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2.新しい学習指導要領等が目指す姿

(1)新しい学習指導要領等の在り方について

  • 学習指導要領等は、学校教育法に基づき国が定める教育課程の基準であり、教育の目標や指導すべき内容等を体系的に示している。各学校は、学習指導要領等に基づき、その記述の意味や解釈などの詳細について説明した教科等別の解説を踏まえ、教育課程を編成し、年間指導計画等や授業等ごとの学習指導案等を作成し、実施するものと定められている。
  • 各学校が今後、教育課程を通じて子供たちにどのような力を育むのかという教育目標を明確にし、それを広く社会と共有・連携していけるようにするためには、教育課程の基準となる学習指導要領等が、「社会に開かれた教育課程」を実現するという理念のもと、学習指導要領等に基づく指導を通じて子供たちが何を身に付けるのかを明確に示していく必要がある。
  • そのためには、指導すべき個別の内容事項の検討に入る前に、まずは学習する子供の視点に立ち、教育課程全体や各教科等の学びを通じて「何ができるようになるのか」という観点から、育成すべき資質・能力を整理する必要がある。その上で、整理された資質・能力を育成するために「何を学ぶのか」という、必要な指導内容等を検討し、その内容を「どのように学ぶのか」という、子供たちの具体的な学びの姿を考えながら構成していく必要がある(※1)。

  • ※1 補足資料26ページ参照。

学習プロセス等の重要性を踏まえた検討

  • こうした検討の方向性を底支えするのは、「学ぶとはどのようなことか」「知識とは何か」といった、「学び」や「知識」等に関する科学的な知見の蓄積である。
  • 学びを通じた子供たちの真の理解、深い理解を促すためには、主題に対する興味を喚起して学習への動機付けを行い、目の前の問題に対しては、これまでに獲得した知識や技能だけでは必ずしも十分ではないという問題意識を生じさせ、必要となる知識や技能を獲得し、さらに試行錯誤しながら問題の解決に向けた学習活動を行い、その上で自らの学習活動を振り返って次の学びにつなげるという、深い学習のプロセス(※2)が重要である。また、その過程で、対話を通じて他者の考え方を吟味し取り込み、自分の考え方の適用範囲を広げることを通じて、人間性を豊かなものへと育むことが極めて重要である。
  • また、学習のプロセスにおいて、人類の知的活動を通して蓄積され精査されてきた多様な思考の在り方を学び、その枠組みに触れることは、問題発見・解決の手法や主体的に考える力を身に付けるために有効であり、その点で教科間の区別を超えて重要である。
  • 身に付けるべき知識に関しても、個別の事実に関する知識と、社会の中で汎用的に使うことのできる概念等に関する知識とに構造化される(※3)という視点が重要である。個々の事実に関する知識を習得することだけが学習の最終的な目的ではなく、新たに獲得した知識が既存の知識と関連付けられたり組み合わされたりしていく過程で、様々な場面で活用される基本的な概念等として体系化されながら身に付いていくということが重要である。技能についても同様に、獲得した個別の技能が関連付けられ、様々な場面で活用される複雑な方法として身に付き熟達していくということが重要であり、こうした視点に立てば、長期的な視野で学習を組み立てていくことが極めて重要となる。
  • こうした「学び」や「知識」等に関する知見は、芸術やスポーツ等の分野における学びについても当てはまるものであり、これらの分野における学習のプロセスやそれを通じて身に付く力の在り方も含めて、教育課程全体の中で構造化していくことが必要である。

  • ※2 認知過程や学習プロセスなどに関する研究例については、補足資料190・191ページ、194ページなどを参照。
  • ※3 知識の次元や階層性、構造などに関する研究例については、補足資料190ページ、196・197ページ、202ページなどを参照。前回改訂においても、「生命やエネルギー、民主主義や法の支配といった各教科の基本的な概念などの理解は、これらの概念等に関する個々の知識を体系化することを可能とし、知識・技能を活用する活動にとって重要な意味をもつものであり、教育内容として重視すべきものとして、適切に位置付けていくことが必要である」とされたところ(「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について(答申)」 (平成20年1月中央教育審議会))。

