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資料4−2

法科大学院に係る年次計画履行状況調査結果の概要について
(平成16年度)

1. 調査の目的等
   年次計画履行状況調査(以下,「アフターケア」という。)は,文部科学省告示(注1参照)に基づき,設置認可後の当該認可時における留意事項(設置基準の要件は満たしているが,当該事項について一層の改善・充実が必要と認められた事項),授業科目の開設状況,教員組織の整備状況その他の設置計画の履行状況について,各法科大学院から報告を求め,書類又は実地により調査を行い,各法科大学院の教育研究水準の維持・向上及びその主体的な改善・充実に資することを目的として実施した。

2. 調査対象及び実施体制等
   今回のアフターケアは,大学設置・学校法人審議会法科大学院特別審査会(別紙1)に「アフターケア(AC)部会」を設置し,制度発足初年度に当たる平成16年度に開設した国立大学20大学,公立大学2大学,私立大学46大学の合計68大学の法科大学院を対象として書面調査を実施した(別紙2)。
 また,認可の際に,
 
1  教育課程の一層の質的充実,
2  多数の授業科目について,実質的な教員の補充,
3  施設等の一層の充実や履修指導体制等への配慮
  などに関する留意事項が付された法科大学院(14校)については,実地調査を実施した。

3. 総合所見
   全般的には,各法科大学院において,法科大学院制度の趣旨に則って,おおむね設置計画に従って整備・充実が図られているといえる。運用・実施状況の全体を概観すると,各法科大学院において,それぞれが設定した理念・目的を実現するために,教育課程の質的充実・改善を軸に,設置計画に沿った,創意工夫ある種々の取組が行われつつある状況であることが窺われた。
 本年度は法科大学院制度の発足初年度ということもあり,入学者選抜,教育課程の運営,教員組織の整備,FDへの取組など多くの面で試行錯誤の部分もあり,改善すべき点も少なからず見受けられた。
 今後,各法科大学院の設置計画の円滑かつ確実な履行はもとより,学生のニーズ等にも目を向けながら,専門職大学院にふさわしい教育研究水準の確保と向上に向けて,一層の創意工夫が期待される。
 なお,今年度の調査結果を踏まえ,新たな留意事項が付されたもの及び,引き続き,認可時の留意事項への対応が求められたものは,別紙3のとおりである。

4. 調査結果の概要
   各法科大学院に対する書面調査及び実地調査の結果の各項目ごとの全般的な状況は,以下のとおりである。

 
(1) 学生の入学状況
   学生確保の面において,入学定員を大きく下回っている法科大学院(3校),法学既修者の受入が当初構想よりも著しく下回っている法科大学院(14校)がみられた。一方,入学定員を2割以上,上回って学生を受け入れている法科大学院(7校)もみられた。
 いずれの法科大学院においても,これらの状況を踏まえ,入学者選抜方法等の改善・充実のための方策が検討・実施されている。

(2) 教育課程の運営状況
 
1  授業科目の開設状況については,各法科大学院において,おおむね設置計画どおりに開設・運営されているが,法学既修者の受入が少ない法科大学院では,未開講科目が多数生じるなどの事態が見受けられる。これらの点は,学年進行に伴い,徐々に解消されると推察されるものの,運営面での工夫も望まれる。
2  実地調査を行った法科大学院では,その規模に関わらず,おおむね少人数教育による,きめ細かい履修指導体制がとられており,学生の授業等に対する満足度も総じて高い状況が窺われたが,今後,改善すべき点としては,以下のような課題が挙げられる。
 
1)  法学既修者の受入が少ない法科大学院では,行き届いた指導により成果がみられる反面,多方向授業(学生・教員相互の間において,質疑応答や討論等を行う授業)の教育方法及び教育効果について課題がみられた。また,一部の法科大学院では,法学既修者の認定に当たっての基準・手続の適正な運用について改善の余地がみられた。
2)  多くの法科大学院で,法学基礎知識の習熟度が一様とはいえない法学未修者に対する初年次教育について,学力レベルに応じた個別指導を行うなど,様々な取組が講じられているが,従来の学部教育における一方的な講義形式からいかに脱却するか,未修者を対象とした授業において双方向的手法をどのように取り入れるかなど,授業運営の面で,なお苦慮している状況が窺われた。
3)  成績評価については,客観的・統一的な基準の明確化,その基準の学生に対する明示,評価の厳格な運用方法の面で,再検討を要するところが相当数みられた。
4)  法律基本科目に関して,正課外としてではあるが,新司法試験対策を念頭に置いた特別の講座を開設している法科大学院が一部にみられた。たしかに,法律基本科目履修の充実が重要であることは否定できない。しかし,法科大学院制度の趣旨に照らすと,この点は,学生の自主的学習の一環であるとの位置づけを明確にするとともに,新司法試験対策に偏重することのないよう,本来の授業との関係についても適切に配慮していく必要がある。また,法律基本科目に関する補習授業の実施についても,上記の趣旨を踏まえて,基本科目の履修に過度に偏ることのないよう,学生や教員の実質的な負担を考慮するとともに,学生に対し,ガイダンス等を通じて,展開・先端科目や基礎法学・隣接科目の履修などを含む,幅広い知識を修得させるための工夫・努力が望まれる。
5)  このほか,とくにクラスを分け,同一科目名で,授業を実施する場合などにおいて,教員間の授業内容,方法,教材の利用等について検討・調整が不十分であることなど,授業の運営の面で,学生からの改善要望意見があった。

