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資料3

大学入試センター試験の改善に関する懇談会
−意見のまとめ−

平成18年5月
独立行政法人大学入試センター

 大学入試センター試験(以下「センター試験」という)は,昭和54年1月に第1回が実施された共通第1次学力試験を前身とし,平成2年1月にその第1回が実施された。センター試験では,国公立大学に加えて私立大学の利用を認めたこと,利用教科・科目を各大学が自由に指定できるアラカルト方式としたことなど,共通第1次学力試験から大きな変更が加えられている。
 その後,センター試験は,受験者数,利用大学数も増加し,現在では受験者数約55万人,いわゆる現役志願率は約40パーセント,利用大学数は短期大学も含めて700大学を上回っている。この間,高等学校学習指導要領の改訂に伴う出題教科・科目の改正,平成18年度センター試験から英語リスニングテストの導入などが行われている。
 他方で,大学を取り巻く環境も大きく変わりつつある。
 高校卒業・大学進学期の年齢である18歳の人口は,平成4年度の約205万人を頂点として減少に転じ,その後,減少が続いている。高校卒業者数も平成17年度は約118万人となり,ピーク時から62万人の減少となった。この結果,大学進学希望者数に対する大学入学者数の割合(収容力指数)が1になる,いわゆる大学全入時代が始まろうとしている(平成17年の中央教育審議会答申における試算では,平成19年度に1になるとされている)。
 また,大学については,認証評価の仕組みが導入され,各大学は一定の期間ごとに所定の認証評価を受け,その結果を公表することとなった。

 今回の懇談会においては,センター試験に関して,これまでの大学審議会の答申や国立大学協会の要望等に盛り込まれた事項を中心に自由に意見を頂くことを主たる目的とした。この結果,委員からは,様々な意見や現状に関する報告等が出され,懇談会開催に当たって大学入試センターが予定していた項目以外の項目に関しての意見等も頂くことができた。
 懇談会においては,検討された項目について意見を整理・集約し,今後の方向を示すことをねらいとはしていなかったが,委員の間で意見の集約ができたものもあった。
 以下に,検討が行われた項目及び主な意見,そして集約されたものについてはその集約内容を整理する。今後,センターあるいは関係機関等において検討を深めていく際に有益な資料となることを期待している。

1 大学入試センター試験の在り方について

(1) センター試験の性格
   現在のセンター試験には二つの性格がある。一つ目は,高等学校段階における学習の達成度を測るというものであり,二つ目は,センター試験の成績を用いて当該大学の入学者選抜を行うというものである。性格によって,センター試験の具体的な設計が変わるため,どちらの性格を重く見るのか明瞭にすべきであるという意見があった。
 また,議論の中では,現在のセンター試験とは別の共通試験(高等学校段階での基本的な学習内容の達成度を測ることのみを目的とするもの)の実施についての意見も多くあった。
 現在のセンター試験の性格については,今回実施の必要性が強く出された他の共通試験の内容及びその試験とセンター試験との関係によって変わってくるため,二つの性格のうちどちらに重点を置くべきかについての結論は出されなかった。

(2) 試験問題の平均点の設定について
   平均点の設定については,以下のような意見が出された。
 センター試験の性格と平均点
 
 平均点を何点に設定するかは,試験の性格をどう捉えるかということと関係する。基本的な学習の達成度を測定するという性格を重視するのであれば,8割くらいが適当であるが,入学者選抜に利用するという性格を重視するのであれば,6割くらいが適当である。
 センター試験の平均点は,高等学校での指導にも大きくかかわっており,平均点の上げ下げは,高校教育の目標なり水準に影響する。平均点の設定は,現行程度が望ましい。
 教科・科目ごとの平均点
 
 各大学の入学者選抜での用い方を,教科で変えることも一つの方法として考えられる。地理歴史,公民,理科については,高等学校までの学習の状況を見ることを主眼とし,国語,数学,英語については,入学者選抜を主眼とするというのはどうか。その場合,地理歴史,公民,理科については,平均点を60点より上に設定することとなる。
 地理歴史,公民,理科について,各1コマの中で2科目までを選択させる案が検討(後述)されているが,その場合には,受験者数が1科目に費やす時間の長短(1科目受験者の方が2科目受験者よりも1科目当たりでは長い時間を費やすことができる)によって成績が影響されるのを小さくし,受験者の学力が適切に試験結果に現れるようにするため,平均点を60点より上に設定することが必要になる。

