資料3:尾崎委員提出資料

平成24年5月25日
全国特別支援学校長会

特別支援教育のセンター的機能の在り方

1 全特長ビジョンにおける特別支援学校のセンター的機能の充実の方向

 特別支援教育の推進ため、特別支援学校がこれまで蓄積してきた専門的な知識や技能を生かし、地域の特別支援教育のセンターとして、小・中学校等に在籍する教育上、特別な支援を必要とする子どもに関して、必要な助言や援助を行う(センター的機能)の役割を果たすことが重要な責務である。

1)小・中学校等への支援の充実を図るためのセンター的機能の整備

 地域の特別支援教育のセンター的機能を果たすための特別支援学校の機能の充実、及びその専門性を生かした小・中学校等への支援体制の整備が必要である。
 さらに、それぞれの特別支援学校において、教員の専門性向上や校内体制を充実させていかなければならない。

2)地域社会の支援・連携体制を尊重したキャリア教育の推進

 地域や産業界と連携し、職業教育や進学等の進路指導の充実及び生活支援体制の整備を図るなど自立と社会参加に向け、地域社会の中で創り上げられた支援・連携に基づく関係諸機関との連携強化及び支援会議の推進など特別支援学校のセンター的機能の一層の充実が必要である。

3)小学校、中学校、高等学校等との学校間パートナーシップの確立

 特別支援教育におけるスクールクラスターの考え方が整理され、地域内のすべての学校固有の機能を発揮し、相互に協力・補完が図られ、地域におけるすべての子ども一人一人の教育的ニーズに応える必要がある。

4)センター的機能発揮の姿

○1 地域の教育支援センター

 支援を必要とする子どもとその保護者のために、いつでも、だれでも、どのような障害についてでも、相談・資料提供・関係機関への紹介ができる地域に根付いたサポートステーションの機能を発揮できている。

○2 専門職の配置と活用

 職業教育の充実を図るための就労コーディネーター等を配置し、卒業後の進路先確保が容易になっている。生活支援体制の整備も行政と連携し充実している。臨床心理士、作業療法士、言語聴覚士等が配置され、専門家の視点の導入と活用により指導方法の改善が図られている。また、小・中・高等学校の教育相談コーディネーターと連携し個別の相談に効果的に対応できている。

○3 学校中継ステーション

 地域の幼・小・中・高等学校だけでなく、大学、各種学校、専門学校、サポート校等、あらゆる教育関係機関とパートナーシップを図り、特別支援教育の中核として、それぞれの学校等が担う特別支援教育をフォローできている。

○4 共生社会の推進拠点

 自立と社会参加に向け、障害児・者が地域で豊かに暮らし、学ぶための支援を行う情報を収集・提供・活用できる拠点としての機能を有している。

○5 国際的なネットワーク

 アジアそして全世界の特別支援学校等の教育機関と連携を図り、国際的な視野に立ち、特別支援教育に関する最新の支援情報や研究成果を発信し合う場として機能している。

2 インクルーシブ教育システムにおける特別支援学校のセンター的機能の在り方

 現在、中央教育審議会の特別支援教育の在り方に関する特別委員会では、インクルーシブ教育システムの構築に関する検討が行われている。このことと、先に述べた全特長ビジョンの両方を踏まえ、全特長が考える今後の特別支援学校のセンター的機能の在り方について述べていきたい。

1)就学支援における特別支援学校の役割

 就学相談において特別支援学校の体験入学を希望する幼児を受け入れるとともに、保護者に対して、特別支援学校の教育内容・方法、合理的配慮とそれに基づいた個別の教育支援計画等について説明する役割を果たす必要がある。
 そのためには、就学相談のできる専門性のある就学支援担当者の配置が必要である。

2)小学校・中学校・高等学校とのパートナーシップの構築

 地域にある小学校、中学校、高等学校や特別支援学校が、その学校で行われている特別支援教育の内容を相互に理解できていることがパートナーシップであり、そのことがスクールクラスターを構築するための条件になると考えられる。特別支援学校は、積極的に自校の教育内容の周知を図るとともに、小・中・高におけるそれぞれの特別支援教育が充実するように小・中・高の教員向け研修会を実施するなどセンター的機能を発揮する必要がある。
 そのためには、特別支援学校の専門性をいっそう高めるとともに、特別支援教育コーディネーターを複数配置した上でセンター的機能を発揮し、どの校種においても特別支援教育に関する専門性が高められるようにする必要がある。

3)「合理的配慮」に関する助言

 「合理的配慮」をすることによって、それぞれの学校における障害のある子どもへの教育が一層充実したものになっていくことが望まれる。校種により「基礎的環境整備」が異なるが、それを踏まえた上で、小・中・高等学校が個のニーズに合わせて「合理的配慮」ができるように、特別支援学校が助言・支援する必要がある。
 そのためには、特別支援学校の専門性を生かし、指導内容・方法、教材等の情報を提供することが重要である。

4)交流及び共同学習の推進の役割

 インクルーシブ教育システムにおいては、特別支援学校と幼・小・中・高等学校との間で行われる居住地域での交流及び共同学習を推進することが必要である。各校で計画的・組織的に行われるように、特別支援学校からの働きかけが必要である。
 そのためには、特別支援学校の特別支援教育コーディネーターの配置を一層拡充し、きめ細かに学校を支援できる体制を作る必要がある。

5)地域社会で暮らすための個別の教育支援計画の作成・活用に関する支援

 インクルーシブ教育システムを構築する上では、学校と医療、保健、福祉、労働等の関係機関との適切な連携の基に、地域社会で暮らすための個別の教育支援計画が作成・活用されていることが重要である。
 そのためには、特別支援学校が地域支援のためのネットワークにおいて中心的な役割を果たすことが必要である。

6)自立と社会参加を目指すためのキャリア教育に関する助言

 共生社会の実現のためには、特別支援学校卒業後の就労・自立・社会参加を目指す教育をより一層充実することが重要である。そのためには、小学校段階からキャリア発達を支援し、卒業時には、自立と社会参加できるようにキャリア教育を充実することが必要である。
 特別支援学校は、小中学校に対し、障害のある子どものキャリア発達を支援する方法等を助言したり、高等学校に対しては、特別支援学校のノウハウを活用し、就労に向けてのキャリア教育を展開できるように助言したりすることが必要である。そのための特別支援学校の教員の専門性を一層高める必要がある。

 

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