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経済財政改革の基本方針2007

(平成19年6月19日 閣議決定)
−高等教育関係抜粋−

第2章 成長力の強化

1.成長力加速プログラム

1 成長力底上げ戦略

 成長の基盤となる人材、中小企業への投資により、成長力の底上げを図る。働く人全体の所得・生活水準を引き上げることで、格差の固定化を防止し、人材の労働市場への参加や生産性向上を目指す。

【改革のポイント】
  • 1.人材能力戦略
    誰でもどこでも職業能力形成に参加でき、能力を発揮できる社会の実現のため、「ジョブ・カード」制度を導入する。
  • 4.本戦略は、政労使が参加する国・地方の「成長力底上げ戦略推進円卓会議」で合意形成を図りつつ、原則として3年間(平成19年度〜21年度)で集中的に推進する。
【具体的手段】
(1)人材能力戦略
1 「職業能力形成システム」(通称:『ジョブ・カード制度』)の構築

フリーター等の就職困難者や新卒者に対し、協力企業等において職業能力形成プログラムを提供し、履修実績等を記載した「ジョブ・カード」を交付する。

2 大学・専門学校等を活用した「実践型教育システム」の構築

就職困難者や新卒者等に対し大学・専門学校等の教育プログラムを開放し、「実践型教育プログラム」を提供する。

3 官民共同推進組織の設置

平成19年5月に設置した「ジョブ・カード構想委員会」において具体的構想の検討を進め、平成20年度に本格実施する。平成22年度以降、実施状況を検証しながら拡充する。

3 成長可能性拡大戦略―イノベーション等

 未来への投資を拡大していくため、社会システムの改革と技術革新を一体的に推進し、イノベーションの創出を加速するとともに、環境変化にそぐわない制度や障害を除去し、知識創造を支える研究と人材育成、リスクマネーの潤沢な供給を実現する。

【改革のポイント】
1.政策イノベーション

リスクが高い分野への政策支援を改革する。また、成長分野を阻害しない政策へと改革する。

2.大学・大学院改革

競争力の基盤となる数多くの優れた人材の育成、社会において指導的役割を果たすリーダーとなる人材の育成、イノベーションを生み出す世界トップレベルの教育研究拠点の形成の視点から、徹底した改革を行う。
効率化を図りつつ、適正な評価に基づき、真に実効性のある分野への「選択と集中」により必要な予算を確保する。基盤的経費の確実な措置、基盤的経費と競争的資金の適切な組合せ、評価に基づくより効率的な資金配分を図る。

4.イノベーションの加速

「イノベーション25」等に基づき、イノベーション立国の実現を目指して、社会システムの改革と技術革新を一体的に推進する。

【具体的手段】
(1)政策イノベーション
2 革新的医薬品・医療機器創出のための5か年戦略

研究資金の集中投入、ベンチャー企業育成、医療クラスターの形成や再生医療拠点の形成等の臨床研究・治験環境の整備、アジアとの連携、新薬の上市までの期間を2.5年短縮する等の審査の迅速化・質の向上、革新的新薬の適切な評価と後発品の使用促進のための薬価制度の改革や医療機器の評価の適正化等を内容とする「革新的医薬品・医療機器創出のための5か年戦略」を着実に推進する。

