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2 小中連携、一貫教育の推進について

1.目的、効果

(1)目的

○ 小中連携、一貫教育に取り組む学校、市町村においては、小学校から中学校への進学において、新しい環境での学習や生活へ移行する段階で、不登校等の生徒指導上の諸問題につながっていく事態等(いわゆる中1ギャップ)に直面し、小学校から中学校への接続を円滑化する必要性を認識し、小中連携、一貫教育に取り組み始めたケースが見られる。特に、学校間の連携・接続に関する現状と課題認識においても述べたとおり、児童生徒の発達が早まっていることを踏まえ、小学校高学年から中学校入学後までの期間に着目し、当該期間に重点的な取組を行う例が見られる。

○ 小中連携、一貫教育に取り組み始めた契機がいわゆる中1ギャップに直面したことであったとしても、学校、市町村においては、それぞれの取組にあたっての目的を明確化するとともに関係者で共有し、学校全体で組織的に取り組むことで、小中一貫教育の成果を上げることが期待される。

○ 全国で進められている小中連携、一貫教育の目的については、一般に、取組ごとに、学校、市町村、地域住民等の様々な思いが込められていることから、全国的に見ると極めて多様である。一つには、少子化の進行や地域コミュニティの弱体化、核家族化の進行により児童生徒の人間関係が固定化しやすい中、小中連携、一貫教育の実施により、児童生徒が多様な教職員、児童生徒と関わる機会を増やすことで、小学生の中学校進学に対する不安感を軽減することを目的としている例がある。また、中学生が小学生との触れ合いを通じ、上級生である自らに自覚的となることで自尊感情を高め、生徒の暴力行為や不登校、いじめの解消につなげていくことを目的としている例もある。

○ 小学校の教員は全教科を教えるのに対し、中学校の教員は特定の教科を指導することや、小・中学校では、対象とする児童生徒の発達の段階が異なることから、学習指導、生徒指導の方法が異なるといったこともあり、小・中学校の教職員の職務の性質は自ずと異なってくることとなる。
 学校、市町村の中には、小・中学校教職員間の違いを教職員同士が認めた上で互いに学び合い、義務教育9年間で児童生徒を育てる発想を持つよう、教職員に対し促すことにより、教職員に義務教育段階の教職員であることを認識してもらうことを目的としている例がある。そのためには、各学校長等の管理職がリーダーシップを発揮し、小・中学校教職員が一体となって取り組んでいくことが考えられる。

○ 小中連携、一貫教育の実施により、小・中学校教職員が義務教育9年間の教育活動を理解した上で、全体の教育活動において自分の果たすべき役割をしっかりと認識することで、9年間の系統性を確保し、平成18年の教育基本法の改正、平成19年の学校教育法の改正において新たに規定された、義務教育の目的、目標(※1)に掲げる資質、能力、態度等をよりよく養えるようにしていくことは、全ての小中連携、一貫教育に共通する基本的な目的たり得るものである。

○ また、小中一貫教育を導入する場合であっても、小・中学校それぞれの学校段階の教育の完成の視点も併せ持つことが必要である。


※1 参考資料3参照

(2)効果

○ 小中連携、一貫教育の効果については、すでに取組を進めている市町村においては、前述の調査によれば、ほぼ全ての市町村において成果が認められている。具体例としては、中学生の不登校出現率の減少、市町村又は都道府県独自の学習到達度調査、全国学力・学習状況調査における平均正答率の上昇、児童生徒の規範意識の向上、異年齢集団での活動による自尊感情の高まり、教職員の児童生徒理解や指導方法改善意欲の高まり等の意識面の変化といった結果が得られている(※2)。

○ 今後、そうした成果を、小中連携、一貫教育に取り組む他の学校、市町村においても普及していく観点から、小中連携、一貫教育の効果検証の在り方について、国において検討していくことが必要である。

その際、生徒指導上、学習指導上の成果に加え、児童生徒の変容がどのようであったかについて可視化し、共有し、改善につなげるための効果検証の評価指標について検討する必要がある。評価指標の検討の際には、小中連携、一貫教育による児童生徒の変化の中で特に重視したい指標が何かについて議論することで、小中連携、一貫教育により目指す教育の在り方について確認していくことも重要である。


※2 参考資料3参照

2.教育課程

○ 小中一貫教育の取組において、教育課程の編成、実施はその根幹となるものである。小学校では平成23年度から、中学校では平成24年度から新学習指導要領が全面実施された。全国で小中一貫教育に先進的に取り組む市町村においては、当該学習指導要領の範囲内で、各地域の児童生徒の発達や課題を踏まえた教育課程を編成する取組や、研究開発学校制度、教育課程特例校制度といった教育課程の基準の特例を活用した取組が行われている。

(1)教育課程の編成

○ 小中一貫教育の実施に当たっては、小学校と中学校の教育課程の系統性を確保していくことが重要であり、そのためには、小・中学校教員が互いの学校の教育課程を理解することが求められる。具体的には、小学校教員は自らが指導する内容が中学校における学習にどのようにつながっていくのかを理解しながら指導し、中学校教員は小学校における学習の程度を把握した上で各分野の指導をすることが必要である。その際、例えば、小・中学校教員の合同研修会における意見交換を通じ、学力観、授業観を一貫したものとすることで、系統性の担保につなげていくことが考えられる。
 そうした系統性の確保とともに、各学校段階における児童生徒の発達の段階を踏まえた独自性を尊重していくことも重要である。例えば、小学校における学級担任制と中学校における教科担任制は、児童生徒の発達に合わせ、指導における専門性を高めていく観点から採用されているものであり、こうした独自性の尊重も必要である。

○ 地域の実情を踏まえた小中一貫教育を行うためには、学校教育活動全体を視野に入れ、小中一貫教育の取組を計画していくことが重要である。また、地域において育てたい子ども像について関係者が議論し、それを実現するための一貫した教育課程を小・中学校が協働して編成し、教材を連携して開発することが、教員自身が教育課程の見通しをもって主体的に取り組むことにつながり、効果的な取組となるものと考えられる。その際、小・中学校教育における基礎的、普遍的内容は尊重した上で地域の実情を踏まえた教育を行っていくことが望ましい。

