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資料5
中央教育審議会大学分科会
将来構想部会(第12回)H14.6.7

大学の質の保証に係る新たなシステムの構築について
(答申)案

平成14年  月    日
中央教育審議会

目次

  中央教育審議会「大学の質の保証に係る新たなシステムの構築について」(答申)

はじめに
  基本的な考え方
  設置認可の在り方の見直し
  第三者評価(適格認定)制度の導入
  法令違反状態の大学に対する是正措置
  留意点
   
附属資料
    中央教育審議会「大学の質の保証に係る新たなシステムの構築について」中間報告概要
   
参考資料
    大学の質の保証に係る新たなシステムの構築に関する資料

 

(はじめに)

  本審議会は,平成13年4月11日に,文部科学大臣から「今後の高等教育改革の推進方策について」諮問を受け,大学分科会において,多岐にわたる高等教育の課題についての調査審議を進めている。
   
  このうち,大学等の設置認可の望ましい在り方等については,従来,審査期間の短縮化や申請書類の簡素化など設置認可の弾力化を図ってきたところであるが,今後更に,大学の教育研究の質の維持向上を図りつつ,社会の変化や学問の進展に的確に対応し,大学の主体的・機動的対応をより一層可能とする観点から,設置認可の在り方の見直しや大学に対する第三者評価制度の導入について調査審議を行うこととし,同年6月に大学分科会の下に将来構想部会を設置した検討する必要があると考えられる。
   
  将来構想部会ではこのため,本審議会は,同年6月に大学分科会の下に将来構想部会を設置して,これらの課題について,審議の概要を総会に報告して公表するとともに,関係者からのヒアリングを実施するなど専門的かつ慎重な調査審議を重ねてきた。
   
  本審議会は,その結果に基づき,さらに総会及び大学分科会で審議を行い,このたび,大学の質の保証に係る新たなシステムの構築について結論を得たので,ここに答申を行うものである。
   
  このたび,将来構想部会における審議の概要を以下のとおり取りまとめたので,「中間報告」として公表することとした。今後,本審議会においては,この「中間報告」に対して各界各層から広く意見をいただき,それらを踏まえつつ,更に審議を進めることとしたい。

 

1 基本的な考え方
(大学の質の保証の必要性)
  今後の国際社会においては,社会や経済など様々な面でボーダレス化が進み,国家間の相互依存・相互協力が進展して諸制度等の国際標準化が進む一方,競争も一層激しくなることが予想される。
  このような中,諸外国では自らの知的基盤を整備充実させ,それによって生み出させる「知」の積極的活用を図っていこうとしているが,大学が優れた人材の養成と独創的な学術研究の推進といった,言わば「知の創造と継承」という極めて重要な役割を果たしていることにかんがみ,各国とも国際的通用性の向上,国際競争力の強化等の観点から大学の教育研究水準の維持向上を目指しており,多くの国において第三者評価制度の導入に向けた取組が進められるなど,積極的に大学改革に取り組んでいる。
   
  我が国においても,諸外国と同様,これまで様々な施策を通じて大学改革に取り組んできており,現在なお進行途上にある。特に,「知の時代」とも言われるこの21世紀において,人材以外に資源の乏しい我が国が国際社会の中でリーダーシップを発揮し発展していく上で大学の果たすべき役割は極めて大きいものがあり,我が国における知的源泉として,その質的水準の確保を図っていくことが不可欠である。
   
  このため,大学が今後一層,人材養成や学術研究などの面で求められる責務を果たしていけるよう,その質を社会に保証していく必要がある。

(我が国の大学の質の保証システムの現状)
  大学の教育研究の質の保証については,現在,国による厳格な設置認可と各大学における自己努力に負っている。
   
  大学,学部等の設置に当たっては,国が大学設置基準等を基に審査し認可を行っているが,この設置認可制度は,我が国の大学が学生に対する教育研究水準や国際的な通用性などを確保する上で,一定の役割を果たしている。
   
