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第1 大学教育の質の保証・向上

1 公的な質保証システムの改善

 大学制度は,過去数十年来の様々な歴史的経緯やその際の事情に応じて整備されており,21世紀において大学制度を進展させるためには,現行の制度や施策をあらためて検証し,そのよって立つ基盤の現状を再確認することが不可欠である。
 また,大学制度は国際的なものであり,その検討に際しては国際的な動向に留意しなければならない。ヨーロッパにおける今日までのエラスムス計画やボローニャ・プロセス,また,アメリカの大学の教育研究上の優位性を背景とした国際的な活動など,教育研究活動が国を越えて展開される中,我が国の大学行政にも,アジア域内をはじめとする国際的な展開を意識した検討と対応が求められる。
 そうしたことに留意しながら,我が国の大学教育の公的な質保証システム(設置基準,設置認可審査,認証評価)に関し,それらの制度の経緯を確認した上で,それぞれの改善を進める必要がある。

(1)我が国の質保証システムのこれまでの推移

1.事前規制中心の質保証システム(~平成15年)

 我が国の公的な質保証システムは,従来,設置基準と,その設置基準等に基づいて行われる設置認可審査による事前規制型であった。これは,大学の自主性・自律性を尊重し,設置認可後の大学に自律的な質保証機能が備わっていることに着目したものであり,我が国の高等教育の整備に際し,質の保証の観点から一定程度の共通性を担保する上で重要な役割を果たしてきた。
 一方,事前規制型だけでは,教育活動に必要な諸条件の確認にとどまり,実際の教育活動の質を直接的に保証することが難しく,また,進学率の上昇や社会の成熟化に伴い,多様な大学教育が求められる中,事前規制型の質保証システムへの過度の依存は,大学の画一化や,新たな取組の抑制につながる懸念もあった。
 従来も,設置基準の大綱化(平成3年)をはじめとする設置基準の弾力化,設置認可手続きの見直し,自己点検・評価の制度的位置づけ(平成3年に努力義務化,平成11年に義務化)等にみられるように,質保証システムの改善が順次行われた。そうした取組の際に重視されてきた大学の自主性・自律性を踏まえながら,事前規制だけでない質保証システムを構築していくことが求められた。

2.事前規制と事後確認の併用型への転換(平成16年~)

 我が国の行政システムにおいて,国の規制を可能な限り見直し,事前規制型から事後確認型への移行が求められたことも踏まえ,平成14年に学校教育法を改正し,認証評価制度を導入した(平成16年4月施行)。
 あわせて,設置認可については,平成15年度に,大学設置基準等の法令上の要件を満たせば設置を認可する「準則主義」に転換している。また,認可事項の縮減や,審査を要しない届出制の導入,審査基準の簡素化を図っている。
 このように,事前規制型から,事前規制及び事後確認の併用型に転換したことにより,我が国の公的な質保証システムは一定水準以上の大学であることを保証する事前規制型の長所と,大学の多様性に配慮しつつ,恒常的に大学の質を保証する事後確認型の長所を合わせ持つものとなっている。したがって,公的な質保証システムとしては,この組み合わせが最も効果的・効率的であると考えられる。

(2)現在の設置基準・設置認可・認証評価の概要と課題

 設置基準,設置認可審査,認証評価の3つの要素からなる公的な質保証システムに関し,後述する様々な課題が見られることを踏まえ,各要素の役割と相互の関係をあらためて検証し,その制度・運用を改善し,質保証システムを充実していくことが課題となっている。

1.設置基準について

(ア)設置基準の概要

 大学については,教育基本法における大学の規定(第7条),学校教育法における大学の目的(第83条)や学位の授与(第104条)等により基本的枠組みが定められている。
 そのような体系の一環として,文部科学省令である大学設置基準で「大学を設置するのに必要な最低の基準」(第1条)が定められている。大学設置基準に規定されている内容は,4つに大別することが可能である。

  • 大学の入学資格や修業年限,組織編成等の基本的枠組みに関する規定
  • 大学が備えるべき教員組織,施設設備等の人的・物的要素の最低基準を定める規定
  • 大学の教育活動やこれに関連する活動の規範を定める規定
  • 学生の履修や卒業要件に関する規定

 あわせて,設置基準には,最低基準に関するものとともに,望ましい水準や努力義務等に関する規定も含まれている。

(イ)設置基準の課題

 平成15年の審査内規等の廃止により,設置基準の規定について,大学としての観念や,大学教育の理念に包含され,共通に理解されているルールを踏まえた見直しを進めており,具体的には「更に検討すべき課題」に掲掲げた内容について検討を進める必要がある。

(ウ)大学設置基準の改正の状況

 上記(イ)に関連するもののほか,第5期の大学分科会では,大学を取り巻く状況等に速やかに対応するため,大学設置基準に関し,以下の改正を行っている。

  • 地域の医師確保等に早急に対応するため,平成21年10月に,医学教育の定員増のための専任教員数と校舎面積の規定を整備するための大学設置基準の改正を答申。
  • 社会的・職業的自立に関する指導等の規定を整備するため,平成22年2月に大学設置基準等の改正を答申((エ)で後述))。
  • 法科大学院における質の保証の観点から,平成22年1月に,法学未修者の学修の充実に係る専門職大学院設置基準の改正と,認証評価の評価項目の追加のための文部科学省令の改正を答申。
  • 教育情報の公表の促進のため,平成22年5月に,大学設置基準等の改正を答申(「第1」の「3」で後述)。
  • 国際連合大学が修士・博士課程の教育プログラムを開設することを受けて,国内の大学院入学資格との接続や,大学院との単位互換を可能とするため,平成22年6月に,大学院設置基準等の改正を答申。
(エ)「社会的・職業的自立を図るために必要な能力を培うための体制」について

 公的な質保証システムの検討の一環として,「社会的・職業的自立を図るために必要な能力を培うための体制」に関し,以下の考え方に基づいて,平成22年1月に,大学設置基準の改正を答申している。

1.大学の目的との関係

 大学は,学術の中心として,広く知識を授けるとともに,深く専門の学芸を教授研究し,知的,道徳的及び応用的能力を展開させることを目的としており,大学教育や学生生活の経験を通じて獲得する成果(知識・技能,態度・志向性等)には,専門分野に関する知識・技能とともに,社会的・職業的自立に必要な資質能力が本来的に内在していると言うことができる。
 実際に,各大学では,教育課程を通じて,それぞれの個性・特色や学問分野に応じた教育を行うほか,正課外の学生支援を通じて,職業意識の形成等の支援を行っている。これらは,単に卒業時点の就職を目指すものではなく,生涯を通じた持続的な就業力の育成を目指し,豊かな人間形成と人生設計に資することを目的として行われている。