(2)教育課程上の区分

○ 小中一貫教育を実施する小・中学校において、児童生徒の発達の状況等を踏まえ、小学校6年間と中学校3年間の合わせて9年間の教育課程を「4・3・2」「5・2・2」等に便宜的に区分し直し、区分ごとに教育活動の目標を設定するといった取組が見られる。特に小学校から中学校に移行する段階の学年区分においては一部教科担任制を導入したり、中学校教員が小学校で、又は小学校教員が中学校で指導を行う(以下「乗り入れ指導」という。)場合がある。こうした教育課程上の学年区分を設けることの背景には、児童生徒の身体的発達が2,3年早まっているといった指摘があること(※3)や、「学校の楽しさ」「教科や活動の時間の好き嫌い」「自分が周りの人(家族や友達)から認められていると思うか」との質問に対し、小学校5年生から否定的な回答が多くなること等から、小学校4、5年生頃に児童の発達上の段差がある可能性があること(※4)といったことがあるものと考えられる。こうした児童生徒の実態に合わせて柔軟な教育課程の在り方を工夫する取組は、これまで、各小・中学校や設置者が独自に進めてきている。今後、更に多様な取組が進められ、その成果が蓄積されることが期待される。

○ 市町村内の全小・中学校において小中一貫教育を導入するような場合、市町村が教育の在り方を示す中で教育課程上の学年区分を一律に決定し、それに基づき市町村内の各学校において教育活動を実施する方法が考えられる。一方で、市町村としては学年区分を一律に示さず、中学校区ごとに、児童生徒の実態を踏まえつつその在り方を決定し、保護者への説明責任を果たすこととする方法も考えられる。前者の場合には、市町村の独自性を明確に打ち出すことで市町村内の小・中学校教職員が一丸となって取り組むことが期待される一方、後者の場合には、教職員が、より教育課程の在り方に当事者意識をもちながら指導にあたることが期待される。

○ 教育課程上の学年区分を設ける場合には、小学校6年生と中学校1年生を同一区分としていることが多いが、このような学年区分の在り方は、小学校段階から教科担任制を導入し学級担任制から教科担任制への緩やかな移行を図る等の取組を行うことにより、小学生の中学校進学に当たっての不安感を軽減するとともに、中学校における学びの意欲を高め、学校段階間の円滑な接続が確保されることに資することとなると考えられる。

このような場合でも、児童生徒の成長にとって、学校生活の節目が好ましい影響を与えるとの考えに基づき、例えば、小学校の卒業式や中学校の入学式等、節目となるような行事は行いながら、教科等の教育活動は「4・3・2」等子どもの発達に合わせた学年区分に基づき行うような、両者の良さを生かした教育の在り方も考えられる。

○ なお、教育課程上の学年区分を設ける場合には、区分間の移行に児童生徒が対応できているかどうかを確認し、円滑に移行できていない児童生徒がいる場合には当該児童生徒への支援の視点を持つことも重要である。


※3 身長、体重いずれも、戦後すぐ(昭和23年)のある学年の平均値は、平成22年の2~3年前の学年の平均値に相当する。(「学校保険統計調査」等より)

※4 「学校の楽しさ」「教科や活動の時間の好き嫌い」について、小学校4年から5年に上がる段階においても肯定的回答をする児童の割合が下がる傾向がある(「義務教育に関する意識調査」(平成17年文部科学省)より)

(3)学習指導要領の範囲を超えた教育課程の基準の特例の必要性

○ 新学習指導要領は、その検討の過程において、校種間の円滑な接続・連携の観点が特に重視され、教科・科目等において、幼稚園、小・中・高等学校を通じ、発達や学年の段階を踏まえた円滑な接続を図ることを重視して改善が図られているところである。小中一貫教育の実施に当たっては、この趣旨を十分に踏まえつつ、小・中学校教員が義務教育9年間を見通した教育課程を編成することが求められる。

さらに、今後の学習指導要領の検討に当たっても、今般の改訂同様、校種間の円滑な接続・連携の観点を重視した上で、義務教育段階を通じて、一体的な検討がさらに進められる必要がある。

○ 小中一貫教育を実施する小・中学校においては、研究開発学校制度や教育課程特例校制度の活用により、独自の教科の新設等による小中連携の推進に取り組むなど、教育課程の基準の特例を活用して推進される小中一貫教育がある一方で、そうした教育課程の基準の特例を活用せず、学習指導要領の範囲内で各市町村の創意工夫により取り組まれているものも多数存在する。教育課程の基準の特例を活用するか否かについては、各学校、設置者において、小中一貫教育の目的に応じ判断することが求められる。

○ 小中一貫教育を推進するために研究開発学校制度や教育課程特例校制度を活用した取組における教育課程の基準の特例を類型化すると、主なものは以下のとおりである(※5)。

  1. 総合的な学習の時間、教科等の時数を削減し、学校や地域の特性を生かした新しい教科等(例えば、「市民科」「コミュニケーション科」「言語科」など)を設置するもの
  2. 指導内容を小・中学校間、学年間で入れ替えたり移行したりするもの

○ こうした教育課程の基準の特例を活用した取組については、国、学校、市町村等が、その内容や成果を対外的に周知することによって、学校や地域の特色を活かした小中一貫教育がより一層推進され、多様な取組が蓄積されることが期待される。

○ 教育課程の基準の特例を活用した取組は、現行では、文部科学大臣が、一定の要件の下で、小・中学校を研究開発学校又は教育課程特例校として指定することで実施可能となっており、設置者の申請を踏まえた審査、実施状況の報告等の仕組みを通じて、教育基本法、学校教育法及び学習指導要領との関係における適切性や義務教育の機会均等の観点からの適切な配慮などを担保しているところである。

○ これらの特例の一部について、義務教育の質の保証の観点に留意しつつ、設置者の判断で実施することを可能とすべきかについて議論し、委員からは次のような意見が出された。