  また,大学設置基準等において,大学はその教育研究活動等の状況について自ら点検・評価を行い,その結果を公表することが義務付けられているほか,その結果について当該大学の職員以外の者による検証を行う努力義務が課せられている。この自己点検・評価は,各大学が自らの教育研究の理念・目標に照らして評価し,その結果を踏まえて大学が改善を図っていくものであり,大学の自主的・自律的な質の充実に資するものである。
  なお,文部科学省の調査によれば,平成1312年10月現在,すべての国公私立大学のうち92%の大学で自己点検・評価を実施し,7574%の大学でその結果を公表しているが,学外者による検証は3226%の大学にとどまっている。

(規制改革の流れ)
  大学の設置認可制度は,その教育研究の質を保証する上で一定の役割を果たしている一方,組織改編には国の設置審査が必要となることから,大学が社会の変化やニーズに応じて自らより積極的に対応できるよう,設置認可制度を弾力化すべきとの意見がある。
   
  また,我が国の行政システム全体の動きとして,国による規制を可能な限り緩和し,事前規制型から事後チェック型へと移行する方向にある。
   
  こうした流れを踏まえ,国の事前規制である設置認可制度を見直し,学問の自由,大学の自主性・自律性の尊重等を踏まえて国の関与は謙抑的としつつ,設置後も含めて官民のシステム全体で大学の質を保証していく必要がある。
  なお,このことは平成13年12月に総合規制改革会議が取りまとめた「規制改革の推進に関する第1次答申」等においても提言されている。

(改革の方向性)
  以上のことを踏まえ,国の事前規制である設置認可を弾力化し大学が自らの判断で社会の変化等に対応して多様で特色のある教育研究活動を展開できるようにするとともに,大学設置後の状況について当該大学以外の第三者が客観的な立場から継続的に評価チェックを行う体制を整備することにより,大学の自主性・自律性を踏まえつつ,大学の教育研究の質の維持向上を図り,その一層の活性化が可能となるような新たなシステムを構築することとする。

 

2 設置認可の在り方の見直し
(設置認可の対象)
  大学の組織の新設・改廃には国の認可が必要であり,具体的には,現在のところ,学部の学科レベルまで認可の対象としている。この場合,国は大学設置基準等を基に,1教育研究上の理念など設置の趣旨が具体的かつ明確に示されているか,2設置の趣旨に照らし教育課程は適切であるか,3教育課程を展開するのにふさわしい教員組織であり,かつ,校舎等施設・設備が質的にも量的にも十分であるか,などの観点を中心に審査し,大学設置・学校法人審議会に諮問した上で認可している。
   
  大学の自主性・自律性を尊重し,国による事前規制を一層緩和するという考え方を踏まえ,大学が主体的・機動的・弾力的に組織改編できるよう,設置認可の対象は,大学の教育研究の質を確保する上で事前に審査することが必要不可欠なものに限定する。
   
  設置認可の対象を限定する方法として,大学の基本組織である学部のみを認可対象とし,その下部組織である学科は届出事項とすることが考えられるが,この場合,同一の学位を授与する課程でも学科にするか学部にするかという組織の違いだけで取扱いが異なるという問題が生ずる。したがって,もともと学位授与権の付与が国際的にも歴史的にも大学の設置認可の際の重要な要素になっていることも踏まえ,今後の設置審査においては,新設する学部等が授与する学位と従来から授与している学位の異同,すなわち,学位の種類(学士,修士,博士)や対象とする学問分野に変更があるのかという観点を新たに加味し,かつ,その点を重視して認可の必要な場合を整理することが必要と考えられる。
   すなわち,当該大学の設置時に想定された学位授与権の範囲を超えるような組織改編であるかどうかを判断の基準とすることが適当である。
   