2.社会的・職業的自立に関する指導等に係る規定を法令上に明確化する趣旨

 学生の社会的・職業的自立に向けた支援は,産業界や地域の各種団体を含む社会全体として取り組むべきものである。その中でも,若者の過半数(56.8%)が進学する大学については,職業の種類や,企業等の業種・規模・業務内容等が多様化していることを踏まえ,社会人・職業人としての基礎能力を持ち,産業構造等の変化に対応できる柔軟な専門性と創造性の高い人材を育成することが強く要請される。また,現在の厳しい雇用情勢や,学生の多様化に伴う卒業後の移行支援の必要性等を踏まえ,学生が,それぞれの専門分野の知識・技能とともに,職業を通じて社会とどのように関わっていくのか,明確な課題意識と具体的な目標を持ち,それを実現するための能力を身に付けられるようにすることが課題となっている。平成20年の「学士課程答申」にあるように,各大学では,全学的な方針に基づき,教育の内容と方法の改善に取り組んでおり,その一環として,学生の社会的・職業的自立に関する指導等の在り方を検討していくことが求められる。
 このことを踏まえ,各大学の状況に応じて,教育課程の内外を通じて行われる指導や支援について,大学設置基準に位置づけることとした。

(社会的及び職業的自立を図るために必要な能力を培うための体制)
第42条の2大学は,当該大学及び学部等の教育上の目的に応じ,学生が卒業後自らの資質を向上させ,社会的及び職業的自立を図るために必要な能力を,教育課程の実施及び厚生補導を通じて培うことができるよう,大学内の組織間の有機的な連携を図り,適切な体制を整えるものとする。

 大学設置基準の改正とともに,国は,上記で述べた改革の方向性を踏まえ,平成22年9月に「大学の就業力育成プラン」を公表し,体系的な施策を展開している。また,各大学では,学生の社会的・職業的自立に関し,それぞれの状況を踏まえながら,具体的な取組が進展している。

3.設置基準改正に関連する留意事項

・各大学における社会的・職業的自立に関する指導等の在り方
 社会的・職業的自立に関する指導等として,各大学がどのような取組を行うかは,それぞれの教育研究目的,設置する学部・研究科の種類,学生数等の規模,学生や教職員の状況により多様と考えられ,特定の教育内容・方法が大学に課されるべきではない。例えば,医療系人材や教員等の専門職業人の養成を目的とする学部等では,その教育活動の全体が,卒業後の職業との関わりを重視して構成されているように,分野により多様であることを踏まえなければならない。

・教育課程の編成における取扱い
 各大学では,教育課程の内容と実施方法に関する方針を定める中で,個別の授業科目のシラバスや,体系的な教育課程の編成を通じて,社会的・職業的自立に関する指導等の在り方を明らかにし,学生に対し,その内容の理解を図ることが求められる。
 また,教育課程の編成と実施に当たっては,大学として保証すべき教育の内容・水準に十分留意する。例えば,幅広い職業意識の形成に着目した授業科目を開設する場合に,大学の判断により,それが教育課程の一部として位置づけられるのにふさわしい内容・水準であることを明らかにするとともに,専門教育等とのバランスにも留意しつつ,過度に傾斜しないような配慮が考えられる。

・学内における実施体制の確保
 この大学設置基準の改正は,社会的・職業的自立に関する指導等の実施に当たり,大学の判断に基づいて設けられている各種の組織(例えば,教育を行う様々な学内組織,各種の厚生補導を行うための組織,留学生の支援を行う組織,教務部・学務部等の事務組織)の緊密な連携や,そうした組織の活用を通じて体制を整える必要性を規定している。したがって,学内に専任の教職員を配置する,または独立した組織を設けるなど,組織の設置を画一的に課すものではない。
 なお,大学において,社会的・職業的自立に関する指導等に具体的に取り組む際には,それぞれの大学の教育理念や,個性・特色,学生の状況等を踏まえた対応が必要であり,そのためにも,学内における専門性の高い人材の養成・確保や,学内の教職員による理解の共有化が求められる。

・大学の取組状況の公表
 各大学では,その社会的・職業的自立に関する指導等の取組について,広く社会に説明していくことが求められる。また,認証評価により,各大学の理念や教育研究目的等を踏まえた適切な評価を受け,その評価結果が社会に明らかにされることが期待される。

・産業界や各種団体をはじめとする社会との連携と協力
 学生への社会的・職業的自立に関する指導等は,大学だけでなく,社会全体として支援すべきものであり,産業界や地域の各種団体をはじめとする社会との連携と協力が求められる。
 また,雇用情勢の悪化による学生の不安な心理が就職活動の早期化をもたらしているとの指摘もあり,学生の落ち着いた学習環境の確保が必要である。こうした面からも,大学側の学生の就職に関する「申合せ」や,企業側の採用選考に関する「倫理憲章」の周知徹底を図っているが,学生の就職活動の早期化の現状は依然として続いており,大学,産業界や地域の各種団体,関係行政機関等の連携・協力による更なる改善の努力が不可欠である。

4.「社会的・職業的自立に関する指導等」に関連する用語整理
【社会的・職業的自立に関する指導等】

 各大学の実情に応じて,社会的・職業的自立を図るために必要な能力を培うために,教育課程と,正課外での学生支援(大学設置基準では「厚生補導」)を通じて行われる指導や支援である。具体的には,教育方法の改善を通じた各種の取組のほか,履修指導,相談・助言,情報提供等の様々な活動が想定される。2.の「キャリア教育」の考え方に基づきつつ,学生に対して実際に教育が行われる場合に現れる態様である指導・支援に着目して,「社会的・職業的自立に関する指導等」という用語を用いることとした。

 教育基本法は,第2条第2号に「教育の目標」の一つとして「職業及び生活との関連を重視し,勤労を重んずる態度を養うこと」を規定し,学校教育法は,第83条に「大学の目的」として「学術の中心として,広く知識を授けるとともに,深く専門の学芸を教授研究し,知的,道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする」と規定している。

【キャリア教育】

 社会的・職業的自立に向け,必要な知識,技能,態度をはぐくむ教育。詳しくは「一人ひとりのキャリア発達を支援し,それぞれにふさわしいキャリアを形成していくために必要な知識,技能,態度をはぐくむ教育」(平成21年7月の中央教育審議会キャリア教育・職業教育特別部会の「審議経過報告」)。

