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資料2
中央教育審議会大学分科会
将来構想部会(第9回)H14.4.10

大学の質の保証に係る新たなシステムの構築について (中間報告案)

(はじめに)

○  本審議会は、平成13年4月11日に、文部科学大臣から「今後の高等教育改革の推進方策について」諮問を受け、大学分科会において、多岐にわたる高等教育の課題についての調査審議を進めている。

○  このうち、大学等の設置認可の望ましい在り方等については、従来より審査期間の短縮化や申請書類の簡素化など設置認可の弾力化を図ってきたところであるが、今後更に、大学の教育研究の質の維持向上を図りつつ、社会の変化や学問の進展に的確に対応し、大学の主体的・機動的対応をより一層可能とする観点から、設置認可の在り方の見直しや大学に対する第三者評価制度の導入について検討する必要があると考えられる。

○  このため、本審議会は、同年6月に大学分科会の下に将来構想部会を設置して、これらの課題について調査審議を重ねてきた。

○  このたび、将来構想部会における審議の概要を以下のとおり取りまとめたので、「中間報告」として公表することとした。今後、本審議会においては、この「中間報告」に対して各界各層から広く意見をいただき、それらを踏まえつつ、更に審議を進めることとしたい。


1 基本的な考え方


(大学の質の保証の必要性)
○  今後の国際社会においては、社会や経済など様々な面でボーダレス化が進み、国家間の相互依存・相互協力が進展して諸制度等の国際標準化が進む一方、競争も一層激しくなることが予想される。 このような中、諸外国では自らの知的基盤を整備充実させ、それによって生み出させる「知」の積極的活用を図っていこうとしているが、大学が優れた人材の養成と独創的な学術研究の推進といった、言わば「知の創造と継承」という極めて重要な役割を果たしていることにかんがみ、各国とも国際的通用性の向上、国際競争力の強化等の観点から大学の教育研究水準の維持向上を目指した大学改革に取り組んでいる。
○  我が国においても、諸外国と同様、これまで様々な大学改革に取り組んできており、現在なお進行途上にある。特に、「知の時代」とも言われるこの21世紀において、人材以外に資源の乏しい我が国が国際社会の中でリーダーシップを発揮し発展していく上で大学の果たすべき役割は極めて大きいものがあり、我が国における知的源泉として、その質的水準の確保を図っていくことが不可欠である。
○  このため、大学が今後一層、人材養成や専門的な研究などの面で求められる責務を果たしていけるよう、その質を社会に保証していく必要がある。

(我が国の大学の質の保証システムの現状)
○  大学の教育研究の質の保証については、現在、国による厳格な設置認可と各大学における自己努力に負っている。
○  大学、学部等の設置に当たっては、国が大学設置基準等を基に審査し認可を行っているが、この設置認可制度は、我が国の大学が学生に対する教育研究水準や国際的な通用性などを確保する上で一定の役割を果たしている。
○  また、大学設置基準等において、大学はその教育研究活動等の状況について自ら点検・評価を行い、その結果を公表することが義務付けられているほか、その結果について当該大学の職員以外の者による検証を行う努力義務が課せられている。この自己点検・評価は、各大学が自らの教育研究の理念・目標に照らして評価し、その結果を踏まえて大学が改善を図っていくものであり、大学の自主的・自律的な質の充実に資するものである。 なお、文部科学省の調査によれば、平成12年10月現在、全ての国公私立大学のうち92%の大学で自己点検・評価を実施し、74%の大学でその結果を公表しているが、学外者による検証は26%の大学にとどまっている。

(規制緩和の流れ)
○  大学の設置認可制度は、その教育研究の質を保証する上で一定の役割を果たしている一方、組織改編には国の設置審査が必要となることから、大学が社会の変化やニーズに応じて自らより積極的に対応できるよう、設置認可制度を弾力化すべきとの意見がある。
○  また、我が国の行政システム全体の動きとして、国による規制を可能な限り緩和し、事前規制型から事後チェック型へと移行する方向にある。
○  こうした流れを踏まえ、国の事前規制である設置認可制度を見直し、国の関与は謙抑的としつつ、設置後も含めて全体で大学の質を保証していく必要がある。 なお、このことは平成13年12月に総合規制改革会議が取りまとめた「規制改革の推進に関する第1次答申」等においても提言されている。