人生を主体的に切り拓(ひら)くための学び

  • 子供たち一人一人は、多様な可能性を持った存在であり、多様な教育ニーズを持っている。成熟社会において新たな価値を創造していくためには、一人一人が互いの異なる背景を尊重し、それぞれが多様な経験を重ねながら、様々な得意分野の能力を伸ばしていくことが、これまで以上に強く求められる。一方で、苦手な分野を克服しながら、社会で生きていくために必要となる力をバランスよく身に付けていくことも重要である。
  • また、子供たちに社会や職業で必要となる資質・能力を育むためには、学校と社会との接続を意識し、一人一人の社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる能力や態度を育み、キャリア発達を促す「キャリア教育」(※4)の視点も重要である。学校教育に「外の風」、すなわち、変化する社会の動きを取り込み、世の中と結び付いた授業等を通じて子供たちにこれからの人生を前向きに考えさせることが、主体的な学びの鍵となる。
  • これらの視点を重視しながら、未来に向かって成長しようとしている子供たちが、学びに関して持っている潜在的な力を、教育を通じて洗練させ、教員自らもその力を発揮し、教室や社会で共に生き生きと活躍できるようにするために、学習指導要領等の在り方を検討していかなければならない。

  • ※4 「キャリア教育」とは、一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通じて、キャリア発達を促す教育のことである。平成23年に中教審において取りまとめられた答申「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」に関する一層の理解と取組の充実が求められる。補足資料30~32ページ参照。

(2)育成すべき資質・能力について

1.育成すべき資質・能力についての基本的な考え方

  • 学習指導要領等がどのような資質・能力の育成を目指すのかについては、教育法令が定める教育の目的・目標等を踏まえて検討する必要がある。教育基本法に定める教育の目的を踏まえれば、育成すべき資質・能力の上位には、常に個人一人一人の「人格の完成」と、「平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質」を備えた心身ともに健康な国民の育成があるべきである。

現代的な課題

  • 教育基本法が目指すこうした教育の目的を踏まえつつ、社会の質的変化等を踏まえた現代的な課題に即して、これからの時代に求められる人間の在り方を描くとすれば、以下のような在り方などが考えられる。
    • 社会的・職業的に自立した人間として、郷土や我が国が育んできた伝統や文化に立脚した広い視野と深い知識を持ち、理想を実現しようとする高い志や意欲を持って、個性や能力を生かしながら、社会の激しい変化の中でも何が重要かを主体的に判断できる人間であること。
    • 他者に対して自分の考え等を根拠とともに明確に説明しながら、対話や議論を通じて多様な相手の考えを理解したり自分の考え方を広げたりし、多様な人々と協働していくことができる人間であること。
    • 社会の中で自ら問いを立て、解決方法を探索して計画を実行し、問題を解決に導き新たな価値を創造していくとともに新たな問題の発見・解決につなげていくことのできる人間であること。
  • 人間としてのこうした在り方を、教育課程の在り方に展開させるには、必要とされる資質・能力の要素についてその構造を整理しておく必要がある。
  • この点について、海外の事例や、カリキュラムに関する先行研究等に関する分析(※5)によれば、育成すべき資質・能力の要素が、知識に関するもの、スキルに関するもの、情意(人間性など)に関するものの三つに大きく分類されている。
     上記の三要素を、学校教育法第30条第2項が定める学校教育において重視すべき三要素(「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「主体的に学習に取り組む態度」)に照らし合わせると、これらの考え方は大きく共通するものであることがわかる。

