資料4 教員免許制度ワーキンググループ(第12回)(平成18年5月9日)における主な意見

1.平成14年中教審答申との関係

(1)適格性、専門性等との関係

 今回の更新制が、平成14年答申と論理の立て方が違うことを、もう少し打ち出さなければならない。今回の更新制では、時代が変動する中で、10年に1度アップ・トゥ・デイトの講習を受けてもらうのであり、ここで適格性が問われるわけではない。適格性については、別に対応しているという論の立て方について、もう少し丁寧に書かなければいけない。

 更新制は、その時々で必要な資質能力が保持されるよう、刷新(リニューアル)を図る制度であるが、必要な刷新(リニューアル)がなされなければ、免許が更新されず、結果として教員としての身分を失う。その意味では、適格性に欠ける教員を、結果として排除することが可能。また、刷新(リニューアル)することにより、専門性の向上も図られるので、その意味では、専門性の向上と無関係とは言えない。どこかで適格性や専門性の向上と結び付くということを念頭に置く必要があるのではないか。

 分限制度との関係については、指導力不足教員への対応が行われており、専門性向上との関係についても、10年経験者研修を制度化している。一般的な任期制を導入していない公務員制度との関係については、特に、現職教員に更新制を適用した場合、更新されなかった者の身分上の問題がある。

(2)10年経験者研修の在り方

 平成14年答申のときに、更新制導入のいわば代替措置として、10年研を入れた経緯があるが、基本的に10年研と更新制は両立できるのではないかと思う。更新講習との関連で、10年研を弾力化すべきであり、お互い相乗効果を発揮しながら連動してやるのがよい。

 10年研は、公立学校の教員が対象であり、更新制は、国公私立学校の教員全てが対象。10年研を教員自身の能力開発のため弾力化していく方向で考えればいいのではないか。

 教員の成長の節目を考えれば、10年研は撤退し、むしろ5年研を充実していくべき。各都道府県教育委員会の運用を工夫すればよいのではないか。

 学校現場への影響を考えると、更新制の導入と同時に10年研を廃止するのではなく、徐々に廃止していくべき。単に現状に更新制が付加されるだけでは負担が大きい。

 更新制により、最新の知識に刷新(リニューアル)されるのであれば、10年研は法定研修としては廃止してもよいのではないか。実施するかどうかは各自治体の判断に任せる。

 研修については、行政研修を中心としたものだけではなく、OECDでも研究されているスクールフォーカスト(学校に焦点をあてた)研修の考え方など、国際的な議論における成果も取り入れながら、抜本的な改革をしていかなければならない。

2.具体的な制度設計

(1)教員免許状の有効期限

 免許状の有効期限は5年とする意見もあったが、10年程度が適当という方向でおおむね集約されたのではないか。

(2)免許更新講習の在り方

 更新講習は、刷新(リニューアル)されたかどうかを判断するものであり、きちんと講習内容が定着したかどうかの評価をしなければならない。

 更新講習の内容は、国が基本的な講習内容や方法、修了目標といったミニマム・リクワイアメント(最低要件)を定めて、その上で、実施機関が創意工夫するのが良い。

 今回の更新制は、すべての教員に共通に求められる資質能力の刷新(リニューアル)であるから、更新されることで、いつでもどこでも教員として活動できることを考えれば、講習内容・方法をどうするのかについて、国として一定の基準を示すことが必要。

 更新することによって、全国共通の免許状として通用するということは、免許状の授与と同じ機能を持っているということであり、更新についても、授与時に相当するような適切な基準が必要なのではないか。

 講習の実施機関の主体性は尊重しつつ、基本的なことは、国がガイドラインを作ることが必要ではないか。また、ガイドラインでは、講習科目ではどのようなことが最低限必要なのかというキー・コンセプトを示すことが必要。

 40代や50代のベテラン教員や60歳以上の者も、10年ごとに更新講習を受講・修了しなければならないのか。教員のライフステージの中で、各更新時にどのような更新講習を行うかという考え方の整理が必要。30代と50代の更新講習の内容が同じというわけにはいかない。

 更新講習のモデルカリキュラムの開発は、教職課程の改善・見直しや各県の研修プログラムの開発と連動して行わなければならない。このような視点は、更新講習の内容を一定レベルに担保したり、新しいものを取り入れていく場合に重要になってくる。

(3)複数の教員免許状を有する者の取扱い

 複数免許状を有する者の取扱いについては、複数免許状の取得促進と、免許状が保証する専門性の保持の両方をどのように担保していくかが重要。養護教諭や栄養教諭、特殊教育諸学校教諭の免許状については、別の講習を実施しても良いが、例えば、中学・高等学校教諭の免許状については、教科別の講習を入れると膨大になるため、学級経営や生徒指導、教育相談等の内容を重視するのが良い。

(4)その他

 女性教員が産休・育休中に更新講習を受けなければならない場合には、子育てしながら事後的に更新講習を受講できるような柔軟な仕組みがあっても良いのではないか。

3.現職教員を含む現に教員免許状を有する者の取扱い

 教員の専門性という点では、今は危機であり、信頼性を高めるための条件整備が必要。そういう状況の中で、現職教員について既得権を理由に適用しないとした場合、保護者や社会からの不信感が生じてしまう。現職教員に、過剰な負担となるものであってはならないが、モチベーションを高めるような更新講習であればよい。どのような形であれば現職教員に適用できるかについて議論をすべき。

 刷新(リニューアル)のための更新であれば、現職教員がその時々で、その基準に合致しているか判断する機会があってもいいのではないか。現職教員への更新制適用も可能かと思う。

 現職教員にも適用すべきだが、配慮は必要。向上を目指して刷新(リニューアル)していくことは現職教員でも必要で、それがクリアできなければ失効するとしないと、何故現職教員だけ免許がそのままなのかという批判を受ける。

 現に教員免許状を持っている者が不利益を被らないような理屈、仕組みを作ることを検討すべき。

 仮に現職教員に適用するならば、何らかの経過措置は必要ではないか。現職教員の立場に立ったシミュレーションをしてみる必要もある。

 資格制度としての更新制であり、現職教員とペーパーティチャーの違いをもって、更新制の適用や更新講習の内容を区分することは適当ではない。また、校長や教頭などの職種・職能とも別に考えなくてはならない。

4.必要な条件整備その他

 教員の意欲を高めるために、高度な内容が含まれる講習を受講・修了した教員は、積極的に評価して処遇にも反映させるなど、前向きな部分も必要。

 更新制は、更新後も教育活動が続けられるという意味のものであり、処遇等と理論的に結びつけられるのか、検討が必要。

 条件整備をきちんとやっていかないと、教員免許更新制の実現は難しいと思うので、行政当局に期待されるところが大きいと思う。

 更新講習の受講は、現職教員の大学院における就学ニーズを低下させる可能性もあり、更新制の制度設計に当たっては、その辺との関係にも留意することが必要。

 現在、いろいろな教育改革が進められているが、現場の教員が意見を述べたり、主体的に改革に参加できる機会が少ない。十分意見を吸い上げる仕組みの検討が望まれる。

 専門職としての教員について、資格制度においてそれを公証することを議論していく中で、社会人校長や教頭の存在がある。社会的に信用が低下している教員の世界に、社会人を入れて何とかうまくやっていけたとなれば、一体教員の専門性とは何かということが問題となる。

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