 このうち高等教育では,平成12年の大学審議会の答申「グローバル化時代に求められる高等教育の在り方について」が,キャリア教育を「学生が将来への目的意識を明確に持てるよう,職業観を涵養し,職業に関する知識・技能を身に付けさせ,自己の個性を理解した上で主体的に進路を選択できる能力・態度を育成する教育」と整理している。

【厚生補導】

 学生の人間形成を図るために行われる正課外の諸活動における様々な指導,援助等であり,例えば,課外教育活動,奨学援護,保健指導,職業指導等がある。

 大学設置基準は,第42条で「大学は,学生の厚生補導を行うため,専任の職員を置く適当な組織を設けるものとする」と規定している。

【職業指導】

 昭和33年の学徒厚生審議会の答申「大学における学生の厚生補導に関する組織およびその運営の改善について」は,厚生補導の領域の一つとして「職業指導」(学生がその個性と能力に応じた職業につくことができるようにすること)を挙げていた。
 「社会的・職業的自立に関する指導等」は,この「職業指導」(カタカタにすれば「キャリアガイダンス」)の概念を,厚生補導だけでなく,教育課程を通じた活動に拡張したものである。しかし,「職業指導」は,「職業教育」(一定の又は特定の職業に従事するために必要な知識,技能,態度をはぐくむ教育)に誤解されやすく,また,「キャリアガイダンス」は,学生への個別の就職相談のような狭い意味に解される懸念から,大学設置基準では「職業指導」や「キャリアガイダンス」を用いず,「社会的・職業的自立に関する指導等」の用語を使うことした。

2.設置認可審査について

(ア)設置認可審査の概要

 公立・私立の大学を設置しようとする場合は,文部科学大臣の認可を受けることとされており,その際,文部科学大臣は設置審に諮問し,設置審は申請に対する審査を行う。国立大学にも,同様の仕組みが設けられている。
 審査のための申請書には,認可後の初年度に入学する学生が卒業する年度(完成年度)までの計画(設置計画)が記載されており,設置認可審査では,大学の基本的な枠組みや条件整備等に関し,設置基準に適合しているか審査するだけでなく,設置計画が,設置基準に定める内容を実質的に実現し得る内容のものとなっているかという観点からの確認を行っている。この申請は,各大学が社会に対して着実に実現していく構想を表したものである。
 設置認可は,大学からの申請を受けて国が行うものであり,設置審による設置認可審査は完成年度までの設置計画に基づいて行われる。認可の効力は認可時点から発生するが,設置認可の意義を担保するため,完成年度までの間,設置審による「設置計画履行状況等調査」(アフターケア)により,設置計画の内容に著しい変更や不履行がないか確認が行われる。
 設置認可の対象は,学位の種類・分野の変更や,学部・研究科等の教育研究上の組織の設置・変更等であり,完成年度後における担当教員や教育課程の変更等は,各大学の判断によって行われる。
 以上にかんがみれば,設置認可は,特定の学位を付与するための教育課程(学位プログラム)を持続的に行うことを保証するものでなければならない。

(イ)設置認可審査の課題

 設置認可審査においては,設置基準を認可に際しての基準とし,各大学の設置趣旨や人材養成目的に応じた対応,各大学の創意工夫を促す観点から,専門家による高度な専門性に基づく審査(ピア・レビュー)に多くを委ねている。その際,大学設置基準の規定を補うものとして,従来は,大学設置・学校法人審議会(設置審)の審査内規等が設けられていたが,順次行われてきた設置基準の弾力化や,平成15年の設置認可の準則化により,これらは廃止されている。
 このことにより,各大学の主体的な判断による新たな大学等の設置や組織改編が迅速に行われるようになるなどの成果も見られる。一方,近年,多様な申請者から,新たな考え方に基づく申請も見られるようになり,設置認可審査において判断に苦慮する事例も生じている。そこで,設置認可審査におけるピア・レビューにおける具体的な判断指針として適用すべき水準の在り方を常に点検することが不可欠である。
 また,設置認可審査は,書面審査が中心であり,設置基準に定められている事項には,審査時に十分には明らかでないものも存在するため,設置認可後の状態を確実に把握することも求められる。
 こうしたことから,設置認可審査における改善を随時進めており,これまでに,例えば,以下の見直しを行っている。

  • 明らかに準備不足の状態での申請があった場合に,設置認可審査の手続きとして「早期不認可」を行うことができるよう制度化(H21年度審査から導入)。
  • より積極的な情報公開の観点から,大学の設置等の認可又は届出があり,文部科学大臣が,その旨,名称,位置,留意事項等を公表する際,あわせて,基本計画書,校地校舎等の図面,学則,設置の趣旨等を記載した書類,教員名簿を公表することを明確化。
  • 届出による設置をアフターケアの対象に追加。

 引き続き「更に検討すべき課題」に掲掲げた内容について検討を進める必要がある。

3.認証評価について

(ア)認証評価の概要

 平成16年度に始まった第三者評価制度により,大学は,「教育及び研究,組織及び運営並びに施設及び設備の総合的な状況」(学校教育法第109条)について,7年以内ごとに一回,文部科学大臣の認証を受けた機関(認証評価機関)による評価(認証評価)を受けることが義務付けられている。
 現在の認証評価は,創設時の経緯や制度上の枠組みに基づき,以下のような複数の観点に基づいて評価活動が行われており,それぞれの観点に着目しながら改善を図る必要がある。

  • 認証評価の導入を提言した平成14年「質保証答申」において,「国の認証を受けた機関が,自ら定める評価の基準に基づき大学を定期的に評価し,その基準を満たすものかどうかについて社会に向けて明らかにすることにより,社会による評価を受けるとともに,評価結果を踏まえて大学が自ら改善を図ることを促す制度」とされているように,大学評価基準(各認証評価機関が認証評価を行うに定める基準)に適合していることを確認する適格認定としての性格を持つ。
  • また,認証評価は,各大学の自己点検・評価を受けて実施するものであり,各大学の教育の質の向上に資するものとなることも求められている。
  • 加えて,評価が画一的なものとならず,「各大学の特色ある教育研究の進展に資する観点の評価」(省令1条1項2号)として,大学の個性化・特色化を踏まえ,機能別分化の促進にも資するものとなることも求められている。
(イ)認証評価の課題