(2)大学・大学院改革

以下の改革を含め、「教育再生会議第二次報告」に基づき、重点的に取り組む。

1 教育の質の保証
  • 大学(大学院を含む。以下同じ)が行う卒業認定の厳格化、外部評価の推進、ボランティア活動体験の導入などカリキュラム改革等を強力に支援するための措置を平成20年度から講ずる。
  • 「教育再生会議」は、必要に応じ、関係会議と適宜連携し、大学入試の多様化、弾力化等抜本的な改革について検討する。その際、初等中等教育に与える影響も考慮する。(大学入学年齢の弾力化、国立大学の入試日の分散、複数合格等)
  • 優秀で意欲ある学生に対する奨学金を拡充するための措置を平成20年度から講ずる。
2 国際化・多様化を通じた大学改革
  • 教員の国際公募、外国人教員比率の増、英語による授業、国家戦略としての留学生政策を平成20年度から推進する。
  • 大学の4月入学原則を平成19年度中に弾力化する。国立大学について、大学の取組を支援し、全国立大学での9月入学枠の設定を実現する。私立大学においても、9月入学枠設定を促進する。
  • 文部科学省は、「大学グローバル化プラン」(仮称)を平成19年内に策定し、アジアを含めた国際的な大学間の相互連携プログラムを促進する(単位互換、ダブル・ディグリー等)。また、各大学等による国際化に関する評価の充実を平成20年度に図る。
  • 平成20年度から、現地での募集・選考体制の強化、渡日前の入学許可、奨学金支給決定を行い、留学生受入れ拡大を図る。日本人学生の短期留学等の機会を拡充する。
  • 企業・行政機関との人事交流等大学と企業・社会との連携を強化する。
  • 高等専門学校が地域と連携して行う実践的な専門教育の取組を支援するための措置を平成20年度から講ずる。
3 世界トップレベルを目指す大学院教育の改革
  • 平成20年度から、世界最高水準の大学院形成、優れた大学院生への経済的支援を充実する。
  • 学部3年修了時から大学院に進学する早期卒業制度を活用するとともに、博士前期課程3年、後期課程2年とする等制度を平成19年内に弾力化する。
4 国公私立大学の連携による地方の大学教育の充実
  • 自主性・自律性をもって、大学が行う社会の変化や時代の要請に応じた学部学科の再編、他大学との連携協力、組織運営改善等の取組を支援する。
  • 国公私を通じ、複数の大学が大学院研究科等を共同で設置できる仕組みを平成20年度中に創設することを目指す。
  • 国公私を通じた地方の「大学地域コンソーシアム」の形成を支援するための措置を平成20年度から講ずる。
5 時代や社会の要請にこたえる国立大学の更なる改革
  • 国立大学の大胆な再編統合、学部の再編や学部入学定員の縮減、一つの国立大学法人が複数の大学を設置管理できる仕組みづくり等国立大学の自主的な取組を促進する。
  • 文部科学省は、国立大学の大学事務局の改革による経営効率化を推進する。
6 競争的資金の拡充と効率的な配分
  • 研究と教育の両面における競争的資金を拡充するとともに、間接経費を充実する。競争的資金の審査システムを公正性、透明性、国際性の観点から高度化する。若手研究者への配慮等評価手法を改革する。
7 大学による自助努力を可能とするシステム改革
  • 企業や個人等からの寄付金、共同研究費等民間からの資金の活用について、各大学の自助努力を後押しするための税制を含む環境整備等を検討する。
8 国立大学法人運営費交付金の改革
  • 文部科学省は、国立大学法人運営費交付金については、次期中期目標・計画(平成22年度〜)に向け、各大学の努力と成果を踏まえたものとなるよう、新たな配分の在り方の具体的検討に早期に着手し、平成19年度内を目途に見直しの方向性を明らかにする。
  • 文部科学省は、運営費交付金の配分については、1教育・研究面、2大学改革等への取組の視点に基づく評価に基づき適切な配分を実現する。その際、国立大学法人評価の結果を活用する。

「教育再生会議」において、経済財政諮問会議、総合科学技術会議等関係会議とも連携し、上記改革の推進・検討状況のフォローアップを行い、改革を着実に前進させるものとする。

  • 1大学の教育システムの改革、グローバル化推進については、文部科学省において、平成19年度中に結論を得ることを目指し、具体化に向けて検討を進め、結論の得られたものから直ちに実施に移す。
  • 2研究システムの改革については、総合科学技術会議を中心に、必要に応じ、関係会議等とも連携しつつ具体化に向けた検討を進め、平成19年度内に結論を得るとともに、可能なものから直ちに実施に移す。
  • 3予算面については、第3章の「1.歳出・歳入一体改革の実現」と整合性を取りつつ、効率化を徹底しながら、メリハリを付けて、教育再生に真に必要な予算について財源を確保するとの方針に沿って、「教育再生会議」及び経済財政諮問会議等における議論も踏まえつつ、検討する。