※5 研究開発学校、教育課程特例校における小中連携、一貫教育の取組については参考資料5、6参照

<設置者の判断に基づき、教育課程の基準の特例を活用できるようにするのが望ましいとの意見>

  • 現行の学習指導要領の範囲内ではできないところに限定した上で教育課程の特例を設け、特例の活用について各学校で選択できる仕組みを作った方が現状に合う。例えば、小規模な町村で、小・中学校9年間を同じ集団で過ごす地域と、学区が複雑で複数小学校の児童が複数中学校に進学するような地域や、都市部で小・中学校段階で私立中学校への進学が盛んな地域とでは事情が異なる。小・中学校が互いに踏み込んだ取組を行い、小・中の教員の意識の差を乗り越えられるという実例を全国で積み上げていくことが重要である。
  • 学制を変更するのではなく、教育委員会や学校が小中一貫教育を積極的に打ち出し、推進できるようにすることが望ましい。教育課程の特例については、特定の小学校から特定の中学校に全員が進学するとは限らない地域があることを考えると、あまり極端なことはできないが、小・中学校の在り方が地域によって様々であることを踏まえると、小中9年間の質保証を誰がどのようにするのか確認した上で、教育委員会の判断で一定程度認めてよい。
  • 教育課程の特例を設置者が判断することに基本的に賛成だが、その際、一定の歯止めをかけ、義務教育の目的、小中一貫教育の目的が担保される形が望ましい。
  • これまで研究開発学校や教育課程特例校において実施してきたカリキュラム開発の内容からすると、設置者の判断で教育課程の特例を認めることは妥当であり、その方向で検討すべきである。

<設置者の判断に基づき、教育課程の基準の特例を活用できるようにすることに対して慎重な意見>

  • 現行の学習指導要領をベースに教育課程特例校制度等をうまく活用することで、各学校は独自のカリキュラムを作成し、独自の指導観、評価観を構築できる。
  • 小中連携の目的として、いわゆる中1ギャップの解消に焦点を当てて考えていく必要がある。その際、例えば、小・中学校の教員が互いの授業を見たり情報交換を密にしたり、児童生徒、教員が交流したりするといった現行制度の範囲内でできることで、これまで十分に取組が進められていない事項に優先的に取り組むべきである。
  • 義務教育は基礎教育であり、全国どこの学校に行っても同じ教育が受けられることを担保すべきである。中高一貫教育のように、設置者の判断で義務教育の内容を学年間で入れ替えることが一般化されると、小学校段階で学習すべきことをしないような場合が生じるため危惧するので、歯止めをしっかりと書き込んでいく必要がある。教育基本法、学校教育法、学習指導要領の遵守が基本である。
  • 小・中学校段階で様々な事情で転校する児童生徒について、一貫教育実施校と通常の小・中学校で教育内容があまりに異なるようなことがあれば心配である。

○ 以上のように、設置者の判断に基づき、教育課程の基準の特例を活用できるようにすることについて、9年間の義務教育の質保証や地域の実情に対する配慮を行った上で認める方向で検討すべきとの意見があった。
 一方で、現行制度の範囲内でも各学校は独自の取組を行うことが可能であり、そうした現行制度の範囲内でできることに優先的に取り組むべき、基礎教育である義務教育においては全国の学校において同じ教育が受けられることを担保すべき、転校する児童生徒にとって教育内容が大きく異なることがないようにすべき、特定の小学校から特定の中学校に全員進学するとは限らないことを踏まえるべき、との意見もあった。

○ これらを踏まえると、国として、全国の学校、市町村等に対し、小中一貫教育の推進に関する取組で教育課程の基準の特例を活用した事例、活用せずに取り組んでいる事例について周知し、学校、市町村等における取組を促すとともに、その成果や課題を把握することが求められる。
 それに加え、学校、市町村において積極的に小中一貫教育を推進できるように、文部科学大臣の指定によることなく、設置者の判断に基づき、一定の教育課程の基準の特例を活用できるようにすべきである。

○ ただし、制度化に当たっては、義務教育における全国的な教育の機会均等や教育水準を担保する必要があること、小・中学校段階では転入学する児童生徒が一定数いること、小学校から中学校への進学に当たっては継続性を確保する必要があること、公立小・中学校においては就学校が指定されることにより入学に当たっての選択性が十分にはないこととの関係等を勘案して、具体的な特例の内容を検討する必要がある。

○ 本特例を活用して小中一貫教育に取り組む学校、市町村においては、義務教育全体として、教育基本法、学校教育法に規定された義務教育の目的・目標や小・中学校の教育の目的・目標を確実に達成することができるよう、学習指導要領に規定する各学校・学年の各教科等の内容等を適切に取り扱い、学習指導要領で定める目標を確実に達成することが求められる。

○ 以上を勘案し、具体的な制度として、小・中学校においては互いの学校における教育との一貫性に配慮した教育を施すため、設置者が定めるところにより教育課程を編成できることとすべきである。その際、小・中学校が9年間を通じた特色ある教育を実現できるよう、小・中学校の教育課程の基準の特例として、一定の範囲内で、各学年の各教科、道徳、外国語活動、総合的な学習の時間、特別活動の授業時数を減じ、当該各教科等の内容を代替できる内容の学校設定教科の授業時数に充てることができることとするのが望ましいものと考えられる。これにより、学校、市町村の創意工夫を生かして、小・中学校を通じた独自の教科の設定を行うことも可能となる。
 この学校設定教科を軸として、9年間を通じた特色ある教育を実施することにより、小・中学校の教育課程をより系統的、継続的なものとすることができ、また、小・中学校9年間を一つのまとまりと捉えた、学校間の連携・協力体制が構築されることで、学校、市町村の創意工夫をより一層生かした形で、児童生徒の学びを支えることが可能になるものと考えられる。
 その際、学校、市町村においては、取組の内容について、保護者や地域住民等に積極的に公表することにより、説明責任を果たしていくことが求められる。

○ また、設置者の判断で、小・中学校における指導内容に関する、学校間又は学年間での入替えや移行を可能とすることについては、義務教育における全国的な教育の機会均等や教育水準の担保、転入学する児童生徒への配慮が必要であること等の観点から十分な検討を経て取り組むこととするのが望ましいものと考えられる。

○ なお、平成11年度に導入された中高一貫教育制度との関係については、小中一貫教育については既に設置されている小・中学校同士が9年間一貫した教育課程を編成するものであり、今後全国の多くの小・中学校への広がりが期待されるのに対し、中高一貫教育については、生徒と保護者が従来の中学校、高等学校か中高一貫教育校かいずれをも選択できるよう、設置者が各地域の実情を踏まえその機会を提供するものである点において性質の相違がある。そうした相違を踏まえつつ、各地域においては、小中一貫教育を実施する小・中学校の設置者と中高一貫教育校の設置者が互いに連携し、双方の一貫教育の趣旨・目的も踏まえた上で、地域において児童生徒の育ちを一貫して支援するような教育の在り方について検討する必要がある。