 これらのうち,認証評価の適格認定としての性格に関連して,認証評価が,公的な質保証システムの一翼を担う上で,設置基準や設置認可審査との関係をより分かりやすいものとするための改善が進んでいる。

1.認証評価の基準と設置基準との関係を整理

【これまでの提言】

○認証評価の評価基準は,各認証評価機関の方針により,多様な観点を持つ。また,設置基準の規定を念頭に置いた評価項目であっても,その配列・規定ぶりが様々である。そこで,各認証評価機関の評価基準の各項目が,設置基準に関連するものと,認証評価機関独自のものと,より分かりやすくなるよう工夫することが課題。

【提言に対する対応状況】

○各認証評価機関では,認証評価の結果が,大学として最低限の質を担保していること(=学校教育法や大学設置基準に適合していること)を社会に対し明確にする観点から検討を進めている。

2.認証評価の結果の公表に当たって,関連する評価基準の項目を示す

【これまでの提言】

○各認証評価機関による評価結果の公表に当たっては,各機関により工夫されており,とりわけ,各大学の特色ある教育研究の進展に資するための配慮がされている
 その一方,「不適合」や「保留」の判断を示す際に,その根拠が,
 ・設置基準に定める水準を下回るためか,
 ・又は認証評価機関の独自の基準を下回るためか,
は必ずしも明示的に示されていなかった。
○そこで,認証評価結果で「不適合」や「保留」の判断が示された場合には,その判断の根拠となった事由について,認証評価機関の定めるどの基準を下回る(又はその懸念がある)のかが分かるように工夫することが課題。

【提言に対する対応状況】
○各認証評価機関では,評価結果の公表にあたって,設置基準に定める基準に関するものについては,そのことが分かりやすい形式で示されるように工夫しているところである。

3.設置認可審査のアフターケアとの連続性に配慮

【これまでの提言】
○設置認可を受けた大学や届出により設置された学部等は,アフターケアを通じて,当初の設置計画(科目の開設状況,教員の就任状況等)が確実に履行されているか,また,認可時の留意事項に対応しているかなどが確認されている。その際,必要に応じ,履行状況に関する指導・助言として「留意事項」が公表されているものの,この留意事項の記述をより分かりやすくすることが課題。

【提言に対する対応状況】
○設置審では,平成22年度からのアフターケアにおいて,留意事項を公表する際には,留意事項を付すに至った理由や背景等を,できる限り具体的に記述することとされた。その際,どういう場合に留意事項を付すか,共通的な取扱いについて一層配慮されることとなり,また,アフターケアにおける報告書の公表の取扱いや,認証評価での活用方策についても検討が進んでいる。

 また,各大学の教育の質の向上に資するものとする観点からの検討も各認証評価機関において進んでいる。

【これまでの提言】
○平成16年度から22年度までの第一サイクルを通じて,対象となるすべての大学が認証評価を受ける見込みである。
○第二サイクルからの認証評価を通じて,各大学が,人材養成目的や知識・技能体系等を明確にし,それが確実に機能していることを確認するようにしていくことが課題。

【提言に対する対応状況】
○認証評価機関では,そのような大学の自主的・自律的な質保証の支援も考慮し,評価の見直しを検討している。
○また,平成22年6月には,教育情報の公表の促進のための学校教育法施行規則の改正にあわせて,教育情報の公表の促進が認証評価でも確認されるよう,認証評価の細目省令を改正。

2 大学教育のグローバル化への対応

(1)グローバル化への対応に関する我が国の大学教育の充実

 大学は,中世ヨーロッパで登場して以降,国を越えた学生や教員・研究者の移動・交流や,国際的通用性を前提とする学位の授与など,その教育と研究は本来的にグローバルな活動を伴う。
 大学の国際化,すなわち,国の内外から広く優秀な学生,教員・研究者を集わせ,大学の教育・研究機能を高めることは,高度な研究と全人格的な教育を行う大学の内在的要求に応えることである。特に,多様な文化や背景を持つ者がともに学ぶことは,新たな知的発見を通じ,知識技能のみならず,人格的にも大きな成長が期待できる。ややもすれば内に閉じていると指摘されることがある我が国においてこそ,大学教育のグローバル化に積極的に取り組み,大学教育の構造転換を果たすことが求められる。
 同時に,急速に進む社会や産業界のグローバル化の中で,大学の教育研究機能が,社会の発展を支える重要な要素のひとつとして,我が国の国際競争力を高めることに貢献することが求められている。
 グローバル化の進展は,すべての大学における教育の在り方を問い直す契機でもある。
 我が国の大学教育では,分野等による違いはあるものの,学士課程教育を中心に,その卒業生の多くが国内で就職し,就職後も企業等による再教育・訓練がなされることが事実上想定され,大学教育の質が十分に問われたことが少なかった。「学士課程答申」や「大学院答申」では,そうした問題意識も踏まえながら,学生の学修の活動や成果に関する改革が提言されている。
 今後,国際的な環境の変化の中で,大学教育が,多様な国・地域からの学生を対象とし,また,学生の卒業・修了後の進路も,国内外を通じて多様化していくことが大きな課題となる。このことを踏まえ,各大学では,修得すべき知識・能力を明確化し,それを踏まえた体系性・一貫性のあるカリキュラムを編成・実施するなど,学位プログラムの整備を通じて,教育の質の向上に取り組むことが重要である。
 そうした問題意識に基づいた改革を進める中で,グローバルな教育の展開の観点からは,以下のような取組が考えられる。

取組が求められる事項
○短期交流プログラムの推進
  • 国内外の学生の往来を促す短期交流プログラムを整備・実施(欧米諸国でも,学位取得のための長期留学に限らず,学生の豊かな経験を可能とする短期交流プログラムが活発に実施)。
○海外とのインターンシップの積極展開
  • 我が国の大学の学生が海外でインターンシップに参加,また,海外の大学の学生が我が国でインターンシップに参加。これにより,専門性や語学・コミュニケーション能力の実践性を高めるとともに,国内外の活動への関心と意欲を高める。このため,我が国の大学が,海外の大学や,国内外の産業界等と連携して,質の高い実践的な教育プログラムを整備。
○国内外の学生を問わない学生支援の整備
  • 大学において,国内外の学生を問わず,履修内容・正課外活動・生活面の各方面に関し,学生を支援するための組織体制の整備。
  • また,大学関係者が,国内外の産業界等と対話を進め,上記のような教育に関する理解の促進と,こうした取組への支援・協力が可能となるよう努めることが求められる。
○我が国の大学のアジア地域をはじめとする国際展開
  • 平成16年の大学設置基準改正により,我が国の大学が,海外に学部・学科等を設けることが可能になっており,そうしたことを含む大学教育の国際展開が一層促進されるための基準や方策の検討。