  • ※5 資質・能力に関する分析等については、補足資料164~166ページ、172ページ、176~187ページなどを参照。

資質・能力の要素

  • これら三要素を議論の出発点としながら、学習する子供の視点に立ち、育成すべき資質・能力を以下のような三つの柱(以下「三つの柱」という。)で整理することが考えられる(※6)。教育課程には、発達に応じて、これら三つをそれぞれバランスよくふくらませながら、子供たちが大きく成長していけるようにする役割が期待されており、各教科等の文脈の中で身に付けていく力と、教科横断的に身に付けていく力とを相互に関連付けながら育成していく必要がある。
1)「何を知っているか、何ができるか(個別の知識・技能)」

 各教科等に関する個別の知識や技能などであり、身体的技能や芸術表現のための技能等も含む。基礎的・基本的な知識・技能を着実に獲得しながら、既存の知識・技能と関連付けたり組み合わせたりしていくことにより、知識・技能の定着を図るとともに、社会の様々な場面で活用できる知識・技能として体系化しながら身に付けていくことが重要である(※7)。


  • ※6 補足資料27ページ参照。
  • ※7 脚注17参照。
2)「知っていること・できることをどう使うか(思考力・判断力・表現力等)」

 問題を発見し、その問題を定義し解決の方向性を決定し、解決方法を探して計画を立て、結果を予測しながら実行し、プロセスを振り返って次の問題発見・解決につなげていくこと(問題発見・解決)や、情報を他者と共有しながら、対話や議論を通じて互いの多様な考え方の共通点や相違点を理解し、相手の考えに共感したり多様な考えを統合したりして、協力しながら問題を解決していくこと(協働的問題解決)のために必要な思考力・判断力・表現力等である。
 特に、問題発見・解決のプロセスの中で、以下のような思考・判断・表現を行うことができることが重要である。

  • 問題発見・解決に必要な情報を収集・蓄積するとともに、既存の知識に加え、必要となる新たな知識・技能を獲得し、知識・技能を適切に組み合わせて、それらを活用しながら問題を解決していくために必要となる思考。
  • 必要な情報を選択し、解決の方向性や方法を比較・選択し、結論を決定していくために必要な判断や意思決定。
  • 伝える相手や状況に応じた表現。
3)「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びに向かう力、人間性等)」

 上記の1)及び2)の資質・能力を、どのような方向性で働かせていくかを決定付ける重要な要素であり、以下のような情意や態度等に関わるものが含まれる。

  • 主体的に学習に取り組む態度も含めた学びに向かう力や、自己の感情や行動を統制する能力、自らの思考のプロセス等を客観的に捉える力など、いわゆる「メタ認知」に関するもの。
  • 多様性を尊重する態度と互いのよさを生かして協働する力、持続可能な社会づくりに向けた態度、リーダーシップやチームワーク、感性、優しさや思いやりなど、人間性等に関するもの。
  • こうした資質・能力については、学習指導要領等を踏まえつつ、各学校が編成する教育課程の中で、各学校の教育目標とともに、育成する資質・能力のより具体的な姿を明らかにしていくことが重要である。その際、子供一人一人の個性に応じた資質・能力をどのように高めていくかという視点も重要になる。

2.特にこれからの時代に求められる資質・能力

  • 将来の予測が困難な複雑で変化の激しい社会や、グローバル化が進展する社会に、どのように向き合い、どのような資質・能力を育成していくべきか。また、一人一人が幸福な人生を生きるためには、どのような力を育んでいくべきか。