大学改革についての残された課題(大学入試、大学入学年齢の弾力化など)については、「教育再生会議」において、必要に応じ関係会議と適宜連携し、検討を進める。

(4)イノベーションの加速
1 社会システムの改革戦略(「イノベーション25」)の推進

イノベーションが次々と生み出される社会環境を構築するため、概ね今後3年間で、若手研究者向け資金や理数教育など次世代投資の充実と強化、環境・エネルギー技術など優れた技術を活かした成長と国際貢献、国際競争力強化を目指した大学改革、新しいサービスの構築・実証を通じた規制の見直しなどイノベーション創出・促進に向けた社会環境整備に取り組む。

4 産学官連携の推進

次世代環境航空機等の戦略的分野の研究開発プロジェクト、産学双方向の対話(「産学人材育成パートナーシップ」)等を推進する。

2.グローバル化改革

 オープンな国づくりに向けて「アジア・ゲートウェイ構想」を推進する。あわせて、グローバル化のメリットを最大限活用し、アジアの活力を成長に取り込む。そのため、経済連携の強化、金融・資本市場の改革、航空自由化等に包括的に取り組む。

【改革のポイント】

  1. オープンな経済社会の構築の中核的な構想として、「アジア・ゲートウェイ構想」を推進する。

【具体的手段】

(4)アジアのゲートウェイを目指した取組
2 アジア高度人材ネットワークのハブを目指した留学生政策の再構築

留学生受入れシェアの確保、日本人の海外学習機会の拡大、産学連携等の推進、海外現地機能の強化など、「アジア・ゲートウェイ構想」の基本方針を踏まえ、今後の取組を早急に具体化し、新たな留学生戦略を策定する。

第3章 21世紀型行財政システムの構築

1.歳出・歳入一体改革の実現

【改革のポイント】

  1. 真に必要なニーズにこたえるための財源の重点配分を行いつつ、「基本方針2006」で示された5年間の歳出改革を実現する。そのため、主要な分野について制度改革等の道筋やその取組を示す。
  2. 平成20年度予算は、この歳出改革を軌道に乗せる上で極めて重要な予算であることから、歳出全般にわたって、これまで行ってきた歳出改革の努力を決して緩めることなく、国、地方を通じ、引き続き「基本方針2006」に則り、最大限の削減を行う。
  3. 「進路と戦略」で示した予算編成の原則に沿って、「新たに必要な歳出を行う際は、原則として他の経費の削減で対応する」、「税の自然増収は安易な歳出等に振り向けず、将来の国民負担の軽減に向ける」など、規律ある財政運営を行う。
  4. こうした歳出改革の取組を行って、なお対応しきれない社会保障や少子化などに伴う負担増に対しては、安定財源を確保し、将来世代への負担の先送りは行わない。

【具体的手段】

歳出削減を一段と進め、財政の無駄を無くすとの基本方針を堅持し、真に必要なニーズにこたえるための財源の重点配分を行いつつ、歳出改革を着実かつ計画的に実施する。
平成20年度予算においては、歳出全般にわたって、これまで行ってきた歳出改革の努力を決して緩めることなく、国、地方を通じ、引き続き「基本方針2006」に則り、最大限の削減を行う。
これらの観点に立って、主要な分野については、以下の取組を行う。

(略)

なお、「基本方針2006」に示されたとおり、平成23年度までの5年間に実施すべき歳出改革の内容は、機械的に5年間均等に歳出削減を行うことを想定したものではない。それぞれの分野が抱える特殊事情や既に決まっている制度改革時期とも連動させ、また、歳入改革もにらみながら、5年間の間に必要な対応を行うという性格のものである。