3.指導方法

(1)乗り入れ指導の実施

○ 小学校から中学校に進学した際、児童生徒の学習環境に生じる変化として、小学校においては学級担任制であったのが、中学校においては教科担任制となることが挙げられる。それに伴い、小学校教員の免許は全教科に対応した免許であったものが、中学校教員の免許は特定の教科に対応したものとなる。
 そうした小・中学校教育の変化に円滑に対応できるよう、小・中学校教職員間で指導の在り方についてよく相談し、認識を共有しておくことが重要である。
 現に、小中連携、一貫教育に取り組む多くの学校においては、小・中学校教職員が指導の在り方について共通認識を持った上で乗り入れ指導を行い、小学校高学年段階等から教科担任制を一部導入して指導したり、小学校から進学した生徒を見守りながら指導したりする取組が広く行われている。
 乗り入れ指導は、児童生徒の不安感の軽減、それによるいわゆる中1ギャップの解消、教員の他校種に対する理解増進、義務教育段階を担当する教員であるとの意識変革、授業改善、小・中学校教員、児童生徒の一体感の醸成等を図る仕組みとして、小・中学校教育の質向上の観点から効果が上がっている例もあり、導入を積極的に図ることが望ましい。

○ 中学校教員による小学校への乗り入れ指導は、児童の中学校進学への不安軽減等の観点からいわゆる中1ギャップの解消につながるものとして効果が高いと指摘されているが、乗り入れ指導を行う際には、単に特定教科の免許を所有する中学校教員が小学校において指導するだけでなく、小・中学校教員が互いの教育課程を理解した上で、小学校における教育課程のうち中学校教員が担当する部分まであらかじめ検討しておくなどの工夫をすることで、より教育効果を上げていくことが望ましい。

○ 中学校教員による小学校への乗り入れ指導は、中学校における学習への児童の興味関心を高め、学習の楽しさを体験するとともに、中学校への進学に伴う不安を軽減すること等に意義があるものであり、児童が学習の楽しさを実感できるように工夫して行うのが望ましい。
 乗り入れ指導が効果的であった事例については、国等が、これまでに乗り入れ指導を実践している学校における成果を分析し、広く周知することにより、実践が更に蓄積されることが望まれる。

○ また、乗り入れ指導の実施に当たっては、ICT(※6)を積極的に活用し、例えば、テレビ会議システムを活用し、小・中学校の学級担任が小・中学校の教室において児童生徒とともにいるとの前提で、互いの学校から離れた場所にある学校にいる教員が場所を移動せず、児童生徒向けに授業をするような工夫も考えられる。ただし、小・中学校の児童生徒に対しては、その発達に与える影響を考慮すると、教員が同じ教室の中で面と向かって授業を実施することが基本であるので、そうしたことも踏まえた上でICTをツールとして十分に活用していく必要がある。
 小・中学校教員が相互に学びあうことでそれぞれの力量を高める観点から、小・中学校教員合同研修の実施や、小・中学校教員が互いに授業を見合う授業交流を行うことが考えられるが、小・中学校の校舎が離れた場所にある場合には、合同研修実施の際にも、ICTを活用し、校舎間の移動距離・時間を短縮するような工夫も考えられる。

○ 小学校において乗り入れ指導を実施する中学校教員は小学校教育の中でも特に高学年児童への特定教科の指導技術を修得する必要があるように、個々の教員に応じ、特に修得が求められる指導技術は異なる。よって、都道府県や市町村においては、例えば、小学校6年間の全教科に対応した研修メニューだけでなく、低・中・高学年の児童に対する指導に特化した研修や、特定教科に限定した研修を実施するなど、修得したい指導技術ごとに研修を開講することについても検討することが求められる。
 また、小・中学校教員による合同研修により、互いの学校種における指導技術を身に付けることも有効であると考えられる。


※6 ICTとは、Information and Communication Technologyの略で、コンピュータやインターネット等の情報通信技術のこと。

(2)複数学年での合同授業や活動の実施

○ 複数学年で合同の授業や活動を実施することにより、異学年の児童生徒が交流することで異年齢の他者と望ましい人間関係を形成したり、学習への動機付けが明確になったりするなどの教育的効果が期待される。特に、小学校教育と中学校教育の円滑な接続を考えた場合、小学校6年生と中学校1年生について、総合的な学習の時間や特別活動等において合同の授業や活動を実施することも考えられる。また、児童生徒数の少ない、比較的規模の小さな学校で合同授業等の導入が図りやすいものと考えられる。なお、その場合には、児童生徒の発達の状況や教科等の特性を踏まえた上で、各学校段階や学年の段階に即した目標の実現や内容の修得が求められることに留意する必要がある。

4.推進体制

○ 小中連携、一貫教育に取り組む市町村、学校においては、中学校区単位で小・中学校が連携、一貫し教育を施しているものが多く見受けられるが、中学校区単位での連携、一貫教育の実施に当たっては、各小・中学校のみならず、市町村教育委員会、地域住民や保護者等多様な者が関与するような形態で、その推進体制についても適切に整えていくことが重要である。

(1)校内体制

○ 小中連携、一貫教育を推進する小・中学校においては、校長の人数、校務分掌、小・中学校教員の連携の在り方等の面において様々な校内体制をとり得る。

○ 小中連携を推進する場合には、例えば、連携する各小・中学校において小中連携の主担当を校務分掌として位置付け、当該教職員が取組の実施に当たっての企画立案や連絡調整を担うような形態をとることが考えられる。

○ 小中一貫教育の実施に当たっては、小・中学校9年間を見通した教育課程の編成が取組の要となる。このため、例えば、小中一貫教育の教育課程編成の主担当を小・中学校の校務分掌として位置付けることが考えられる。それとともに、教職員が9年間を見通した教育課程の内容について共有し、より実り多い教育活動を実施するために、例えば、あらかじめ年間計画に研究会の日程を組み込む等の工夫をしながら、小・中学校の全教職員が9年間の教育課程に関する研究に、他の業務に過度に支障を来すことなく携わることができるような体制を構築することが望ましい。

○ また、小・中学校間の連絡調整機能をコーディネーターとして小・中学校の校務分掌として位置付けることで、乗り入れ指導や合同行事の実施に向けての連絡調整を担うとともに、教員や管理職と連携しながら、小中連携、一貫教育の内容に関する企画立案を行うような形態が考えられる。