変化の中に生きる社会的存在として

  • 複雑で変化の激しい社会の中では、固有の組織のこれまでの在り方を前提としてどのように生きるかだけではなく、様々な情報や出来事を受け止め、主体的に判断しながら、自分を社会の中でどのように位置付け、社会をどう描くかを考え、他者と一緒に生き、課題を解決していくための力が必要となる。主権を有し、今後の我が国の在り方に責任を有する国民の一人として、また、多様な個性・能力を生かして活躍する自立した人間として、こうした力を身に付け、適切な判断・意思決定や公正な世論の形成、政治参加や社会参画、一層多様性が高まる社会における自立と共生に向けた行動を取っていくことが求められる。
  • こうした観点から、平和で民主的な国家及び社会の形成者として求められる力をはじめ、生産や消費などの経済的主体等として求められる力や、安全な生活や社会づくりに必要な資質・能力(※8)を育んでいくことや、急速に情報化が進展する社会の中で、情報や情報手段を主体的に選択し活用していくために必要な情報活用能力(※9)、物事を多角的・多面的に吟味し見定めていく力(いわゆる「クリティカル・シンキング」)、統計的な分析に基づき判断する力、思考するために必要な知識やスキルなどを、各学校段階を通じて体系的に育んでいくことの重要性は高まっていると考えられる。あわせて、職業に従事するために必要な知識・技能、能力や態度の獲得も求められており、社会的要請を踏まえた職業教育の充実も重要である。
  • また、我が国が、科学技術・学術研究の先進国として、将来にわたり存在感を発揮するとともに成果を広く共有していくためには、子供たちが、卓越した研究や技術革新、技術経営などを担うキャリアに関心を持つことができるよう、理数科目等に関する学習への関心を高め、裾野を広げていくことも重要である。また、ICTの急速な進展などにより、高度な技術がますます身近となる社会の中で、そうした技術を理解し使いこなす科学的素養を全ての子供たちに育んでいくことも重要となる。
  • さらに、一人一人が幸福な人生を自ら創り出していくためには、情意面や態度面について、自己の感情や行動を統制する能力や、よりよい生活や人間関係を自主的に形成する態度等を育むことが重要である。こうした力は、将来の社会不適応を予防し保護要因(※10)を高め、社会を生き抜く力につながる。

  • ※8 補足資料33・34ページ参照。
  • ※9 補足資料35~37ページ参照。
  • ※10 社会不適応を起こす可能性を予防するもの。自己の感情や行動を統制する能力や、よりよい生活や人間関係を自主的に形成する態度等を獲得することや、生徒と教師、生徒同士のつながりなどが保護要因に当たるものとされる。

グローバル化する社会の中で

  • また、グローバル化する中で世界と向き合うことが求められている我が国においては、日本人としての美徳やよさを備えつつグローバルな視野で活躍するために必要な資質・能力の育成が求められる。言語や文化に対する理解を深め、国語で理解したり表現したりすることや、さらには外国語を使って理解したり表現したりできるようにすることが必要である。こうした言語に関する能力を向上させるともに、古典の学習を通じて、日本人として大切にしてきた言語文化を積極的に享受していくことや、芸術を学ぶことを通じて感性等を育むことなどにより、日本文化を理解して自国の文化を語り継承することができるようにするとともに、異文化を理解し多様な人々と協働していくことができるようになることが重要である。
     また、日本のこととグローバルなことの双方を相互的に捉えながら、社会の中で自ら問題を発見し解決していくことができるよう、自国と世界の歴史の展開を広い視野から考える力や、思想や思考の多様性の理解、地球規模の諸課題や地域課題を解決し持続可能な社会づくりにつながる地理的な素養についても身に付けていく必要がある。
  • こうした観点からは、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を契機に、スポーツへの関心を高め、「する、みる、支える」などの多様なスポーツとの関わり方を楽しめるようにしていくことも重要である。スポーツを通じて、他者との関わりを学んだり、ルールを守り競い合っていく力を身に付けたりすることができる。さらには、多様な国や地域の文化の理解を通じて、多様性の尊重や国際平和に寄与する態度を身に付けたり、ボランティア活動を通じて、共生社会の実現に不可欠な他者への共感や思いやりを育んだりすることにもつながる。