6.資産債務改革

【改革のポイント】

  1. 独立行政法人、国立大学法人や地方公共団体等について、それぞれ国の取組を踏まえつつ目標を明確にし、改革を推進する必要がある。

【具体的手段】

(2)独立行政法人、国立大学法人における資産債務改革の推進

独立行政法人における資産債務改革を独立行政法人改革及びその改革工程と整合性を取りつつ推進する。国立大学法人についても、大学改革との整合性を取りながら、同様に改革を推進する。その際、民間の知見を活用しつつ、最も有効な処分を行う観点から、担当組織の設置を検討する。

第4章 持続的で安心できる社会の実現

2.教育再生

 資源の乏しい我が国が少子高齢社会の下でも国際社会を生き抜くには、人材に期待しなければならない。すなわち、教育の基本である知・徳・体の原点に立ち戻り、基礎学力と規範意識を持った優れた人材を育成することは、必要不可欠な国家戦略である。勤勉な労働力と研究開発能力の上に経済成長が可能となることを考えれば、その基礎をなす国公私を通じた初等教育から高等教育までを重点とした教育再生は、最優先の課題として取り組まなければならない。
 およそ60年ぶりの教育基本法の改正により、新しい時代の教育の基本理念が明確になった。この実現に向け、関係法令を改正し、真に必要な予算を確保し、教育に携わる者の意識改革を行うことによって、「教育新時代」は開かれる。
 このため、教育再生会議の第二次報告等を踏まえ、社会総がかりで、教育の再生に全力で取り組むこととし、残された課題については、今後、教育再生会議において第三次報告に向けて検討するなど取組を進める。

【改革のポイント】

  1. 国際化を通じた「大学・大学院改革」を進める観点から、教員の国際公募、外国人教員比率の増、英語による授業、国家戦略としての留学生政策を推進する。また、大学の4月入学原則を一層弾力化する。大学の取組を支援し全国立大学の9月入学枠設定を実現する。【平成19年度中に学校教育法施行規則の改正、国立大学の中期目標策定時のガイドライン、運営費交付金等で支援】
  2. 予算面では、第3章の「1.歳出・歳入一体改革の実現」と整合性を取りつつ、効率化を徹底しながら、メリハリを付けて教育再生に真に必要な予算について財源を確保する。

【具体的な手段】

  • (4)大学・大学院改革(第2章参照)

4.質の高い社会保障サービスの構築

 社会保障は、人生のリスクに対するセーフティネットである。自立の精神を大切にしつつ、分かりやすく親切で信頼でき、かつ国民のニーズにこたえた安全・安心で質の高いサービスを安定的に提供する持続可能な制度を構築する。

【改革のポイント】

  1. 医療・福祉等について、医師確保対策、医療制度改革、「新健康フロンティア戦略」、がん対策、障害者施策等を推進し、国民のニーズにこたえた質の高いサービスを安定的に提供する。また、自殺者の減少に取り組む。

【具体的手段】

(1)医療・福祉等
  • 「緊急医師確保対策について」に基づき、医師不足地域に対する国レベルの緊急臨時的医師派遣システムの構築、病院勤務医の過重労働を解消するための勤務環境の整備、女性医師等の働きやすい職場環境の整備、研修医の都市への集中の是正のための臨床研修病院の定員の見直し、医療リスクに対する支援体制の整備、医師不足地域や診療科で勤務する医師の養成の推進など、医師確保のための緊急対策に取り組む。また、看護師、助産師等の確保対策を推進する。
  • 「新健康フロンティア戦略」を推進するため、平成19年内に実施計画を策定する。また、「がん対策推進基本計画」に基づき、10年以内にがんの死亡率を20パーセント減少させる等の目標達成に向け、放射線療法及び化学療法の推進並びにこれらを専門的に行う医師等の育成、治療の初期段階からの緩和ケアの実施、がん登録の推進を重点としつつ、がん対策に総合的に取り組むとともに、難病対策や肝炎対策の充実に取り組む。
  • 「障害者基本計画」に基づく重点施策実施計画を平成19年内に見直し、教育、就労、地域生活などへの支援を含む障害者施策全般を推進するとともに、障害者の自立と社会参加を促進する。また、発達障害児・者に対する支援や精神障害者の地域移行を推進する。