  したがって,国の設置認可は,大学,大学院の基本組織である学部,研究科等の新設・改廃について行うことを原則とするが,学部の設置は認可,学部の学科の設置は届出といった一律な対応とするのではなく,改編前後で授与する学位に変更があるか否かを勘案して次のような弾力的な取扱いとする。
(1)   現在授与している学位の種類・分野を変更しない範囲内で組織改編する場合は,学部等大学の基本組織の設置であっても国の認可は不要とし,届出で足りることとする。
<イメージ例>
同一の学位を授与する昼間・夜間それぞれの学部を昼夜開講制の一つの学部に改組する場合は届出とする。
経済学部の中に経済学科と経営学科があり,経営学科を改組して経営学部を新設する場合は届出とする。
工学部の中に情報関連の学科があり,これらを独立させて情報工学部を新設する場合は届出とする。
理学研究科と工学研究科を統合して理工学研究科を新設する場合は届出とする。
(2)   新たな種類・分野の学位を授与する課程等を創設するための組織改編の場合は,学部の学科の新設であっても認可の対象とする。
<イメージ例>
医学部の中に既設の医学科とは別に看護学科を新設する場合は,看護学部の設置の場合と同様,認可の対象とする。
既設大学に新たに「法科大学院」の課程を設置する場合は,研究科として設置するか専攻として設置するかを問わず,認可の対象とする。
   
  学位の分野に関しては,現在,各大学がそれぞれの判断で適切な名称を付記しているが,今後の学部等の設置に当たっては,改編前後で授与する学位の異同によって認可か届出かが分かれることとなるため,どのような場合が「新たな分野の学位を授与する場合」に該当するかについての指標を定め更に整理し,明確化する必要がある。このような指標については,別添の分類例のように大括りの分類とする方向で,更に検討を進める。
   
  私立大学の収容定員は,学科又は課程を単位とし,学部ごとに学則で定めており,その増減に係る学則変更には国の認可が必要とされている。今回,大学の主体性をより重視する方向で,学部等の設置認可を弾力化することとなるが,組織改編に伴う収容定員に係る学則変更を引き続きすべて認可対象とすると,設置認可の弾力化の効果が半減することになる。また,収容定員が減少する場合については国が事前規制を行う必要性に乏しいことなどから,今後引き続き認可対象とするのは大学全体で収容定員が純増する場合のみに限定し,大学全体の定員内における学部等(後述するように,抑制の取扱いを継続することとされた場合の特定分野の学部等を除く)間の定員の増減は当該大学の裁量にゆだねることによって,大学による自律的な組織編成を容易にする。
   
  短期大学及び高等専門学校の学科の新設・改廃については,大学の学部に相当する短大の基本組織として,国の認可の対象を必要とするものの審査の手続や内容の大幅な簡素化を図ることとするか,あるいは,原則として届出とするかについて,引き続き検討することを原則とするが,改編前の学科が対象としていた学問分野を変更しない範囲内で組織改編する場合は,国の認可は不要とし届出で足りることとするなど,4年制大学と同様の取扱いとするこの場合,認可か届出か区分する指標についても,4年制大学の場合に準じて定めるものとする。
   
  以上の基本的な考え方を踏まえ,大学,大学院,短期大学及び高等専門学校に係る国の設置認可の主な対象は以下の事項とし,認可対象から除外するこれら以外の事項については原則として届出とする。
大学,大学院,短期大学及び高等専門学校の設置・廃止
新たな種類・分野の学位を授与する課程等の創設に係る学部等の設置
設置者の変更
大学全体の収容定員増に係る学則変更(私立大学等の場合)
   
  届出事項となったものについて,届出内容が法令に適合していない場合は,国は変更その他必要な措置が講じられるようにする。

(設置審査の取扱い方針)
  高等教育全体の規模に関して,これまで大都市部における設置の在り方を含め大学設置に係る審査については抑制的に取り扱ってきており,このことが大学の質の確保を図る面にも寄与してきたと考えられるが,平成  13年12月の総合規制改革会議第1次答申でも指摘されているように,こうした方針の見直しが求められているところである。
   