(3) 教員組織の整備状況
   教員組織については,おおむね設置計画どおりに整備・補充が進められているが,今後,学年進行に伴い,学生が増加することを踏まえ,教員の教育負担面への配慮の方策や,教員の年齢構成のバランスなど,中・長期的な視点からの教員組織の整備・充実を図っていくことが必要と思われる。
 また,一部の法科大学院では,法律基本科目につき専任教員の配置が行われていない状況がみられたため,引き続き,早急な対応を要請した。

(4) 施設・設備の整備状況
   施設・設備については,大学間で差はみられるものの,設置計画に沿って順次,整備が進められている。
 とくに実地調査を行った法科大学院の全てが専用施設(講義室,演習室,自習室,図書室など)を有しており,そのほとんどにおいて,パソコンやデータベースの利用などの環境面にも配慮が行き届いている。また,小規模校では個々の学生専用のキャレル(自習机),ロッカー等が整備されており,学生の満足度も非常に高い状況が窺われた。今後,学年進行に伴い,学生数が増加するので,学生の多様なニーズも踏まえつつ,利用計画の整備や利便性の一層の向上を図ることが必要と思われる。また,一部の法科大学院において,図書について,基本書の充実,貸出しルールの明確化などの面で学生からの改善要望意見があった。

(5) FD(ファカルティ・ディベロップメント:教育内容及び方法の改善を図るための組織的な研修及び研究)への取組状況
   実地調査を行った法科大学院のFDへの取組状況としては,相当数の法科大学院で,教育内容・方法の改善を図るためのFD委員会(会議)などの組織が整備されているが,教育内容・方法面での改善・充実方策等に関する組織的な取組は未だ十分ではなく,教員個々によって,授業に取り組む姿勢や意識に格差がみられた。
 このほか,FDの一環として,学生への授業評価アンケートが実施されているが,その結果の活用を組織的に検討することなく,個々の教員の判断に委ねられていたり,教員間で対応にもバラツキがみられるなどの状況が見受けられた。また,学生に対して結果等がほとんどフィードバックされておらず,今後,改善点等を含め学生に対してもその結果等を広く公表するなどの取組の充実が望まれる。
 全般的に,FDに関する各種委員会が設置されており,教育の質の向上及び改善に結び付けるためのシステムは整備されている状況は窺えるものの,その実質的な活動や組織的な取組の面で,なお課題が多く残されており,教員の意識の啓発を含め,今後一層の充実が必要と思われる。

(6) 自己点検・評価への取組状況
   自己点検・評価への取組状況として,実地調査を行った法科大学院の多くは,内部組織として自己点検・評価委員会を設置し,具体的な点検項目・内容等について検討を進めているが,一部の法科大学院では,内部に独自の委員会等を設けず,全学的な委員会における取組にとどめていたり,具体的な活動が十分でない状況が見受けられた。今後,認証評価などを視野に入れつつ,法科大学院として独自の自己点検・評価体制を整備し,実質的な取組を推進する必要性がある。また,例えば,ホームページ等を活用して,これらの結果や認可等の際に付された留意事項への対応状況などを含め,自己点検・評価結果に関する情報を積極的に開示することも今後期待される。

5. その他
   文部科学省では,大学設置・学校法人審議会法科大学院特別審査会の本年度の調査結果を踏まえ,今後,各法科大学院が完成年度以降に実施を義務付けられている「認証評価」との有機的な連携が図られるよう,来年度の調査の実施に向けて,調査報告書の様式等の改善・充実を図り,年次計画履行状況調査を通じて,各法科大学院の特色を活かした主体的な取組を支援・促進していくこととしている。

(注)1  文部科学省告示第50号(抄)
   大学院設置基準(昭和49年文部省令第28号)第33条の規定に基づき,新たに大学院等を設置する場合の教員組織,校舎等の施設及び設備の段階的な整備について次のように定める。
   平成15年3月31日
  (1、2略)
3  文部科学大臣は,大学院等の設置又は課程の変更を認可した後,当該認可時における留意事項,授業科目の開設状況,教員組織の整備状況その他の年次計画の履行状況について報告を求め,必要に応じ,書類,面接又は実地により調査することができるものとする。


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