養成・採用・研修を通じた大学と学校・教育委員会等の連携の在り方の方向性について~論点メモ~

1.養成と研修の関係

養成段階で必ず履修すべき内容と教職経験1~3年目程度までの研修等で学ぶべき内容の仕分けや連続性の在り方について、具体的にどのように考え整理することが適当か。

(例)
1 養成段階
国公私立学校の教員の人材候補者を共通に育成する時期であり、教員として幼児・児童・生徒に接し指導を行う上で必要な基礎・基盤となる内容・方法を、時代の変化や社会の要請に応じつつ、一通り履修する必要がある。

2 教職経験1~3年目程度
日々、幼児・児童・生徒と接しつつ、実務及び研修を通じて、養成段階で履修した指導内容・方法について反復的に学びを深め拡大するとともに、各学校の教育理念・方針・伝統・校風の理解や、校務の分掌・学校事務の処理、他の教員や保護者との連携・協働など、各学校の運営や教員としての職務遂行に必要な事柄を、順次身に付けていく必要がある。

2.養成と採用の接続

(1)学校・教育委員会等と連携した体験的・実践的な活動の充実
 養成段階において、教員としての専門性や実践性を十分に身に付けるためには、教育実習に限らず、様々な学校活動体験や幼児・児童・生徒と接する機会が多く得られることが望ましい。一方、学位課程と教員養成課程における履修を適正に両立しつつ、各種教育課題への対応等を図ることを考慮すると、教職課程の必修内容は精選し重点化することが適当である。これらのことを踏まえ、養成段階における学校・教育委員会等と連携した体験的・実践的な活動について、法令で定める内容と大学が独自に取り組む内容の仕分けや推奨の方向性について、具体的にどのように考え整理することが適当か。併せて、介護等体験特例法に基づく体験活動について、どう考えるか。

(例)
1 法令で定める内容教育実習に限らず、大学が地域の学校や教育委員会等と組織的に連携することにより、学生が1年次から学校に赴き、教育活動の見学や学習支援、学校行事の補助などの段階的経験を経て教育実習に至るような仕組みを導入する。

2 大学が独自に取り組む内容
学生の学位課程と教員養成課程の総履修量が適正な範囲(*)にあることを前提に、その他の時間において、学生が幼児・児童・生徒と直接ふれあう機会や専門的知識・技能を向上させる機会を多く持つよう、大学が単位認定を行うことなどにより推奨することや具体的取組を促進する。
(*)124単位×45時間=5,580時間。5,580時間÷140週(35週×4年)=約40時間/週

3 介護等体験特例法に基づく体験活動
体験的・実践的な活動を充実する観点から、小学校及び中学校の教員免許状の取得要件とされてきた介護等体験特例法(*1)に基づく介護等体験も見直し、幼児・児童・生徒に関わる施設における体験活動や教員としての人格陶冶・指導力向上に役立つ体験活動(*2)を広く含むものとして、法令に定める教育課程内外のいずれかに位置付ける。

(*1)小学校及び中学校の教諭の普通免許状授与に係る教育職員免許法の特例等に関する法律(平成9年法律第90号)。小学校または中学校の教員免許状を取得しようとする者は、7日間の介護等体験を必要とする旨が定められている。

(*2)たとえば、文部科学大臣の認定を受けた免許状更新講習の開設団体が行う自然体験活動、スポーツ指導者養成など。

○大学が独自に取り組む内容:幼児・児童・生徒と直接ふれあう機会の推奨
・大学が、幼児・児童・生徒を対象とする催事を主催し、学生が運営に参加する。また、当該催事情報を、教育委員会を通じて学校に提供する。
・大学が、学生に対し、幼児・児童・生徒を対象とする催事を学生自ら企画・運営する機会を提供する。また、当該催事情報を、教育委員会を通じて学校に提供する。
・教育委員会が、各自治体内で行われる幼児・児童・生徒を対象とする地域活動(土曜授業を含む)に関するボランティア情報をとりまとめ、大学を通じて学生に提供する。

○大学が独自に取り組む内容:専門的知識・技能を向上させる機会の推奨
・法令で定める履修内容に含まれない専門的な事柄のうち、学校で必要とされる知識・技能について、教育委員会等の要望を踏まえ、教員養成課程や学位課程が協働し、専門的知識・技能の向上を目的とした講義・演習・実習を行う。
・心理学と協働:コミュニケーション・カウンセリング力の向上
・医学と協働 :脳・体躯の発達、アレルギー対応・生物学と協働:蛙・鶏の解剖実習、植物の採集・分類実習  等
・教育委員会や地域の教育研究会が、主催する教科教育研究会等のうち参観可能なものの情報を、大学を通じて学生に提供する。
・大学が教育委員会と連携し、僻地・離島の学校の地域における生活や複式学級の体験活動の機会を設ける。
・大学が学校や教育委員会と連携し、学生が保護者やPTA役員等と懇談・意見交換を行う機会を設ける。