  大学,学部等の設置に関する審査に当たっては,現在,特定の分野を除いて抑制的に対応する方針がとられているが,大学が社会のニーズや学問の発展に柔軟に対応でき,また,大学間の自由な競争を促進するため,今後は抑制方針を基本的には撤廃する方向で検討こととする。   ただしなお,医師,歯科医師,獣医師,教員及び船舶職員の養成に係る大学,学部等については,人材養成の需要に対応できているため過去の高等教育計画において計画的な人材養成が必要とされた分野のうち概ね必要とされる整備を既に達成したこと,及び,それらの分野についての人材需給に関する政策的要請があることから,現在は全く新増設等を認可していないところである。り,このような規模や分野に関する現在の規制を残すことについては,大学の質の保証の観点から実施するものである設置認可制度の趣旨を徹底する観点からは問題があるが,それぞれの分野における政策展開に密接な関連を有するものであるため,設置認可制度の改善の観点のみから,これらの取り扱いを変更することは困難と考えられる。こうした例外分野の取り扱いについては,今後,高等教育のグランドデザインの一環として高等教育における人材養成の在り方を検討する中でこれらの分野について,例外として今後もその取扱いを継続する必要があるかどうかについて更に検討する。
   
  首都圏,近畿圏,中部圏における工業(場)等制限区域・準制限区域内の大学の設置等について抑制的に取り扱っているが,大都市部における大学の自由な発展を阻害している等の批判があり,工業(場)等制限法も廃止の方向にあることを踏まえ,抑制方針を撤廃する方向で検討こととする。
   
  なお,こうした抑制方針を撤廃するに当たっては,大都市部における過当競争の激化,地域間格差の拡大などから,教育条件の低下や学生の不安感の増大などを招く等が生じるおそれもあることから,例えば各大学における定員管理の厳格化等これらの点に引き続き配慮して,高等教育全体のグランドデザインた方策について別途検討する。

(校地に係る基準の見直し)
  大学設置基準等で定められている校地面積基準(校地が校舎の基準面積の3倍以上)及び校地の自己所有比率規制(原則として基準面積の2分の1以上が自己所有)については,学生等の多様な活動を可能にするとともに学校法人の資産確保の面で一定の役割を果たしていることから,数量基準は設定することとしつつ,その在り方について検討する(例えば,校地面積基準を校舎面積と連動しない形で定めたり,合理的な理由があれば基準の緩和を認めたりする等)。などの方法により,新たな数量基準を設定することとする。

(設置審査に係る基準の見直し)
  現在,大学設置審査の際に適用されている基準は,大学設置基準等の法令のほか,大学設置・学校法人審議会の審査基準や内規など様々な形式によって規定されているため,申請者の負担となっている面も見られる。こうした様々な基準の一覧性を高め,明確化を図る観点から,設置審査に係る基準を原則として告示以上の法令で規定するとともに,見直しに併せて,これらの基準が設置審査の最低基準であるという観点に立って,それぞれの規定の必要性を吟味することが必要である。

 

3 第三者評価(適格認定)制度の導入   
(現在の第三者評価)
  より客観的で透明性の高い第三者評価を実施し,その評価結果を大学の教育研究活動の一層の改善に反映させるため,平成12年度に大学評価・学位授与機構が創設され,現在,今後の評価の本格的実施に向けて,国立大学等を対象に,各大学が行う自己点検・評価を基に試行的に評価を実施している。また,財団法人大学基準協会をはじめ様々な機関がそれぞれの観点から評価を実施している。

(新たな第三者評価制度の導入)
  国による事前規制を最小限のものとし,事後チェック体制を整備するとの観点から,様々な第三者評価機関が活動を展開している現状を踏まえ,国の関与は謙抑的としつつこれらの機関を可能な限り活用し得る新たな評価システムを整備し,大学の自主性・自律性に配慮しながらその教育研究の質の維持向上を図っていくことが必要である。
   