(2)グローバル化への対応のうちアジアとの一層の連携の促進

1.アジア地域の経済の一体的進展を見通した人材育成の重要性

 我が国とアジアの各国・地域は,学術・文化等の様々な分野にわたり,長い交流の歴史を有している。
 加えて,アジア地域における著しい経済成長に伴って,域内の貿易や直接投資等を通じた結びつきが強まっている。今や,世界のGDPの約1/5(22%)をアジア地域が占め,また,製造業やサービス業等の各分野にわたり,アジア地域内での開発・生産・流通・消費を通じた相互依存が進んでいる。我が国では,輸出入総額に占めるアジアの割合は,平成11年の38%から平成21年の50%に上昇し,また,外国人の入国者数が平成11年の490万人から平成20年の915万人に増加する中で,アジアからは298万人から677万人に達し,人数・割合ともに急増している。
 こうしたアジア地域の経済の一体的進展を背景として,これまで我が国の国内でほとんど完結していた様々な制度や慣行,例えば,企業の採用・雇用・処遇の在り方や,政府・自治体等の公共部門に求められる役割・機能が,より多様化・複雑化している。

2.アジア地域の大学間交流の一層の推進

 上記のような動向は,高等教育にも深い関わりを持つ。我が国の大学では,グローバル化の進展に伴い,これまでに世界の多くの国・地域と,学生・教員・研究者による様々な交流がなされており,その一環として,アジア域内との交流も活発になっている。例えば,平成19年における海外の大学とのダブル・ディグリー等のプログラム158件のうち6割(97件)はアジア地域の大学が対象である。今後,アジア地域の経済の一体的進展が進む中で,学生は,優れた大学教育を求めて国を越えて移動することが,一層常態化すると想定される。
 こうしたアジア地域の大学間交流の進展を踏まえ,今後,その一層の充実を図っていくことが重要であり,その際,以下のような観点への考慮が求められる。

○アジア地域の大学制度や教育は,各国・地域により多様であり,そうした多様性を尊重すること。
○各大学が,個性・特色を踏まえ,機能別に分化する中で,各大学がその教育研究目的や方向性を明確化すること。
○多文化・異文化の理解を重視する教育プログラムを構築すること。
○大学間交流における質の保証のため,政府は,各国の大学制度・教育に関する情報を確認し,国内における共有化を図るとともに,各大学は,学位プログラムに着目した教育を実施すること(例:単位互換のため,シラバスや成績評価の可視化)。

3.アジア地域における大学教育の質保証の枠組に向けた努力

 アジア地域の各国・地域では,経済成長やそれに伴う知識・技術へのニーズを背景として,大学進学者数の増加や大学の量的な整備が進んでいる。これに関連して,大学教育の質保証が課題となっており,各国・地域では,自主的な評価組織・団体への支援や,公的な評価機関の整備をはじめ,それぞれの実情に応じた取組が進んでいる。
 一方,欧州では,エラスムス計画による共同教育プログラム整備や,ボローニャ・プロセスを通じて,欧州域内を通じた大学教育の質保証制度に関する取組が進展している。さらに,ボローニャ・プロセスへの非EU諸国の参加の拡大や,エラスムス・ムンデュス計画等を通じて,欧州以外の国・地域との間での大学間交流の動きが活発化している。
 アジア地域でも,国・地域を越えて質保証に取り組もうとする動きが見られる。例えば,「アジア太平洋質保証ネットワーク」は,国際的な活動である「高等教育質保証機関の国際的ネットワーク」の地域ネットワークとして,平成16年以降,各国・地域の質保証機関の連携を進めている。
 また,平成22年3月には,日本・中国・韓国の各質保証機関による連絡協議会が開催され,評価制度に関する情報の共有化や,共通指標の作成に向けた検討等,アジア地域における横断的な取組が,具体的に進展しつつある。
 各国・地域の大学制度や教育は,各国・地域により多様であり,そうした多様性を尊重しつつ,国・地域を越えた質保証の枠組の構築に向けて努力することが重要である。

(3)海外との大学間連携の促進

 大学の機能別分化が進む中,大学院博士課程や研究等に重点を置く大学が,海外の大学と連携して,ダブル・ディグリー等の教育プログラムを構築し,海外の大学からも学位が授与されるようにすることは,国内だけでは実施できない質の高い教育の提供等に資する(平成19年度は,国内の69大学が,海外の大学と合計158件の教育プログラムを実施しており,平成20年度には,国内84大学で合計242プログラムが実施されている。)。
 そうした活動を一層促進するため,用語の定義や,留意事項を整理したガイドライン(指針)を取りまとめ,各大学での実施が円滑になるようにした。
 なお,このガイドラインは,現行の大学制度を前提としているが,海外の大学との連携を更に促進するためには,大学設置基準等の制度的な検討も必要である。

我が国の大学と外国の大学間における組織的・継続的な教育連携関係の構築のに関するガイドライン(概要)

(1)用語の定義
ダブル・ディグリー・プログラム:
 我が国と外国の大学が,教育課程の実施や単位互換等について協議し,双方の大学がそれぞれ学位を授与。
ジョイント・ディグリー・プログラム:
 我が国と外国の大学が,共同で教育課程を編成・実施し,単位互換を活用して,双方の大学がそれぞれ学位を授与。その際,共同で編成された教育課程を修了したことを示す証明書(サティフィケート)を共同で発行することも想定。
(各大学で「デュアル・ディグリー」,「共同学位」,「複数学位」等の用語を用いる場合,上記の「ダブル・ディグリー」と「ジョイント・ディグリー」のいずれかに包含されると考えられる。)

