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資料4

企業が求める学生像考察例

2006年4月14日
東レ経営研究所 黒田 薫

1.人事採用担当者の学生(応募者)に対する印象、感想

 
1. 全般的印象:
 一番強く感じていることは、「大人との会話に慣れていない」学生が目立つこと。言い換えれば自分の経験を概念化し、自分の意思を、世代を超えたバックグラウンドの異なる相手にも伝える訓練が為されていない学生が目立つこと。それは学力の高低とはあまり関係がない印象を受ける。また入社後も「仲間同士で生きている世界」をひきずっているイメージもある。他社の人事の方もおそらく同じ印象をもっているのではないか。この点からの変容が入社後初期の段階での課題と考える。

2. ゼミについて:
 1にも関係するが、論理的に考えて材料を収集し、相手を納得させる訓練を積んでいない学生が目立つ。基礎訓練が不足している。例えば、ゼミナールは大学における極めて価値の高い教育訓練の場の一つと考えているが、ゼミ指導者が、自由にテーマを選ばせて自由に研究をさせている例が多いと聞く。実際は基本ができていないことが多いので、砂上の楼閣、成果も低い気がしている。ゼミの指導者はしっかりとしたテーマを設定し、必要なリードをもう少しすべきではないか。何しろ基礎訓練が欠けているわけだから。
 (ただし、理科系研究系ではしっかりとしているところが多い)

3. アルバイトについて:
 面接の際、自分が、例えば居酒屋などでしっかりとアルバイトをしたことで、社会の厳しさや様々な側面を理解できた、人間関係も学んだ、とPRする学生が多い。アルバイトを通じて学びを得る学生も多いし、アルバイト自体は有意義な活動だと思う。ただ、人事担当者として時に違和感を感じるのは、たとえば「居酒屋の仕事」は入社後期待している、あるいは実際にやっていただく仕事とは異なるという事実である。この事を取り違えている学生も意外に多い。アルバイトという社会との接点から個人として何を学んだかをしっかりと考えること(ある経験を一般化したり概念化する癖)をつけるよう学生に指導いただきたいと思う。 (もちろんクラブにもゼミにも属さず、何もしないよりはマシなのではあるが)

4. 専門技能やコンピテンシー、語学などについて:
 近年注目度が高い「論理的思考能力」や「コミュニケーション能力」などは現在も、そしてますます企業から見て重要性は増すであろう点では異論が無い。しかしそれらの能力は社会との接点において鍛えられるものであり、大学の講座で取り上げてどうこうするものではないと考える。その前提の基礎力の付与は学校教育で対処すべきテーマと考えるが。
 専門技能については、いわゆる理科系の学生は、厳しく指導を受けているためか、今も昔も勉強をしている学生が多いし、入社後も専門性や技能を生かす配属が、特にメーカーでは配慮されているようには思う。
 語学、とりわけ英語(米語)については個人差がかなりある。最近の学生の平均的語学レベル自体は、留学する機会が増えたためであろうか、たとえば(統計的裏づけで確認したわけではないが)20年前と比べて高くなったと感じている。たまたま語学の上達機会に恵まれなかった学生に対しては、和製英語でも良いから最低限の押さえ、特に英会話についてはある程度教育していただくことは必要と思う。英語抜きに直接的間接的に世界を相手にしないビジネスはこれからの日本では考えにくいからである。
 なお、蛇足であるが大学そのものに対して「マナー教育」はあまり期待していない。もちろん採用の際、「マナー」というよりも最低限の「社会的常識」をわきまえているかの有無は学生を判断する上で大切な要素ではあるが、社会常識は本人と社会との関わり合いの上で身に付くものである。もし、ある大学の卒業生が著しく、社会常識に欠けるような傾向がみられた場合、その大学は社会との関わり方において何か工夫が必要かも知れないが、そこで教えている講座とはあまり関係ないのではないか。

5. 学生のやる気を高める力について:
 最後になるが、採用時に重視している感覚の1つに「知的好奇心を持っている」ことを感じさせる学生であるか否かという点がある。いろいろな世界に首を突っ込ませる、好奇心を掻き立てるパワー、言い換えれば「学生を巻き込む力」が一般に大学には不足しているのではないかと感じている。例えばあるテーマを興味をもって最後まで「やりぬく」ことを後押す力や「場」作りの力が大学に欲しいと思う。
 さらに、大学は「部活やサークル」「アルバイト」で終わる場所ではなく「総合的に学ぶところ」であるという強い意志を大学側からメッセージとしてもっと強く発信し、納得させる工夫ができないだろうかか。(発信しているのかもしれないが)
 その仕組みは各大学でしっかりと考えていただきたいと思う。

2.採用したい人物とチェックポイント (長年変化なし)
 
1. 必須項目:
【共通】
(1) 大学時代を真摯な態度で過ごした
(2) 大卒としての一定の知的水準(テーマ設定できる、議論できる)を持つ
(3) 社会生活・企業活動への適応性を有する
【事務系】
(1) 国際的に活躍できる素養と気概を有する
(2) 高度な専門知識がある
【技術系】
(1) 国際的に活躍できる素養と気概を有する
(2) 高度な専門能力がある
2. 性格特性:
【共通】
(1) 明るくバイタリティーがある
(2) 若者らしいひたむきさと柔軟性がある
(3) 反応が良い(感度・勘の良さ)
【事務系】
(1) 時代への鋭い感性がある
(2) 好奇心旺盛で先端技術に即応できる
(3) 分析力、論理性がある
(4) フェアで誠実である
【技術系】
(1) 指導力、包容力がある
(2) 探究心・使命感が強い
(3) 独創性がある
3. 行動特性:
【共通】
(1) 物事に前向きに取り組む
(2) 困難にめげない(打たれ強い)
【事務系】
(1) 自ら企画し提案できる
(2) チャレンジ精神をもって行動できる
(3) フレキシブルな対応ができる
【技術系】
(1) 広く物事をみることができる
(2) 機敏で迅速な状況判断ができる
(3) 情熱をもって物事に立ち向かえる

3.一般的に忌避されやすい定性要因 (別に学生に限らないが)
 
表面的な思考、掘り下げの不足、本質を捉えようとしない姿勢   能力が無いのではない【思考の欠如】
自ら考えることがそもそもできない、しない 【自立の欠如】
自分のとった行動について 及ぼす影響がわからない【想像力の欠如】
行動を起こせない 【勇気の欠如】
「触らぬ神に祟りなし」おせっかいに対する忌避
他人とコミュニケーションをとるのが苦手 自己主張に対する気後れ?習慣が無い【コミュニケーション能力(訓練?)の欠如】
社会的なマナー、社会性が思考から欠落 【思いやりの心の欠如】

4.企業内研修(メーカー)の新入社員教育例
   学生から社会人に脱皮させる重要な役割を担う新入社員研修についてのカリキュラム内容と全社研修のご紹介

*新入社員教育:(全12日間、うち英会話5日間)
(1) 入社式
(2) 講話(社長、幹部)
(3) 講座(経営戦略・企業倫理法令順守・安全衛生防災環境・人事勤労施策・人権・労働組合・各部門説明など)
(4) 研修
ビジネスの基本(マナー、文書の書き方)
コンセンサスゲーム
(5) 先輩社員との交流
(6) 職場訪問
(7) 行動目標作成
(8) 英会話研修、TOEIC(トーイック)受験
以上


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