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第3 教育体制の充実

1.質の高い教員の確保

【改善の方向性】

  • (1)各法科大学院においては、法律基本科目をはじめとする法科大学院の教育上主要な科目について、年齢構成にも配慮しながら、適切に専任教員を配置し、十分な教育体制を確保すべきである。
  • (2)平成25年度まで認められている学部等との教員数のダブルカウントの暫定措置については、延長しないこととする。各法科大学院においては、可能な限り早いうちに自主的にこれを解消することが望まれる。
  • (3)認証評価機関による評価においては、当該分野の状況などを踏まえながら、教員の資質・能力・実績について、適切に評価が行われることが期待される。

【現状】

  • 多くの法科大学院において、法律基本科目(特に民事訴訟法、刑事訴訟法、民法、行政法など)や展開・先端科目(特に司法試験の選択科目である知的財産法、環境法、経済法など)の専任教員の確保が困難となりつつある。
  • 現状では、多くの法科大学院において専任教員数のダブルカウントが行われており、将来的な解消にあたっては、学部や博士課程との連携や法科大学院の教育体制の維持について、関係者の間で懸念が生じている。
  • 教員の年齢構成に偏りがある法科大学院が見られ、認証評価においても改善が指摘されている。

2.入学定員の見直しと法科大学院の教育課程の共同実施・統合等の促進

【改善の方向性】

  • (1)法科大学院の設置については、司法制度改革審議会意見書を踏まえ、関係者の自発的創意を基本としつつ、基準を満たしたものを認可することとし、広く参入を認める仕組みとなっている。
  • (2)今後、法科大学院教育の質の一層の向上のため、例えば、以下のような状況が見られる法科大学院については、自ら主体的に入学定員の見直しを個別に検討する必要がある。
    • 1入学定員の規模に比して質の高い教員の数を確保することが困難
    • 2志願者が減少し競争率が低いため質の高い入学者を確保することが困難
    • 3修了者の多くが司法試験に合格していない状況が継続
  • (3)特に小規模の法科大学院や地方の法科大学院において、今後、単独では、質の高い教員が十分確保できず、充実した法律基本科目や幅広い先端・展開科目の提供が困難となるなど、教育水準の継続的・安定的な保証について懸念が生じている場合には、他の法科大学院との間で教育課程の共同実施・統合等を図ることを積極的に検討する必要がある。
  • (4)このような各法科大学院における教育課程の共同実施・統合等が促進されるよう、教育体制の整備のための必要な支援が望まれる。
  • (5)これらの取り組みによって法科大学院全体の入学定員が縮小され、法科大学院修了者が相当の割合で法曹資格を取得できるようになれば、優秀な法曹志望者の法科大学院への入学を促進することにつながることが期待される。

【現状】

  • 志願倍率が3倍を割っている大学が13校に達しており、一部の法科大学院においては、適性試験の成績が満点の半分にも達しない学生を入学させているケースも見られる。
  • 法科大学院の約8割近くが、法律基本科目の専任教員の完全な確保は困難であると考えている。
  • 入学定員が50人以下の比較的小規模な法科大学院は36校で、全体の約半数近くとなっている。
  • 文部科学省において制度改正が行われ、平成22年度より、国公私立の大学における教育課程の共同実施が可能となる。

3.教員養成体制の構築

【改善の方向性】

  • (1)ダブルカウントの暫定措置終了後も、法科大学院の教員が博士後期課程における研究指導に携わることにより、優れた研究・教育能力を備えた教員を育成していくことができるような配慮について検討が必要である。
  • (2)研究科(博士課程・修士課程)との連携を図りながら、複数の法科大学院が、その一つを基幹校とした連携型の教員養成システムを構築することも考えられる。
  • (3)法科大学院のカリキュラムにおいても、法科大学院の教員を志す学生のために、外国法や研究論文の作成などの選択的な学習ができるような科目配置を行うよう配慮することも考えられ、その際、他の研究科・他専攻の履修単位数の法科大学院修了要件単位数への算入の仕方についても整理が必要である。
  • (4)法科大学院生が、法科大学院修了後に後期博士課程に進学することは、経済的な負担が大きいため、授業料免除や奨学金の充実など経済的支援の充実をも図るべきである。

【現状】

  • 法科大学院修了者のほとんどは法曹の道に進むことを希望するため、特に博士後期課程への進学を希望する者が減少してきており、将来的な法科大学院教員の養成に懸念が生じている。
  • 博士課程に進学するなどして教員を目指そうとする法科大学院修了者等については、経済的な負担が大きいが、奨学金など経済的な支援が十分でない。
  • 法科大学院のカリキュラムにおいては、研究論文の作成や外国法といった研究者養成に必要な基礎的な教育が十分なされる体制になっていないとの指摘がある。

4.教員の教育能力の向上

【改善の方向性】

  • (1)教員の教育能力の向上を図るため、各法科大学院におけるFD(ファカルティ・ディベロップメント)を充実させるとともに、その成果を授業内容・方法の不断の改善につなげていく体制を整備する必要がある。
  • (2)教員の教育能力についても、適切な評価のあり方や、評価の結果が改善に反映されるような仕組みを検討する必要がある。

【現状】

  • ほぼすべての法科大学院においてFDのための組織が設置され、FD活動の一環として、主に学生による授業評価や教員相互の授業参観などが実施されている。しかし、これらの取組みの成果についての検証や教育内容・方法の改善への結びつけが十分に行われているとはいえない。
  • 特に、学生による授業評価については、すべての法科大学院で実施され、その結果は授業を担当する教員にフィードバックされているものの、授業評価の結果が授業内容・方法の改善のために十分活用されているとは言えない状況も多く認められる。