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平成20年度予算の編成等に関する建議

平成19年11月19日 財政制度等審議会
(高等教育財政関係部分抜粋)

2.各論

7.文教・科学技術

(1)文教

 教育行政においては、政策目的・成果が見えにくいということもあり、目的や成果の客観的な検証・評価が十分に行われないまま施策が講じられてきたと言える。このため、予算や教職員数といった投入量を通じて施策の評価が行われたり、その拡充が目的化したりするきらいがある。
 また、児童生徒数や政府規模を勘案すれば、我が国の教育予算は、主要先進国に比べ必ずしも低い水準とは言えない。それにもかかわらず、教育予算の対GDP比が主要先進国より低いこと等を理由に、その量的拡大が必要と指摘されることがある。
 我々は、単に財政面だけから教育改革を求めているのではなく、教育の質をより高め、教育の再生に資する取組に予算をシフトするべきではないかと考えている。
 特に、我が国の公教育の信頼確保のためには、投入量の拡充では解決にはならず、

  •  校長等による学校経営の改善、教員の授業等への集中などによる教育資源の有効活用
  •  家庭や地域住民の参画による開かれた学校づくり
  •  政策の客観的な評価・検証によるPDCAサイクルの構築

といった教育の体質改善を行うことが必要である。
 平成20年度予算においては、こうした考え方の下、引き続き「基本方針2006」に則り、一律・機械的な機関補助である義務教育費国庫負担金、国立大学法人運営費交付金、私学助成を削減し、より政策効果の期待できる競争的なメカニズムに移行させていくとともに、教育の質を高め、教育の再生に資する取組に対応する必要がある。

イ.国立大学法人運営費交付金

 国立大学法人運営費交付金については、「基本方針2006」に則り、マイナス1パーセントの削減は行うべきである。こうした中で、自己収入の確保に努め、総事業費が増加するなど改革努力が見られ始めている。しかしながら、

  •  学長のリーダーシップの問題や教職員の意識改革の遅れ、業務・人事・組織の非効率性などが学外関係者から指摘されていること。
  •  民間から海外研究機関への研究費支出は伸びており、これを国内大学へ引き寄せる余地があること。

などから、改革努力を更に進めていく必要がある。
 また、現行の配分ルールのままでは、国立大学法人間でのダイナミックな資源配分のシフトを行い、世界で通用する大学を実現していくことには大きな制約がある。したがって、平成22年度以降の第2期中期目標・計画に向け、「6月建議」でも述べたとおり、国立大学法人運営費交付金の配分ルールについては、国立大学法人の教育・研究等の機能分化、再編・集約化に資するよう、大学の成果や実績、競争原理に基づく配分へと大胆に見直す必要があり、平成19年度中にこれらの見直しの方向性を示すべきである。

ウ.私学助成

 私学助成においても、「基本方針2006」に則り、マイナス1パーセントの削減は行うべきである。その際、私学は、学生数が減少を続ける中で、定員割れが全体の4割に上っている。こうした状況にかんがみれば、今後、教育内容も含め戦略的な経営の在り方を構築していくことが求められている。このため、

  •  一般補助においては、単に定員割れか否かというだけでなく、より一般的な私学の経営・財務状況を表わす指標を用いるなど、その状況を配分に反映させ、経営の効率化に資するような改革
  •  特別補助については、経営戦略を明確にする私学支援への改革

を推進する必要がある。

オ.奨学金事業〔資料2−7−8、9参照〕

 奨学金事業については、

  •  所得要件が緩く、親の世代に当たる40代、50代の世帯の概ね7〜8割が貸与の対象となり得ること。
  •  貸与率は、10年前には大学等の学生数の1割程度であったが、近年の大幅な拡充により、既に3割となっていること。

などの現状にかんがみれば、「能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置」を講ずるという教育基本法の目的から乖離しつつあり、その在り方をよく考える必要がある。
 また、これまで当審議会が指摘したとおり、金利リスク・回収リスクへの対応が急務である。特に、有利子事業につき、

  •  3パーセントの金利上限を付していること。
  •  就学中の金利分を事後的にも一切賦課しないこと。

については、金利上昇に伴い、他の高等教育予算を大きく圧迫する可能性や制度の持続可能性を損なう可能性があることから、その早急な見直しが必要である。
 回収強化については、貸与人員の拡充もあり、3か月以上の滞納額が大幅に増加し平成18年度末で2,000億円を超える水準(要返還債権に占める割合7.3パーセント)に上っている。
 日本学生支援機構に対しては責任をもって回収に当たるよう厳しく求めたい。法的措置の一層の強化・拡大とともに、民間委託を推進する必要がある。また、貸し倒れによる損失を安易に国民全体に転嫁することなく、まずは機関保証の拡充を図っていく必要がある。ただし、その際は、機関保証が単なる債務の付け替えとならないよう、厳格な回収努力と適正な保証料率の設定が求められる。