資質・能力の要素との関連性

  • こうした資質・能力についても、それぞれを三つの柱に沿って整理し、下記(3)1.に示す学習指導要領等の構造化の考え方の中で各教科等との関係を整理していくことが必要である。そのほか、個別のいわゆる現代的な課題やテーマに焦点化した教育についても、これらが教科横断的なテーマであることを踏まえ、それを通じてどのような資質・能力の育成を目指すのかを整理し、学習指導要領等の構造化の考え方の中で検討していくことが必要である。

3.発達の段階や成長過程のつながり

  • 育成すべき資質・能力については、幼児教育から高等学校までを通じた見通しを持って、各学校段階の教育課程全体及び各教科等においてどのように伸ばしていくのかということが、系統的に示されなければならない。
  • 選挙権年齢が18歳に引き下げられ、子供にとって政治や社会がより一層身近なものとなっていることなども踏まえ、中学校卒業後の約98%の者が進学し、社会で生きていくために必要となる力を共通して身に付けることのできる、初等中等教育最後の教育機関である高等学校を卒業する段階で身に付けておくべき力は何かを明確に示すことが求められている。
  • こうした「18歳の段階で身に付けておくべき力は何か」という観点や、「義務教育を終える段階で身に付けておくべき力は何か」という観点を共有しながら、幼児教育、小学校教育、中学校教育、高等学校教育それぞれの在り方を考えていく必要がある。同時に、子供たち一人一人の個々の発達課題や教育的ニーズを踏まえた対応も重要である。
  • また、近年は特別支援学校だけではなく小・中・高等学校等において発達障害を含めた障害のある子供たちが学んでおり、特別支援教育の対象となる子供の数は増加傾向にある。障害者の権利に関する条約に掲げられたインクルーシブ教育システム(※11)の理念を踏まえ、子供たちの自立と社会参加を一層推進していくため、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった、連続性のある「多様な学びの場」において、子供たちの十分な学びを確保していく必要があり、一人一人の子供の障害の状態や発達の段階に応じた指導を一層充実させていく必要がある。
  • そうした発達の段階に応じて積み重ねていく学びの中で、地域や社会と関わり、様々な職業に出会い、社会的・職業的自立に向けた学びを積み重ねていくことが重要である。
  • 加えて、幼小、小中、中高の学びの連携・接続についても、学校段階ごとの特徴を踏まえつつ、前の学校段階での教育が次の段階で生かされるよう、学びの連続性が確保されることが重要である。

  • ※11 障害者の権利に関する条約第24条によれば、インクルーシブ教育システムとは、人間の多様性の尊重等を強化し、障害者が精神的及び身体的な能力等を可能な限り最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加することを可能にするという目的の下、障害のある者と障害のない者が共に学ぶ仕組みであり、障害のある者が一般的な教育制度から排除されないこと、自己の生活する地域において初等中等教育の機会が与えられること、個人に必要な「合理的配慮」が提供されること等が必要とされている。
     また、中央教育審議会初等中等教育分科会の報告(平成24年7月)では、インクルーシブ教育システムにおいては、同じ場で共に学ぶことを追求するとともに、個別の教育的ニーズのある幼児児童生徒に対して、自立と社会参加を見据えて、その時点で教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できる、多様で柔軟な仕組みを整備することが重要である、小・中学校における通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった、連続性のある「多様な学びの場」を用意しておくことが必要である、とされている。

(3)育成すべき資質・能力と、学習指導要領等の構造化の方向性について

1.学習指導要領等の構造化の在り方

  • 次期学習指導要領等については、資質・能力の三つの柱全体を捉え、教育課程を通じてそれらをいかに育成していくかという観点から、構造的な見直しを行うことが必要である。これはすなわち、教育課程について、「何を知っているか」という知識の内容を体系的に示した計画に留(とど)まらず、「それを使ってどのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」までを視野に入れたものとして議論するということである。

