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資料8

法科大学院制度の創設を踏まえた法学部教育の改革

京都大学 土井真一

1. はじめに
 
法科大学院の概要
   司法試験という「点」のみによる選抜ではなく、法学教育、司法試験、司法修習を有機的に連携させた「プロセス」としての法曹養成制度の整備(「司法制度改革意見書」)

  平成16年4月から専門職大学院として開設
 
  標準修業年限は3年(但し、法学既修者については2年での修了が可能)
少人数クラスでの双方向・多方向型授業による理論と実務を架橋する教育
法科大学院を修了した者を対象とする新司法試験の実施
 
法科大学院の現況(平成18年4月1日)
 
法科大学院 74校   入学定員 5,825名
  修了者数 2,176名(平成18年3月)
  新司法試験合格者数 1,009名(平成18年9月)


2. 問題の所在
 
(1) 法科大学院設置に伴う2つの課題
  1法学部の在り方2法学研究者養成の在り方
(2) 法学部の在り方をめぐる問題
 
法学系学部の現況(平成18年4月1日)
 
法学部   93学部   入学定員 34,598名
法経学部 2学部 入学定員 540名
法文学部 4学部 入学定員 1,425名
現代法学部 1学部 入学定員 250名
  36,813名
 
法学士の進路と教育の在り方
(従来の在り方)
法曹に限定されない多様な進路 ←法学士に対する社会のニーズ
→法学部教育
 法曹養成への対応プラスリーガル・リテラシーの習得を目指すジェネラリスト教育
→社会におけるリーガル・リテラシーの底支え
(今後の動向)
新しい法曹養成制度の下での法曹人口の増大
→法曹の役割の拡大
法学士に対する社会的ニーズの実態は?
(3) 法科大学院教育と法学部教育との関係
  高度専門職業人教育としての法曹養成教育は、原則として、法科大学院で行われる。
  →法学部教育は、法曹養成教育それ自体を行う場ではない。
  (問題)
  法学既修者を対象とする2年修了コースの存在
  →法学部教育は、法曹養成の基礎教育を担う現実
(4) 高度専門職業人教育の在り方
  専門職業人教育における専門職大学院と学士課程・修士課程との役割分担
 
専門職大学院
:法曹(法科大学院)、行政官等(公共政策大学院)、経営者等(経営大学院)
6年制学士課程
:医師(医学部)、歯科医師(歯学部)、薬剤師(薬学部)
修士課程
:エンジニア(工学系研究科修士課程など)
  専門職大学院に相応しい高度専門職業人教育とは何か?
  →その前提となる学士課程教育とは何か?
  専門職業人教育の高度化の要因
 
1 専門職に固有の知識・能力の高度化
2 専門職に外在的な知識・能力の重要性

3. 法学部教育の今後
 
(1) 法学部の自己認識
 
法学部教育におけるこれからの教育目標について、貴学部では現在どのようにお考えでしょうか。
 
(1) 主として法学部色を薄めてリベラル・アーツ的な教育を志向する。   6(6.6パーセント)
(2) 主として学生の多様な進路に応じた法専門職業的な教育を目指す。 32(35.2パーセント)
(3) 主としてジェネラリストを養成する法学専門教育を目指す。 20(22.0パーセント)
(4) 検討中である。 13(14.3パーセント)
(5) その他12 (13.2パーセント)
法学部の今後についてどのような見通しをお考えでしょうか。
 
(1) 現状のままで存続する。   22(24.2パーセント)
(2) 役割を見直し、法学部の枠組みを堅持しつつも、新しいあり方を発展させる必要がある。 60(65.9パーセント)
(3) 当面このままだが将来文系他学部との統合・再編がありうる。 5(5.5パーセント)
(4) 廃止することがありうる。 0
(5) その他 3(3.3パーセント)
  日本学術会議第2部「法科大学院の創設と法学教育・研究の将来像」より
(2) 考えられる方向性
 
1 教養教育
  教養教育の意味
 
古典的意味での教養
法学以外の分野の知識
法学教養教育
  他の学問分野と法学の連携
  副専攻制度
  学士課程の早期修了
2 法学専門基礎教育
  ジェネラリスト教育としての法学教育
法科大学院への準備教育
3 準法曹など進路にあった職業人養成
  司法書士などの隣接法律専門職の養成
(3) 山積する課題
 
1 新司法試験をめぐる問題
 
合格率問題
 
  法科大学院の定員と新司法試験の合格者数の不均衡
過剰な受験競争の再燃の危険
受験教育の前倒し
予備試験の制度設計の問題
  法科大学院自体の相対化
2 法科大学院設置に伴う教育負担の増加
  兼任・兼担教員の負担
学部担当教員の不足
教員確保の困難性
3 学部教育の成果を評価する方法の開発
4 学士課程と法科大学院間での人材の流動化と改革の進め方
 
法科大学院の入学者に占める自大学・自学部生の比率の相対的低下
法学部や他の学士課程と法科大学院との関係の整理は、各大学の対応では不十分
  法科大学院入学者選抜制度のもつ影響力

4. おわりに
  法科大学院・法学部を超えた課題
  大学の多様化


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