○ 小中一貫教育を推進している小・中学校において、小・中学校9年間を教育課程上「4・3・2」等に区分している場合には、当該学年区分ごとに前期、中期、後期等と位置付け、区分ごとに長を置き、学習や行事等の内容や方法について決定するための企画、連絡調整等の役割を担当する、といった学年区分を意識した校務分掌の在り方としていくことも考えられる。

○ 特に、小・中学校施設を新たに一体として設置するような場合、そこで勤務する教職員が組織的に職務を遂行できるようにするための工夫として、小・中学校別々に決定していた校務分掌の在り方を見直し、例えば、教務関係、教科等関係、生徒指導関係等の部門を小・中学校教職員合同で担当するような形態が考えられる。そのような形態とすることで、学年、学校を超えて小・中学校教職員が一体となって校務に当たることとなり、小・中学校教員同士の日常的な関わりが増え、相互の理解増進に資することになるものと考えられる。

(2)学校間の連携・協力体制

○ 小中連携、一貫教育の実施に当たり、小・中学校教職員がそれぞれの課題解決に資するため、互いに授業を見合ったり、合同研修等を実施したりすることで、小・中学校教職員が互いの専門性に学び、9年間の教育課程及び指導方法の理解に資することが学校間連携・協力体制作りの第一歩である。

○ 小・中学校教職員がいかに情報交換し、交流していくか、という点も、小中連携、一貫教育を実施する上で重要な視点である。中学校1年生時点で不登校児童生徒数等が大幅に増加するが、不登校等の不適応については小学校段階で兆候があるとの指摘があることから、小・中学校教職員がこれまで以上に綿密な情報交換をすることにより、より適切な対応につなげていくことが期待される。このため、小・中学校においては、個々の児童生徒に関する学習指導、生徒指導上の課題を共有するため、密な情報交換の機会を意識的に設け、早い段階からの対処に心がける必要がある。

○ 特別支援教育を要する児童生徒については、小学校から中学校へ教育支援計画を引き継ぐことに加え、小学校における指導の経過を共有し、中学校教職員の、生徒の特性や障害の程度に関するよりよい理解につなげていくことが考えられる。また、特別支援学級の合同授業や、特別支援学級教員による相互参観、特別支援学級の児童、保護者による中学校の授業参観、小・中学校合同の特別支援教育委員会の開催といった取組も考えられる。

○ スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーは、個々の児童生徒に関する情報交換の機会に参加するのみならず、自らそうした情報交換の機会を設ける役割を担ったり、学校支援ボランティアとして学校の活動を支援する地域住民には、例えば、児童生徒の清掃活動や挨拶運動等の課外活動時の協力をしたりする等、多様な関係者が小中連携、一貫教育の取組に関わることが望ましい。

○ 小中一貫教育を実施する小・中学校において、例えば、小・中学校の施設が一体であることで校長が1名であることが機能しやすい環境にある場合などに、校長を兼務させている例がある。校長が小・中学校の校長を兼務しており、当該校長が基本的に中学校にいる場合、当該校長から命を受けた範囲で、例えば、小学校内部の事務処理や学校外部に対する連絡等を副校長に任せるといったことも考えられる。校長の兼務により、組織の意思決定を迅速に行うことが可能となり、児童生徒理解のための情報共有を目的とした合同会議や研修会が計画的に高い頻度で設定できるといった利点が考えられるが、その場合には保護者から十分な理解を得る必要がある。
 一方、校長を兼務させることにより、例えば、小・中学校2校分の校務を掌握し、処理することが必要となるため、校長の事務的な業務量の増加といった課題が生じる部分もあることから、小・中学校それぞれに校長を1名ずつ置き、両校長間の連絡を密にすること等により、学校間の連携・協力体制を整えていくことも考えられる。

○ 以上のように、小中連携、一貫教育推進のための体制を整備していくに当たっては、教職員の過度な負担の解消をどのように図っていくかについて併せて検討する必要がある(※7)。乗り入れ指導や授業交流、合同研修等の実施により、教職員の負担が増加することとなるので、これまでの校務の在り方を見直し効率化させる視点を持つことも重要である。その際、ICTを積極的に活用することや、1校単位では克服できない課題であっても、小・中学校2、3校で連携することで教職員集団が大きくなることを生かし、教員のみならず養護教諭、栄養教諭、事務職員の連携も図り、2、3校全体としてどのように負担軽減していくかということも含め、考えていく必要がある。
 上記のような点に留意しながら、小中連携、一貫教育を推進する体制を整備し、取組が軌道に乗ることによりねらいが達成された場合には、最終的に、小・中学校教職員の根本的な負担の軽減につながることにもなるものである。


※7 『第5回学習指導基本調査』(2010、Benesse教育研究開発センター)によれば、学校にいる時間は、小学校教員11時間12分(07年調査より17分増加)、中学校教員12時間03分(07年調査より15分増加)となっている。

(3)市町村教育委員会の関与

○ 実態調査において、市町村の主催による小・中学校教員が合同で参加する授業研究のための会議を恒常的な設置については39%が設置、過去2年間において市町村による研究指定事業の実施については22%が実施したとの回答であった。

○ このほか、市町村の教育委員会規則において小中一貫教育を行う小・中学校について規定すること(※8)等により、市町村としての小中連携、一貫教育の推進体制を整えることが考えられる。

○ 実態調査結果において3%の市町村において、市町村独自の、小・中学校9年間を通じた教育課程の編成の方針を定めているとの回答を得たが、そうした市町村独自の教育課程の編成に当たっては、教育委員会に小中一貫教育の推進(教育課程編成等)を担当する指導主事を置くことも考えられる。その際、当該指導主事が、学校における教育課程編成の支援をすることで、各小・中学校における教育課程の編成を支障なく行えるようになることが期待される。

○ 市町村教育委員会においては、指導主事がコーディネーターの役割を担うことにより、中学校区ごとに小中連携、一貫教育を行う小・中学校間の連絡調整を行うことや、小・中学校の教職員がコーディネーターを担う場合に市町村費等で当該学校に講師を配置するといった工夫も考えられる。
 なお、地域における様々な課題に対応する観点から、地域連携等、小中連携、一貫教育以外の課題に関する役割も担うような形態で、機能を集約したコーディネーターを市町村教育委員会に配置することも考えられる。