(3) 年度内複数回実施について
   現行方式での複数回実施
   現行のセンター試験を年度内に複数回実施することは,平成12年の大学審議会答申において指摘されている。このことについては,大学関係者,高等学校関係者とも賛成する意見はなく,反対であった。主な意見は以下のとおりである。
 学習の達成度を測る試験では年度内複数回実施の可能性はあるが,入学者選抜試験ということであれば複数回実施は難しい。
 実施にかかるコストや労力を考えるとメリットは少ない。
 現行の試験を2回実施することは,理念・実質等々で問題があり,高等学校側の賛成も得られない。
 また,「高等学校長の間での意見交換では,正常な高校教育の確保,出題の難易度,公平性の問題,受験生の混乱,複雑な事務による高校への影響などから,反対若しくは時期尚早との意見が多い」ことが紹介された。
 別の試験の実施と併せての複数回実施
   現行のセンター試験の複数回実施についての議論の過程で,委員からは,現行のセンター試験とは異なるタイプの試験をセンターが実施することの必要性が指摘された。
 複数回実施との関係では,現行のセンター試験を複数回実施することは難しいし,適当ではないが,目的を現在のセンター試験とは変えた新しい試験を,現行のセンター試験とは別に行うことは考えられるという意見であった。(後述)

(4) 5教科7科目型受験型の試験について
   国立大学関係者からは,5教科7科目を求めることの意義は大きいという意見,高校関係者からは高校としても評価しているとの意見が多かった。

2 大学入試センター試験の試験内容について

(1) 既出の問題や教科書掲載の素材文の扱いについて
   受験者の関係教科科目の学習の達成度や適性・能力等を見る上で必要であるならば,過去と同一の問題を出題したり,同一の素材文,教科書掲載の素材文を利用したりすることは認められる,同一問題等を避けた結果として問題の内容等が不自然になることは避けるべきという意見が多かった。
 また,公平性については,あまり見る機会のない素材を用いるという考えと,多くの人が目にしているものを素材とするという考えの二つの考えがあるとの指摘があった。
 同一問題の出題について
 
 基本的な内容を問う問題に関しては,繰り返し出題してもかまわない。
 試験問題が過去の問題と重複することは差し支えないが,特に同一問題を出す必要もないのに,同一であることを承知して出題することは避けるべきである。
 教科書に掲載されている作品等を素材文とすることについて
 
 古典については,教科書に掲載されている作品や以前出題された作品を素材文としてよい。いくつか出題する素材を事前に提示し,その中から出題することもよいのではないか。
 戦前期までの作品のうち著名な作品についても,読み取る学力がほしい。このような作品も,繰り返し出題してもよいのではないか。
 古文や漢文でも,教科書と全く同じ範囲から出題することは避けるべきである。
 素材が同じであると同じ問題になる危険性がある。このことには注意が必要である。

(2) 履修単位数(2単位,4単位)の異なる科目の取扱いについて
   2単位科目と4単位科目の取扱いに関して,現行のように同じでよいという意見と,変える方がよいという意見が出された。
 
 2単位科目と4単位科目については,共通する2単位部分から出題してはどうか。
 2単位部分は共通とし,4単位の科目には,残りの2単位部分を出題することとしてはどうか。
 出題範囲をセンターが示して,2単位科目,4単位科目の別をなくし,一つにしてはどうか。
 2単位科目と4単位科目が混在していても構わない。選抜において特に意識したことはない。
 高等学校の事情で,4単位科目を開設することができず,2単位科目を代わりに開設する場合もあるが,受験者は4単位科目を受験しなければならない。

(3) 出題科目や範囲
   現在のセンター試験は,高等学校学習指導要領に準拠した教科・科目を設定し,出題範囲としているが,このことについては,以下のような意見が出された。
 
