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資料2

制度部会での検討課題に関する主な意見等

1  全般的事項

 グローバル化時代の大学像と高等教育の質保証というテーマについて考えると、我が国の一番大きな問題は、個人の資質・素養というものが、外部から与えられた資格と必ずしも一致しないということではないか。例えば、企業は有力大学の学生を採用する際、成績を殆ど考慮しない。また、採用後のキャリアパスをみても、必ずしも採用時に成績の良かった者が企業内で業績が良いとは限らない。日本の企業の資金が海外の研究機関に流出している点も実質的な資質・能力と資格との不一致の問題との間に深い関係があるのではないか。
 例えばアメリカでは、個人の能力と資格の間に比較的矛盾がなく、期待値が一定している。ところが、日本の場合は、それらがもともと直接連動していないという側面があるため、採用や投資の方法が常に形式的にならざるを得なかったという経緯がある。
 高等教育の質保証のためには、どのように制度化をすれば外的標識と実力が一致するかについて議論する必要がある。

 大学設置基準について議論する際には「大学とは何か」という問題に常に直面する。可能な限り、今こそ「大学とは何か」について議論する場が必要なのではないか。

 「大学とは何か」について議論するのであれば、大学だけではなく、初等中等教育機関を含めて全体を見通した議論をしなければならない。学部、大学院を通じた大学教育全体の在り方というものを真剣に議論すべきではないか。

2  グローバル化時代の大学像

グローバル化時代の大学の諸機能についての考え方(教養教育・専門教育・職業教育、研究、社会貢献等)

グローバル化時代に相応しい「キャンパス」像(教育形態の多様化、通信制と通学制の教育・研究環境等についての考え方)

 我が国の高等教育に対する公財政支出は、欧米諸国の半分以下となっており、とりわけ私費負担が高いということからも、公財政支出の拡充を図る必要がある。現在、公財政支出には、国立大学の運営費交付金や私学助成のような基盤的経費と、国公私立大学を通じた大学教育改革の支援のための補助金や科学研究費補助金等の競争的資金があるが、様々な視点からの資金調達を充実させる必要がある。また、国の厳しい財政事情に鑑み、外部資金の導入についても検討する必要がある。

 一方、産業界からの資金が、国内大学に比べて海外の研究機関に約2.5倍も流れているというデータもある。外部資金等を含め、様々な観点から「きめ細やかなファンディング・システム」について検討する必要がある。

 時代の要請に柔軟に対応できる教育研究体制を作るため、大学のマネジメントがそれに寄与するようなシナリオが必要ではないか。「これまでの大学像を堅持する」という考え方とは趣を異にすると考える。「モラル」と「大学像」については、分けて考えるべきではないか。

 「大学とは何か」という問題は、単一のモデルを作り出そうとするものではなく、多様なニーズに応え得るような高等教育の一つのセクターとして、どのようなことが描かれるか議論すべき。
 大学の可能性を探る中で、最低限の共通認識を持つことが必要だと考える。大学の目的は社会や時代の要請に応じて刻々と変化するものであるが、どれだけ変化に対応する必要があるのか議論すべき。変わらざる高等教育の価値、大学の価値とは一体何かということも議論すべきではないか。

設置形態の枠組みを超えた連携促進方策

研究活動、教育活動及び大学経営等のそれぞれを支える人材の資質向上方策と処遇確保の在り方

中高年を含めた社会人の勤務形態やキャリア・パス等の柔軟化への対応

高等教育改革への支援と多元的できめ細やかなファンディング・システム

3  高等教育の質保証

設置基準や設置審査における視点の明確化(大学設置・学校法人審議会との連携)

 「新時代の大学院教育(答申)」の提言内容に対応する学士課程段階での設置基準の改正についても、当部会で議論し、大学設置基準の改正につなげていくべきである。

 大学審議会の時代から何度も大学設置基準を改正しているが、一部には改正した事項が実態に合わなくなってきているものがある。再改正が必要と思われる事項がどれくらいあるか一度整理すると、課題が明らかになるのではないか。また、大学設置・学校法人審議会では審査に当たってどのような課題を抱えているのか等、現行基準の問題点を明確にすると良いのではないか。

 産業界あるいは社会全体に対して大学卒業者がどのように貢献し得るのか、それに対して、高等教育はどのように質の保証ができるのかといった背景の部分の議論も必要ではないか。

 現在、既設学部等の直近の平均入学定員超過率が1.3倍を超えた場合に新たな設置認可を認めないこととしているが、高等教育の質保証について長期的に考えた場合、定員割れが常態化しつつある点をどのように考えるか等、大学の定員の在り方についても議論する必要がある。

 「大学院等の設置の弾力化」として、基礎となる学部等の設置から2年以上経過しなくても大学院の設置が認められるよう制度改正を行うとしても大学院の質保証の仕組みの在り方については、さらに議論を深めていく必要がある。

 現在の高等教育状況を取り巻く全体の流れは事前チェックから事後チェックへという流れであるが、しかしながら事前チェックにおいて国の関与を全て否定するような風潮があることは大いに疑問を感じる。