○ 実態調査結果によれば、教職員の兼務発令は16.3%の市町村においてのみ実施されている状況である。乗り入れ指導を行う場合などには、必要に応じて市町村教育委員会が教職員の兼務についての内申をし、都道府県教育委員会が兼務発令をすることで、教員が兼務先の学校で指導を行うことは、当該教職員に小・中学校両方に所属するとの意識を持たせ、兼務先の学校において適切な児童生徒理解を図り、きめ細かい指導を行う観点から有効である。在籍校においては、兼務発令する教員について、兼務先の学校における勤務時間を考慮し、在籍校における校務分掌等について適切に配慮することが求められる。さらに市町村教育委員会においては、可能な範囲で、兼務発令する教員の兼務先の学校における勤務時間中、在籍校における講師等を配置することにより支援することも考えられる。

○ そうした教員の配置に関する配慮、支援に加え、保護者や地域住民等に対する啓発の観点や関係者間の情報共有の観点から、市町村教育委員会が主催して、小中連携、一貫教育を実践する学校の発表やパネルディスカッションなどを行う公開フォーラムを開催することや、学校、家庭、地域関係者による小中連携、一貫教育推進と地域連携を目的とした会議を開催することも考えられる。
 また、市町村教育委員会が主体となり、地域のニーズに応じて小中連携、一貫教育に関する調査研究事業やモデル事業を実施することも考えられる。

○ 学校において、小・中学校教員の合同研修や合同授業研究会等を開催する場合には、市町村教育委員会としても適切に関与し、教員の職能成長のために適宜必要な支援を行うことが必要である。


※8 品川区や三鷹市においては教育委員会規則に小中一貫教育について規定している。

(4)都道府県教育委員会の関与

○ 実態調査結果においても実施しているとの回答があったが、小・中学校教職員が相互の理解を高める観点から、6.(2)に述べている隣接校種の教員免許状の取得促進のための制度が創設されていることも踏まえ、都道府県教育委員会の方針として、小・中学校の両免許取得を推奨することは有効であると考えられる。また、教職員の年齢が若い段階で異校種において勤務する経験は、その後の当該教職員の意識に与える影響が大きいので、人事異動方針として小・中学校間の校長を含めた教職員の交流の促進を掲げることは小中連携、一貫教育の実施に資する。

○ (2)の市町村教育委員会の関与にも記述したことであるが、乗り入れ指導を行う場合などに、必要に応じて都道府県教育委員会が兼務発令をすることは、教職員が兼務先の学校において適切な児童生徒理解を図り、きめ細かい指導を行う観点から有効であるものと考えられる。
 また、実態調査においても回答があったが、校長を兼務させた場合に、校長定数を減じた分の定数を教諭の定数に振り替え、「小中一貫教育加配」として該当校に配置するといった工夫も考えられる。

○ 小・中学校間の連絡調整等を担うコーディネーターの配置については、市町村が単独で行うだけでなく、都道府県としてそうした市町村の取組を積極的に支援することも望まれる。

○ 実態調査結果によれば、小中連携推進のため、都道府県および政令指定都市で独自に予算措置を講じて加配措置を行っているのは全体の15%となった。
 一方、国においては、特に小学校高学年において実技教科以外でも専科指導を充実するため、小学校における専門的な知識又は技能に係る教科等に関する専門的な指導に対する教職員定数の加配措置を平成23年4月に制度化したところである。例えば、この加配を活用し、小学校における理科教育等の充実のため、兼務発令された中学校の教員が小学校で授業を行うなど、都道府県教育委員会において、独自の取組に加え、当該加配措置を十分に活用していくことも考えられる。

○ 実態調査結果によれば、小中連携を推進するため、平成22年度又は過去2年間において都道府県による研究指定事業を実施したのは全体の38%であった。市町村教育委員会のみならず、都道府県教育委員会としても、域内の市町村の小中連携、一貫教育に関する優れた取組を普及する観点から、調査研究事業やモデル事業を行うことや、市町村が実施する調査研究事業やモデル事業に対し、都道府県として助成を行うことも考えられる。

○ 小規模町村などにおいて、特に小中一貫教育に意欲を有する教員やこれまでに小中一貫教育の経験のある教員を採用する必要がある地域においては、そうした教員を採用しやすくする観点から、教員公募制(※9)を行うことも考えられる。


※9 教員公募制は、例えば東京都において実施されており、これに応募した教員を優先的に異動させる措置がとられ、小中一貫教育に取り組む檜原村等に配置されている。

5.地域との連携等

(1)「地域とともにある学校」づくりとの関係

○ 小・中学校が地域において小中連携、一貫教育をどのように展開していくか考えた場合、児童生徒の義務教育9年間におけるよりよい学びの実現や生徒指導上の様々な課題の解決のためには、小中連携、一貫教育と地域連携に併せて取り組むことで大きな効果が期待できる。

○ 特に少子化の進んだ地域においては小中一貫教育を推進する環境が整いやすい。また、東日本大震災の被災地域においては、小中一貫教育の実施により地域の教育の復興を図ろうとする動きもある。このように、小中連携、一貫教育の導入を図る場合には、各地域において、地域の実情に応じた義務教育期間9年間の在り方について検討していく必要がある。

○ 実態調査において、小・中連携を推進しつつ、地域との関わりを深めることを目的として取り組んでいる事項について聞いたところ、以下のような回答が得られた。

  • 学校運営協議会(コミュニティ・スクール)による取組 小学校2.9%、中学校2.6%
  • 学校支援地域本部による取組 小学校8.0%、中学校7.9%

このほか、

  • 市のまちづくりプランの中で各中学校区ごとに地域人材や地域の自然・施設を活用した授業を行うなどの取組を実施
  • 全中学校区に、学校関係者・保護者・地域住民と教育委員会事務局で構成する小中一貫教育推進協議会を設置し、地域ぐるみの教育環境づくり等について定期的に話し合いを実施

○ 学校と地域の連携は、教育改革の柱の一つとして推進されてきた。平成12年には、学校運営に関する保護者や地域住民の意見を聴くための制度として学校評議員制度が、平成16年には、保護者や地域の住民が一定の権限と責任を持って学校運営に参画する制度として学校運営協議会制度(コミュニティ・スクール)が導入されている。また、平成19年には学校評価が学校の責務として学校教育法に位置づけられるなど、これまでに学校が地域に開かれた信頼される存在となるための一連の制度改正が行われている。