 指導要領の範囲にとらわれずに,大学入学希望者であれば知っていることが期待できる内容を含めて出題範囲として設定してはどうか。
 センター試験にアラカルト方式を採用した時代と事情が変わってきている。指導要領は多様化しているが,逆にセンター試験では出題科目を基本的なものに絞ってはどうか。
 大学において必要な基礎的な内容は,ほぼ一定ではないのか。高等学校指導要領の科目の示し方に縛られる必要はないのではないか。
 センター試験では,高等学校学習指導要領を外れることなく,範囲内から出題してほしい。指導要領の範囲外の発展的な内容は,出題しないようにしてほしい。

3 国立大学協会から,現行の大学入試センター試験に関して要望が出されている項目について

(1) 大学入試センター試験の実施日について
   国立大学協会から,センター試験の実施日を1月中旬の土・日曜日に固定する要望が出されている。検討の過程において出された主な意見等は,以下の通りである。
 
 センター試験が終了後,各大学には個別試験の準備という業務が残る。この業務のための時間を適切に確保したい。
 センター試験の日程が遅くなると,入試以外の日程にも影響が及ぶことがある。
 センター試験が1月20日以降となると,定期試験や授業に影響がある。
 これまで,土曜日や日曜日には大学での受け取り作業を設定していなかったが,これらの日にも設定することを各大学が承諾するのであれば,1月13日以降に試験日程を設定することは可能である。
 以上の結果,現行の「1月の第3土曜日と翌日の日曜日」という試験日の決め方から「1月13日以降の土曜日及び翌日の日曜日」に改める検討を今後行うことで意見の集約が行われた。

(2) AO入試用の成績請求票の作成について
   センター試験の成績をAO入試にも使用できるように成績請求票を別途作成することの要望が出されている。検討の過程において出された主な意見等は,以下の通りである。
 
 日本の場合,アメリカのSATやACTに当たる共通試験がない上に,高等学校の調査書の評価が難しいという問題がある。合否判定にかかわらずセンター試験の成績を提供してほしい。
 国立大学協会の当面の要望は,センター試験の成績を合否判定に利用する場合の成績請求のシステムを設けてほしいというものである。
 AO入試用の請求票を作成することは容易ではあるが,AO入試合格者に関する取扱い等が決められていない。これらのルール作りをしていただきたい。
 以上の結果,まず国立大学協会がAO入試に関する取扱いを検討することとし,この結論を待って検討することで意見の集約が行われた。

(3) 地理歴史の2科目受験について
   国立大学協会から,地理歴史の2科目受験を可能とすることの要望が出され,この方法として,地理歴史と公民の教科・科目の組合せを変更し,地歴・公民1,地歴・公民2の2コマとすることが例として示されている。検討に当たっては,この案に加えて,地歴・公民を1コマにして2科目受験とする案,地理歴史の時間を延長し2科目受験(同時に理科も同じ方法で2科目受験)とする案を検討対象とした。
 
 国立大学協会の要望は,各国立大学へのアンケートに基づくものである。
 センター試験の日程を3日間にすることは考えていない。現行の日程の中に収めることを考えている。
 地理歴史の2科目受験とは,地理歴史と公民の中から4単位科目を2科目受験できるようにしてほしいという考えである。
 4単位科目となると,公民はすべて2単位科目であり対象ではなくなる。この場合は,倫理と政治経済を合わせたような4単位科目を作れば対応可能である。
 地理歴史の2科目受験については,高等学校では,生徒の負担増やカリキュラム編成が厳しいとの理由から反対意見も少なくない。理科の3科目受験についても非常に厳しい状況である。
 公民は重要な教科であり,公民を受験しなくてもいいような仕組みは望ましくない。
 仮に1コマの中で2科目を受験できるとした場合,1科目受験者と2科目受験者では成績に差が出るのだろうか。この点については,大学への成績提供内容や大学での取扱いも含めて,配慮が必要である。
 高等学校での科目選択は,センター試験での科目選択が前提になって決められている。科目の組合せを変更するのであれば,どのような方針かを予告することが必要である。
 以上のような検討を行った結果,現在,地理歴史と公民に各1コマを当てているものを,1コマ(時間は例えば100分〜120分)にまとめて,この中で自由に2科目以内を選択させることの検討を継続することとで意見の集約が行われた。併せて,理科についても,現在3コマを当てているのを,地理歴史及び公民と同様に1コマにまとめて2科目以内を選択させることを検討することで意見の集約が行われた。