(改革の方向性)
○  以上のことを踏まえ、国の事前規制である設置認可を弾力化し大学が自らの判断で社会の変化に対応して多様で特色のある教育研究活動を展開できるようにするとともに、大学設置後の状況について当該大学以外の第三者が客観的な立場から継続的にチェックを行う体制を整備することにより、大学の自主性・自律性を踏まえつつ、大学の教育研究の質の維持向上を図り、その一層の活性化が可能となるような新たなシステムを構築することとする。


2 設置認可の在り方の見直し


(設置認可の対象)
○  大学の組織の新設・改廃には国の認可が必要であり、具体的には、現在のところ、学部の学科レベルまで認可の対象としている。この場合、国は大学設置基準等を基に、1教育研究上の理念など設置の趣旨が具体的かつ明確に示されているか、2設置の趣旨に照らし教育課程は適切であるか、3教育課程を展開するのにふさわしい教員組織であり、かつ、校舎等施設が質的にも量的にも十分であるか、などの観点を中心に審査し、大学設置・学校法人審議会に諮問した上で認可している。
○  大学の自主性・自律性を尊重し、国による事前規制を一層緩和するという考え方を踏まえ、大学が主体的・機動的・弾力的に組織改編できるよう、設置認可の対象は、大学の教育研究の質を確保する上で事前に審査することが必要不可欠なものに限定する。
○  設置認可の対象を限定する方法として、大学の基本組織である学部のみを認可対象とし、その下部組織である学科は届出事項とすることが考えられるが、この場合、同一の学位を授与する課程でも学科にするか学部にするかという組織の違いだけで取扱いが異なるという問題が生ずる。したがって、もともと学位授与権の付与が国際的にも歴史的にも大学の設置認可の際の重要な要素になっていることも踏まえ、今後の設置審査においては、新設する学部等が授与する学位の課程と従来から授与している学位の課程の異同、すなわち、学位の種類(学士、修士、博士)や対象とする学問分野に変更があるのかという観点を新たに加味し、かつ、その点を重視して認可の必要な場合を整理することが必要と考えられる。
○  したがって、国の設置認可の対象は、大学、大学院の基本組織である学部、研究科等の新設・改廃について行うことを原則とするが、学部の設置は認可、学部の学科の設置は届出といった一律な対応とするのではなく、改編前後で授与する学位課程に変更があるか否かを勘案して次のような弾力的な取扱いとする。
(1) 現在授与している学位の種類・分野を変更しない範囲内で組織改編する場合は、学部等大学の基本組織の設置であっても国の認可は不要とし、届出で足りることとする。
  <イメージ例>
  ・  同一の学位を授与する昼間・夜間それぞれの学部を昼夜開講制の1つの学部に改組する場合は届出とする。
  ・  経済学部の中に経済学科と経営学科があり、経営学科を改組して経営学部を新設する場合は届出とする。
  ・  工学部の中に情報関連の学科があり、これらを独立させて情報工学部を新設する場合は届出とする。
  ・  理学研究科と工学研究科を統合して理工学研究科を新設する場合は届出とする。
  (2) 新たな種類・分野の学位を授与するための組織改編の場合は、学部の学科の新設であっても新たな学位課程の新設として認可の対象とする。
  <イメージ例>
  ・  医学部の中に既設の医学科とは別に看護学科を新設する場合は、看護学部の設置の場合と同様、認可の対象とする。
  ・  既設大学に新たに「法科大学院」の課程を設置する場合は、研究科として設置するか専攻として設置するかを問わず、認可の対象とする。
  (3) 短期大学は学位授与機関ではなく、学位課程が存在しないことにかんがみ、その学科については、大学の学部に相当する短大の基本組織として認可の対象とするものの審査の手続や内容  の大幅な簡素化を図ることとするか、あるいは、原則として届出とするかについて、引き続き検討する。
○  学位の分野に関しては、現在、各大学がそれぞれの判断で適切な名称を付記しているが、今後の学部等の設置に当たっては、改編前後の学位の課程の異同によって認可か届出かが分かれることとなるため、どのような場合が「新たな分野の学位」に該当するかについて更に整理し、明確化する必要がある。
○  私立大学の収容定員は、学科又は課程を単位とし、学部ごとに学則で定めており、その増減に係る学則変更には国の認可が必要とされている。今回、学部等の設置認可を大学の主体性をより重視する方向で弾力化することとなるが、組織改編に伴う収容定員に係る学則変更は引き続き全て認可対象とすると設置認可の弾力化の効果が半減することになるほか、収容定員が減少する場合について国が事前規制を行う必要性に乏しいことなどから、今後引き続き認可対象とするのは大学全体で収容定員が純増する場合のみに限定し、大学全体の定員内における学部(特定分野の学部を除く)間の定員の増減等は当該大学の裁量に委ねることによって、大学による自律的な組織編成を容易にする。
○  以上の基本的な考え方を踏まえ、大学、大学院、短期大学に係る国の設置認可の主な対象は以下の事項とし、認可対象から除外するこれら以外の事項については原則として届出とする。
  ・  大学、大学院、短期大学の設置・廃止
  ・  新たな水準・分野の学位を授与する課程に係る学部等の設置
  ・  設置者の変更
  ・  大学全体の収容定員増に係る学則変更(私立大学等の場合)
○  届出事項となったものについて、届出内容が法令に適合していない場合は、変更その他国による必要な措置が講じられるようにする。

