資料5 主な論点に関する議論の整理(案)

※ これまでの審議で、おおむね議論が整理されてきた論点についてのみ記述している。

1.基本的な考え方

 今回導入を検討している更新制は、教職生活の全体を通じて、その時々で必要な資質能力に刷新(リニューアル)することを目的としたものであり、いわば、教員として日常の職務を支障なくこなし、自己研鑽に努めている者であれば、通常は更新されることが期待されるもの。
 その意味で、いわゆる不適格教員の排除を直接の目的とするものではなく、むしろ、専門職である教員が、今後とも専門職であり続けるために、最新の知識・技能を身に付け、その後の10年間を保証された状態で、自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を得ていくという前向きな制度として捉えることが重要。

 更新制の導入は、一方で更新講習の受講・修了により、その時々で必要な資質能力に刷新(リニューアル)されることにより、教員としてのその後の専門性向上が期待できるもの。他方、刷新(リニューアル)されない場合も想定されるが、そのような者については、その時々で最小限必要な資質能力を有していないという意味で、教員としての適格性に欠ける者との判断がなされ得る。

 このように、更新制のねらいに着目して考えると、更新制は、例えば指導力不足教員への対応や現職研修などの他の教員政策と独立して存在するものではなく、様々な教員の資質向上政策と関連して、教員政策全体の中に、適切に位置付けられるもの。

 したがって、更新制の導入は、生涯にわたり教員として必要な資質能力を保証するという制度的基盤を確立することはもとより、指導力不足教員への対応や現職研修の充実など、適格性の確保や専門性の向上に関わる他の制度と一体となって実施されることにより、全体として、教員の資質能力の向上や、教員に対する信頼感の確立に寄与することが期待できるものである。

2.教員免許状の有効期限

 その時々で必要な資質能力に刷新(リニューアル)するという更新制の目的や更新の要件、教員のライフステージのほか、既卒者の採用が増えている(免許状の取得後、一定期間を経過した後に採用される者が増えている)状況等を総合的に考慮すると、免許状の有効期限については、最初の有効期限を5年間とするのではなく、一律に10年間とすることが適当。

3.免許更新講習の在り方

(1)講習内容、方法

 免許状が更新されるかどうかは、資格の得喪に関わる問題であり、また、更新されれば全ての都道府県で公証力を有するものとなることを考慮すれば、更新にあたっては、免許状の授与時に相当するような基準を設定することが適当。

 こうした観点から、更新講習の内容・方法等については、全国的に一定の水準が維持されるよう、あらかじめ、国が更新講習の認定基準(例えば、講習内容、方法、修了目標等)を定めることが適当。

 更新講習の内容については、その時々で求められる教員として必要な資質能力が保持されるよう刷新(リニューアル)するという更新制のねらいに鑑みれば、基本的に学校種や教科種に関わらず、およそ共通に求められる内容を中心とすることが適当であり、教職専門(学級経営や生徒指導、教育相談等)を中心に内容を構成することが適当。

 なお、上記の共通の内容は、あくまで更新講習としての認定基準上の内容であり、更新講習の開設主体が、認定基準で定める内容以外の内容や認定基準以上のレベルの内容を盛り込んで、多様な講習を実施することは可能である。

 更新講習については、学校現場のニーズに即した講習となるよう、今後、教員養成を行う大学関係者や教育委員会、学校関係者等の参加を得て、モデルカリキュラムを作成することが必要。

(2)受講時期、受講時間

 更新講習の受講にあたっては、受講者が自らの事情等を考慮して受講時期を決定したり、学校内に対象者が複数名いる場合でも、計画的に受講できるよう、受講時期にある程度の幅を持たせることが必要。このため、更新講習の受講時期については、有効期限の満了前の直近2年間程度の間に受講することとすることが適当。

 受講時期・期間に一定の幅を持たせる一方で、更新講習を刷新(リニューアル)としての中身を伴った、教員にとってもその後の成長に意義のあるものにするためには、一定程度の時間を確保することが必要であることから、講習時間は最低30時間程度とすることが適当。

4.複数の教員免許状を有する者の取扱い

 上記のような更新講習の性格・内容等を踏まえれば、複数の教員免許状(養護教諭、栄養教諭及び特殊教育諸学校の教諭の免許状を除く)を有する者については、一の免許状に係る更新講習を受講・修了すれば、他の免許状の更新も可能とする方向で検討することが適当。

 ただし、養護教諭、栄養教諭及び特殊教育諸学校の教諭の免許状については、それぞれの職務の特性等を考慮し、当該免許状に対応した更新講習の受講を課すことが適当。

5.更新制の実施のために必要な取組等

 更新制を円滑に実施するためには、各都道府県教育委員会の免許管理体制の実態を踏まえ、国が中心となって、免許管理や免許更新に必要なデータを全国規模でネットワーク化し、どの都道府県からでも必要なデータへのアクセスを可能とするような「免許管理システム」を整備することが不可欠。
 また、対象者数や必要な講習数などの実施規模の把握と確保、更新講習のモデルカリキュラムの開発、更新講習の開設主体や免許管理者(都道府県教育委員会)における組織体制の整備等も必要。

 更新制の導入により、教員に過重な負担を課さないよう十分留意することが必要であり、更新講習の開設主体による講習の開設期間や実施形態の工夫はもとより、各学校においても、対象教員については校務を軽減するなど、計画的に更新講習を受講できるよう、できる限りの配慮をすることが必要。

 更新講習の受講が、教員の日々の職務や自己研鑽への意欲を高め、子どもにより良い教育効果をもたらすよう、例えば基準時間以上に更新講習を受講した場合や、より高度な内容の講習を受講した場合は、任命権者の判断により、その実績を教員評価の一環として評価し、処遇にも反映させるなどの措置を講じることも考えられる。

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