 準則主義化により設置審査の簡素化が進み、事前チェックが機能しないとの懸念を持つ者も多数いる。「法令で禁じていないことは何をやってもよい」という考え方が流布しているのではないか。重大な問題を抱えている事案であっても、準則主義に基づき認可せざるを得ない状況にも直面している。

 教員の構成については、個々の教員が教授するに相応しい能力と資質を持っていたとしても、大学全体の教員組織としてのバランスが著しく崩れているのであれば、問題であるとしか言いようがないのではないか。

 大学というコミュニティとしての文化が崩壊しつつある現在、公正な競争のため、また、質保証のためにも様々な基準等の曖昧さを改め、抽象的な表現を補い、より公正なルールを整理する必要があるのではないか。

 大学施設、教育課程など様々な問題の中で、専任教員の要件については、さらに明確化が必要であり、早急に具体的な議論する必要があるのではないか。さらに、事前チェックで指摘した事項について、完成年度を過ぎた後にフォローする明確な仕組みが現在ない状況であることからも、一貫した継続的な仕組みを作る必要があるのではないか。

認証評価の着実な実施と充実

 認証評価制度について、今後、どのように動いていくのか。制度を全体的にとらえ、制度上の問題点等を洗い出し、議論することも必要ではないか。

 認証評価が平成16年度に制度化され、現在5つの機関が評価機関としての認証を受けている。約1,200の大学・短大が7年に一度評価を受けることとなっており、進行状況も見ながら、必要に応じて議論する必要がある。

 設置認可と認証評価の二重構造化で米国同様、日本でも多様なステークホルダーとの調整の問題が起こっている。アウトカムに注目した評価の開発が課題であり、特にディグリメントについての情報等は日本でも情報提供の保護請求する必要があるのではないか。

 日本では、自己点検・評価を行っているが、同時に指標づくりを行うことで、評価の正確性や意義付けを意識した改革につながっていくのではないか。

 アクレディテーションも第三者評価も基本的には目的理念があり、学生がその目的を達成できているか、あるいは大学のステークホルダーの要求に沿った学生が育っているかが基本ではないかと感じるが、これでは、大学という組織体の基本的な最低レベルの保証をすることでしかなく、一方で質をどのように保証するのかという問題が出てくる。

 アクレディテーションについての議論は、欧州のようにボローニャプロセスの量的なものと合わせながら質的な基準をどこでとるか、もしくはアメリカのように様々な尺度のランキングと比較することで質的な基準をとるかという視点があるが、日本でもそういった視点で議論を始めるのがよいのではないか。

分野別評価の考え方

 職業関連分野の大学院は専門学校との境界も曖昧であり、また、専門職大学院制度が創設されたことで、より一層棲み分けが複雑になっている。法科大学院以外は分野別の評価の仕組みがない。大学院の評価をどのように行うのかについても検討する必要がある。学部段階においても、職業教育については、特別な評価の仕組みが必要ではないか。

機能別や教育形態別の評価の考え方(例:教養教育、e-learning等)

評価する側の適正さや質の確保・向上方策

 認証評価については、評価機関が複数存在していることから、ある機関では大学として認めるが、他の機関では認めないということが起こり得る。それ故、「大学とは何か」ということを一義的に決めてしまうのは問題があるのではないか。「大学とは何か」という問題は、結局は認証評価機関の多様性の中に求められている問題ではないのか。

 日本の大学評価機関が国際的なレベルに並ぶには時間がかかるが、それ以前の問題として、積極的に、国、評価機関、個々の大学が連携をし、良質で正当な情報提供を迅速・適切に行うことが大事。
 ランキングの正当性の問題に対しては、それを否定するのではなく、諸外国の例を参考にしながら至急にデータベースの構築等を行い、ランキングをされても十分に対応できる良質の情報を提供していくことが大事ではないか。

 情報発信については、長い歴史のある設置認可ですら必ずしも浸透しているとはいえないと感じる。スタートしたばかりの認証評価と併せて、国・評価機関・大学は、日本の大学の質をどう今後どう保証していくかを情報発信すべき。

 評価の問題は国内以上に国際的なものが重要性を増しており、どのような手法で質の担保をしているのか発信し、日本の認証評価機関の特異性を国際的に理解してもらう必要がある。併せて、米国で見られるように評価機関を統一しようとする動きがある中で、日本で今後増えていく評価機関をどう捉えるのか議論する必要がある。

国際的な高等教育の質保証ネットワークの構築

 評価機関についても、アジア太平洋地域でアクレディテーションの合同実施や総合認証の可能性まで踏み込んだ多国間協力が必要で、その上では、日本は国際機関に積極的に関わり、相互協力を図ることも大事ではないか。

4  その他

 世界の主要な国際機関もすでに大学ランキングの影響力の大きさを認識しており、「ベルリン原則」発表に見られるように、その信頼性を向上させようとする動きが見られる。

 日本の大学が国際戦略を考える際には、認証評価や質保証の前に、まず現実的な問題として、例えば、学部名等の専門用語についての翻訳、表記、また、それらの分類等をどう統一するかといった問題を整理し、どう周知徹底させるかということが前提ではないか。


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