教科等の本質的意義

  • 育成すべき資質・能力と学習指導要領等との構造を整理するには、学習指導要領を構成する各教科等をなぜ学ぶのか、それを通じてどういった力が身に付くのかという、教科等の本質的な意義に立ち返って検討する必要がある。
  • 教科等における学習は、知識・技能のみならず、それぞれの体系に応じた思考力・判断力・表現力等や情意・態度等を、それぞれの教科等の文脈に応じて育む役割を有している。
  • 例えば、思考力は、国語や外国語において様々な資料から必要な情報を整理して自分の考えをまとめる過程や、社会科において社会的な事象から見いだした課題や多様な考え方を多面的・多角的に考察して自分の考えをまとめていく過程、数学において事象を数学的に捉えて問題を設定し、解決の構想を立てて考察していく過程、理科において自然の事象を目的意識を持って観察・実験し、科学的に探究する過程、音楽や美術において自分の意図や発想に基づき表現を工夫していく過程、保健体育において自己や仲間の運動課題や健康課題に気付き、その解決策を考える過程、技術・家庭科において生活の課題を見いだし、最適な解決策を追究する過程、道徳において人間としての生き方についての考えを深める過程などを通じて育まれていく(※12)。これらの思考力を基盤に判断力や表現力等も同様に、各教科等の中でその内容に応じ育まれる。
  • 情意や態度等についても同様であり、各教科等を通じて育まれた社会観や自然観、人間観などは、「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」を決定する構成要素となっていく。

  • ※12 中学校の教科構成を基に例示。

教育課程の総体的構造の可視化

  • このように、思考力・判断力・表現力等や情意・態度等は、各教科等の文脈の中で指導される内容事項と関連付けられながら育まれていく。ただし、各教科等で育まれた力を、当該教科における文脈以外の、実社会の様々な場面で活用できる汎用的な能力に更に育てていくためには、総体的観点からの教育課程の構造上の工夫が必要になってくる。まさにその工夫が、各教科等間の内容事項についての相互の関連付けや、教科横断的な学びを行う「総合的な学習の時間」や社会参画につながる取組などを行う「特別活動」、高等学校の専門学科における「課題研究」の設定などに当たる。
  • このような資質・能力と各教科等との関係を踏まえれば、学習指導要領の全体構造を検討するに当たっては、教育課程全体でどのような資質・能力を育成していくのかという観点から、各教科等の在り方や、各教科等において育成する資質・能力を明確化し、この力はこの教科等においてこそ身に付くのだといった、各教科等を学ぶ本質的な意義を捉え直していくことが重要である。そして、各教科等で育成される資質・能力の間の関連付けや内容の体系化を図り、資質・能力の全体像を整理していくことが同じく重要であり、教育課程の全体構造と各教科等を往還的に整理していく必要がある(※13)。
  • あわせて、教科等間の横のつながりとともに、「義務教育を終える段階で身に付けておくべき力は何か」や「18歳の段階で身に付けておくべき力は何か」という観点から、初等中等教育の出口のところで身に付けておくべき力を明確にしながら、幼・小・中・高の教育を、縦のつながりの見通しを持って系統的に組織していくことも重要である。つまり、各教科等で学校や学年段階に応じて学ぶことを単に積み上げるのではなく、義務教育や高等学校教育を終える段階で身に付けておくべき力を踏まえつつ、各学校・学年段階で学ぶべき内容を見直すなど、発達の段階に応じた縦のつながりと、各教科等の横のつながりを行き来しながら、学習指導要領の全体像を構築していくことが必要である。
  • 特に、来年度から小中一貫教育が制度化(※14)され、義務教育学校や小中一貫型小・中学校(仮称)においては、4-3-2や5-4といった柔軟な学年段階の区切りの設定や、小・中学校の9年間を一貫させた教育課程の編成などが進められることも踏まえた議論が必要である。 
  • また、幼稚園教育要領においては、幼稚園教育におけるねらいや内容を「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」の領域別に示しつつ、幼稚園における生活の全体を通じて総合的に指導することとされている。こうした幼児教育の特性を大事にしつつ、幼児期において育みたい資質・能力を明確にし、幼児教育と小学校の各教科等における教育との接続の充実や関係性の整理を図る必要がある。
  • 次期改訂においては、こうした教育課程の総体的な構造を可視化していくことが求められる。したがって、教科等を束ねる総則の意義が極めて重要になる。次期学習指導要領等の総則においては、各学校が、教育課程の全体構造や教科等の相互の関係等を捉えながら教育課程を編成することができるよう、構造上の位置付けや意義を可能な限り分かりやすく提示していくべきである。こうしたことにより、教育課程を介して学校が社会や世界との接点となり、さらには、現在と未来をつなぐ役割を果たしていくことが期待される。

