はあるかと思いますが、シンガポールにいらしていただきますと、貧しい層に至るまでほとんどの国民が、国が準備したかなり立派な住宅に住んでいることがお分かりになると思います。それから地下鉄も、もの凄く安い。それは、車を持てない人はどうぞ地下鉄を使って下さいというポリシーですから、そういう意味では決して、福祉をおろそかにしている国ではないと申し上げてよろしいかと思います。
 ただ、2つの国に共通点がありますのは、シンガポールも小さい国、フィンランドも小さい国で、しかも、ほとんど資源の無い国だということです。で、フィンランドは行かれると分かりますけれども、ロシアというものに対してもの凄い敵愾心・恐怖感を持っております。
 そういう事で、とにかく国民のレベルを上げなきゃダメだという事が昔から言われております。その点ではシンガポールも同じでございまして、最近は多分そういう危険は無いかもしれませんが、シンガポール人に聞きますと、いつマレーシアが攻めてくるか分からないと、これは冗談ではなくてシンガポールが必死に軍事訓練をやっておりますのは、実はマレーシアとの関係だという事すら言われております。
 いずれにしても、国が小さい、頼るものは人材だけだという事で非常に教育に力を入れている結果こうなったのだと私は解釈しております。そういう事から言うと日本も多少人口は多くて国が大きいですが、たいした資源もありませんから頼るのは人材だけという事になると、教育というものをもっともっと国民全体で大事にしていかなければいけないのではないかと思います。
 それから最後に、先ほど少し触れた地域格差について一言だけ申し上げさせていただきたいと思います。
 私は先ほど申し上げましたように、とにかく日本が健全な発展をしていく為には色んな意味で地域の格差をなくす事が大切だと思っております。そういう事から言うと確かに地方6団体がおっしゃっているような分権化というのは必要だと思います。しかしながら、すでに相当大きな地域格差が起きているという事を一言申し上げたいと思います。
 私、今から20年ぐらい前に東京工業大学で学生部長をやりました。入試に関係しまして詳細にデータを見て唖然としました。東京工業大学というのは全国版の大学だと思っておりましたが、何と74パーセントが1都6県から来ているのです。これはえらい事だという事で、当時学長以下、評議員という大学の幹部がどういう構成になっているかと見ましたら22人の内16人が地方出身者でした。それで、このまま置いておくと将来、東工大は、ほとんど1都6県の人だけになってしまうという事を痛感致しましたので、私自身、色んな運動をして出来るだけ地方から受験していただく運動をしました。何年か経って東大はそうではないと思っておりましたが、何と東京大学も今は70パーセント近くが1都6県から来ております。
 という事はどういう事かと言うと、東大を指標にするのは適当ではないかもしれませんが、すでに高校レベルでもの凄い地方格差が出来ているという事なのですね。それと、そういう学校へ子どもを通わせている保護者の給与。先ほどご指摘にありましたが、給与の格差が非常に大きいのです。いわゆるブランド大学に通っている保護者の収入が多いという状況ができてしまっています。
 この2つの格差が、1989年のバブルが崩壊した後からまだ日本が立ち直れない。非常に大きな歪みが社会にできてしまっている。
 英国の社会を見ていますと、私初めて行きましたのが1969年ですが、その時の現状として、この国はダメだなと思いましたが見事に復活した。どうして復活したかというと、いかにして社会のダイナミズムを取り戻そうかという努力をずっと続けてきたためなのですね。
 大学入学は日本ではほとんど18才ですが、今英国は22才から23才になっています。ということは一度高校を出てもまた勉強したかったら帰ってこられるという、キャリアの複線化に成功しています。それから山本先生の一番のお得意の、生涯学習を徹底してやっています。
 結論として、全ての階層・国民の間でも地方でも格差を出来るだけなくすようにしていかないと、この国は上手くいかないのではないかということです。殊に義務教育で地方格差が出てしまうと、これはえらい事になると思います。このことについて、英国から教訓を学ぶまでもないと思いますが、皆さんご理解いただけるのではないかと思います。
 少し余計な事を申し上げましたが、本当に今日はありがとうございました。今後とも宜しくお願い致します。

【司会・板東審議官】 どうもありがとうございました。今日は沢山お手を挙げていただきましたのに、司会の不手際で全員の方にお話いただく事は出来なかった訳でございますが、四国各県からも沢山おいでいただいたという事で本当に感謝を申し上げたいと思います。
 それから先程お話がございました、スクールミーティングもこの金曜日で一応終了させていただきましたが、383校行かせていただきました。その中には四国の各県もそれぞれ数校ずつ行かせていただいております。
 今日、頂きましたご意見やそういった現場から頂きましたご意見、中教審のほうで十分に反映をさせていただきましてこれからの議論を進めさせていただきたいと思います。
 それでは以上をもちまして、一日中央教育審議会in高知を閉会させていただきたいと思います。大変時間も超過してしまいまして申し訳ございませんでした。本日はどうもありがとうございました。

(以上)


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