4 AO入試や推薦入試に志願する者のための新しい試験の実施について

 平成12年の大学審議会答申において,現行のセンター試験の複数回実施が提案されている。今回の検討においては,現行のセンター試験の複数回実施に賛成する意見はなかったが,近年,実施大学数や入学者数の増加がみられるAO入試や推薦入試を志願する受験者のための新しい試験が必要であるという意見が,多くの委員から出された。
 以下に主な意見を掲げる。
 
 推薦で入学してくる学生については,出身高等学校長が学力を保証することになっているが,AO入試で入学してくる学生については,学力の保証や確認がなされていない。基礎学力が分からないという不安がある。基礎学力を見るという試験を行うことができないか。
 AO入試が普及しない理由の一つに,志願者の学力を確認する方法がないことが挙げられる。このため,大学はAO入試の実施を躊躇している。
 推薦入試であっても成績要件を外す大学がある。入学者選抜に当たっては,共通の学力を確認する手段があった方がいい。
 アメリカでは,SATやACTという外部試験によって志願者の学力を確認しているため,AO入試が機能している。我が国にはこの外部試験の仕組みがない。
 高校生が,学力試験を受けて大学に入学することを目指すグループと,学力試験を受けずに入ることを目指すグループに分化しているように感じられる。高校入試においても,推薦入学の面倒をよく見てくれる高校の人気が高い。
 推薦入試やAO入試で用いるための試験を行うのであれば,これらに間に合うよう今のセンター試験よりも早い時期に行うことが適当である。
 実施時期が夏休みなどになれば,高校は今以上に早く受験対策に入ってしまう。新しい試験を実施するのであれば,達成度を測る試験としなければ教育現場に大きな影響を与えてしまう。
 志願者の高等学校段階の基礎学力を見るという試験であれば,問題作成や実施にあたって高等学校側の協力が必要である。
 高等学校段階の基本的な達成度を見る資格試験型のセンター試験を導入することが必要である。
 新しい試験は高校教育の達成度を見るものとして早い時期に実施,後半にこれまで通り選抜に利用できるセンター試験を行う。その際,各大学の個別試験は廃止したり,センター試験の問題は記述式に変更し,採点は各大学で行ったりしてはどうか。
 選抜の多様化を推進するためにも共通のガイドラインが必要である。センターもこれを提供してほしい。
 大学審議会答申を受けてセンターで試作した総合問題(国語,数学)は,日常の様々な場面で使われるものから出題されており,利用することが想定される良い問題だと思う。
 AO入試・推薦入試の基礎学力の確保ということであれば,この総合問題は十分使えると思う。
 法科大学院適性試験も一つの総合試験と言える。今後様々な分析をすることにより,総合問題の作題に資することができるのではないか。
 高等学校側では,これまで現行方式のセンター試験の複数回実施については検討してきたが,新しい方式の試験との組合せによる複数回実施は検討していない。今後検討することとしたい。

5 大学入試センター試験に対する意見について

 センター試験全般について,次のような意見が出された。
 
 我が国の大学入試におけるセンター試験の位置付けは極めて大きく,コアの部分であると考えられる。コンテンツとしての試験問題の評価は高く,今後更に改善していくというのが一つの視点であると思う。
 小規模大学,専門分野が限られた大学での試験問題の作成には限界があり,センター試験に依存する部分がかなり強いと考えられる。
 高等学校側でも,センター試験は高等学校の基礎的な学習の達成度を測る内容で,妥当であると判断している。センター試験は,大学入試における一里塚の役割を果しており,高等学校教員にも分かり易い目標である。



大学入試センター試験の改善に関する懇談会 委員名簿

氏名 現職
池田 輝政  名城大学人間学部教授
岡本 和夫  東京大学大学院数理科学研究科教授
久保田 宏明  穎明館中学・高等学校長
佐々木 隆生  北海道大学大学院経済学研究科教授
柴田 洋三郎  九州大学副学長
末吉 幸人  埼玉県教育局指導部高校教育指導課指導主事
辰村 吉康  鹿児島大学法文学部教授
中島 恭一  富山県立大学長
中瀬 忠和  中央大学商学部教授
濱名 篤  関西国際大学長
藤井 久丈  社団法人全国高等学校PTA連合会長
二村 重博  同志社大学商学部教授
渡邊 健治  東京都立豊島高等学校長


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