(2)採用選考における養成段階での学修成果の活用
教員の採用は、地域や学校の事情・特色に応じ任命権者・雇用者が主体的に判断し行うものであるが、社会全体としては、優秀で意欲ある多様な人材が教員に応募し登用されることを強く期待するものである。
このことを踏まえ、養成段階で真剣に学んだ優秀で意欲ある人材を一層教員の職に惹き付けられるよう、教員養成課程における学修状況や、教育実習を含む体験的・実践的な活動への参加状況の評価、また、これらを通じた教員としての適性判断などを、採用時の評価材料の一つとして積極的に活用することについてどう考えるか。 

(参考)平成26年度採用選考の取組(全68県市)
○教員採用選考における提出書類
・最終卒業校における成績証明書・・・32県市
・自己アピール等申告書・・・57県市
・クラブ活動・部活動・・・64県市
・ボランティア活動・・・62県市
・各種検定試験等の成績・・・57県市
・得意分野・重点履修分野・・・48県市
・教育実習の実施状況・・・17県市

(3)教職大学院進学者・修了者を対象とした取組の促進
 教職大学院に進学・在学する者や修了した者を対象に、採用選考において、教職大学院における履修を評価した取組を行うとともに、教員を目指す者が教職大学院への進学を志向しやすくなる環境づくりを促進することについてどう考えるか。

(参考)平成26年度採用選考の取組(全68県市)
○教職大学院修了者を対象とした一部試験免除・・・2県
○教職大学院修了者を対象とした特別選考・・・5県市
○大学院在学者・進学者に対する特例
・次年度以降の採用選考試験における一部試験免除・・・1市
・次年度以降の採用選考試験における特別選考・・・6県市
・採用候補者名簿の登載期間の延長・採用の延期・・・38県市(うち6県市は教職大学院のみ対象)

3.採用・任用と研修の接続

(1)教職大学院を活用した取組の促進
 任命権者・雇用者が、採用者の教職大学院における履修成果を考慮し、初任時等における研修の一部又は全部免除を行うことについて、どう考えるか。
 また、教職大学院と教育委員会等が共同で開発した研修プログラムに基づき教職大学院が授業科目を開設し、任命権者・雇用者が初任者をはじめとする教員を教職大学院に派遣して教員の研修を実施することについてどう考えるか。併せて、当該成果として、教員免許状も得られるようにすることについてどう考えるか。

(例)教職大学院と教育委員会等が共同で開発した研修
○教職経験:初任~4年目程度・教員としての継続的学びの基盤力を形成する研修プログラム。(公立学校教員は一部を初任者研修に位置付け。)
○教職経験:2年目以降・主体的学びを引き出し、思考力、判断力、表現力、課題発見・解決力等を育成し総合的に力を発揮できるようにするための多様な指導法に関する研修プログラム・英語による教科指導の実践力を向上するための研修プログラム
○教職経験:5~10年目以降・学校経営・管理に必要な視野や能力を伸長するための研修プログラム

(2)現職教員の新たな教員免許状の取得に向けた取組の促進
 現職教員が、資質能力の拡大・高度化を図った成果を客観的かつ容易に認識できる形で社会に示し、学校段階間の接続及び円滑な移行を考慮した教育や複数教科にわたる指導等を通じて効果的に学校に還元していくことができるよう、新たな教員免許状を取得しやすい環境を充実することについて、どう考えるか。

(例)
○研修又は免許状更新講習と免許法認定講習との連動や関係機関間の連携
・教育委員会が、免許法認定講習の認定を受けて研修を実施
・教育委員会や大学等が、免許法認定講習の認定も受けて免許状更新講習を開設
・大学が、教育委員会の依頼を受け、臨時免許状及び免許外教科担任の多い免許種や、採用が比較的困難な希少免許種に係る免許法認定講習を開設
・教育委員会が、大学と連携し、英語で教科指導を行う指導力を養成することを目的とした研修を、免許法認定講習の認定を受けて実施
○所有免許状の種類に応じた学びの奨励
・専修免許状所有者(教職大学院修了者)初任者研修の(一部)免除と他校種・他教科等の教員免許状の取得に向けた学び
・一種免許状・専修免許状所有者(教職大学院修了者以外)上位の教員免許状や他校種・他教科等の教員免許状の取得に向けた学び
・特別免許状所有者上位の教員免許状の取得に向けた学び(特に教職の専門性に関する内容)
・二種免許状所有者(短期大学士課程卒業者・資格認定試験合格者)一種免許状の取得に向けた学び
・臨時免許状所有者有効期間(3年)満了後も教員として勤務する意志がある場合には、普通免許状の取得に向けた学び

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初等中等教育局教職員課