(2)学位記の方式や学位の名称等の表記
 ○学位記を発行する大学の責任と,サティフィケートを発行する場合の様式(日本語,英語)を参考例として提示。

(3)プログラムの質を保証するための留意点
 (当初に確認する事項)
○形成するプログラムが,設置基準等の関係法令と抵触しないよう確認。
○相手方の大学が,その国の公的な質保証システムによる認可や,ユネスコの高等教育情報ポータルに掲載されていることを確認。
○相手方の大学と教育連携関係を構築する意義や,参加学生数や教員配置等
について,学内の共通理解を得る。
(共同の実施体制の整備)
○相手方の大学と協定等を設け,重要事項を審議する協議会の設置。窓口となる担当部署を設定し,組織的な連携を図る。
(教育課程の編成)
○相手方の大学での単位制度や履修の順序,単位互換の手続,アカデミックカレンダーの相違等を確認し,学生の履修に支障がないよう留意。
○コースワーク重視と授業内容を反映した科目名によるプログラムを構成。
○双方の大学が英語等による授業や課程を提供することも考えられる。
(学位審査)
○学位審査は,各大学が適切に行う。論文の数や内容,トピックの選択,使用言語,論文指導における共同指導の在り方等を事前に検討。
○学位記の英語併記を検討。修了したプログラムの概要や,履修を通じて得られる能力等の情報を添付することも考えられる。
(評価と情報の公表)
○自己点検・評価,認証評価等でプログラムを評価,実施状況を公表。
(学生への支援)
○学生の募集の手続を具体的に定める。募集要項等の関係書類を公開。
○学生支援の継続的な体制を整備。在籍関係や授業料に関し,学生の便益に配慮。また,関係大学の学生間の公平性を確保。
○参加希望者が少ないなど,授業科目を開設できない場合に,学生に適切な措置が図られるよう留意。

3 教育情報の公表の促進

(1)教育情報の公表に関する現状と課題

 学校教育法第113条と大学設置基準第2条の規定により,大学は,その教育研究活動に関する情報を社会に公表することとされてきた。また,自己点検・評価の結果や人材養成目的等の公表や,授業の方法・内容,成績評価基準等の学生への明示も,大学設置基準に規定されている。
 こうした枠組みに基づき,多くの大学は,積極的に情報の公表を進めており,その着実な進展が見られる。一方,一部の大学では,大学の強みや特色を分かりやすく公表し,外部から適切な評価を受けながら,教育水準の向上を図っていこうとする観点が十分でないとの指摘もある。
 そこで,公的な質保証システムの整備の一環として,各大学の教育の状況が明らかとなる仕組みを整備することが必要であり,以下の(2)のとおり,1.と2.をすべての大学に対応が求められるものとして法令に位置づけ,3.は,各大学の方針にゆだねるべきものとして整理した。

(2)公表が望まれる教育情報

1.公的な教育機関として公表が求められる情報

 大学は,学生や保護者が,適切に情報を得られるようにするとともに,学校教育法で定められた目的を実現するための教育研究等を行う公的な教育機関として,その活動や取組について,社会への説明責任を果たすことが求められる。
 そこで,大学に,公的な教育機関として,以下の情報の公表を義務付けるとともに,そうした取組が認証評価を通じて確認できるよう,学校教育法施行規則と認証評価の基準を定める省令等の改正について,中央教育審議会として答申したところである。

公的な教育機関として公表が求められる情報(法令により義務化する事項)
(ア)教育研究上の基本組織に関する情報

 (学部,学科,課程等の名称)

(イ)教員組織及び教員数並びに教員の保有学位,業績に関する情報

 (教員数,教員の専門性に係る情報(教員の保有学位や職務上の実績等))
※「教員数」は,「学校基本調査」の最新値に準じて整理し,法令上必要な専任教員数を確保していることや,男女別・職別の人数等をできるだけ明らかにする。
「職務上の実績」は,教員の専門性に関するもの。

(ウ)学生に関する情報

 (入学者に関する受入方針,入学者数,収容定員,在学者数,卒業者数,卒業後の進路(進学者数,就職者数,主な就職分野等))
※「入学者数」「在学者数」「卒業者数」「進学者数」「就職者数」は「学校基本調査」の最新値に準じて整理。なお,働き方が多様となっている状況において,起業や資格取得準備等を行う者等を各大学の判断で公表することも考えられる。

(エ)教育課程に関する情報

(授業科目の名称,授業の方法及び内容並びに年間の授業計画の概要)

(オ)学修の成果に係る評価及び卒業の認定に当たっての基準に関する情報

(学修成果の評価,修業年限,修了に必要な修得単位数,取得可能な学位)
※「修業年限及び修了に必要な修得単位数」は,必修科目,選択科目及び自由科目の区分ごとの修得単位数をあわせて示す。「取得可能な学位」は,学科・専攻ごとに,付記する専攻分野の名称とあわせて示す。

(カ)学習環境に関する情報

(所在地,キャンパスの概要と主な交通手段,運動施設の概要,課外活動の状況)
 ※「キャンパスの概要及び主な交通手段」は,キャンパスマップ,アクセスマップ等。「運動施設の概要」は,運動施設の機能と規摸。「課外活動の状況」は,学生のサークル・団体等の活動状況等。

(キ)学生納付金に関する情報

(授業料,入学料その他の費用徴収,利用できる授業料減免の概要)
※「授業料,入学料その他の費用徴収」は,費用徴収の種類,金額・納入時期等,「利用できる授業料減免の概要」は,減免対象の種類と要件,必要手続等。

(ク)学生支援と奨学金に関する情報

(学内の学生支援組織,利用できる奨学金の概要)
※「学内の学生支援組織」は,就職支援,メンタルヘルス等の組織とその機能,「利用できる奨学金の概要」は,奨学金の種類・要件,申込み方法等。

2.教育力の向上の観点から公表が求められる情報

 上記のほか,学生がどのようなカリキュラムを通じて,どのような知識・能力を身に付けることができるか,について分かりやすく公表し,教育力の向上を図ることが重要である。
 各大学では,大学教育を通じて修得すべき知識・技能の体系を明らかにする取組が,自主的・自律的に進められている。こうした取組をさらに促進する観点から,可能な限りその実施を目指すため,法令により努力義務化するよう答申したところである。
 また,こうした内容について,例えば,各種の競争的資金等の申請の要件とし,その取組を促すことも考えられる。

教育力の向上の観点から公表が求められる情報(義務化されているものを含む。)
(ア)学部・学科・課程,研究科・専攻ごとの教育研究上の目的
(イ)教育課程を通じて修得が期待される知識・能力の体系

・どのようなカリキュラムに基づいて,どのような知識・能力を身に付けることができるのか

(ウ)学修の成果に係る評価や卒業の認定に当たっての基準

 上記の(ア)と(ウ)は,上記1.の「公的な教育機関として公表が求められる情報」の性質を併せ持ち,既に法令に位置づけられており,1.の内容とともに規定することが適当。