(設置審査の取扱い方針)
○  高等教育全体の規模に関して、これまで大都市部における設置の在り方を含め大学設置に係る審査については抑制的に取り扱ってきており、このことが大学の質の確保を図る面にも寄与してきたと考えられるが、平成13年12月の総合規制改革会議第1次答申でも指摘されているように、こうした方針の見直しが必要である。
○  大学、学部等の設置に関する審査に当たっては、現在、特定の分野を除いて抑制的に対応する方針がとられているが、大学が社会のニーズや学問の発展に柔軟に対応でき、また、大学間の自由な競争を促進するため、今後は抑制方針を撤廃する方向で検討する。 ただし、医師、歯科医師、獣医師、教員及び船舶職員の養成に係る大学、学部等については、人材養成の需要に対応できているため現在は全く新増設等を認可していないところであり、これらの分野について、例外として今後もその取扱いを継続する必要があるかどうかについて更に検討する。
○  首都圏、近畿圏、中部圏における工業(場)等制限区域・準制限区域内の大学の設置等について抑制的に取り扱っているが、大都市部における大学の自由な発展を阻害している等の批判があることを踏まえ、抑制方針を撤廃する方向で検討する。
○  なお、こうした抑制方針を撤廃した場合、大都市部における過当競争の激化、地域間格差の拡大等が生じることが予想されることから、これらの点に引き続き配慮した方策について別途検討する。

(校地に係る基準の見直し)
○  大学設置基準等で定められている校地面積基準(校地が校舎の基準面積の3倍以上)及び校地の自己所有比率規制(原則として基準面積の2分の1以上が自己所有)については、学生等の多様な活動を可能にするとともに学校法人の資産確保の面で一定の役割を果たしていることから、数量基準は設定することとしつつ、その在り方について検討する(例えば校地面積基準を校舎面積と連動しない形で定める、合理的な理由があれば基準の緩和を認める等)。


3 第三者評価(適格認定)制度の導入

(現在の第三者評価)
○  より客観的で透明性の高い第三者評価を実施し、その評価結果を大学の教育研究活動の一層の改善に反映させるため、平成12年度に大学評価・学位授与機構が創設され、現在、今後の評価の本格的実施に向けて、国立大学等を対象に、各大学が行う自己点検・評価を基に試行的に評価を実施している。また、財団法人大学基準協会をはじめ様々な機関がそれぞれの観点から評価を実施している。