  このため,大学の教育研究活動等の状況について,様々な第三者評価機関のうち国の認証を受けた機関(認証評価機関)が,自ら定める一定の基準を基に定期的に評価し,その基準に達しているものに対して適格認定を行うとともに,評価結果を踏まえて大学が自ら改善を図ることを促す制度を導入する。
   
  大学全体を組織体として評価する,いわゆる機関別第三者評価について設置認可を弾力化して事前規制から事後チェックへ移行するとの趣旨にかんがみ,各大学は認証評価機関による評価を受けることとする方向で検討する
  ただし,我が国では機関別第三者評価を実施する機関が必ずしも十分育成されておらず,現在,その整備充実に向けた努力が関係方面で進められているという状況にかんがみ,評価の実施スケジュールについては第三者評価機関の整備充実の状況や評価に対する大学側の準備状況を考慮して定めることが必要である。
   
  大学の専門性を様々な分野ごとに評価する,いわゆる専門分野別第三者評価についても,例えば日本技術者教育認定機構(JABEE)が行っているように,将来的には多様な分野で行われることが必要である。しかし,現在直ちに多くの分野で専門分野別第三者評価が実施できる状況にはないところであり,認証評価機関による評価の義務づけは,当面,第三者評価の導入に対する必要性が特に強い法科大学院等の専門職大学院(仮称)から開始することとする,高度専門職業人養成に特化した大学院に関しては認証評価機関による評価を受けることとする方向で検討する。特に,法科大学院などその修了が国家試験の受験資格等とつながる大学院に関しては,認証評価機関による評価を受けることとすることが必要である

(機関認証基準)
  国は,認証評価機関の認証に係る一定の基準(機関認証基準)を示し,認証申請のあった機関のうちこの基準を満たすものを認証する。
   
  機関認証基準としては,例えば以下の事項を定めることが考えられる。
大学評価のための適切な基準を定めていること
適切な評価が実施できる体制が整備されていること
定期的に評価を実施すること
評価結果について一般に公表すること
評価結果に係る不服申立て制度を整備していること

(第三者評価の結果を踏まえた措置)
  適格認定されなかった大学は,それを理由として直ちにに直接国から行政処分を課されることとなるものではないが,法科大学院などその修了が国家試験の受験資格等とつながる大学院の場合については,【P:法科大学院部会における検討を踏まえて,答申までに記述することとする】その対応の在り方について引き続き検討する

(海外の評価機関の取扱い)
  海外の評価機関の中には,その所在する国の政府等から一定の権威を付与されていたり,活動実績について国際的に高い評価を得ていたりするものがある。我が国の大学の国際競争力,国際的通用性の向上の見地から,特定の分野においては,こうした機関による大学評価についても,今回新たに導入する第三者評価制度の一環として活用できることとすることが適当である。

 

4 法令違反状態の大学に対する是正措置   
  今後の大学の教育研究における質の維持向上は,新たに導入する第三者評価制度及びその評価結果を踏まえた各大学における取組が基本となるが,このような大学の自主性・自律性を踏まえた事後チェックシステムに移行する以上,法令違反の状態に陥った大学に対しては,国として厳正に対処していく必要がある。
   
  違法状態の大学に対する国の措置としては,行政指導以外には,現行法令上,大学自体の閉鎖を命ずる,いわゆる閉鎖命令及びと,大学に対するおける法令違反の是正を命ずる,いわゆる変更命令があるが,これらの発動に至る前の,大学の自主性・自律性を踏まえた緩やかな改善措置についての規定が整備されておらず,国は直ちにこれらの強権的な是正措置を講じることとなる。
  特に,変更命令は私立大学に対しては適用除外とされており,国が私立大学に対して是正措置を行う場合,直ちに閉鎖命令を発動することとなる。
   