○ こうした流れの中で、平成23年に学校運営の改善の在り方等に関する調査研究協力者会議においては、「子どもの豊かな学びを創造し、地域の絆をつなぐ~地域とともにある学校づくりの推進方策~」がとりまとめられた。その中で、「今後、全ての学校が、小・中学校の連携・接続に留意しながら、地域の人々と目標(子ども像)を共有し、地域の人々と一体となって子どもたちをはぐくんでいく『地域とともにある学校』を目指すべき」とされている。

○ 地域との連携体制を継続的に確保していくため、学校運営協議会制度や学校支援地域本部といった仕組みを導入することで、よりよく地域との連携や信頼関係の構築を図っていくことが考えられる。

○ 市町村において、各中学校区に各小学校区が含まれるような形態で通学区域を整理し、各中学校区ごとの小・中学校のまとまりを「学園」とするとともに、各小・中学校に学校運営協議会を設置し、「学園」全体の運営を学校運営協議会の協議機関と協働で行っている例もある。このように「学園」等の呼称を設けることは、地域に対して、小中一貫教育を浸透させ、地域の協力を得る観点から効果的であると考えられる。

○ また、地域の支援を得ながら小中一貫教育を進めていく上で、学校関係者評価の結果を含め、小中一貫教育の取組に関する情報提供を適切に行うとともに、そうした取組を通じて変化していく子どもの姿を地域住民、保護者等に説明することにより、継続的な信頼、支援を得ることにつなげていくことが重要である。

○ さらに、「地域とともにある学校」づくりの推進に資するため、小・中学校の交流スペースや余裕教室を地域住民等に開放し、例えば、余裕教室を活用して市町村等が学童保育を実施することや、地域住民と児童生徒の交流事業を実施すること等が考えられる。

○ なお、小・中学校の統合に併せて、小中一貫教育が導入される場合もある。小・中学校の設置・廃止については最終的には設置者である市町村が決定するが、学校の統合は、通学区域の在り方を変え、地域の在り方を変えることとなるので、各地域の歴史、自負、誇りに配慮しながら対応する必要があることを認識しておくことが重要である。また、統合後の小・中学校における教育理念や教育課程を充実させるための配慮が必要である。

(2)通学区域等

○ 小・中学校の通学区域については、例えば、「1小1中」や「3小1中」のように、中学校の通学区域に、連携、一貫教育を行う小学校の通学区域が含まれるような形態となっている地域がある一方で、各小学校の通学区域が中学校の通学区域に含まれるような形態となっておらず、一つの小学校から複数の中学校に進学するような形態となっている地域もある。特に後者のような場合には、小中連携、一貫教育の実施に当たり工夫が求められる。

○ 市町村内に多様な設定の通学区域がある中で小中一貫教育を実施する場合には、連携する小・中学校ごとに教育課程の在り方を共通化し、教職員が協働して実施していくことで、9年間を通して系統的な教育活動を展開していくことが考えられる。これにより、どの小学校からどの中学校に進学しても、当該地域の児童生徒は9年間の小中一貫教育が保障されることとなる。
 市町村において、中学校の通学区域と小学校の通学区域が必ずしも完全に一致しているわけではないという課題がある場合、既存の中学校区を基本としたブロックを設け、複数中学校と複数小学校が連携するブロック、1校の中学校と複数小学校が連携するブロック、1校の中学校と1校の小学校が連携するブロック等の類型を設けることが考えられる。これにより、連携が図りづらい小・中学校であっても、市町村独自の小・中学校9年間を通じた教育課程の編成の方針を作成し、それに基づき、各ブロックにおいて小・中学校教員が合同でカリキュラム編成を行うことで、教科等の面で小学校から中学校へ円滑に接続できる環境を整えるといった工夫が考えられる。

○ 小・中学校の児童生徒については、地域に根ざした学校において、保護者や地域住民に見守られながら教育を受けられるような工夫が求められる。小中一貫教育の実施に当たり、特に小・中学校を一体又は併設で設計する場合には、児童生徒の通学に過大な負担を強いることのないよう、市町村教育委員会には、児童生徒の通学手段にも配慮しながら、通学区域の設定の仕方について工夫することが期待される。

6.教員人事、教員免許

○ 現行制度上、小学校教員は全教科を指導し、中学校教員は特定の教科を指導しているが、各学校段階の中で職能を高めることに加え、小中一貫教育を契機として、異なる学校段階の教科指導について学ぶことで教員の資質能力の幅を広げるとともに質を更に高め、義務教育段階の児童生徒のための教員となることで、義務教育の目的の実現、目標の達成をよりよく図っていく必要がある。

(1)教員人事

○ 教員が学校種の枠を超えて義務教育段階の教員となるための工夫の在り方として、他校種における教育の在り方について早い段階から学習し、その良いところを吸収することができるよう、例えば、新規採用された教員を採用から数年以内に他校種で勤務させるといった在り方が考えられる。
 一方で、(2)で述べる隣接校種の教員免許状を取得した後の、一定程度経験年数が長い教員について、その身に付けた資質・能力を活用する観点から、人事交流を促進するといった在り方も考えられる。
 以上について、具体的には、都道府県の人事異動方針に小・中学校間の教職員の交流の促進を定めることが考えられ、その際市町村と都道府県との連携を一層深め、対応していくことが必要である。

○ 中学校教諭等の免許状を有する者が、小学校において相当する教科等の教諭となることができる制度として、小学校等の専科担任制度がある。本制度については、平成14年の教育職員免許法の改正により、従前は、小学校で担任できる教科は音楽、図画工作、体育、家庭に限定されていたところ、全教科及び総合的な学習の時間に拡大された。
 本制度は、教員が新たに他校種の免許を取得する必要もなく、学校にとって活用しやすいものであると思われるが、小学校教諭の免許状を有していない中学校教員は、大学における養成課程において小学校における教科の指導法等について学修していないことから、小学校における指導に困難を伴うことがあるとの指摘もある。
 そこで、実際の小学校における指導に当たっては、例えば、都道府県や市町村において、小学校児童に対する指導に関する事項について取り扱う研修等を実施することが考えられる。それにより個々の中学校教員の職能成長が図られ、本制度の更なる活用が望まれる。

(2)教員免許

○ 小・中学校の両方の教員免許を有している者については、小学校教員のうち中学校教員の免許を所有している者は62.0%、中学校教員のうち小学校教員の免許を有している者は25.9%となっており(※10)、特に小学校教員の免許を有する中学校教員の割合が低くなっている。一方、乗り入れ指導を実施する場合には、中学校教員が小学校に乗り入れるケースが多いことから、乗り入れ指導の円滑な実施に当たって工夫が求められる。