(新たな第三者評価制度の導入)
○  国による事前規制を最小限のものとし、事後チェック体制を整備するとの観点から、様々な第三者評価機関が活動を展開している現状を踏まえ、国の関与は謙抑的としつつこれらの機関を可能な限り活用し得る新たな評価システムを整備し、大学の自主性・自律性に配慮しながらその教育研究の質の維持向上を図っていくことが必要である。
○  このため、大学の教育研究活動等の状況について、様々な第三者評価機関のうち国の認証を受けた機関(認証評価機関)が、自ら定める一定の基準を基に定期的に評価し、その基準に達しているものに対して適格認定を行うとともに、評価結果を踏まえて大学が自ら改善を図ることを促す制度を導入する。
○  大学全体を組織体として評価する、いわゆる機関別第三者評価について、各大学は認証評価機関による評価を受けることとする方向で検討する。 ただし、我が国では機関別第三者評価を実施する機関が必ずしも十分育成されておらず、現在、その整備充実に向けた努力が関係方面で進められているという状況にかんがみ、評価の実施スケジュールについては第三者評価機関の整備充実の状況を考慮して定めることが必要である。
○  大学の専門性を様々な分野ごとに評価する、いわゆる専門分野別第三者評価について、特に高度専門職業人養成に特化した大学院に関しては認証評価機関による評価を受けることとする方向で検討する。特に、法科大学院などその修了が国家資格の受験資格等とつながる大学院に関しては認証評価機関による評価を受けることとすることが必要である。 (機関認証基準)
○  国は、認証評価機関の認証に係る一定の基準(機関認証基準)を示し、認証申請のあった機関のうちこの基準を満たすものを認証する。
○  機関認証基準としては、例えば以下の事項を定めることが考えられる。
  ・  大学評価のための適切な基準を定めていること
  ・  適切な評価が実施できる体制が整備されていること
  ・  定期的に評価を実施すること
  ・  評価結果について一般に公表すること
  ・  評価結果に係る不服申立て制度を整備していること

(第三者評価の結果を踏まえた措置)
○  適格認定されなかった大学、特に法科大学院などその修了が国家資格の受験資格等とつながる大学院に対する対応の在り方について検討する。


4 法令違反状態の大学に対する是正措置

○  今後の大学の教育研究における質の維持向上は、新たに導入する第三者評価制度及びその評価結果を踏まえた各大学における取組が基本となるが、このような大学の自主性・自律性を踏まえた事後チェックシステムに移行する以上、法令違反の状態に陥った大学に対しては、国として厳正に対処していく必要がある。
○  違法状態の大学に対する国の措置としては、行政指導以外には、現行法令上、大学の閉鎖命令及び大学に対する変更命令があるが、これらの発動に至る前の、大学の自主性・自律性を踏まえた緩やかな改善措置についての規定が整備されておらず、国は直ちに強権的な是正措置を講じることとなる。 特に、変更命令は私立大学に対しては適用除外とされており、国が私立大学に対して是正措置を行う場合、直ちに閉鎖命令を発動することとなる。
○  このため、違法状態にある大学に対する改善勧告など、閉鎖命令に至る事前の措置を導入する方向で検討する。
○  なお、閉鎖命令は大学の全体を対象とする措置であり、学部等大学の中の特定組織を対象とする措置については現行法令上規定されていないため、大学の中の一部の学部等における違法状態をもって大学自体が閉鎖されるという事態を招くことのないよう、例えば設置認可の取消など、違法状態にある特定組織のみを対象とした規定を整備する。


5 留意点


○  今後の大学の教育研究の質の保証は、これまで述べてきた種々の方策をセットで実施することによって初めて可能になるものであることに留意する。
○  第三者評価機関の果たす役割の重要性にかんがみ、第三者評価機関に対する国の支援方策について検討する。
○  大学の教育研究活動は多様であり、一律の観点で評価することは適当ではないため、それぞれの特質に応じて評価を実施している様々な第三者評価機関について、国は機関認証基準を満たす機関は積極的に認証するとともに、大学はその活動に応じて可能な限り複数の認証評価機関から評価を受けることが望まれる。
○  大学評価・学位授与機構は、当分の間、私立大学に係る評価を行わないものとすることとされているが、同機構がこれまで蓄積してきた評価に係る能力、機能等を私立大学においても活用できるよう、同機構による評価を受けることを希望する私立大学についてはこれを可能にする。
○  大学は公共的な機関であり、今回の改革によって一層大学の自主的・自立的な取組が可能になることを踏まえ、社会的責務として大学情報を可能な限り社会に提供していくことが必要であるほか、情報を社会に提供することによってその大学が社会から評価を受け、引いては質の向上に資することとなることから、教育研究活動や財務関係の状況、認証評価機関による評価結果など大学の情報提供を一層促進する。
○  大学の存続や学生に対する教育機会の提供が困難になった場合、学生が学習を継続して行うことができるよう、就学機会の確保のための方策について検討する。
○  高等専門学校に係る新たなシステムの適用については、原則として短期大学に準じた取扱いを行う方向で今後検討する。
○  高等教育の全体規模について、平成16年度までは抑制的に対応することとしているが、設置認可の在り方を見直すことに伴い、今後の在り方について別途検討する。

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