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資料2

法科大学院教育の改善に関するヒアリングの結果概要

1.ヒアリングの目的

 本ヒアリングは、「法科大学院教育の質の向上のための改善方策について(中間まとめ)」における「改善の方向性」に基づいて、各法科大学院教育の課題や改善方針等を把握するとともに、それを踏まえた具体的な改善の促進を図る。

2.実施時期

平成20年10月20日〜11月11日

3.ヒアリング対象

法科大学院を設置する全大学(国公私)

4.主要な聴取事項

(1)入学者の質と多様性の確保に関する取組状況について

  • 競争性の確保に関する取組状況について
  • 適性試験の改善に関する取組状況について
  • 多様な人材の確保に関する取組状況について

(2)修了者の質の保証に関する取組状況について

  • 共通的な到達目標の設定と達成度評価方法に関する取組状況について
  • 教育内容の充実と厳格な成績評価・修了認定の徹底に関する取組状況について
  • 司法試験の合格者数の一定の確保に関する取組状況について

(3)教育体制の充実に関する取組状況について

  • 質の高い教員の確保に関する取組状況について
  • 入学定員の見直しと大学における教育課程の共同実施・統合等の促進に関する取組状況について
  • 教員養成体制の構築に関する取組状況について
  • 教員の教育能力の向上に関する取組状況について

(4)積極的な情報公開の促進に関する取組状況について

5.ヒアリング結果の概要

(1)入学者の質と多様性の確保に関する取組状況

1 競争性の確保

 全体的な志願者数の減少に伴い、多くの法科大学院において、競争倍率が減少しており、競争倍率が2倍を切っている法科大学院も複数見られた。各法科大学院においては、教育の成果の広報活動の充実や他地域での入試説明会・入試の実施、さらには入学定員の見直しなど、入学者選抜の競争性の確保のための改善について検討している。なお、複数の法科大学院から、「質の低下」論による全国的な受験生の減少に対して、全体的な入学定員の見直しによる合格率の向上など、法科大学院受験者を増やすための方策を考える必要があるとの意見が寄せられた。

2 適性試験の改善

 多くの法科大学院の入学者選抜では、適性試験の成績だけでなく総合判定方式となっているが、競争倍率が低い法科大学院の多くが適性試験の著しく低い者が入学している状況が散見された。このうち、複数の法科大学院においては、独自に最低基準点を設定し、状況を改善していく意向が見られた。一方、多くの法科大学院から、適性試験の成績と入学後の法科大学院での成績に相関関係がないので、適性試験の低い点数の者を入学させざるを得ず、試験内容の検証及び改善を求められた。

3 多様な人材の確保

 ほとんどの法科大学院では、現状において、社会人・他学部出身者が一定数確保されている。しかし、今後予想される志願者数の減少に伴い、社会人入学者の数も減少していくことを鑑み、多くの法科大学院において、社会人などの未修者の学習支援体制の構築や長期履修制度導入の検討を行っている。

(2)修了者の質の保証に関する取組状況

1 共通的な到達目標の設定と達成度評価方法

 多くの法科大学院で、修了時の到達目標、学年ごと、科目ごとの到達目標の設定がなされており、現在、策定中の全国的な共通的到達目標の設定が行われた際には、それを踏まえて自学の到達目標を検討する方向である。

2 教育内容の充実と厳格な成績評価・修了認定の徹底

 全般的に厳格な成績評価・修了認定が行われ、通常の修業年限内で修了できない者の割合も3割程度に達している。しかしながら、修了率が9割近くとなっているが司法試験に不合格となる者が多く見られる例、1年次から2年次に進級する際の要件が単位取得のみをもって行われている例など、厳格な成績評価・修了認定が十分行われているとは言い難い法科大学院も複数見られた。これらの法科大学院においては、今後、修了試験の実施やGPAの数値を進級時や修了時の判定の際に導入することなどの大幅な改善を図る予定となっている。

(3)教育体制の充実に関する取組状況

1 質の高い教員の確保

 多くの法科大学院においては、現状においては、ダブルカウントが解消され、必要な専任教員が確保されている。しかしながら、今後、定年退職者や突然の辞職者等の補充のため、学内の他研究科や他法科大学院との連携により、教員体制の充実を図るとする法科大学院が見られた一方、将来的な採用の対応について十分検討されていない法科大学院も見られた。

2 入学定員の見直しと法科大学院の教育課程の共同実施・統合等の促進

 中間まとめで提示された、1質の高い教員の数の確保が困難、2入学者の質の確保が困難、3修了者の多くが司法試験に合格していない状況が継続しているといった状況にあてはまるいくつかの法科大学院で、具体的な入学定員の見直しが行われているが、現時点で入学定員の見直しを十分に行っていない法科大学院も見られる。また、教育水準及び教育体制の維持に懸念が見られる法科大学院についても、共同教育課程の設置・統合などの方策について十分な検討がなされていない、あるいは、今後検討する予定もないという状況であった。中間まとめに示された3要件にあてはまる法科大学院は率先して抜本的な入学定員の見直しを検討する必要がある一方、複数の法科大学院から、地方の法曹養成機関の適性配置の必要性や大規模校の率先した定員削減の必要性を唱える意見も見られた。

3 教員養成体制の構築

 多くの法科大学院において、教員養成の必要性は認識されており、外国法や研究論文などの科目の開設が行われているが、履修者や後期博士課程への進学希望者の実績がともに少ない状況が見られる。このため、研究者を目指す学生のための奨学金の導入や、博士課程への入学を容易にするための法学研究科との連携体制の構築など今後の改善策を検討している法科大学院が見られた。

4 教員の教育能力の向上

 ほぼすべての法科大学院において、FDのための組織が設置され、学生による授業アンケートや教員間の授業参観などが実施されている。しかしながら、一部の大学で、それらを教育内容・方法の改善に結びつけるための組織的な取り組みが行われていない法科大学院もあり、組織的な取り組みのための体制の構築について今後改善を図っていくことが検討されている。

(4)積極的な情報公開の促進

 入学者選抜の状況や教育内容を含むシラバスなど様々な情報については、多くの法科大学院でHP等で公開されているが、修了認定状況について公表している法科大学院はごく少数に限られていた。今後、多くの法科大学院で、修了認定状況を公表する予定である。