  このため,違法状態にある大学に対するしては,緩やかな措置から段階的に是正を求めるべく,新たに改善勧告など制度を導入するとともに,私立大学に対する変更命令を可能とし,閉鎖命令に至る事前の措置を規定する導入する方向で検討する
   
  なお,閉鎖命令は大学の全体を対象とする措置であり,学部等大学の中の特定組織を対象とする措置については現行法令上規定されていないため,大学の中の一部の学部等における違法状態をもって大学自体が閉鎖されるという事態を招くことのないよう,例えば設置認可の取消など,違法状態にある特定組織のみを対象とした設置認可の取消等の規定を整備する。
   
  以上のことを整理すると,違法状態にある大学に対する是正は,原則として,1改善勧告,2変更命令,3特定組織のみを対象とした認可取消等の措置,4大学の閉鎖命令,といった段階を踏まえながら行うこととなる。   なお,これらの措置はあくまで法令違反の場合のみに発動することとするとともに,特に私立大学に変更命令等を行う場合は,事前に大学設置・学校法人審議会の意見を聴くものとする。

 

5 留意点
  今後の大学の教育研究の質の確保は,これまで述べてきた種々の方策を一体としてセットで実施することによって初めて可能になるものであることに留意する。また,今回の改革はこれまでの大学の在り方に大きな影響を与えるものであるため,新たなシステムの実施に当たっては,大学関係者に対し,その趣旨,制度の内容等についてあらかじめ十分周知することが必要である。
   
  大学の質の向上については,大学が自らの教育研究活動や,組織運営の在り方などについて,不断に自己点検・評価し,その結果に基づき更なる改善方策を探るなど,企画立案,評価,実施,反映といった教育研究活動の改善のための循環過程を大学自らのうちに構築していくことが必要であり,認証評価機関により,定期的に評価を受けて,その結果を踏まえて大学が自ら改善を図っていくことも,これらの教育研究活動の改善のための循環過程の一環として捉えられることが必要である。
   
  第三者評価機関の果たす役割の重要性にかんがみ,第三者評価機関に対する国の支援方策について検討する。
   
  大学の教育研究活動は多様であり,一律の観点で評価することは適当ではないため,様々な第三者評価機関がそれぞれの特質を生かして評価を実施することにより,大学がその活動に応じて多元的に評価を受けられるようにすることが望まれる。
   
  大学評価・学位授与機構は,当分の間,私立大学に係る評価を行わないものとすることとされているが,同機構がこれまで蓄積してきた評価に係る能力,機能等を私立大学においても活用できるよう,同機構による評価を受けることを希望する私立大学についてはこれを可能にする。
   
  大学は公共的な機関であり,今回の改革によって一層大学の自主的・自立的な取組が可能になることを踏まえ,社会的責務として大学情報を可能な限り社会に提供していくことが必要であるほか,情報を社会に提供することによってその大学が社会から評価を受け,ひいては質の向上に資することとなることから,教育研究活動や財務関係の状況,認証評価機関による評価結果など大学の情報提供を一層促進する。
   
  大学の存続や学生に対する教育機会の提供が困難になった場合の学生の就学機会の確保等については,まず当該大学が一義的に責任を持って対応することが必要であるが,文部科学省や私学団体においても,これを支援していくことが求められる,学生が学習を継続して行うことができるよう,就学機会を確保するための方策等について検討する
   
  今後,e-Learningなど情報通信技術等を用いて国境を越えて提供される高等教育サービスが一層流通する時代が到来することを見据え,大学の質の保証に係る国際的な情報ネットワークの構築等に関する検討の必要性に留意する。
   
  高等専門学校に係る新たなシステムの適用については,原則として短期大学に準じた取扱いを行う方向で今後検討する。
   
  高等教育の全体規模について,平成16年度までは抑制的に対応することとしているが,設置認可の在り方を見直すことに伴い,今後の在り方について別途検討する。


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