 このほか,各大学が取り組む教育研究水準の向上のための取組(各種評価の結果を踏まえた教育改善,特色ある教育研究活動の状況,教職員の職能開発の状況等)が考えられる。これらの情報は各大学が自らの判断により,積極的に公表していくことが望まれる。

3.大学教育の国際競争力の向上の観点から求められる情報

 各大学が,自らの教育研究に関する情報を海外に積極的に発信することは,諸外国の大学との組織的・継続的な教育連携を加速させ,また,大学教育の国際競争力の向上に資する。
 そこで,例えば,
 ○大学院教育,とりわけ博士課程の教育に重点を置く大学,
 ○国際的な教育研究活動や学生交流に特色を発揮する大学,

等では,海外からの学生を受け入れ,また,我が国の学生を海外に送り出すに当たって,学位プログラムや学生支援に関する情報等を積極的に公表することが考えられる。
 その場合の具体的な対応は,各大学の方針にゆだねるべきであり,各大学の参考として,1.と2.に加えて公表が想定される情報の例を,以下のとおり整理した。

国際的な情報発信の観点から想定される情報の例

(各大学が自らの方針に基づき発信する情報を定める際の参考に活用されることが期待される。これらは,英語を含む外国語で発信することが想定される。)

(ア)教育活動の規模や内容等
(学生に関する基本的な情報)

○教員当たり学生数(フルタイムとパートタイム教員)
○各授業の平均学生在籍数
○卒業率(修業年限期間及び修業年限期間以降に卒業する学生の割合)
○退学者の状況(他大学等に転学した者がいる場合は,その内訳を表記するなど大学・分野等の特性を踏まえた説明や理由を付す。)
○卒業後の進路状況(就職先や進学先,資格取得の状況等)
○学位授与数

(明確な方針に基づく教育課程とその水準)

○修得すべき知識・能力の明確化と,それを体系的に修得できる教育課程
○計画的な履修方針に基づいた授業科目名や,その体系(いわゆるナンバリング)とシラバス(学内の関連する学問分野で共通化)
○インターンシップの機会や交換留学,海外研修等の提供状況
○単位認定,学位認定,成績評価の基準(大学として統一方針)
○上記に基づく学修成果を明示するのにふさわしい学位と専攻分野の名称

(外国人教員数)
(研究成果の生産性や水準)

○論文数・論文被引用数
○研究活動の活発さや優れた研究成果を示す指標(特許数やベンチャー,スピンオフ等)
○海外研究機関との共同研究・連携に関する情報
○研究に要したインプット(大学の総収入と研究費等)

(教育外部資金の獲得状況)
(イ)教育の国際連携

○協定を締結している海外の大学
○上記大学との教員・学生交流や単位互換,ダブル・ディグリー・プログラム等の実績を示す指標
○国内外の大学によるネットワークへの参加状況等

(ウ)大学の戦略

○明確な目標の設定
○国際的な諸課題への取組の姿勢
○情報を収集,分析する機能の充実

(エ)留学生への対応

○各国からの留学生受入数
○入学手続に関する項目:入学要件(年齢・学歴)及び卒業資格要件,渡日前入学や独自の現地入試実施,日本留学試験の利用状況等
○入学後の生活に関する項目:宿舎整備,日本語指導,カウンセリング,学内文書の英語化,経済的支援等
○入学後の教育に関する項目:教育支援員やTA,RAによるサポート,留学生のTA,RAとしての活用
○学位取得に関する項目
○学位取得後の就職等の状況に関する項目:就職後の進路,海外におけるインターンシップを含む企業との連携状況,OB会など卒業後のネットワーク形成状況等
○英語による授業のみで学位を取得可能なコースの設置状況
○大学間交流協定に基づく交流プログラムの設定状況等

(オ)外部評価等の実施状況

 上記と関連して,ユネスコの「高等教育機関に関する情報ポータル」は,大学教育の質保証に関する国際的な情報ネットワークであり,既に多くの国が参加しており,こうした国を越えて各国の大学情報を客観的に発信する取組を充実していくことが期待される(http://portal.unesco.org/education/en/ev.php‐URL_ID=56729&URL_DO=DO_TOPIC&URL_SECTION=201.html)。

4 質の保証・向上に関連するその他の課題

(1)学生支援・学習環境整備

1.学生支援・学習環境整備の観点からの質保証の検討

 従来,大学の在り方に関する議論では,教育と研究が着目されてきた。
 しかしながら,社会や学生のニーズが多様化しているにも関わらず,学生支援や学習環境整備に関しては十分な議論がなされてきたとは言えない。
 この場合,学生支援には,学生相談,学修支援,経済的支援等が挙げられ,また,正課外教育の在り方,例えば,図書館等の学習環境や,部活動を含むキャンパスライフも,学習環境整備の観点から検討していくことが求められる。
 学生支援や学習環境支援の充実に当たっては,国の内外から幅広い年齢層の者が,学生や教員・研究者として集い,相互に交流しながら,学んでいく場をどう整えるかが課題となる。また,学生支援や学習環境整備の充実は,優れた学生を広く世界から集めるなど,我が国の大学の国際競争力の向上の前提でもある。
 そこで,大学の公的な質保証システムとしての設置基準,設置認可審査,認証評価の在り方に関する検討の一環として,学生支援・学習環境整備の観点をどのように考慮していくかが課題となっている。
 以上のような観点から,学生支援・学習環境整備を充実する方策について,以下のような検討課題が考えられる。

検討課題(例)

 学生支援・学習環境整備に係る質保証を促す具体的な指針として,大学としての観念や,大学教育の理念に包含され,共通に理解されているルールを確認的に具体化・明確化。

  • 多様な者が交流しながら学ぶ場であるキャンパスにおいて,部活動等の正課外教育,学修支援,学生相談など大学に求められる機能と,その機能を果たすために必要な図書館,課外教育施設,コミュニケーションスペース等の施設整備。
  • 学生支援を継続的・体系的に行う仕組みを構築し,教育の質向上を実現する定性的な基準。
  • 学生支援を担当する教職員や多様な専門家を活用した組織。

2.多様なニーズに対応する大学教育を実現するための総合的な学生支援

 学生支援については,学生相談,学修支援,経済的支援等に対応する総合的な拠点を設ける大学や,相談内容に応じて複数の窓口を設置する大学等,様々な形態で行われている。
 学生相談の内容が,対人関係,学修上の問題,経済的問題等,多様化しており,また,学生が抱える課題には様々な背景がある可能性も高いため,学内外の関係機関による有機的な連携・協力が非常に重要である。
 以上のような観点から,多様なニーズに対応する大学教育を実現するための総合的な学生支援について,以下のような検討課題が考えられる。

