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資料1
中央教育審議会大学分科会
将来構想部会(第10回)H14.5.23

「大学の質の保証に係る新たなシステムの構築について(中間報告)」
に対する意見

日本私立大学団体連合会
平成14年5月23日


1  基本的な考え方
について

  ボーダレス化する国際環境に対応して、大学の教育水準を高めて国際競争力を強めること、そのために国による規制を緩和し、大学の自己責任を明らかにし第三者による評価体制を整備することの趣旨については、基本的には賛成である。
(1)   しかし、これはわが国の高等教育が私立大学の寄与なしには成立しないことに鑑み、国が高等教育に関し公金を支出する場合、大学の設置者すなわち国立、公立、私立の異なることにより学生当たりの支出額に差をつけない、また税制面においても大学の設置者により差をつけない等、国、公、私立間の競争基盤の公平性が前提になるものと考える。
(2)   大学の質の評価は、本来、大学自らの自由と自己責任において行われることが望ましく、第三者評価により評価資料を社会に提供し、最終的には利用者である学生とその保護者の判断に委ねられるべきである。
(3)   認証評価機関による第三者評価の結果により国が大学の質を保証するものであってはならない。中間報告(規制改革の流れ)の項において「国の関与は謙抑的としつつ、設置後も含めて全体で大学の質を保証していく必要がある」の主語が明瞭でないが「国」を意味するのであれば、前述の考え方と相容れない。

2  設置認可の在り方の見直し
について
(設置認可の対象)について
1   一律認可対象とするのは、大学、大学院、学部、短期大学の設置、廃止、設置者の変更であり、学部、学科、研究科などの新設、改廃に対しては弾力的に対応するという原則は、妥当であると考えられる。しかし、後者を届出とするか認可対象とするかを、機械的に同一学位を授与するか否かで決めるべきではない。なぜならば学位の分野表示が大学の判断に任せられている現状と整合しないばかりでなく、学際的あるいは分野間の創造的相互乗り入れ等により新分野が開拓されている今日、学問の進歩に迅速に対応できなくなるおそれがあるからである。第三者評価体制が的確に整備されるならば、同一分野内、あるいは少なくとも同一学部内の学科の新設、改廃は届け出にすべきである。
2   大学全体で学生定員の純増がある場合には、認可対象とすることになっているが、同一法人が複数の大学を設置している場合、それらの大学の学生定員の総数が増えない範囲での大学間の定員移動は届出制にすべきである。
3   中間報告3頁下4行目「大学設置基準等を基に・…」とあり、大学設置基準以外に設置認可の判断基準が設けられることが想定されているが、その判断基準の制定手続きを明示すべきである。
4   中間報告4頁において「大学」が、第2、3パラグラフにおいては学部の集合組織を意味し、特に第3パラグラフにおいては大学院を含まないように理解されるよう使用されているが、これは学校教育法第62条(大学には、大学院を置くことができる)に反するのではないだろうか。

(設置審査の取扱い方針)について
1   設置認可の取扱い方針のような重要事項を「大学設置審査基準要項」などの下位規則で決めているため裁量が生じ、現在の複雑多岐な申請作業につながっていると思われる。
  したがって、重要事項については、大学設置基準に謳うべきであり、現存する「大学設置審査基準要項」、「大学設置審査基準要項細則」等は廃止すべきで、準則主義の観点から大幅な改善が必要であると考える。
2   工場等制限制度の廃止と大学設置における抑制方針を撤廃するにあたっては、地域間格差の拡大等が生じるおそれもあるので、中間報告に指摘の方針に沿って慎重に検討されたい。
  なお、その検討にあたっては、平成16年度以降の設置認可方針の策定や高等教育のグランドデザイン策定と密接に関連することを十分踏まえるべきである。
3   大学を設置することのできる法人の認可については、私立学校法との整合性を持たせることは言うまでもないことであるが、確認しておきたい。

(校地に係る基準の見直し)について
1   校地の自己所有比率規制は「大学設置審査基準要項」に決められている事項であって、このような決め方自体が改められるべきであることは、前記のとおりである。
2   「大学設置審査基準要項細則」の「五  校地」の3−ア「…校舎敷地に基準面積の二分の一以上なければならない」とあるのは、建築技術の進歩が著しい現在には不適当であり、同細則の廃止も含め全面的に見直すべきである。

3  第三者評価(適格認定)制度の導入
について
(1)   第三者評価(適格認定)制度の導入については、大学設置の規制緩和後大学の質を保証するために必要であることは理解できるが、一律な評価基準を強制すべきではなく、複数の評価機関を設置し、多角的な評価を行わねばならない。
(2)   第三者評価(適格認定)制度導入の成否は、評価機関の認証をいかに行うかにかかっている。権力を背景にした特定の価値観に基づいて行われることは、厳に避けなければならない。したがって、認証にかかわる基準を明確に示し、国が評価機関を設置するとしても、そこでの私立大学の評価を強制しないこと、評価機関の評価を公共の場に求めることが必要である。また、外国人、外国評価機関の参加も積極的に推進すべきである。

4  法令違反状態の大学に対する是正措置
について
  法令違反状態の大学に対する是正措置は、国としての判断を示すものであるから、その対象は法令すなわち法律、政令、省令違反に限定すべきである。したがって、大学設置・学校法人審議会大学設置分科会長決定の審査内規等に係る事項あるいは審査内規等に基づいて、それを条件として設置認可された場合について、審査内規等に係る部分の違反に対しては、国としてそれを根拠に改善を求めることが適当であるか否か、慎重に検討されるべきである。
  また、特定の大学が法令違反状態にあるか否かは、国が直接判断すべきであって第三者評価結果を流用すべきではない。

5  留意点
について
  平成16年度以降の高等教育の全体規模については、設置認可の在り方の見直し、大都市規制の撤廃問題とも関連して基本的な重要課題である。わが国高等教育において私立大学の果たしている重要な役割を踏まえた今後のグランドデザイン策定が最重要課題と考える。

以    上



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