5.教員養成・免許制度の改革の円滑な実施のために

今回の教員養成・免許制度の改革、とりわけ更新制の円滑な実施を図っていくためには、何よりも教員自身が、更新制の導入の趣旨を正しく理解することが求められる。本年6月に公表された「義務教育に関する意識調査」をはじめ、各種の調査においても、更新制の導入に対する保護者や国民の期待は高いものの、教員の支持は低い水準にとどまっており、両者の間に意識のギャップが見られる。

このため、更新制の円滑な実施のためには、国や都道府県教育委員会等において、更新制に対する教員の正しい理解を得るための取組を行うことが必要である。同時に、更新制の導入が教職の魅力を低下させたり、今でも多忙感があると指摘される教員に対して、過重な負担を課すことにならないよう、必要な条件整備や学校運営の改善等に努めていくことも必要である。

(1)教員評価の改善・充実

学校教育や教員に対する信頼を確保するためには、教員評価の取組みが重要である。教員は専門的な知識や技術等が求められる職業であり、その資質能力の向上に向けて様々な研修等が行われているが、教員評価と人材育成とを連動させることにより、単に査定のための評価ではなく、一人一人の教員の能力や業績を適正に評価し、教員に意欲と自信を持たせ、育てていく評価とすることが重要である。
また、教員評価にあたっては、主観性や恣意性を排除し、客観性を持たせることが重要であり、評価要素や項目の基準を明確にするとともに、個々の教員の役割や権限、責任を明確にし、それに基づいた評価を行うことが効果的である。

現在、全ての都道府県・指定都市教育委員会において、教員の新たな評価システムの構築が進められているが、今後、上記のような視点に留意しつつ、これらの取組みを一層推進していくことが必要である。
また、教員評価の結果について、任用や給与上の措置などの処遇に反映することについて検討していくことが必要である。特に、優れた実践や高い指導力のある教員を顕彰し、それを処遇に反映させたり、教員の表彰を通じて社会全体に教員に対する尊敬と信頼が醸成されるような環境を培うことが重要である。

(2)魅力ある職場づくり

教職や学校が魅力のある職業、職場となるためには、教員同士が学び合い、高め合っていくという同僚性や学校文化を形成するとともに、教員集団を組織化することが重要である。教員の資質能力の向上を図る上でも、個々の教員の能力の向上を図っていくという視点だけでなく、職場の同僚同士のチームワークを重視し、全体のレベルを向上させるという視点を適切に組み合わせていくことが必要である。

このため、一人一人の教員が自らの職責を自覚しながら能力や個性を発揮するとともに、組織全体として有機的、機動的な学校運営が行われる体制をつくっていくという観点から、校務分掌などの校内組織や事務処理体制の整備、個々の教員の知識や経験を他の教員も共有できるよう校内研修の充実等を図っていく必要がある。また、校長や教頭等の管理職に優れた資質能力を有する人材を確保するとともに、それを支える体制の整備についても検討していくことが必要である。

(3)分限制度等の適切な運用

学校教育が困難な状況にある中で、多くの教員は、教育活動や自己研鑽に熱心に努めているが、教員の中には、教職に対する情熱や使命感が低下したり、必要な人格的資質が欠如しているなど、問題を抱える者がいることも事実である。安心し、信頼される学校づくりを進めていくためには、このような問題のある教員に対して毅然と対処していくことが重要である。

このため、都道府県教育委員会等においては、更新制が導入された後も、条件附採用期間制度や分限制度を適切に運用していくことが必要である。また、いわゆる指導力不足教員に対する取組みとして、各教育委員会においては、継続的な指導や研修を行うとともに、状況に応じて分限処分等の必要な措置を講じるための人事管理システムが構築され、適切な対応が図られているところであるが、こうした取組みを一層進めていくことも必要である。

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