検討課題(例)

(ア)社会や学生の多様なニーズを適切に把握し,学生支援に係る関係機関がそれぞれの役割・機能を明確化した上で,有機的に連携して行うよう,以下のような大学の取組を支援。

  • 学生の履修支援,学生生活支援,留学生支援を一体的,かつ総合的に行う学生支援体制の整備,担当する教職員の位置付けの明確化と能力開発。
  • 学生の多様性(社会人,留学生,障害学生等),学習・生活習慣に課題がある者の個別ニーズを適切に把握・支援。
  • 増大する相談へのニーズや必要な支援に即応できる学生相談体制の充実(就職相談窓口の充実など学生の就職支援の環境整備,学生に関わる事件・事故等に適切に対応する体制の整備や,学内外の関係機関との連携・協力の促進等を含む。)。
  • 学生支援の多様な機能・窓口を充実させるとともに,学生のあらゆる相談に応じる窓口をワンストップ・サービスで行う。
  • キャリア支援における高校と大学との協議機関の設置など連携・協力体制。
  • 大学生のキャリアパスの多様化に伴う大学と企業等の連携協力への支援。
  • 留学生支援における優れた教育や学生生活支援に関し,共同利用も含めた支援。

(イ)各大学院は,学生の学修状況,特に長期欠席者の実態や満期退学者の進路等に関する実態等の把握に努め,状況に応じた指導・支援。

(ウ)学生の就職活動の早期化・長期化の問題に関し,学士課程における学修や,修士課程における学修・研究活動に支障を及ぼさないような在り方について,今後とも民間企業等と連携した検討。

(2)専門的人材養成の在り方

 教育の質の保証と向上に関しては,分野を横断する観点とともに,個別分野における具体的な検討も求められる。そこで,高度専門職業人養成に関わる分野として,医療系分野,獣医学,法曹,工学,IT,知的財産等に関し,分野を横断した人材養成や質保証について検討し,以下のとおり論点を整理した。

1.専門的人材養成システムの在り方

  • 産業界や卒業後の人材需要等を踏まえた人材養成システムを構築するため,幅広い関係者による連携協力体制を構築。
  • 職業資格につながる分野では,一貫した人材養成体制の構築や適正な養成規模の確保等のために,省庁間で密接に連携協力。
  • 文部科学省は,専門分野別の人材養成に係る一層の質保証を図るために,専門分野別の人材養成の在り方に関する検討会等を活用し,引き続き専門教育を振興。

2.専門的人材養成の質保証の在り方

  • 専門的人材の質を保証するため,産業界や職能団体等との連携協力により,共通的な到達目標(モデル・コア・カリキュラム)の策定,達成度を評価する共通試験等を構築。その際,資格試験との整合性や卒業後の研修等の継続教育への円滑な移行を十分考慮。
  • 産業界等が求める資質や能力の向上を図るために,産学連携協力によるインターンシップなど実体験に基づく教育や,教員のインターンシップを行う。
  • 専門分野における教育の質を保証するため,分野別の第三者評価は必要かつ効果的。ただし,分野別の評価では,日本技術者教育認定機構(JABEE)の技術者教育プログラムの認定のように,教育課程を特定できることが重要。

3.職業資格につながる分野における取扱い

  • 職業資格につながる分野では,社会的な人材需要の動向にとりわけ留意する必要があり,そのことを踏まえて,適切な入学定員及びこれに対する教育行政の関与の在り方を検討。
  • また,教育の在り方や適切な入学定員の在り方が,従来,職業資格とのつながりからのみ論じられてきた分野にあって,近年の科学技術の進展や社会全体の変革の中で,イノベーションを支える新たな役割が見いだされてきているようなものについては,そのような新たな観点からの検討も併せて行う。
  • 大学制度全体を通じた公的な質保証システム(設置基準,設置認可及び認証評価の3つの要素)に加え,職業資格につながる分野では,モデル・コア・カリキュラムの作成,学修成果の測定,分野別評価等の仕組みを整備・充実。

(3)学位プログラムを中心とする大学制度と教育の再構成

 現在の設置基準の諸規定や諸制度は組織を中心に構成されており,これを学位プログラムを中心としたものに再整理する必要性が「将来像答申」以降指摘されてきた。
 大学制度や教育活動について,学位を与えるプログラム中心の考え方に再構成することで,公的な質保証と,大学の自主的・自律的な質保証を実現していくアプローチが考えられる。その場合,以下のようなメリットが挙げられる。

 (ア)学位プログラムを中心とする大学制度の整理は,大学の教育目標の明確化と,体系的な教育課程の整備につながる。
 (イ)また,各大学が,自らの提供する教育の中身を明確にすることは,分かりやすい大学情報の提供につながり,世界の優秀な学生や教員・研究者の確保等を通じ,国際競争力向上にも重要。

 ただし,学位プログラムを中心とする大学制度と教育の再構成については,そもそもの見直しの必要性や,国際的・歴史的に確立されてきた大学制度の本質,とりわけ団体性や自律性との関係もあり,導入の是非について,委員間の共通理解を図りながら引き続き審議を行うこととする。以上のような観点から,学位プログラムを中心とする大学制度と教育の再構成に関して,以下のような検討課題が考えられる。

検討課題(例)

ア 学位プログラムを中心とした大学制度を導入する意義。

  • 学位プログラムの導入の必要性
  • 学位プログラムが大学教育の課題の解決に向けて果たす役割

イ 学位プログラムの実施に係る教育課程等。

  • 学位プログラムと大学の教育研究の基本組織(学部,研究科,学科等)との関係
  • 学位プログラムの教育の責任主体
  • 学位プログラムの実施に係る教育課程等の在り方

ウ 学位プログラムを中心に整理した場合の大学の管理運営の在り方。

  • 教員の所属組織の在り方
  • 学生の所属組織及び履修支援等の在り方
  • 大学全体のカリキュラム・ガバナンス体制と学位プログラムとの関係

エ 学位プログラムを中心に整理した場合の関係法令の規定の在り方。

  • 学校教育法の改正事項の整理
  • 大学設置基準等の改正事項の整理

お問合せ先

高等教育局高等教育企画課高等教育政策室

(高等教育局高等教育企画課高等教育政策室)

-- 登録:平成23年03月 --