  • ※13 学習指導要領等の構造化のイメージについては、補足資料110ページ参照。
  • ※14 補足資料60ページ参照。

2.学習活動の示し方や「アクティブ・ラーニング」の意義等

  • 次期改訂の視点は、子供たちが「何を知っているか」だけではなく、「知っていることを使ってどのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」ということであり、知識・技能、思考力・判断力・表現力等、学びに向かう力や人間性など情意・態度等に関わるものの全てを、いかに総合的に育んでいくかということである。

「アクティブ・ラーニング」の意義

  • 思考力・判断力・表現力等は、学習の中で、(2)1.2)に示したような思考・判断・表現が発揮される主体的・協働的な問題発見・解決の場面を経験することによって磨かれていく(※15)。身に付けた個別の知識や技能も、そうした学習経験の中で活用することにより定着し、既存の知識や技能と関連付けられ体系化されながら身に付いていき、ひいては生涯にわたり活用できるような物事の深い理解や方法の熟達に至ることが期待される(※16)。
  • また、こうした学びを推進するエンジンとなるのは、子供の学びに向かう力であり、これを引き出すためには、実社会や実生活に関連した課題などを通じて動機付けを行い、子供たちの学びへの興味と努力し続ける意志を喚起する必要がある(※17)。
  • このように、次期改訂が目指す育成すべき資質・能力を育むためには、学びの量とともに、質や深まりが重要であり、子供たちが「どのように学ぶか」についても光を当てる必要があるとの認識のもと、「課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び(いわゆる「アクティブ・ラーニング」)」について、これまでの議論等(※18)も踏まえつつ検討を重ねてきた。
  • 昨年11月の諮問以降、学習指導要領等の改訂に関する議論において、こうした指導方法を焦点の一つとすることについては、注意すべき点も指摘されてきた。つまり、育成すべき資質・能力を総合的に育むという意義を踏まえた積極的な取組の重要性が指摘される一方で、指導法を一定の型にはめ、教育の質の改善のための取組が、狭い意味での授業の方法や技術の改善に終始するのではないかといった懸念などである。我が国の教育界は極めて真摯に教育技術の改善を模索する教員の意欲や姿勢に支えられていることは確かであるものの、これらの工夫や改善が、ともすると本来の目的を見失い、特定の学習や指導の「型」に拘泥する事態を招きかねないのではないかとの指摘を踏まえての危惧と考えられる。

  • ※15 問題発見・解決のプロセスにおいて働く思考・判断・表現の要素のイメージについては、補足資料216ページ参照。
  • ※16 脚注17参照。
  • ※17 動機付けと学習プロセスの関係等に関する研究例については、補足資料192・193ページ参照。
  • ※18 「アクティブ・ラーニング」に関するこれまでの議論については、補足資料188ページ参照。深い学びと学力の関係については、補足資料21ページ参照。