○ 小学校教員が中学校で、又は中学校教員が小学校で(こうした小学校に対する中学校又は中学校に対する小学校のことを、以下「隣接校種」という。)指導するための資質・能力を身に付けるためには、隣接校種に係る免許状を取得する、専科担任制度を活用して小学校で特定の教科の担任をする場合における研修の実施する、といった2通りが考えられる。

○ 平成14年の教育職員免許法の改正では、専科担任制度の要件緩和のほか、教職経験を有する者の隣接校種の教員免許状の取得促進のための制度が創設された。本制度は、3年以上の教職経験を有する者が隣接校種の教員免許状を取得しようとする場合には、一定の教職経験を評価して、最低修得単位数が軽減されるというものである(※11)。
 今後、本制度を活用した小・中学校教員による隣接校種の教員免許状取得が促進されるよう、 例えば、現職教員が別の免許状を新たに取得するために、都道府県教育委員会等が開設している免許法認定講習の受講の周知や、既に都道府県教育委員会等が開設している免許法認定講習を免許状更新講習としても位置付けることで教員の負担を軽減するなどの取組が考えられる。
 小・中学校教員が隣接校種の免許状を取得することにより、小学校教員は自らが教授する内容が中学校における学習にどのようにつながっていくのかを理解しながら指導し、中学校教員は小学校における学習の程度を把握した上で各分野の指導をすることができ、小学校と中学校の系統性を確保していくことに資することとなる。

○ 教職生活全体を通じて学び続ける教員を支援するため、教員養成、教員免許制度に関する改革の方向性や研修等の改善方策について審議した、教員の資質能力向上特別部会においては、「義務教育免許状」など、複数の学校種をまとめた教員免許状の創設は、要修得単位数の増加の課題等もあり、中長期的な検討課題とされているが、 今後、更なる隣接校種の教員免許状の取得促進のため、例えば、複数免許状を取得する場合の最低修得単位数の設定の在り方について検討することが期待される。

○ なお、専科担任制度について、現在、中学校又は高等学校の教諭の免許状を有する者が小学校において相当する教科等を担当することが可能となっているが、道徳及び特別活動については学校種を問わず指導を可能とするべきとの意見もあることから、関係者の意見等を踏まえ、検討する必要がある。

○ 教員養成は取得する免許状に対応した学校種別になされている現状があるが、学生が、教員養成課程において、義務教育9年間における児童生徒の発達や教育課程等について学修し、小・中学校の両学校種における物事の見方・考え方いずれも理解した上で9年間を見通した物事の見方・考え方ができるよう、例えば道徳に関する指導法、教育相談や生徒指導などの領域についてのカリキュラムの改善など、教育の基礎的な理解を促すような教員養成課程の在り方、教員免許制度の運用が求められる。

○ さらに、小中連携、一貫教育を実施する小・中学校教員は、隣接校種の児童生徒を指導するに当たり、これまで以上に広範囲の発達段階にある児童生徒への対応が求められるが、児童生徒一人ひとりに寄り添い、自立を促すという教員としての業務を適切に行うためにも、教員養成課程における教育哲学や教育史等の教育の基礎理論に関する科目の重要性が改めて認識されるべきである。


※10 平成22年度学校教員統計調査結果より

※11 本制度改正を受け、平成14年度~平成21年度に隣接校種の免許状を取得した件数は、小学校教諭による中学校教諭2種免許状取得588件、中学校教諭による小学校教諭2種免許状取得3,746件となっている。(文部科学省「教員免許状授与件数等調査」より)

7.校地・校舎等

○ 小中連携、一貫教育を実施している小・中学校の校地・校舎の在り方は多様である。実態調査によれば「同一施設内に小学校と中学校を設置しているもの」は全国で小・中学校各279校存在するとの結果となっており、小中連携、一貫教育を実施する小・中学校のほとんどは校地・校舎が離れた場所にある学校同士であるといえる。こうした現状を踏まえつつ、今後、小中連携、一貫教育の効果的な実施に資する学校施設の在り方について、国として検討することが必要である。

○ 校地・校舎が離れた場所にある小・中学校又は隣接していても小・中学校が異なる校舎である場合には、教員や児童生徒の移動に時間がかかり、顔を合わせる機会が減るため、乗り入れ指導、合同行事、授業交流等の実施や、それに関する教員同士の打合せや連絡を頻繁に行うことは困難であることから、例えば、グループウェアや電子掲示板等ICTを活用し連絡調整を行うといった工夫をすると効果的であると考えられる。

○ 小・中学校の校舎が一体となっている場合又は併設されている場合については、小・中学校教員間の日常的な連携を図りやすくする観点から、職員室を一体とすることも考えられる。これにより、教員の意識が、小学校、中学校という学校段階ごとに分かれたものから、義務教育9年間に責任を持つ教員という風に変化していくことが望まれる。また、職員室を一体とする以外にも、特別教室や図書室、保健室、体育館を共用とするといった工夫も考えられる。
 その際、小学校低学年の児童と中学校の生徒の発達上の違いを踏まえ、無理なく共用できるか否かを考慮しておく必要がある。
 さらに、校舎が一体となっている小・中学校については、小学校低学年の児童と中学校生徒では体格や運動能力に差があることから、学校における事故防止の観点から、児童生徒の動線に配慮した設計とすることが求められる。

○ 小中一貫教育を推進する小・中学校においては、教育課程上、9年間の学年を「4・3・2」「5・2・2」等に区分して、区分ごとに教育活動の目標を設定し、特に小学校から中学校に移行する段階の学年区分においては一部教科担任制の導入や、中学校教員による乗り入れ指導の実施に取り組むものがあるが、このような学年区分を設定する際には、小・中学校の校舎の在り方をどのようにしていくかについても併せて検討し、学年区分設定の趣旨をよりよく実現できるよう、工夫することが望ましい。校舎の在り方が学年区分に対応したものとなっていると保護者の理解が得やすくなるといった効果も期待できる。

○ 小中連携、一貫教育推進のため、校舎や屋内運動場を一体化するに当たって、既にある学校を改築する場合、小学校同士又は中学校同士の統合に伴う新増築よりも国庫補助率が低い。同等程度の補助を行うことや共用部分の在り方について、国として検討することが必要である。

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初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室義務教育改革係

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室義務教育改革係)

-- 登録:平成24年09月 --