指導方法の不断の見直し

  • 変化を見通せないこれからの時代において、新しい社会の在り方を自ら創造することができる資質・能力を子供たちに育むためには、教員自身が習得・活用・探究といった学習過程全体を見渡し、個々の内容事項を指導することによって育まれる思考力、判断力、表現力等を自覚的に認識しながら、子供たちの変化等を踏まえつつ自ら指導方法を不断に見直し、改善していくことが求められる。
  • このような中で次期改訂が学習・指導方法について目指すのは、特定の型を普及させることではなく、下記のような視点に立って学び全体を改善し、子供の学びへの積極的関与と深い理解を促すような指導や学習環境を設定することにより、子供たちがこうした学びを経験しながら、自信を育み必要な資質・能力を身に付けていくことができるようにすることである。そうした具体的な学習プロセスは限りなく存在し得るものであり、教員一人一人が、子供たちの発達の段階や発達の特性、子供の学習スタイルの多様性や教育的ニーズと教科等の学習内容、単元の構成や学習の場面等に応じた方法について研究を重ね、ふさわしい方法を選択しながら、工夫して実践できるようにすることが重要である。
    • 1)習得・活用・探究という学習プロセスの中で、問題発見・解決を念頭に置いた深い学びの過程が実現できているかどうか。
       新しい知識や技能を習得したり、それを実際に活用して、問題解決に向けた探究活動を行ったりする中で、資質・能力の三つの柱に示す力が総合的に活用・発揮される場面が設定されることが重要である。教員はこのプロセスの中で、教える場面と、子供たちに思考・判断・表現させる場面を効果的に設計し関連させながら指導していくことが求められる。
    • 2)他者との協働や外界との相互作用を通じて、自らの考えを広げ深める、対話的な学びの過程が実現できているかどうか。
       身に付けた知識や技能を定着させるとともに、物事の多面的で深い理解に至るためには、多様な表現を通じて、教師と子供や、子供同士が対話し、それによって思考を広げ深めていくことが求められる。こうした観点から、前回改訂における各教科等を貫く改善の視点である言語活動の充実も、引き続き重要である。
    • 3)子供たちが見通しを持って粘り強く取り組み、自らの学習活動を振り返って次につなげる、主体的な学びの過程が実現できているかどうか。
       子供自身が興味を持って積極的に取り組むとともに、学習活動を自ら振り返り意味付けたり、獲得された知識・技能や育成された資質・能力を自覚したり、共有したりすることが重要である。子供の学びに向かう力を刺激するためには、実社会や実生活に関わる主題に関する学習を積極的に取り入れていくことや、前回改訂で重視された体験活動の充実を図り、その成果を振り返って次の学びにつなげていくことなども引き続き重要である。
  • こうした、必要な資質・能力を総合的に育むための学びは、特に小・中学校では、全国学力・学習状況調査において、主として「活用」に関する問題(いわゆるB問題)が出題され、関係者の意識改革や授業改善に大きな影響を与えたことなどもあり、多くの関係者による実践が重ねられてきている。「アクティブ・ラーニング」を重視する流れは、こうした優れた実践を踏まえた成果であり、また、今後は特に高等学校において、義務教育までの成果を確実につなぎ、一人一人に育まれた力を更に発展・向上させることが求められる。
  • なお、こうした質の高い深い学びを目指す中で、教員には、指導方法を工夫して必要な知識・技能を教授しながら、それに加えて、子供たちの思考を深め発言を促したり、気付いていない視点を提示したりするなど、学びに必要な指導の在り方を追究し、必要な学習環境を積極的に設定していくことが求められる。そうした中で、着実な習得の学習が展開されてこそ、主体的・能動的な活用・探究の学習を展開することができると考えられる。
  • 次期学習指導要領等は、そうした実践を支えるため、前回改訂における言語活動の重視など、学習活動の改善・充実に関する成果を受け継ぎながら、各教科等共通に重視すべき学習過程の在り方や、各教科等の特性に応じて重視すべき学習過程の在り方に関する基本的な考え方を示すことが求められる。加えて、学習指導要領等の解説や指導事例集も含めた全体の姿の中で、指導の参考となる解説や事例を示すとともに、下記4.に示す方策等を通じて、更なる支援を図っていく必要がある。なお、こうした事例を示す際には、それにより指導が固定化されないような工夫が求められる。

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成27年11月 --